こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
王子との恋を描く
全米ベストセラー!
Amazon Primeに、2023年8月11日からリリースされた『赤と白とロイヤルブルー』を視聴しました。
原作は、2019年の米国goodreadsベスト・ロマンス賞第1位を獲得したケイシ―・マクイストンのロマンティック・コメディ小説。
これを劇作家のマシュー・ロペスが初監督・脚本作品として映画化。Amazon Primeで独占配信されるや否や全世界のSNS等で話題沸騰し、公開三週間における視聴数はAmazon Primeの歴代最高を記録しました。
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赤と白とロイヤルブルー
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さて、『王子との恋を描く‥』とのアオリからシンデレラ・ストーリーを思い浮かべますが、このストーリーでイギリス王室のヘンリー王子と恋に落ちるのは、アメリカ大統領の長男アレックス。(ええ~)
そう、これは”ボーイズ・ラブ”のお話なのです。通常そのテの作品は、いわゆる「腐女子」の世界で”局地的に”盛り上がるものですが、何と『赤と白とロイヤルブルー』は全視聴者評価で何と「4.9(五段階評価)」というトンデモナイ数字を叩きだしています。
さて、この驚異の映画はどんな作品なのか、早速その内容です。
真実の愛は、
ときに奪い
取るもの――
映画の冒頭は、イングランド王室の皇太子フィリップの華麗な結婚式典。その弟であるヘンリー王子(ニコラス・ガリツィン)も同席している。
そこに米国初の女性大統領エレン・クレアモント(ユマ・サーマン)の名代として長男のアレックス(テイラー・ザハール・ペレス)も列席している。
原作(日本語版)
しかし、ヘンリーとアレックスは立場上ライバル的関係にあり、過去の出会いのいきさつから反目しあっている仲。
こともあろうに、結婚披露パーティのさなか、どちらの背が高いかで口論になり巨大なウェディングケーキをひっくり返すという醜態を演じ、それが翌朝の新聞に報道されて世界の失笑を買うハメに(笑)
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赤と白とロイヤルブルー
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この事件が米英間の政治的懸案に悪影響を及ぼすことを危惧した合衆国政府とイギリス王室は密談の上、「二人は元々旧知の親友で、ちょっとした悪ふざけが大事件になってしまったため、互いに反省し仲直りする」という演出を二人に強制的に行わせることに。
このデモンストレーションは成功しマスコミは沈静化するが、折も折、王宮に銃声が響き、二人はシークレットサービスの指示で狭い階段室に押し込められることに。
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大統領長男アレックス
(テイラー・ザハール・ペレス) |
そこでヘンリー王子は「何故、自分の事を毛嫌いするのか」と問うと、アレックスは「メルボルン気候会議の初日のパーティで出会った時、挨拶しようとしたら、まるで汚いものを見るような眼で『もう耐えられない』とお付きの人に言っただろう!」と。
でもそれはアレックスの事ではなく、王子の公務という窮屈な状況に対して言った言葉だと誤解が解けると、アレックスは「むしろ謝らなければならないのは自分の方だ」と謝罪。
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ヘンリー王子
(ニコラス・ガリツイン) |
二人は互いのアドレスを交換して、頻繁にショートメッセージをやり取りする仲に。
やがて、アレックスの招きに応じてヘンリー王子がアメリカで主催するプライベート・パーティに渡米してくる。
パーティの最中、友人が多いアレックスは、様々な女性と挨拶のキスを交わしたりするが、それを見ていたヘンリー王子は密かにパーティ会場を抜け出してしまう。
ヘンリーとアレックス
それに気づき、慌ててヘンリー王子を探すアレックス・・彼は暗い庭園に一人で佇んでいた。「いったいどうしたんだ?」と駈け寄るアレックス。すると・・
ヘンリー王子は振り向きざま、アレックスを抱擁して熱いキスを交わす。(ええ~)
はてさて、米国大統領長男と英国王室の王子との禁断の恋の行方は如何に!?
