こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
みんな、幸せになろう。
ケイ子と久々に劇場に足を運び『ネクスト・ゴール・ウィンズ』観て参りました。
特段、有名な俳優も出ていないノーマークの映画、ケイ子に誘われなければ観ることはなかったでしょう。
ところがっ!!
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ネクスト・ゴール・ウィンズ
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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なんでしょうこの痛快さ、見終わった後のカタルシスと自然に湧き上がる温かな気持ち・・そう、これこそが映画の醍醐味だったと再認識いたしました。
これは実話に基づく物語。2014年に『ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム 0対31からの挑戦』というドキュメンタリー映画になったものを、脚本化して再度映画化。
ワールドカップに代表を出して以来、一度も得点したことが無い世界最弱チームの再建物語。さて、彼らに栄光の日は訪れるのか??
<実話>にして、この感動!
映画の冒頭、短気な性格ゆえトラブルメーカーのサッカー監督トーマス・ロンゲン(マイケル・ファスベンダー)は、北中米カリブ海サッカー連盟に呼び出され『解任されるかFIFAランキング最下位である南太平洋の米領サモアの監督に赴任するか』二者択一を迫られる。
北中米カリブ海サッカー連盟はFIFA傘下で、北・中米・カリブ海諸国・太平洋諸国などを統括する地域連盟。
この米領サモアは2001年にFIFA予選に出場し、オーストラリアのチームに「0対31」の大差で負けて以来、ワンゴールも取れない弱小チームだった。
最後のチャンスを与えられたのは、連盟理事の一人である離婚した妻ゲイル(エリザベス・モス)の温情だったが、トーマスは”体のいい厄介払い”と不貞腐れながら赴任する。
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ネクスト・ゴール・ウィンズ
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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空港で出迎えたのは米領サモアのサッカー連盟会長兼TVカメラマン兼食堂オーナーのタビタ(オスカー・ナイトリー)。
彼の依頼は、「このチームはゴールできない呪いがかかっている。ワンゴールさえ取れれば呪いが解ける」という公式戦初得点を実現すること。(勝利じゃないんだ:笑)
タビタ会長(右)
チームを招集して見ると、そもそも人数が足りない上にのんびり屋のサモア人気質で、まるでヤル気が無い。
そこに「遅くなってゴメン」と現れた一人の女性ジャイヤ(カイマナ)。マネージャーならもっと早く来いと激怒するトーマスに、ジャイヤは自分もチームの一員だと。
なんとこのジャイヤ、トランスジェンダーだったのだ。(ええ~)
ジャイヤ(カイマナ)
コーチングしても、さっぱりヤル気を出さないチームに嫌気を指し、連盟に抗議しようとするが携帯は圏外。
仕方なく携帯に溜まった娘の留守録を繰り返し聞きながら浜辺を散歩していると、占い師のような老婆が空き缶拾いをしている。
彼女は「この空き缶と同じように、彼らもリサイクル出来るはずだ」と啓示を与えるようにつぶやく。(この老婆、実はタビタ会長の妻:笑)
ジャイヤとトーマス
とくにもかくにもトーマスは、自分を厄介払いした元妻(本当は違う)に一糸報いるべく、間も無く開催される2014年ワールドカップ・ブラジル大会の一次予選までは頑張ってみることに。
島中を探して新戦力を補強し、フォーメーションを徹底させ、実はエースだったトランスジェンダーのジャイヤを司令塔に任命し、第一次予選・対トンガ戦に臨む。
さて、世界最弱のチームは、待望のワンゴールを実現し呪いを解くことができるのか? はたまた、トーマスと元妻ゲイルの誤解は解消されるのか?
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ネクスト・ゴール・ウィンズ
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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作品に描かれた南太平洋の米領サモアは人口が5万5千人ほどの自治領で米国最南端。
メガホンを取ったタイカ・ワイティティ監督は、2019年に『ジョジョ・ラビット』でアカデミー賞脚色賞を受賞しましたが、彼自身、ニュージーランドの先住民族マオリの血を引く人物。
タイカ・ワイティティ監督
米領サモアの車の制限速度は40キロ。映画の中で、違反者を追うパトカーはサイレンが壊れているので、スピーカーからサイレンの口真似をしながら追走(笑)
それを無線から叱咤激励する上司は警官の母親(笑)
そのくらい人口が少ないので、サッカー連盟理事が公営TVのカメラマンや飲食店オーナーを兼任するのは当たり前。
祈りの鐘が鳴れば、強盗に入られても祈りを優先するので盗み放題。なんて緩い国!
