こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
クルーズ
キッドマン
キューブリック
Amazonプライムでスタンリー・キューブリックの遺作となった1999年公開『アイズ ワイド シャット』を観ました。
あれ?最近は劇場に足を運んでいない? ・・いやいや、そうではありません。
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アイズ ワイド シャット
(C)Everett Collection/アフロ
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『イチケイのカラス』も『シャイロックの子供たち』も観て来たのですが、やはり『THE FIRST SLAM DUNK』の衝撃が強すぎて、心に刺さらなかったのです。
あれに匹敵する衝撃作は無いのかと考え、プライムビデオのラインナップをズリズリ見ていましたら、目に留まったのが『アイズ ワイド シャット』。
何せ、キューブリックの最後の作品だし、主演は大好きなトム・クルーズであるし、相手役が当時実際の夫婦であったニコール・キッドマンだし、なぜか"R-18指定"だし。←(そこかい!)
さて、その内容は?
私達の心に永遠に残る
キューブリックの最後の傑作
鮮烈で、華麗で、忘れがたい。
物語の冒頭、タイトルバックにパーティ衣装に着飾ったニコール・キッドマンが後ろ姿で登場。
しかし彼女、ドレスが気に沿わなかったようでストンと脱ぎ捨てる。するとその”中身”は全裸。あらららら・・。
いきなり、この上なく美しいニコール・キッドマンの全裸立ちシーンが突きつけられる。うむぅ・・衝撃作だ。←(またソレかい!)
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アイズ ワイド シャット
(C)Everett Collection/アフロ |
ニューヨークの開業医ビル(トム・クルーズ)と妻のアリス(ニコール・キッドマン)は友人のクリスマス・パーティに誘いを受ける。
冒頭の衝撃シーンは、自宅で衣装選びをやっているところ。
タイトルが出た後は、クリスマスのニューヨークの夜景が映し出され、ビルは既に装いを整えているが、何かを探している。
「僕の財布、どこだ?」
「ベッドのわきじゃない?」・・確かにそこにある。
「もうすぐ遅刻だぞ」と洗面所に入るジム。なんとソコにはパンティを下げて便座に跨るアリスが。
ジムとアリス
「わたし、どう?」
「完ぺきだ」・・妻を見ようともしないで答えるジム。
冒頭の30秒ほどで夫婦の関係が理解できる。倦怠期なのだ。
パーティ会場に行くとイケメンのジムはモテモテ。すぐに二人の美女が纏わりつく。まんざらでもなく、談笑するジム。
それを横目で見ていたアリスは、初老の紳士からダンスを所望され、ダンスの最中に熱烈に口説かれる。
横目で見ると夫のジムは美女たちと個室のある階上に消え、しばらく戻ってこない・・。
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アイズ ワイド シャット
(C)Everett Collection/アフロ
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帰宅した二人はベッドの中で抱き合う。どうやらパーティで芽生えた互いへの嫉妬心で燃え上がってしまったようだ。
翌日の夜、二人はベッドの中でマリファナを吸い始める。そしてアリスは、ジムが美女たちと怪しからぬコトに及んだのだろうと問い詰める。
アリス
実際のジムは階上で大変な場面に出くわしていた。
主催者で友人のヴィクター(シドニー・ポラック)が部屋に招き入れた女性がクスリのやり過ぎで昏倒し、医者であるジムは全裸の彼女の救命措置をせざるを得なくなったのだ。
・・しかし、その事実はヴィクターから固く口止めされている。
賢明に否定するジム。「だって僕は君を愛しているもの」「じゃ、私が居なければきっとファックしたんだわ!」(あらら分かってくれない・・)
ビルとアリス
逆にアリスは、昔、二人で旅行した時の事を話し出す。ホテルで見かけた海軍士官に一目惚れし、抱かれてもいいと思い夢にまで見たことを。
互いに深まっていく疑念。折も折、患者の老人が亡くなった連絡が入り、ビルは見舞いにと夜の街に出かける。
そこでも、イケメン・ビルは色々な女性から誘惑を受ける。亡くなった患者の娘から、行きずりの娼婦から・・。
ビル
いずれも邪魔が入り「寸止め」となるのだが、家に帰りたくないビルは、パーティで再会したピアノ弾きの友人ニック(トッド・フィールド:ニック)の店に向かう。
そこでニックから「目隠しをして演奏を頼まれている」という秘密のパーティの事を打ち明けられる。
好奇心に駆られパーティに潜入すると、会場では仮面をつけた全裸の女性たちが不思議な儀式の真っ最中。
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アイズ ワイド シャット
(C)Everett Collection/アフロ
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しかし、性儀式の途中、身元を暴かれたニックは、すんでのところで会場から追放されるが、その日以降、彼の周囲に怪しい魔の手が迫ることになる。
あの秘密のパーティは何だったのか? ジムは追手から逃げ切れるのか。はたまたジムとアリスの運命や如何に!?
