こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
「俺は人を殺すのが好きだ」
カリフォルニアを震撼させた全米犯罪史上初の劇場型連続殺人事件。
巧妙な暗号で世界を挑発した犯人は”ゾディアック”と名乗った。
僕の前回のレビュー(#416)で予告したスリラーの名匠デビッド・フィンチャー監督の『ゾディアック』に関する記事です。
デビッド・フィンチャーと言えば、『セブン』(1995年)、『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(2008年)、『ドラゴン・タトゥーの女』(2011年)をはじめ数々のサイコホラーを世に送り出した名匠。
しかし今回の『ゾディアック』は、実際の事件をもとにした映画なのです。
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ゾディアック
(C)2007 Warner Bros. Ent. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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『セブン』では、目をそむけたくなるような猟奇映像が満載でしたが、今回の『ゾディアック』は、暗号を用いた劇場型犯罪。
ゾディアックと名乗る犯人は犯行を自ら通報したり、マスコミ各社に暗号を用いた殺人予告を送りつけるなど、異常なシリアルキラー。
幾たびも追いつめられるたび、スルリと追及の手を逃れる知能犯。果たして彼を捕えることができるのか?
ということで、さっそく内容です。
この暗号を解いてはいけない。
映画の冒頭は1969年7月4日、独立記念日の祝祭に湧くカリフォルニア州バレーホで若いアベックが銃撃され女性は死亡、男性は重傷ながら一命をとりとめる。
一か月後、各大手新聞社に暗号付きの殺害予告が送りつけられ、この暗号を新聞に掲載しなければ今後12人を殺害すると脅迫。
この手紙の開封現場にたまたま居合わせたスタッフの風刺漫画家ロバート(ジェイク・ジレンホール)は暗号の意味を解こうと躍起になる。
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ゾディアック
(C)2007 Warner Bros. Ent. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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だが、先に暗号を解いたのはパズル好きの一般夫婦で、内容は”殺人が好きだ"という犯人の告白文だった。
その後も次々と発生する銃撃事件。数か月後、”次はスクールバスを襲う”という予告状が届き、街はパニックに襲われる。
風刺漫画家ロバート
その混乱に、ゾディアックからの暗号予告や市民からのデマ情報が拍車をかける。
事件の捜査主任に任じられた二人の刑事トースキー(マーク・ラファロ)とアームストロング(アンソニー・エドワーズ)、事件を追い続ける記者エイヴリー( ロバート・ダウニー・Jr)、そして風刺漫画家ロバートは三者三様の手段で事件の真相に迫っていく。
トースキー刑事
果たしてゾディアックの正体とは? そして事件を追う者たちの運命や如何に!?
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ゾディアック
(C)2007 Warner Bros. Ent. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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前述のとおり、「ゾディアック事件」は1968年から1974年にかけて、サンフランシスコで繰り返された実際の連続殺人事件。
犯人が犯行前後に警察当局やマスコミに大量の犯行声明文を送りつけたことから「劇場型犯罪」として有名な未解決事件・・そう、実際の事件は「未解決」なのです。
映画に登場する風刺漫画家ロバートは新聞社サンフランシスコ・クロニクルに実在の人物で、彼は独自の調査資料をもとに1986年に『Zodiac』という本を出版。今回の映画は、ロバートの手記に基づいたものと思われます。
出版された『Zodiac』
この映画の醍醐味は、二人の担当刑事や敏腕記者のエイヴリーらが証言・状況証拠を積み上げてあと一歩という所まで迫りながら筆跡鑑定で否定されたりと、ゾディアックに翻弄される進行です。
一連の事件の経過が丹念に描かれるとともに、追う人間たちの苦悩がリアルに伝わって来るのは、さすが名匠デビッド・フィンチャー。サスペンスを盛り上げる音楽のチョイスやカメラワークも素晴らしい。
デビッド・フィンチャー監督
エイヴリーは酒におぼれて身を持ち崩し、刑事の一人は失意の中で人事異動を申し出、戦線から脱落していく。しかも、孤軍奮闘するもう一人の刑事は、ゾディアックからの予告状を偽造した疑いで訴追されてしまう・・。(事実ではない)
そんな中でも、風刺漫画家ロバート(ジェイク・ジレンホール)の最後まで諦めないひたむきさが胸を打ちます。
身を持ち崩すエイヴリー記者
このジェイク・ジレンホールをどこかで見たなと思っていましたら、Amazonプライム・オリジナルでオンエアが開始されたばかりの『ロードハウス/孤独の街』の主演を務めていました。
過去に遡って調べてみると、2001年公開『ドニー・ダーコ』で主人公ドニーを演じてインディペンデント・スピリット賞主演男優賞候補に、2005年公開『ブロークバック・マウンテン』では英国アカデミー賞助演男優賞を受賞・アカデミー助演男優賞にノミネートされた演技派ですが、どうもモテすぎて女グセが悪くコレと言った役に恵まれなかったようです。
ジェイク・ジレンホール
あ~あ、せっかく『ゾディアック』でいいところを見せたのにアレは演技だったのか?(ハイ、演技です:笑)
さて映画の終盤、再婚の妻が実家に帰り新聞社も退職して事件に没頭する風刺漫画家ロバートは、二人の刑事が追いつめながら否定された人物リー・アレンの筆跡鑑定が、実は二人の共同作業で書かれたものであることを突き止めます。
いやぁ、このシーンは凄く怖かった・・
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ゾディアック
(C)2007 Warner Bros. Ent. and Paramount Pictures. All Rights Reserved.
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容疑者と目されるリー・アレンの関係者に聞き込みを続ける中、たまたま訪れたその知人宅でリーに関するモノがあるという地下室に案内され、そこで二人が共犯関係にある絶対的な証拠を目にするのです。(相手はそれに気づいていない)
そこから、こけつまろびつ脱出を図るシークエンスは正にスリラーの醍醐味。
さて、全ての謎が一本に繋がったことを唯一知る彼は、脱出に成功しゾディアックの正体を暴くことが出来るのか? ・・きっと、手に汗にぎります。
なお、Amazonプライムの視聴者評点は★★★★☆(3,313 IMDb 7.7)で、かなりの高評価でした。
/// end of the “cinemaアラカルト419「ゾディアック」”///
(追伸)
岸波
現実にロバートが出版してベストセラーになったという『Zodiac』を読んでいないので、映画の共犯者のくだりが事実なのか、脚本上の創作なのかは分かりません。
しかし『Zodiac』がベストセラーになり警察が再捜査に動き出したタイミングで、リー・アレン本人が心臓マヒにより急死してしまいます。
決め手になるはずだったDNA鑑定はできないままでしたが、リー・アレンの死後、ゾディアックからの予告状はパタリと途絶えました。
現在も事件は継続捜査中とのことです。うむぅ・・。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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ゾディアック
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