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赤と白とロイヤルブルー
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いやぁ・・ボーイズラブは見たい分野でもないし、視聴者評点「4.9」という部分に興味を惹かれ、軽い気持ちで覗いてみたのですが、ナニナニどーしてしっかり面白い。
コメディとして進行していくのですが、途中からヘンリー王子が英国王室の一員としての自分の立場に目覚めて、自分の気持ちを偽って身を引いていく姿、取り残されて狂おしい気持ちに苛まれるヘンリーのシリアスな姿が描かれると、「ああ、これは純愛なんだ」と切ない気持ちが溢れて来る。
アレックスとヘンリー
僕の歴史上、これほどまでに感動したのは映画『ひまわり』と大和和紀の漫画『はいからさんが通る』ですが、悪人は誰一人登場しないのに時代や戦争や記憶喪失という抗し難い力によって愛が翻弄される姿は痛々しいものがあります。
この作品では「王室」という制度、そこに生まれ落ちた「運命」でしょうか。
世の中にどれほど「LGBTQ2+」に対する理解が深まろうと、そして政治がそれに対して(主に政治的利益から)庇護を与えようと、例えば日本の皇室に同じような問題が起きたとすれば、徹底して叩かれるでしょう。(未だ女系皇嗣さえ認められないのですから。)
ジャニーズ会見
しかしこの映画では、単に「許されざる秘密の悲恋」にとどまらず、悪意あるマスコミによって二人の関係がすっぱ抜かれ、「交換メール」の全文や証拠映像までもが天下に晒されることろまで行ってしまいます。
しかもそれは、二期目に挑んでいる女性大統領の選挙戦の終盤を賑わす大スキャンダルとして。
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赤と白とロイヤルブルー
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コトここに及ぶと、その先のシナリオが想像付きません。どう考えても破滅的なストーリーしか考えられない。
「これってコメディだよね?」と自分が安心するよう言い聞かせながら、進行から目が離せなくなって行きます。
感動的なシーンの一つが、アレックスが大統領である母親に苦しい胸の裡をカミングアウトする場面。
母と息子に戻る二人
エレン・クレアモント大統領は”母の顔”になり、自分の気持ちを偽る必要はないと諭し、優しく息子の頭を抱き寄せるのです。
そしてアレックスは記者会見を行い、自分の偽らざる気持ちを表明するとともに、「性的嗜好をいつどのように表明するかの自己決定権は重要な人権であり、何人たりともカミングアウトを強要すべきでない」という主張を展開。
記者会見に臨むアレックス
このシーンでは、当然ながら「ジャニーズ会見」で東山社長に無作法な質問を放った女性記者の姿を思い起さずには居られません。人間の「品格」の違いを感じさせるシーンでした。
一方、八方塞がりになるのはイギリス王室ヘンリー王子。兄のフィリップ皇太子同席の元、国王から呼び出され「全てはフェイクニュース」として事実の隠ぺいを迫られることに。さあ絶体絶命。どうする?どうする?
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赤と白とロイヤルブルー
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この後の進行は伏せますが、思いもかけない結末が用意されています。そう・・ハッピーエンドなのです。(驚!)
その結末に、アメリカの批評サイト「Rotten Tomatoes」の般観客評価は94%の支持を与えました。
マシュー・ロペス監督・脚本
大統領長男と英国王子を演じた二人の俳優テイラー・ザハール・ペレスとニコラス・ガリツィンの熱演もさることながら、監督・脚本を務めたマシュー・ロペスの才能に脱帽。
誰もが安心して笑って、そして感動できるロマンティック・コメディというベースをきっちり守った作品演出が素晴らしいと感じました。
/// end of the “cinemaアラカルト386「赤と白とロイヤルブルー」”///
(追伸)
岸波
この映画、あまりシリアスに寄り過ぎない演出が見事。
例えば、女性大統領が息子アレックスのカミングアウトを受け止めるシーンでは、同性愛ゆえの具体的な注意事項とか「ええ~そんな事まで!?」と真面目にアドバイスしたりします。
また、アレックスとヘンリーがお互いに「出禁」となり、連絡さえ取れなくなった時に、大統領秘書官の女性がバッキンガム王宮の侍従長に「私にあんなことしたのは内緒にしてあげるから、とにかくこの電話を王子に繋いで!」と脅したり(笑)
こういう緩急って大事。さだまさしのコンサートでも曲の深刻な背景を説明する際に8割方の「お笑い」を入れますが、それがあるから本題に入った時にグッとくる。
それと、あからさまではありませんが、結構エッチなベッドシーンも満載。そういうのを挟みながらサスペンス部分を盛り上げていく・・実に見事な演出に引きずられて、あっという間の118分でした。おススメです!
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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