秘密のパーティ
映画の原作はアルトゥル・シュニッツラーの『夢小説』(1926年)。
キューブリックは、映画の完成試写会の6日後、東イングランドのハートフォードシャ―の自宅で心臓発作に襲われ、公開を待たずに急死する。
結果的に「遺作」となった話題性もあり、作品は世界的な大ヒットとなった。
スタンリー・キューブリック
タイトルの「アイズ ワイド シャット」の意味は諸説が唱えられるが、英語の常套句"Eyes Wide Open"(しっかりと見ろ)のもじりで、元々は結婚式などでよく使われる物理学者ベンジャミン・フランクリンの名言が出典と言われる。
>>Keep your eyes wide open before marriage, and half shut afterwards.(結婚する前は大きく目を開き続けなさい。しかし、その後(結婚後)は、半分目を閉じなさい。)
映画のラストシーンを見れば、その意味は「見なかったことにすれば、すべてうまく行く」でしょうか。
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アイズ ワイド シャット
(C)Everett Collection/アフロ
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映画では、アリス(ニコール・キッドマン)の美しい全裸が見られるほか、多くのベッドシーンが登場するが、極めつけは秘密結社の性儀式で、仮面をかぶった男女の怪しげな乱交シーンが繰り広げられる。
ただし、キューブリックは配給のワーナー・ブラザースとの約定でNC-17(成人指定)を避けるため、画面に修正を施して劇場公開している。
日本では(ほぼ)無修正で「R-18」指定の公開。僕が観たAmazon版もそれで、局部にだけ部分的なボカシが入っていた。
秘密のパーティ
秘密結社のパーティで、ジムは何度か仮面の女性に「すぐ逃げろ」と警告を受けるが、結局は主催者側にバレて引き出されてしまう。
ただちに仮面を外して全裸になれと命令され、躊躇しているところに助け舟を出したのも同じ女性。
実は彼女は、クリスマス・パーティでジムに命を救われた娼婦で、「彼への罰は全て私が引き受ける」と宣言したことで、ジムは解放されるのだ。
秘密のパーティ
しかし数日後、彼女が謎の死を遂げたことが報道され、ジムは秘密結社のパーティがあった館を調べ始め、命を狙われることになる。
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アイズ ワイド シャット
(C)Everett Collection/アフロ
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この映画のストーリーに関しては、キューブリック自身が秘密結社イルミナティのメンバーであり、映画で内部告発したため殺された・・という陰謀論も囁かれたようだ。
しかし、映画が制作された時点で既にイルミナティは解散しており、秘密の儀式を重視したのは彼らではなく、むしろフリーメーソンであることから、かなり眉唾な噂・都市伝説の部類ではないか。
「ミネルヴァのフクロウ」イルミナティのエンブレム
ユダヤ人であるキューブリックは、1928年に医者の息子としてニューヨークに生まれ、幼い頃からカメラ、チェス、そしてジャズに興味を示し、1945年に当時の大統領ルーズベルトの死を伝える写真が『ルック』誌に掲載され同誌のカメラマンとなった。
彼の映画の処女作は1951年の『拳闘の日』で、自分の写真がルックに売れた自伝的フォトストーリーが成功し、退社して映画製作の道を歩み始める。
「2001年宇宙の旅」
やがて『博士の異常な愛情』(1964年)、『2001年宇宙の旅』(1968年)、『時計じかけのオレンジ』(1971年)のSF三部作で名声を不動のものとし、ホラー映画『シャイニング』(1980年)やベトナム戦争を描いた『フルメタル・ジャケット』(1987年)を世に放ち、寡作ながら高い評価と興行的成功を収めた。
今回の『アイズ ワイド シャット』は、そこから12年ぶりにメガホンを取ったものだが、彼はこの作品で何を伝えたかったのか?
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アイズ ワイド シャット
(C)Everett Collection/アフロ
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というのも途中”人死に”も出て、あれほどサスペンスを盛り上げながら、最後は何もなかった事にしてモトサヤに戻り、ラブラブな生活に帰っていくのだ・・あたかも数日間の出来事が”夢”であったかのように。
これはおそらく、映画を観た人の数だけ”解釈”が出てくる作品ではないかと思う。
実際、Amaonの評価コメントを見ても、イルミナティの陰謀論からキッドマンのお尻が可愛かったまで、着眼点がバラバラだった。
ただのハッピーエンドに終わるんなら、途中のサスペンスは何だったんだ?
あ、そうか・・だから『アイズ ワイド シャット』(見なかったことにしろ)なのか? それとも原作自体が「夢小説」だったからか? いやまさかそんな(笑)
/// end of the “cinemaアラカルト351「アイズ ワイド シャット」”///
(追伸)
岸波
色々な解釈ができそうなこの映画、僕は一つ気になったことがありました。
それは、主人公ジムが夫婦でマリファナを吸ってアリスの不倫願望(あくまでも心の中だけ)の告白を聞いてから、人が変わってしまったところ。
普段の行動の中で、妻が海軍将校に抱かれるイメージが繰り返し現れるようになり、性的に興奮してアブナイ関係、アブナイ世界に入り込んで行く。
もしかするとコレって、ジムの(あるいはキューブリックの)「寝取られ願望」をカミングアウトした映画では無かったのか?(笑)
いやいやいや、まさかそんな・・。でも、夢を見るたびに懊悩しながらコーフンしてたよね。でもしかし。う~むぅ・・(大笑)
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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