こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
ただ、負けたくなかった。
12月3日から公開されていた『THE FIRST SLAM DUNK』を、ようやく先週、ケイコと観てまいりました。
原作者の井上雄彦が脚本を書き、監督まで務めるということで大きく期待が膨らんだこの作品。しかし、今回の映画公開は異例ずくめでした。
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THE FIRST SLAM DUNK
(C)I.T.PLANNING,INC.
(C)2022 SLAM DUNK Film Partners
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通常なら公開前に大々的にキャンペーンを打って、クライマックスが入った予告編などを流し、誘客を図るところ。
ところが、事前に公表されたのはホラ、こんなもの。
はい、ストーリーは全く秘密。かつて放映されたTVアニメでは、最初の綾南戦までしか描かれず、今回はどの戦いが取り上げられるのか?
いやそれよりも、原作で描かれなかった後日談、あるいは全くオリジナル・ストーリーになるのか完全秘密主義。
これには映画サイトの解説者もホトホト困ったようで、あらすじが書けないので、自分の想いや予想で記事を書くしかない。
せっかくプロモーションに協力しようとしているのに、制作側のこのスタンスに業を煮やし、ディスり記事が氾濫する始末。いったい井上雄彦は何を考えているのかと。
これはおそらく『予見を持たずに観て欲しい』というメッセージだと僕は捉え、公開後のネタバレサイトも一切見ずに鑑賞に臨んだのであります。
さて、その結果は?
ただ、負けたくなかった。
そんなワケで、普通ならココ(↑)にはセカンド・キャッチコピーを書くのですが、そんなものも存在せず同じコピーで。芸がないという勿れ。ネタが無いのです(笑)
そして観客席に座り、上映が始まる。
ををををを~!!!?
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THE FIRST SLAM DUNK
(C)I.T.PLANNING,INC.
(C)2022 SLAM DUNK Film Partners
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通常のアニメキャラではなく、線画で登場して来る湘北高校のバスケ部メンバー。
しかも、メインとなっているのは、原作の主人公桜木花道やライバルの流川楓ではなく宮城リョータ。実に意表を突く展開。
そしてThe Birthdayによる「LOVE ROCKETS」の大音量BGM。背筋がゾワッときて、一気に心をワシ掴み。感涙モノです。
主人公宮城リョータ
実は、この映画とは関わりなく、原作の『SLAM DUNK』愛蔵版を最近読み直していたところだったのです。
それというのも、孫のヒビキ君が附属中のバスケ部に入部したので、彼に是非、バスケ指南書として読ませたいがため。
しかもですよ・・最近、グングン身長が伸びた彼の風貌は、どことなく流川楓に似て来たのであります。←(完全なジジ馬鹿)
流川ヒビキ(笑)
さて、1990年から96年にかけて『週刊少年ジャンプ』で連載されたこの作品。
当時のジャンプは”黄金期”と呼ばれ、「ドラゴンボール」や「シティーハンター」、「聖闘士星矢」、「ジョジョの奇妙な冒険」、「ろくでなしBLUES」、「魁!!男塾」など、今思えばトンデモナイ作品揃い。
その中でも自分的には『SLAM DUNK』と『ジョジョ』が真っ先に読む作品でした。
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THE FIRST SLAM DUNK
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『SLAM DUNK』は赤頭の不良、桜木花道が高校で一目惚れした赤城晴子に誘われて、その兄が主将を務めるバスケ部に入部し、アツい仲間たちと全国大会を駆けあがる物語。
しかし、今回の主人公となるのは、原作の湘北チームでは比較的目立たなかった宮城リョータ。
そして、アニメでは描かれなかった原作のクライマックス、インターハイ二回戦。全国連覇中の秋田代表「山王工業高校」との一戦が舞台となる。
つまり、クライマックスの山王戦とリョータの過去の成長物語が交互に描かれます。
流川楓
ファースト・シーンは、沖縄出身が明かされた宮城リョータが、兄ソータと1 on 1 をしている場面。
夫を亡くして凄まじい苦労をしながら子育てをしている母親にとって、思いやりがあり運動神経抜群のソータは希望の星。
リョータはまだ身体が小さく、当然1 on 1 では兄に歯が立たないが、それでも負けん気が強く、何度でも立ち上がって試合を挑む。
リョータとソータ
