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「わいわいタイム」(音楽の卵)
by 岸波(葉羽)【配信2024.9.21】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 この女、何者?

 三谷幸喜監督の最新作『スオミの話をしよう』が先週公開されたのでケイ子と観てまいりました。

 『記憶にございません!』(2019年)以来5年ぶりの監督・脚本となりますが、この間『鎌倉殿の13人』も手掛けましたし、コロナ禍もあったので満を持したというところでしょうか。

 主演は、どんな役をやらせてもハマリ役にしてしまうと言う長澤まさみ。でも今作では同一人物ながら5つのキャラを使い分けると言う離れ業・・ええええ~!?

スオミの話をしよう

(C)2024「スオミの話をしよう」製作委員会

 テレビCFでも盛んに流されましたが、大富豪の妻スオミが消息を絶ち、その行方を追う歴代5人の配偶者が豪邸に集合するものの、彼らの言うスオミ像はてんでバラバラ・・いったいスオミの正体とは?

 そんなワンシチュエーション・コメディですが、こういうのを書かせると右に出る者がいない。三谷幸喜監督、流石です。

  三谷幸喜監督

 はてさて、今回の作品の出来栄えや如何に!?

 

 大富豪の妻・スオミが姿を消した――

 映画の冒頭、有名詩人で大富豪の寒川しずお(坂東彌十郎)の妻であるスオミ(長澤まさみ)が突然消息を絶ち、その捜索のために警視庁勤務であり前夫である草野圭吾(西島秀俊)が「個人的に」呼び出される。

 そう・・寒川は、詩人でありながら大富豪である事実を世間に隠すため、警察通報をしなかったのだ。

スオミの話をしよう

(C)2024「スオミの話をしよう」製作委員会

 そしてその豪邸に次々と駆け付ける「元夫」たち・・最初の夫が寒川邸の庭師である魚山大吉(遠藤憲一)、二番目が草野の上司である宇賀神守(小林隆)、そして三人目がYouTuberの十勝左衛門(松坂桃李)・・都合5人が集結する。

 スオミについて喧々諤々と語り出す歴代夫たちだが、彼らが語るスオミ像は性格ばかりか得意分野、見た目まで違う。(ええ~!)

  5人の歴代夫たち

 最初は、単なる気まぐれの失踪とタカをくくっていたものの、やがて誘拐犯からの犯行声明が届き、身代金3億円が要求されて本気モードに。

 犯人の指示するとおり、3億円を二つのバッグに詰めて自家用セスナから所定の場所に投下し、無事受け渡しを終える。

  犯人からの脅迫電話

 しかし、再び豪邸に戻った彼らは、どこかおかしいと考え始める。そもそもギリギリの時間に飛行機から投下するという指示自体、メンバーに自家用セスナを所有している十勝左衛門(松坂桃李)がいる事を知っていなければ出せない筈。

 すわ、この中に内通者がいるのでは!

  飛行機なら僕の自家用機で

 邸内にいるのは5人の夫たちと草野圭吾(西島秀俊)の部下、小磯杜夫(瀬戸康史)と寒川の担当編集者で世話係でもある乙骨直虎(戸塚純貴)の合計7人。

 彼らは、お互い疑心暗鬼となり、それぞれが裏切り者について自論を展開し、収集が付かなくなる。

 さて、裏切り者は誰なのか? そして誘拐犯の黒幕は? はたまた、スオミの安否や如何に!?

スオミの話をしよう

(C)2024「スオミの話をしよう」製作委員会

 こういう、ドタバタがどんどんエスカレートしてゆく脚本は本当に上手ですね。筒井康隆の初期のSFも同様な趣きがあってハマったものですが、自分、こういう話好きなんでしょうね。

 ところがっ!! オチが見えやすいと言いますか、それほど捻ったものではない。

 何故かと言うと、スオミと5人の夫たちのストーリーの中に、必ずもう一人の女性が登場して、別々の役割を果たしているからです。

  必ず登場する相棒の薊

 その女性とは、スオミの学友である薊(宮澤エマ)。スオミがそれぞれの夫たちの前で別のキャラを演じられるのは、彼女のサポートがあってこそ。

 この辺りで、事件は二人の創作というか自作自演であることがミエミエ。スオミは、男性の好みに合せて「理想の女性」を演じられる特技があり、その「演技」に疲れるとパートナーを取り替えていたのです。

  スオミ第一形態(笑)

 3億円の身代金を要求したのは、彼女の生まれ故郷であるフィンランドに渡り、そこでソウルメイトの薊(宮澤エマ)と共に生活して行くため。

 まあ、そう言われれば「スオミ」というヘンな名前も北欧出身ならおかしくない。「スオミ」はフィンランド人が自称で使う言葉ですからね。

 全体としてはキレイに着地したストーリーですが、30年前に三谷幸喜が脚本を書いた『古畑任三郎』のようなキレや意外性はない。

 

 振り返ってみると、あの頃の三谷幸喜は凄かった。上述『任三郎』もそうですが、映画第一作の『ラヂオの時間』(1997年)には衝撃を受け笑いが止まらなかった記憶があります。

 そもそも彼は、凄い作品も創る一方で、どーしよーもない駄作もある「波」が大きい作家だと思う。それは興行成績にも反映され、特に『ギャラクシー街道』の酷さは目を覆うばかり。

実は東野圭吾についても、僕は同じ感想を持っています。(多作過ぎるから??)

 コメディって特に難しいと思いますね、時代と共に支持される「笑い」の質も変遷しますので。

 そういう意味では、一世を風靡した彼独特の「笑い」も時代に合わなくなってきたのかもしれない。

 今回の映画を見終わった後、僕とケイコは同時に「残念!」と目を合わせました。

 できれば、三谷幸喜には『任三郎』のような路線でまた書いてもらいたいですね。でも田村正和のような役者はもう居ないか? うむ、待てよ・・。

 

/// end of the “cinemaアラカルト435「スオミの話をしよう」”///

 

(追伸)

岸波

 スオミの居場所が突き止められ、5人の夫たちとネタバレで真実を語る場面がありました。

 ここでスオミは、5人の夫と会話する時、それぞれのキャラになり変わって百面相するのですが、いくら芸達者の長澤まさみと言えど、この設定には無理がある。

 メイクも直せないし、表情と口調だけで表現しなくてはならないんで、さすがに演技を見ていてイタイ。三谷幸喜に無茶振りされたんでしょうね(笑)

 無茶振りと言えば、映画のラストでキャストが正装し、ミニ・ミュージカルをやるのですが、出演者たちも「まさか、これまでやらされるとは思わなかった」と言っています。

 まあ、このシーンはちょっと楽しめましたけどね(笑)

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

スオミの話をしよう

(C)2024「スオミの話をしよう」製作委員会

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト436” coming soon!

 

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