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「Freezing Conflagration」(佑樹のMusic-Room
by 岸波(葉羽)【配信2024.9.7】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 恐怖の原点にして頂点
『エイリアン』の”その後の物語”

 SFホラーの名作『エイリアン』の正当な続編となる『エイリアン ロムルス』を9月6日の封切り日にケイ子と観てまいりました。

 一月ほど先行したアメリカでの公開で大ヒットを記録し、既に続編の構想が動き出している作品。長いこと待った甲斐がありました。

 というのもこの『エイリアン』シリーズ、リドリー・スコットのメガホンによる第一作がヒットした後『4』まで作られましたが、全て監督が異なっています。

 すると、何が起きたか・・?

エイリアン ロムルス

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 設定がコロコロ変わって連続せず、『3』『4』と興行的に失敗して尻つぼみに消えてしまったのです。

 その後、初代監督のリドリー・スコットが前日譚としてリブートした『プロメテウス』と『エイリアン コヴェナント』も二作目で打切りとなり、「正史」に繋がるはずの重要な第三作は作られませんでした。

  フェデ・アルバレス監督

 今回の『ロムルス』はリドリー・スコットが制作に廻り、監督・脚本に『ドント・ブリーズ』の鬼才フェデ・アルバレスを起用して第一作『エイリアン』の20年後の事件を描くもの。

 さて、満を持した正当な続編の出来栄えや如何に!?

 

 逃げ切れるか?
 生存率0%の絶望から…

 映画の冒頭、辺境の宇宙空間でサルベージ船が爆散した宇宙船ノストロモ号の残骸から生命体の繭のような塊を回収。・・をっとコレは、エイリアンを生物兵器にしようと目論むウェイランド・ユタニ社に違いない。

 場面代わって、テラフォーミングを勧めている劣悪な環境の植民惑星ジャクソン星で鉱山労働者として働く青年たち。

 彼らは、ウェイランド・ユタニ社の所有する鉱山で奴隷のような労働をさせられることに辟易し、新天地への脱出を計画している。

エイリアン ロムルス

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 彼らが発見したのは、ジャクソン星近傍に漂う廃棄された宇宙ステーション。

 ジャクソン星にある宇宙船では計画する星系に辿り着けないため、宇宙ステーションにあるコールド・スリープ装置を持ち出そうと画策。

  主人公レイン・キャラダイン

 恋人のタイラーから話を持ち掛けられた主人公レイン・キャラダイン( ケイリー・スピーニー)は弟のように面倒を見ている再生アンドロイドのアンディとともに脱出作戦に加わることとなり、タイラーの妹ケイ、従兄弟のビヨン、そしてビヨンの彼女ナヴァロの合計6人のチームで行動を起こす。

 そう・・今回エリアンと対峙するのは、軍隊でも職業宇宙飛行士でもなく、喰いつめた一般の青年たちなのだ。

  恋人のタイラーとレイン 

 彼らが発見した宇宙ステーション「ロムルス」は、エイリアンの繭を回収して研究実験を行っていたウェイランド・ユタニ社のもので、案の定、エイリアンが暴走し、乗り組員全員が犠牲になっていた。

 さて、素人の青年たちは、いかにしてエイリアンの魔手から脱出することができるのか? はたまた初めて明らかにされるウェイランド・ユタニ社の"真の狙い"とは!?

エイリアン ロムルス

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 最もヒットした『エイリアン2』では、ノストロモ号から脱出・地球に帰還したリプリー(シーガニー・ウィーバー)が、再度、主人公を務めましたが、年齢的な問題でさすがに起用することは難しいため、全く新しいメンバーが主人公に据えられました。

 その中でキーマンとなるのが再生アンドロイドのアンディ(デヴィッド・ジョンソン)。

  レインとアンディ

 彼はウェイランド・ユタニ社に廃棄された黒人型の個体だったが、主人公レインの亡父によって修理・再生され、”レインを守ること”を最優先にプログラムされている。

 しかしこれがテンで気弱ないじめられっ子(アンドロイドなのに!)。レインを守るどころか守られっぱなしの情けなさ。

  いじめられっこのアンディ

 ところが「ロムルス」のシステムを起動させるため、破壊されていたロムルスのアンドロイドのパーツを組み込むと性格や行動が一変。

 優先コマンドが上書きされて、エイリアンのDNAを回収して脱出するために獅子奮迅の活躍をする。

 これって、いじめられっ子が一躍ヒーローになったみたいで、けっこう”痛快”。

エイリアン ロムルス

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 また、エイリアンに千切られて上半身だけになったロムルスのアンドロイドですが、パーツをアンディに移した弾みで再起動し、アンディを支配下に置いてしまう。

 すると「対エイリアン」では共通利害だが、目的が違うので信用できないパートナーと化す。事実、「人命」より「回収」を優先に振舞って仲間が次々と犠牲になって行く。

 うむむむ、頼りになるのはいいが、これでは・・。

  『エイリアン2』のアッシュ

 このロムルスの上半身アンドロイドですが、何と最初の『エイリアン』で登場した「アッシュ」と同型・・ってか、同じ俳優ダニエル・ベッツがCGで演技しています。これにはオドロキ!

