こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
命を懸けた、
"三文"芝居――
今年2月に封切られたムロツヨシ主演の『身代わり忠臣蔵』がAmazonプライムで無料公開になったので観てみました。
原作は土橋章宏が2018年に出版した同名のコミカル小説。土橋自身が脚本を書いて映画化されました。
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身代わり忠臣蔵
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会 |
土橋章宏と言えば、2015年公開の『超高速!参勤交代』で第38回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞した腕達者。
コミカルな時代劇を書かせれば、当代、右に出る者がいないと言えましょう。
土橋章宏
はてさて、今回の作品の出来栄えや如何に!?
バレたら打ち首 良くて切腹!
絶体絶命の身代わりミッション、いざ御開帳!
映画の冒頭、神社の橋の上でボロボロの袈裟を着た坊主の孝証(ムロツヨシ)が通行人にお布施をねだるが誰も見向きもしない。
お布施をくれなきゃ死んでやると橋の欄干に登って芝居をするが、通りがかった「お犬様」が飛び掛かった拍子に本当に川に落下してしまう。
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身代わり忠臣蔵
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会
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その下流で釣りをしていた赤穂藩家老の大石蔵之介(永山瑛太)に救い上げられ、「俺が死んでも誰も気にしない」と落ち込んでいると、蔵之介は「無駄な命などない」と赤穂藩特産の塩飴を恵んで慰める。
この坊主孝証(ムロツヨシ)、実は高家旗本吉良上野介(ムロツヨシ:二役)の弟で出家させられていたが、不良坊主のため、寺を抜け出して気ままな乞食旅をしていた。
一方、殿中松の廊下では、吉良上野介にいびられた赤穂藩主浅野内匠頭が刃傷沙汰を起こし、切腹・お家断絶の事態に。
殿中松の廊下
この時、背中に「逃げ傷」で深手を負った吉良上野介がもし亡くなれば、"逃げ傷など武士にあるまじき振る舞い"という事で、こちらも断絶の危機。
一計を案じた吉良家の家老斎藤宮内(林遣都)は、見た目そっくりの弟孝証(ムロツヨシ)を吉良上野介の身代わりに立て、老中柳沢吉保(柄本明)に「逃げ傷」の弁明をしてほしいと頼み込む。
身代わり中‥
結局、吉良上野介はそのまま死亡したため、孝証(ムロツヨシ)はほとぼりが冷めるまで「なりすまし」を続けることになる。
一方、お家断絶となった赤穂藩では、幕府に恭順して「お家再興」を願う者たちと、主君の無念を晴らすため「吉良上野介の誅滅」を願う者たちに分裂。
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身代わり忠臣蔵
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会
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元々、遊び人で決断力のなかった大石蔵之介(永山瑛太)は、皆の前では「熟慮する」と言いながら、家に帰っては妻りく(野波麻帆)に泣きつく始末。
ヘタレな蔵之介
こんな孝証(ムロツヨシ)と大石蔵之介(永山瑛太)がひょんなことから、吉原遊郭で出会い、互いの素性を知らぬまま意気投合。親友の仲となる。
蔵之介と孝証
そんな中、幕府では江戸の赤穂浪士たちの不穏な動きを察知。老中柳沢吉保(柄本明)は赤穂浪士らを一網打尽にするべく、罠を張りめぐらす。
すなわち、吉良邸を人けの少ない本所松坂町に移転させ、内部に討伐隊を隠し置いて返り討ちにする計画だった。
老中柳沢吉保
この期に及んで嘘は付けないと、孝証(ムロツヨシ)は大石蔵之介(永山瑛太)に自分の立場と幕府の陰謀について暴露し、思いとどまるよう進言する。
だが既に、赤穂浪士たちは蔵之介の抑えの利かない所まで行っていた・・。
さて、蔵之介は吉良上野介になりすました親友を本当に切れるのか? 孝証(ムロツヨシ)の運命や如何に。
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身代わり忠臣蔵
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会
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こんなストーリーですが、まずはムロツヨシの二役の演じ分けが見事。
兄の吉良上野介は目下の者や領民にまでパワハラを働く不届き者、これに対する弟の孝証は人情家で下級武士や領民にも慕われる。
領民に慕われる孝証・上野介
特に後半のシリアスな場面に入ってから、自分の命を差し出してまで親友の蔵之介を救おうとするシーンなど、凄いイケメンに見えて来る(笑)
また、実際の事件で、吉良上野介は赤穂浪士に首を上げられているので、その成り行きはどうしようもないはず。いったい、どうやってストーリーの落とし前を付けるのか? うむむむむ・・。
まあ、そこがこの『身代わり忠臣蔵』の話の肝でしょうか。
ほかの役者さん達も中々の人選。柳沢吉保役の柄本明、徳川綱吉役の北村一輝は言わずもがな、最初は頼りなかった大石蔵之介の永山瑛太も、意を決してからは堂々の役者ぶり。
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身代わり忠臣蔵
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会
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そして、吉良家側の剣豪、清水一学(寛一郎)がやたらカッコいいと思ったら、この人、佐藤浩市の息子(三國連太郎の孫)なんですね。
吉良家剣豪、清水一学
それにしても何にしても、土橋章宏が付けた結末どんでん返しが実にお見事。
コメディから入ってシリアスに。そして息詰まるサスペンスから、ラストは全部ひっくり返して痛快な結末へと。
さすがにこのオチはここに書くべきではないと思います。絶対、自分で見て「あー、確かにその伏線があったな!」と溜飲を下げるのがおススメです。
/// end of the “cinemaアラカルト437「身代わり忠臣蔵」”///
(追伸)
岸波
ラストシーンは、悲願を遂げて切腹した蔵之介ら赤穂浪士の墓参りを孝証と下女の桔梗(川口春奈)の二人がしている場面。
「大石が死んじゃった。あいつには生きててほしかったんだ。生きるべきだったんだ」と孝証が泣くと桔梗が「これからどうするのですか?」と。
孝証と桔梗
「仏の道を行く」と答えると桔梗に「女人禁制ですね」と言われ、慌てて「町人でもいいかな」と変更して「馬鹿ですね」と笑われる。
いいなぁ、このほのぼのラスト・・あっ、孝証が生きてるのばらしちゃった!(笑)
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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身代わり忠臣蔵・完成後
(C)2024「身代わり忠臣蔵」製作委員会
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