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「Takeoff」(佑樹のMusic-Room)
by 岸波(葉羽)【配信2023.7.1】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 300人 vs 1,000,000人、
 真っ向勝負!

 とんでもない映画をAmazonプライムで観てしまいました。

 それは紀元前480年、ペルシャ帝国の侵略に、たった300人で立ち向かったスパルタの英雄たちの闘いを描いたザック・スナイダー監督の『300 スリーハンドレッド』(2007年)です。

 元々これは、「ツーさんの雑感」が累計300篇に到達して”パート2”に突入する直前の『雑感300 ボケ防止:300』のため、「300」にまつわる画像を探していて見つけたもの。

300 スリーハンドレッド

C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 後日になって、「そういえばあの映画ってAmazonプライムにあるんじゃないのか?」と考えて調べたところ、案の定、ラインアップされていたのです。

 レビュー評価が5段階「4.0」となっていたので、これは期待できると思い、早速観ることに。

 舞台となるる戦闘は紀元前480年、第三次ペルシャ戦争においてスパルタとペルシャ帝国が血戦した"テルモピュライの戦い"。

第三次ペルシャ戦争(赤)

 さて、スパルタの英雄たちは100万のペルシャ軍に対して、どのような闘いを挑んだのか? 何故、彼らはたった300人で真っ向勝負を挑まなければならなかったのか? 早速、その内容です。

 

 PREPARE FOR GLORY!(栄光へ備えよスパルタ兵よ!)

 映画の冒頭、スパルタの男子が戦士として育てられる宿命について解説が。

 彼らは赤子として生まれ、立てる年齢になるとすぐ戦士としての訓練が始まり、7歳を迎えると両親から引き離されて軍事訓練に専心する。

 そして、巨大な狼と一騎打ちの試練を乗り越えた時、鎧と盾と槍が授けられて戦士となる。

300 スリーハンドレッド

C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 ある日、スパルタの王となったレオニダスの元にペルシャ帝国の使者が訪れ服従を迫るが、それを潔しとしない王は彼らを深い穴の底に葬り去る。

  使者を葬るレオニダス王

 こうして第三次ペルシャ戦争の火蓋が切られ、自らを「神の王」と称するペルシャのクセルクセス一世は百万の大軍を率いてギリシャ全土に襲い掛かる。

 「神の王」クセルクセス一世

 まず、質の高い映像に驚く。全編セピアがかった・・あるいはモノクロのようにさえ見える重厚な映像は、まるで神話の世界を観ているようだ。

 ヘロドトスが『歴史』に記した史実によれば、ペルシャ戦争は紀元前500年、ペルシャ帝国の圧政に対してイオニア地方の都市国家群が反乱を起こし、そこに援軍を送って肩入れしたアテネなどギリシャ都市国家に対し、ペルシャのダレイオス大王が紀元前492年、大軍を率いて攻め込む。(第一次ペルシャ戦争)

 
 ダレイオス一世/アケメネス朝ペルシャ

 この遠征軍は海上の暴風雨によって失敗し、紀元前490年の第二回遠征ではアテネの英雄テミストクレスがダレイオス大王を射貫き再び勝利する。(第二次ペルシャ戦争)

 十年後、ダレイオスの跡を継いで捲土重来を期したクセルクセス一世は、百万の大軍を組織して三たびギリシャ都市国家軍に闘いを挑む(第三次ペルシャ戦争)・・それがこの映画の舞台だ。

300 スリーハンドレッド

C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 第二次ペルシャ戦争の勝利に酔ったギリシャ都市国家は、哲学や男色にふけって堕落し、ペルシャが送り込んだ間諜によって内通する政治家も数多く居た。

 そんな中でも戦闘国家スパルタはレオニダス王の下、軍事訓練を欠かさずに備えており、ペルシャのクセルクセス一世に対して叛旗を翻すのが冒頭のシーン。

  スパルタのレオニダス王

 アテネの英雄テミストクレスはまだ存命だったが、堕落したアテネの臨戦態勢を整えるには時間を要し、レオニダスはまずスパルタ全軍で応戦すべく、5人のエフォロイの元を訪れる。

エフォロイは「監督官」と訳されるスパルタの公職で、王と同等な権限を所有する。

 しかしエフォロイは、スパルタの重要祭事「アカネイア祭」の期間中は認められないと拒否、スパルタ評議会もこれに同調する。

 実は、5人のエフォロイやスパルタ評議会の扇動者セロンは、既にペルシャからの金銀や美女で篭絡されていたのだ。

 さらに、出兵の是非を問う神託においても闘いを否定される。

  神託の場面

 失望したレオニダスはゴルゴ王妃の励ましを受け、翌日「散歩」と称して部下の最精鋭重装歩兵300人を率いて出立。

 峻険な山と海に挟まれた隘路”灼熱の門”を決戦の場と決し、陣構えを行う。

 ペルシャ帝国百万の大軍とスパルタの精兵300。果たしてスリーハンドレッドの闘いは功を奏するのか? はたまた、ギリシャ世界の運命や如何に!?

