こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
映画に革命を起こした女性監督の代表作、
デジタル・リマスター版で日本初公開!
これは代表作5本を上映した『シャンタル・アケルマン映画祭』のキャッチコピー。
今週のcinemaアラカルトは、カリスマ彰の当番です。
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ジャンヌ・ディエルマン 、ブリュッセル1080、
コメルス河畔通り23番地
(C)Chantal Akerman Foundation
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記事の原題は以下の通り。
◆隠れた大傑作「ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」が熱い!
うん、映画タイトルだけでも長すぎてタイトル・プレートにギリ入るくらいなので、記事タイトルはここでの紹介でご勘弁を。
ではカリスマ彰、お願いします。
岸波さま 次回cinema原稿です。 よろしくお願いします。フォーラム福島で今後上映予定らしいです。
◆『ジャンヌ・ディエルマン、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(1975年 シャンタル・アケルマン監督 200分/ベルギー・フランス合作)
これが史上最高の映画!
BFI(英国映画協会)は1952年以来10年ごとに世界の批評家が選ぶ世界の映画歴代ベスト100を同協会の発行する「サイト&サウンド」誌に発表している。
8回目になる2022年版は全世界の1639人の批評家がベスト10を提出しその集計の結果、第1位には、シャンタル・アケルマン監督(1950〜2015)の「ジャンヌ・ディエルマン 、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」(1975年、以下「ジャンヌ・ディエルマン」と略す)が初の栄冠を獲得した。
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ジャンヌ・ディエルマン 、ブリュッセル1080、
コメルス河畔通り23番地
(C)Chantal Akerman Foundation
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2012年版ベスト100では36位だった作品だが、かなりの映画通でも「なんだ、それ?」というレアな映画だろう。
概略を以下にコピペしておく。
◆『劇場特別版 カフカの東京絶望日記』映画.comの解説から引用
女性たちの社会や日常での生き方を真摯に見つめる作品を多く残したベルギーの女性監督シャンタル・アケルマンが、主婦のフラストレーションとディテールを丁寧に汲み取りながら、平凡な日常に綻びが生じていく様子を追った傑作ドラマ。
ジャンヌはブリュッセルのアパートで、思春期の息子と2人きりで暮らしている。湯を沸かし、じゃがいもの皮をむき、買い物へ出かけ、“平凡な”生活を送る彼女だったが……。ある秘密が彼女の生活には隠されていたのだ。
主演は「去年マリエンバートで」「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」のデルフィーヌ・セイリグ。「シャンタル・アケルマン映画祭」(2022年4月29日~5月12日、ヒューマントラストシネマ渋谷)上映作品。 |
この初栄冠獲得以降、日本でも昨2022年には、シャンタル・アケルマン映画祭2022がヒューマントラストシネマで開催された。また早稲田松竹などの名画座で「ジャンヌ・ディエルマン」が上映された。
さらに今年4月、5月にはシャンタル・アケルマン映画祭2023が、ヒューマントラストシネマや日仏学院などで開催されている。
なんとTV(ザ・シネマ)でも、その代表作品が4本が4月に放映された。その4本を録画してじっくりみたが、やはり3時間21分の長尺だが「ジャンヌ・ディエルマン」の衝撃が凄い。
このタイプの映画には、「こわれゆく女」(1974年、ジョン・カサベテス監督)、「彼女について知っている二、三の事柄」(1966年、ジャン=リュック・ゴダール)などがあるが、この「ジャンヌ・ディエルマン」では固定カメラ、長回し映像の威力が遺憾なく発揮されて、静謐な映像美に驚かせられる。
これが当時24歳だった女流監督がベルギー政府から12万米ドルを貰って作った映画とは!驚きを隠せないのだ。
主役にデルフィーヌ・セイリグを起用したというのがこの「ジャンヌ・ディエルマン」の成功の一因だろう。
アラン・レネ監督の「去年マリエンバードで」で見せた冷たく上品な美しさに満ちたセイリグが平凡なルーティンをリピートする主婦を見事に演じている。
それだけで3時間なのだが、これが飽きさせないのだ。そのルーティンにある日綻びが現れる。ある意味では、サスペンス映画とも言えるのだ。
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ジャンヌ・ディエルマン 、ブリュッセル1080、
コメルス河畔通り23番地
(C)Chantal Akerman Foundation
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アケルマン監督とセイリグは2人ともフェミニストだった。
今回のBFIの2022年ベスト映画での1位獲得の背景には、最近のフェミニズムの台頭が反映されているとも言われている。
それはともかく、もしこの長ったらしい題名の3時間21分も見るのにかかる映画を見るチャンスがあったら、是非見てほしい。
本当にネタバレ厳禁の映画なのでここまでしか書けないのだが。たしかに「映画に革命」と評価する批評家が多数いるのは理解できる。
◆シャンタル・アケルマンについて
1950年6月6日、ベルギーのブリュッセルに生まれる。両親は二人ともユダヤ人で、母方の祖父母はポーランドの強制収容所で死去。母親は生き残ったのだという。
女性でありユダヤ人でありバイセクシャルでもあったアケルマンは15歳の時にジャン=リュック・ゴダールの『気狂いピエロ』を観たことをきっかけに映画の道を志し、18歳の時に自ら主演を務めた短編『街をぶっ飛ばせ』(68)を初監督。
その後ニューヨークにわたり、『部屋』(72)や初めての長編『ホテル・モンタレー』(72)などを手掛ける。
ベルギーに戻って撮った『私、あなた、彼、彼女』(74)は批評家の間で高い評価を得た。
『私、あなた、彼、彼女』
25歳のときに平凡な主婦の日常を描いた3時間を超える『ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地ジャンヌ・ディエルマン』を発表、世界中に衝撃を与える。
その後もミュージカル・コメディ『ゴールデン・エイティーズ』(86)や『囚われの女』(99)、『オルメイヤーの阿房宮』(2011)などの文芸作、『東から』(93)、『南』(99)、『向こう側から』(2002)といったドキュメンタリーなど、ジャンル、形式にこだわらず数々の意欲作を世に放つ。
『東から』
母親との対話を中心としたドキュメンタリー『No Home Movie』(2015)を編集中に母が逝去。
『No Home Movie』
同作完成後の2015年10月にパリで自ら命を絶った。
/// end of the “cinemaアラカルト363「ジャンヌ・ディエルマン 、ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地」”///
(追伸)
岸波
なんとも凄い映画だね。三日間の女性の日常を長廻しの固定カメラで撮影し、BGMも無ければ解説もなく、一人の時には台詞もない。
これが3時間以上続くのだから、初公開の時は賛否両論だったようだ。
アケルマン監督がまだ24歳の時の作品で、スタッフの8割は女性。そう・・これは女性がフラストレーションを溜めていく過程を描いていたんだな。
だから、女性目線出ないと共感できなかったのだろう。これが映画史上ナンバー1に選出されるという事は、やっと時代が追いついて来たのか。
ネタバレを読んだが、全く予測不能なエンディングを迎える。2日目・・3日目・・ああ、そう言う事だったのか。これはトンデモナイ作品だ。
これはサスペンスとしても一級品なんじゃなかろうか。さすがにネタバレを書いてはいけない映画だと思う。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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ジャンヌ・ディエルマン 、ブリュッセル1080、
コメルス河畔通り23番地
(C)Chantal Akerman Foundation
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