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「AUTUMN」(Music Material)
by 岸波(葉羽)【配信2024.3.23】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 その時、犯人は人質全員を共犯者にした。

 本日、Amazonプライムでデンゼル・ワシントン主演の『インサイド・マン』視聴しました。

 2006年のアメリカ映画で、ジョディ・フォスターやクライブ・オーウェン、クリストファー・プラマーら豪華俳優陣との競演が見もの。

インサイド・マン

(C)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 マンハッタンの銀行で人質・籠城事件が発生。

 ニューヨーク市警が現地に駆け付けるも、犯人らは人質に自分たちと同じ扮装を強制。誰が犯人か人質か見分けがつかなくなる。

 攻めあぐねる現場に、銀行会長から直接の依頼を受けた女性弁護士が交渉人としてやって来る。しかし、会長の依頼内容は人質解放ではなかった!?

 手に汗握るクライム・サスペンス、その内容やいかに?

 

 映画界最強のコラボレーションが
 サスペンスの新たな領域に踏み込んだ!

 映画の冒頭、制作クレジットの場面でインドの民族音楽が流れる。ハリウッドのサスペンス映画としては。かなり違和感を感じる。

 本編に入ると、暗い背景の画面からこちらに向かって話しかけて来る男。最近、完璧な銀行強盗の計画を立てて、それを実行したと言う。

 何のために?‥金銭的な理由は勿論だが、もっと単純な理由があり、それは「可能だから」。そして、どうやって?‥「ここでシェイクスピアを引用しよう。”それが問題だ”」。

インサイド・マン

(C)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 この人物は、銀行強盗の主犯であるダルトン・ラッセル(クライヴ・オーウェン)。彼は塗装業者に扮装した4人組の強盗団でマンハッタンの銀行に押し入る。

 行員と客を床に腹ばいにさせ携帯電話と鍵を没収。そして全員を下着姿にさせて持参した服に着替えろと言う。それは、彼ら強盗団と同じツナギの服とマスク‥もはや誰が犯人か人質か見分けがつかない。

 

 この人質・立籠もり事件で捜査主任を任されたのがニューヨーク市警のキース・フレイジャー(デンゼル・ワシントン)。しかし犯人からの要求はなかなか出てこない。

  キース巡査部長

 一方、この事件に激しく動揺したのが被害銀行会長であるアーサー・ケイス(クリストファー・プラマー)。だが、その理由は人質事件そのものではなかった。

 アーサー会長は、腕利きの女性弁護士マデリーン(ジョディ・フォスター)に連絡を取り、銀行の貸金庫392番にある「自分の秘密」を隠蔽してくれるよう依頼。

  マデリーンとアーサー会長

 やがて、フレイジャー巡査部長(デンゼル・ワシントン)は、犯人との交渉により単身で人質の状況確認を行う許可を得る。

 隙を見て主犯格のラッセルの銃を奪おうとするが失敗。退出させられた後、約束を破ったとして警官らが観ている前で人質2名を射殺。結果、フレイジャーは独断専行を責められ担当を外されることに。

 さて、犯人らの立て籠もりの真の目的とは何か? アーサー会長が人質の命より優先する「秘密の隠蔽」とは? はたまたフレイジャーは事件を解決し汚名を注ぐことができるのか!?

インサイド・マン

(C)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 この映画、凄いキャスティングです。主演のデンゼル・ワシントンはもちろん、『羊たちの沈黙』でアカデミー主演女優賞を受賞したジョディ・フォスター、『サウンド・オブ・ミュージック』や『マルコムX』の演技派クリストファー・プラマー。

 さらに、魅力ある悪役を演じたクライヴ・オーウェンは、『ボーン・アイデンティティー』で寡黙な殺し屋役を務め、主演した『キング・アーサー』ではゴールデングローブ賞と英国アカデミー賞を受賞したトップスター。

 やはり、悪役に魅力があることは大切ですね。(本当は「悪」でさえない。)

  クライヴ・オーウェン

 序盤から緊張感溢れる進行の中で繰り広げられるフレイジャー巡査部長と主犯ラッセルの頭脳戦がたまりません。

 そして、敏腕弁護士マデリーン(ジョディ・フォスター)の役どころですが、政財界の要人の秘密を握って動かし、いとも簡単に捜査介入する敏腕‥というより金のためなら何でもやる悪徳弁護士(笑)

 政治力で主犯との単独面会も実現し、ここで止めるなら刑期は最長でも4年、出所後は一生遊んで暮らしていける巨額の報奨金を約束する。

  マデリーン弁護士:実はポンコツ

 しかしそこで主犯のラッセルは、彼女が誰に頼まれてやって来たか、その人物が守ろうとしている秘密とは何か、すべて論破する。(一枚上!)