300 スリーハンドレッド

C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 この絶望的な状況の中で、敢えて闘いを挑む男たちの神話・・胸がアツくなりました。

「今日は死ぬには良い日だ」というネイティブ・アメリカンの言葉が脳裏をよぎります。

 彼らは戦いに行く時に、死ぬことを恐れない、死んでもかまわないという意味を込め、自分達を鼓舞するために「今日は死ぬには良い日だ」と叫んだそうです。

  『死ぬには良い日だ』

 この時のペルシャ遠征軍の総数について、ヘロドトスの『歴史』では5,283,220人とされていますが、後世の歴史家からは過剰に過ぎると見做され、実数については20万人とするのが有力な一説です。

 これに対しギリシャ陸戦部隊は、スパルタの重装歩兵300人のほか軽装歩兵が1000人。それに周囲の都市国家からの援軍を含めると実数は5000人ほどであったらしい。(ただし、すぐに逃散して、最後まで残ったのは1400人~2400人程度)

 それにしても20倍という絶望的な戦力差。まるで、ロシアとウクライナの戦いのようです。

  ギリシャの歴史家ヘロドトス

 そこで浮かんだのが、ジョン・ウェインがデイビー・クロケットを演じた『アラモ』(1960年)。

 1836年、メキシコ共和国からの独立を目指して立ち上がったテキサス州の守備隊が最後に立て籠もったのがアラモ砦で、総勢は200人。これを包囲したサンタ・アナ率いるメキシコ軍は10倍の2000人。

ブラザース・フォアが歌う哀愁のテーマ曲「The Green Leaves of Summer」が胸に蘇える・・。

 そこに決死隊として援軍に駆け付けたのがデイビー・クロケット軍曹ら30人の勇者たちでした。

  デイビー・クロケット/ジョン・ウェイン

 最後には壮絶な全滅戦となるのですが、結局、この戦いがテキサス共和国の独立に繋がります。

 さらには大坂冬の陣・夏の陣で、徳川軍への前衛となる真田丸に立て籠もった真田幸村と十勇士。

 こちらも目覚ましい活躍を見せながら、最後には全員、義に殉じて討ち死にします。

  NHK大河ドラマより

 はたまたウクライナ戦争では、包囲を受けながらマウリポリで最後まで抵抗したアゾフ連隊でしょうか。

 例え自らの死を賭しても引けない闘いがある・・そんな事を思い起こさせる男の美学でしょうか。

300 スリーハンドレッド

C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 ”灼熱の門”の入り口で強大なペルシャ軍を迎え撃ったスリーハンドレッドは、伝家の宝刀”ファランクス”を組んで一兵も失わずに多大な戦果を上げます。

”ファランクス”とは、左側の味方を盾で守りながら右手の槍で敵を突く隊列。

 緒戦の敗退に業を煮やしたクセルクセス一世は、配下の最強精鋭「不死軍団」や猛獣部隊を差し向けて、スパルタ軍を窮地に追い込むが撃破は叶わず。

 しかし、スパルタ人の裏切り者から”灼熱の門”の裏側に廻り込む山道の情報を得て、包囲に成功し総攻撃の時を迎える。

  裏切り者エフィアルテス

 進退窮まったレオニダス王は、戦闘で片目を失った部下のディリオスを呼んで「お前には特別な才能がある。ここで死ぬべきではない。ギリシャに戻ってこの戦いの全貌を評議会に伝えるのだ」と諭す。

 死を覚悟していたディリオスは一緒に死にたいと拒むが、レオニダスは妻ゴルゴ王妃への伝令をお前に託したいと。

  王妃に会うディリオス

 このシーンの脚本が見事です。

 ディリオスは「何と伝えればいいか」と聞くと、レオニダスはしばし黙り込み「言葉はいらない、これを頼む」と言って、形見の首飾りを渡すのです。

 ををををを~ 号泣です。

 ヘロドトス『歴史』によれば、スリーハンドレッドの決死隊は、槍が折れれば剣で、剣が折れれば素手と歯で闘い、ペルシャ兵は肉弾戦を恐れるようになり、この日だけで2万人が戦死したとされています。

 映画では、最後に一人立ち上がったレオニダス目がけて数万本の矢が放たれ、壮絶な最後を遂げました。

300 スリーハンドレッド

C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 一方、ディリオスから報告を受けたゴルゴ王妃は評議会やエフォロイに潜む裏切り者たちの証拠を暴き、さらにギリシャ全土の都市国家に檄を飛ばして、ギリシャ反攻軍が成立することになります。史実ではその数4万。

 それでも戦力差は圧倒的ですが、彼らはよく戦い、ペルシャ帝国軍の撃退に成功します。スリーハンドレッドの英雄たちの死は無駄ではなかったのです。

 映画は、ディリオス率いる1万のスパルタ軍と3万のギリシャ連合運が進撃する場面で幕を下ろします。

 いや~ 感動的ないい映画だったなーと思いましたら、何とこの映画の続編が造られていました。それが『300 スリーハンドレッド〜帝国の進撃〜』(2014年)。

 続編では、ゴルゴ王妃に鼓舞されたスパルタの若者たちがアテネの英雄テミストクレスとともにペルシャ艦隊を打ち破るサラミスの海戦が描かれた模様。

 う~ん、早速そっちも観なくては!!

 

/// end of the “cinemaアラカルト370「300 スリーハンドレッド」”///

 

(追伸)

岸波

 この映画では、壮大な古代戦場の背景に緻密なCGが作られるとともに、腹筋バキバキのスパルタ兵士たちが登場します。

 このため、一部の口さがない評論家から「あのスパルタ人たちの立派な腹筋もCGじゃないか」と揶揄されることがありました。

 ところが、これに対する制作関係者の回答は「制作費を削るために身体を鍛えるようにと指導していた」とコメントしました。

 あ~っはっはっは! こりゃ~一本取りましたね!!

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

300 スリーハンドレッド

C)2007 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト371” coming soon!

 

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