どこまで脚色が分かりませんが(笑)
米領サモアの実際のバス
そして、散々笑わせた後にジーンと来るエピソードを持って来る・・その加減が絶妙です。(まるで、さだまさしのコンサートのよう)
例えば、トランスジェンダーのジャイヤが初戦直前になって感情のバランスが崩れてプレーできなくなる。
泣きじゃくる彼女を別室に呼んで監督が理由を聞くと、ワンゴールを実現するため女性ホルモンの投与を止めたら身体に変調が起こり、”自分が誰だか分からなくなってしまった”と。
彼女は性自認を犠牲にし、チームの夢を実現できてから性適合手術をしようとしていたのです。ここはグッと来ました。
ジャイヤ・サウルア(本人)
FIFAでプレーした最初のトランスジェンダー女性であるジャイヤ・サウルアの役を演じたのは、ハワイ・オアフ島出身の同じトランスジェンダー女優カイマナ。
男性として生まれたカイマナは、その成長期において多くの偏見の中で自分を恥じ、やがて受け入れ、愛することを学んでいったと言います。
米領サモアには、昔から第三の性を表す”ファファフィネ(女性のような)”と言う言葉があることを知り、"この島になら本当の自分の居場所がある"・・そんな気持ちで映画に出演しました。
この映画で、LGBTQの苦悩をリアルに実感できた気がします。
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ネクスト・ゴール・ウィンズ
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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また別の感動シーンですが、トーマスとジャイヤが屈辱の「0対31」のビデオを見直すと、失点した責任は必ずしもキーパーのせいでないと気づき、もう一度スカウトに行きます。
しかしそのゴールキーパー、ニッキー(ウリ・ラトゥケフ)は、試合以来抱えているトラウマにより固辞。
そのニッキーが自分自身を克服し、試合直前、助っ人にやって来るシーンは胸が熱くなります。(ブラボー!)
ウリ・ラトゥケフ
さらに前半で、プレッシャーのあまり全く動けず先取点を許したことに激怒したトーマスが試合を放り出し、会場を出ようとする場面でのタビタ会長の言葉。
彼は怒りもせず・・
「今日までありがとう。あなたの幸せを祈っている。でも、心さえあればここでも幸せになれる。独りで負けるより、全員で負けませんか」・・ここ、号泣です。
今日までありがとう‥
さらに感動の追い打ちをかけるのが、トーマスがチーム全員に詫びを入れ心情を吐露する場面。
彼が繰り返し聞いていた留守電は、実は事故で亡くした娘の最後の言葉だったことを告白。(彼と元妻が別れたのもそれが原因)
その哀しみに捉われ、チームのメンバーを心から理解することを怠っていたと謝罪。
・・かくして、本当に理解し合えた彼らは初めてチーム一丸となり、運命の後半戦に挑むのでした。
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ネクスト・ゴール・ウィンズ
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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この手の成長物語はいいですね。『ベスト・キッド』であったり、『我ら九人の甲子園』であったり、米津玄師が主題歌を歌った日曜劇場『ノーサイド・ゲーム』とか。
今回はそれが「実話」ということで、さらに感動が深まった気がします。
ちなみに興行収入は世界で1800万ドルとなるスマッシュ・ヒット。制作費が安いので十分オンの字でしょう。
Rotten Tomatoesの批評家平均評価では53/100ですが、PostTrakが投票した観客評価では86%の肯定的なスコアを記録。
細かいツッコミはせずに、無心で楽しめば非常に面白い映画であるという事でしょうか(笑)
さて、米領サモアチームは「念願のワンゴール」を達成できるのか!?
/// end of the “cinemaアラカルト406「ネクスト・ゴール・ウィンズ」”///
(追伸)
岸波
これ、実話なので、検索すればすぐに結果は分かります。
息を吹き返した彼らは、後半戦でワンゴールならぬツーゴールをゲットし、なんと緒戦を突破してしまうのです。(パチパチパチ!)
この、勝利を決めた後の米領サモアの人々の弾ける喜びの描写が痛快。まさに、カタルシス!
救急病院に運びこまれた怪我人も、腹に包丁が刺さったまま飛び上がって万歳するんですからね! ←(こういう演出で、批評家採点を下げたんじゃないのか:笑)
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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ネクスト・ゴール・ウィンズ
(C)2023 20th Century Studios. All Rights Reserved.
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