もちろん本人は亡くなっているので、遺族の了解でCG化された。

 こういう人間vsエイリアンvsアンドロイドの構図こそ、このシリーズの伝統ですね。

  『エイリアン3』のビショップ

 また、植民星ジョンソンは土星のような「環」を持った天体で、宇宙空間の造形的に息を呑むぐらい美しいのです。

 しかし、廃棄宇宙ステーション「ロムルス」は、この「環」に落ちていく軌道にあり、1時間以内に脱出しないとステーションもろとも宇宙の藻屑になってしまうというタイムリミット・サスペンスの要素も。(美しいとか言ってる場合じゃない:笑)

なお「ロムルス」とはローマの建国神話に出て来る双子の兄で初代国王の名。

  ロムルスとレムス兄弟

 脱出時限が迫る中、状況がどんどん悪化していく恐怖感の増幅はさすがの演出。

 気の弱い僕は映画を観ながら何度もビクンと席から何度も跳びあがりました(笑)

エイリアン ロムルス

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 ここでちょっとウェイランド・ユタニ社に関する考察。

 まずその目的ですが、前日譚第一作『プロメテウス』ではまだ「ウェイランド社」とされており、その社長ピーター・ウェイランド本人もプロメテウス号に乗り組みます。

 彼は、地球人類を創った「エンジニア」の文明を調査し、自らの「不老不死」技術を入手することが目的でした。

  『プロメテウス』のエンジニア

 そして続く『コヴェナント』では、ウェイランド社のアンドロイド、デヴィッドが「不老不死技術」を実現するため、エイリアンのDNAを用いて人体実験を行います。

 さらに今回の『ロルムス』ですが、後継のウェイランド・ユタニ社は植民星の開発に行き詰り、脆弱な人類の身体そのものを進化させるトリガーとしてエイリアンDNAを求めています。

  エイリアン:コヴェナント

 つまり、ユタニ社の真の目的は、生物兵器としてのエイリアン活用という小さなものではなく、人類そのものを宇宙環境に適応させるために進化させる・・その触媒がエイリアンDNAだと考えられます。

 こうして見ると、実に壮大なストーリーだと気付かされました。

エイリアン ロムルス

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 で、その超人類が今回登場するのです!

 瀕死の重傷を負った仲間の一人、妊婦のケイが「生き残るためには、これを注射するしかない」とアンドロイドに騙され、エイリアンDNAを体内に入れてしまう!

 そして産み落とされた「オフスプリング(子孫・後継の意)」が急速に成長し、最後はコイツと主人公レインのタイマン勝負に。(これも『エイリアン』の伝統)

 

 いや、このシーンは怖い。夢に出てきそう。何せエイリアンより強いし。

 この映画を見ておかないと、これからのシリーズ、ワケが分からなくなりますよ。絶対に見るべし。

 後からのサブスク配信で、深夜、自宅で一人きりで見たりしたら、強烈なショックに命の保証はありません!(多分ですが:笑)

 

/// end of the “cinemaアラカルト433「エイリアン ロムルス」”///

 

(追伸)

岸波

 今作の女性主人公レイン・キャラダインを演じたケイリー・スピーニーですが、2018年の『パシフィック・リム アップライジング』でも重要な役で出ていました。なかなか魅力的な女優さんです。

 で、ウチのケイ子さん、映画を見終わった後、彼女の事について話していて大笑い。何故かと言うと、パリオリンピックの日本男子チームの高橋蘭クンにそっくりだと言うのです。

  高橋蘭選手

 似てるかなぁ・・そう言われてみると似てるかも♪

  ケイリー・スピーニー

 あと、今回の『ロムルス』を”エイリアン・シリーズのスピンアウト”と書いている記事などがありましたが、それはリドリー・スコットに大変失礼ではないかと。

 確かにエイリアン1から4まで、シーガニー・ウィーバーが主人公を務めたのは事実ですが、ウェイランド・ユタニ社がエイリアンのことを知らなかったり、設定がグダグダになっています。

 むしろ、リドリー・スコットが指揮を執った『プロメテウス』・『コヴェナント』から『エイリアン』に連なる正伝の一部に位置づけた方が間違いないでしょう。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

エイリアン ロムルス

(C)2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト434” coming soon!

 

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