そこから、リョータを置いて仲間と一緒に海釣りに出た兄ソータは海難事故で帰らぬ人となる。
母は絶望に沈み、ソータを思い出さないために、家の中からソータに繋がるモノや写真を一掃してしまう。
そしてリョータは、兄がいつも腕に着けていた紅のリストバンドを大切に形見とし、果たせなかった兄の夢を実現するためにバスケに傾倒して行くのです。
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THE FIRST SLAM DUNK
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原作には胸を打つ名シーンが数々登場しますが、その多くは、上述のストーリー進行のために割愛されました。
また、ギャグシーンも殆ど抑制されて、リョータの成長物語とクライマックスの山王戦にフォーカスされています。
原作の序盤で最も泣かせられた、三井と安西先生の名シーン・・中学のバスケ王者だった三井が怪我で試合に出られなくなり、悪友らと不良に堕ちてしまう。
そんな彼が、どうしても夢を絶ち難く、安西先生に土下座して「安西先生、やっぱりバスケがしたいです」と謝る場面、もうすっかり号泣する準備が出来ていたのですが、割愛されました(泣)
バスケがしたいです……
新たに描かれたリョータ関連シーンで最も泣けたのは、彼が全国大会に臨んで母親に手紙を書くシーンでした。
兄ソータの死後、母は生きる気力を失くして抜け殻のような生活を送っていました。リョータに関してもネグレクト・・までは行かなくともほぼ放置。
そんな中でも、兄の夢を実現するためだけに精進してきたリョータは、旅立ちに当たって母への決意の手紙を綴り、最後にこう記す・・
「生き残ったのが僕ですいません」
うぉぉぉぉ~ 超号泣! 恥ずかしながら声を出して泣きました。
結局、その手紙が投函されることはありませんでしたが・・。
一方、山王戦での名場面、審査員席に飛び込みながら無茶な自軍ボールフォローで背を痛めた桜木花道が、”選手生命に関わる”という判断でベンチに下げられた時、安西監督に「オヤジの栄光の時代はいつだよ…全日本のときか?オレは今なんだよ‼」の激アツシーンは残ります。
さらにその後、ラスト1分の激闘。ここで井上雄彦監督のスーパー演出が炸裂。
スクリーンから一切の音が消えます。そして、湘北と山王の1点を争う魂のぶつかり合い。もう、呼吸をするのも忘れるほどの緊張感。
そこで最後の名シーンが、満を持して登場。
最後の逆点シュートに賭けた流川がゴールへ猛突進。時間は残り数秒。しかし、山王の分厚い壁に阻まれる。
その時、流川の目の端に写ったのが、立っているのもやっとの桜木が相手ゴールの右45度で何かをつぶやいている姿・・。
もちろん原作を呼んでいる読者なら決して忘れられない台詞「左手はこう・・添えるだけ」。
出たっ!(うっうっ・・)
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THE FIRST SLAM DUNK
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バスケ素人だった桜木は、安西先生の指導で最も基本の庶民シュートを2万本打ってココに臨んで来たのです。
しかしこの場面は無音シーン・・その台詞が語られることはありません。
でも原作ファンなら、誰しも心の中に「添えるだけ」がコダマしたはず。
背中の激痛で、既にその基本だけしか考えられない桜木がそこにいる!
結末は、ご承知の通り。ああ、、、泣ける。これを観に来て本当に良かった。わが青春のSLAM DUNKに、また新たな1ページが加わった瞬間でした。
SLAM DUNKよ、永遠なれ。
/// end of the “cinemaアラカルト341「THE FIRST SLAM DUNK」”///
(追伸)
岸波
映画の上映開始に合わせて、YouTubeに改訂版のTVアニメが提供されました。
その中で、リョータの腕には映画と同じ兄ソータの形見、紅の腕輪がはめられています。これもアツい演出ですね。
漫画版原作の後日談では、最後の一本を放って力尽きた桜木がリタイアして療養生活を送っているシーンでしたが、映画のラストシーンはアメリカに渡った山王のエース沢北がリョータの所属するアメリカチームとポイントガード対決をしている場面でした。
なるほどね、井上監督はあくまでもリョータの物語にしたかったんだ・・。
そして、もはや『SLAM DUNK』の続編が創られることは無いでしょう。この映画で全て描き切った・・井上雄彦はきっとそう感じているはず。
彼には、クライマックス突入直前で休止になっているもう一方の代表作『バガボンド』の続きに注力して欲しいと切に願います。
大団円直前で作家が亡くなった『ベルセルク』にならないように。(合掌)
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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