 かろうじて、”脱出に加担する代わりに秘密を隠蔽する”といういい加減な約束を取り付け、アーサー会長から成功報酬をせしめる。あらら、とんでもないポンコツ弁護士!

インサイド・マン

(C)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 犯人一味は、警察から差入れされた食事に仕込まれた盗聴器を利用し、アルバニア語の会話を流して捜査を混乱させたり、逆に警察に仕掛けた盗聴器で捜査会議の全容を把握していたり、「完璧な作戦」を立てていたのです。

 結局彼らは、警察の強行突入に合せて爆発を起こし人質と一緒に脱出。お互いに顔をよく覚えていない人質たちは犯人を特定できず捜査は暗礁に。

二名の射殺シーンは見せかけで誰も殺していなかった。

  犯人との対峙シーン

 すると上層部から圧力がかかり、事件を終息させると。いわく「何も盗まれていない、誰も殺されていない、騒ぎはあったが事件は無かったも同然だ」と。確かに!(笑)

 ただ、観客としては主犯のラッセルとマデリーン弁護士との会話で、真相は分かっている訳です。

 392番の貸金庫の中にあったのは、ユダヤ人であるアーサー会長が民族を裏切ってナチスの内通者となり、その報酬として受け取った莫大なダイヤとナチスの指令書が保管されていたことを。(それを原資に現在の立場を築いた。)

  見つけた!

 事件の終息を命令されたフレイジャー巡査部長は、捜査報告書をまとめるために銀行のデータチェックする中で、貸金庫の392番だけ記録が無い事に気づき、それを開けさせます。

 するとそこから出てきたのは、カルチェの巨大なダイヤの指輪と「指輪を追え!」というメッセージ。

 そこから真相に辿り着き、マデリーン弁護士と圧力をかけてきたニューヨーク市長に自分はすべて知っていることを告げると、ワシントンDC戦争犯罪調査所の電話番号を伝えて去る。

 

 さて、残された最後の謎が一つ。人質に紛れて特定されなかった襲撃メンバーは皆、厳重な身体検査を受けています。ならば主犯のラッセルは、どうやってナチスの指令書とダイヤを持ち出したのか?

 これは映画のラストで明かされますが、その重要なヒントがオープニングの独白場面でした。あえて書きませんが「なるほど!」と手を打つ事必定!‥見事なシナリオです。

インサイド・マン

(C)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

 この映画、注意深く見ていないと気づかないことが沢山。説明不足の上、人質解放後の事情聴取がランダムに挟みこまれるので、よけい気を取られて分からなくなる。

 このため、ネットには「考証サイト」も立ち上げられていますが、かなり的外れな‥あるいは独りよがりな感想も少なくありません。

  事情聴取のシーン

 例えば、怪しい振る舞いをした銀行員や客も含めて全員グルだったとか、アーサー会長自身は内通者でなく、内通者をゆすってダイヤを手に入れた人物だとか。

 もちろん、ナチスの指令書を何で破棄しないで保管しておくんだとか、貸金庫のダイヤをゲットする目的ならもっと簡単な方法があるだろうとか、もっともな意見も(笑)

 まあ、細かい部分は「お話」と割り切って観ていれば、最後までハラハラドキドキの映画でした。

 なお、『インサイド・マン』のタイトルですが、このネーミングについてもいろいろな説がありました。

 これは"ビッグ・コン(大がかりな詐欺)"の用語で「詐欺師」のことと主張する人もいましたが、おそらく「内部の人」から転じたスラングで「内通者」‥つまり、アーサー会長を指した言葉だと僕は考えます。

 

/// end of the “cinemaアラカルト408「インサイド・マン」”///

 

(追伸)

岸波

 まあ、映画って粗探しをし始めるとキリがないと言うか、そこに捉われて全体の面白さが見えなくなってしまうのは勿体ないですね。

 例えば居酒屋だって、一品づつの文句を言い始めたらせっかくの懇親の目的が台無しになるでしょう。

 たしかに徹頭徹尾ダメダメな作品もありますけれど、そういうのは別にして、せっかく自分の時間を使っているんだから、基本「楽しむ」ことを目的にした方が人生トクだと思います。

 最近、感想サイトや批評サイトというより”ためにする批判サイト”が目に付くので、書いておきました。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

インサイド・マン

(C)2006 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED.

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト409” coming soon!

 

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