こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
すべてを賭ける
夢はあるか
今回は、先週映画館で観てきた『七人の秘書 THE MOVIE』かAmazonプライムでハマっている『S.W.A.T』を書こうと思っていましたが、ついつい気になる記事があったので・・。
それが、中国人の映画評論家徐昊辰(じょこうしん)氏が書いていた映画『キングダム』シリーズに関する話。
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キングダム
(C)原泰久/集英社 (C)2019 映画「キングダム」製作委員会
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こうした歴史ものの実写映画が、舞台とされた国でどのように思われているのか、とても気になったのです。
考えてみれば、僕も数回前に『ブレット・トレイン』を採り上げた時に、とても日本とは思えない日本描写に辟易したところ。
うむむむむ・・ちょっとコレはヤバイかもしれないぞ。
という事で、今回は「映画『キングダム』を中国はどう見たか?」です。
上海生まれの映画評論家、徐昊辰(じょこうしん)氏が映画.comに書いている記事が目に留まった。
映画ジャーナリスト徐昊辰
テーマは『キングダム』・・というか、始皇帝を描いた映画全般についても解説が及ぶ。
史上初めて始皇帝をテーマに撮影された映画は、何と日本の作品だったという事だ。それが1962年に公開された大映映画「秦・始皇帝」。
大映映画「秦・始皇帝」
監督は田中重雄、主演は勝新太郎で大映創立20周年記念の超大作として、始皇帝の生涯を描いている。
そもそも秦の始皇帝は、宰相李斯が行った残虐な焚書坑儒、贅を極めた後宮阿呆宮の美姫三千、民衆を強制動員した万里の長城建設など、統一の偉業とは裏腹に「悪」のイメージが付いて廻り、中国では映画化がためらわれていたのだろう。
そんな中国で、始皇帝モノが撮られて人気を博したのが、香港で2001年から放映された『始皇帝烈伝 ファーストエンペラー』。
TVドラマ「始皇帝烈伝 ファーストエンペラー」(2001年~)
ただし、中国本土で放映されたのは2007年からで、シリーズの数話がカットされたという。
中国では元々、歴史映画に対する検閲が厳しく、事実と異なるシーンなどがあれば”即お蔵入り”も珍しくない。
どうやら丞相呂不韋と始皇帝の親子関係に関する問題(呂不韋は愛人であった趙姫を後宮に入れて政(後の始皇帝)が誕生していることから、俗説として「親子説」がある。)が引っ掛かったらしい。(※実際の検閲理由は公開されていない。)
さて、そんな中国で大規模ロケを敢行し、日本で大ヒットとなった『キングダム』はどうであったのか?
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キングダム
(C)原泰久/集英社 (C)2019 映画「キングダム」製作委員会
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第一作『キングダム』が上映された2019年当は、中国で映画の検閲が最も厳しい時期で、結局『キングダム』は劇場ではなくネット公開となっている。
ユーザー評価は10点満点の「6.4」。可も無し不可も無しといったところか。
この評価には、言われてみれば当然の理由がある。「中国人が織田信長の映画を作ったら日本人はどう思うか?」。なるほど。
「信長の野望」より
昔、「フランス人が宝塚の『ベルばら』を見て失笑」という話もあった。やはり日本人が演じ、しかも中国の英雄の名前を日本語読みで呼ぶのは、相当な違和感があったろう。
それを考えたら、福田雄一監督のハチャメチャ三国志『新解釈・三国志』を撮り終えた後、主演の大泉洋が「え、監督、コレ中国でも上映しちゃうってホント!」と大汗をかいた話が思い出される。
劉備(大泉洋)が「シュウユじゃなくて醤油って呼んでるらしいよ」と言っちゃってるし(笑)
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新解釈・三國志
(C)2020「新解釈・三國志」製作委員会
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しかし、このハードルを乗り越えた作品もある。他でもないアニメ版の『キングダム』だ。
現在、放映されている第四シリーズは中国のネット評価で「9.4」という驚異的な数字を叩きだしている。
アニメ版『キングダム』
もちろん中国語吹き替えだが、「外国人が演じる」という違和感を取り去ればストーリーとしては圧倒的な支持を得られるのだ。
さて、そうした中で『キングダム2 遥かなる大地へ』の佐藤信介監督は、この問題をどう捉えたのか?徐昊辰氏がインタビューした時に佐藤監督はこう答えたという。
「正統な歴史ドラマは、もちろん中国の製作陣が撮った方がいいと思います。我々は、皆さんが喜ぶ“歴史エンターテインメント”が撮りたいんです。」
佐藤信介監督
なるほど。徐昊辰氏も「エンターテインメントであれば、国境を越えられる」と応えている。
とくに彼が評価しているのが、登場人物が個性的で魅力的であること。
僕が思うに、主人公の李信(山﨑賢人)もそうだし、日本で国宝級イケメンとされる秦王政(吉沢亮)や大将軍王騎の大沢たかおもそうだろう。
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キングダム
(C)原泰久/集英社 (C)2019 映画「キングダム」製作委員会
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そしてまた、登場人物の性別を改変して魅力的な武将像を創造したオリジナリティも評価できると思う。
山の王楊端和(実在の男性武将)の長澤まさみ、軍師河了貂(創作キャラ)の橋本環奈、そして何と言っても李信の副将となる羌かい(実在の男性武将)の清野菜名が魅力的だ。
羌かいは徐昊辰氏も高評価している・・「剣術の迫力は、まるで武侠作品を見ているかのような爽快感!」だと。
羌かい(清野菜名)
この『2』で一つ驚いた事がある。それは、『1』とは違い、中国での大規模ロケが出来なかったこと。
もちろんコロナ禍に対する中国政府の厳しい対応の影響だが、同じ問題は日本国内にもあったはず。
それについて、プロデューサーを務めた松橋真三氏はこう述べている・・「クランクインを遅らせるほかなく、最悪の場合、中止すべきではという意見もありました。映画業界全体に、このような不穏な空気が流れていた。この業界全体が、『キングダム』の動向に注目し、それに習おうとするような空気があり、自分が踏ん張らなければ、日本映画の火が消えてしまいそうでした」と。
松橋プロデューサー
そうして編み出されたのが、”群衆合戦シーンは中国のスタッフ・キャストに任せて現地で撮り、国内で撮影した主要キャストの登場シーンと組み合わせて繋ぐ”という仰天策。(ええ~!)
しかし、弾丸道路も電柱もない広い平原で映画撮影が出来る場所など、どうやって見つけたのか?
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キングダム2 遥かなる大地へ
(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会
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松橋プロデューサーは「グーグルアースで日本中を探して見つけた」という。そのお眼鏡にかなったのが長野の東御市の大平原。
余計な造形物が写り込まないよう”3カ月ほどの間、縦12m・横が100mの巨大なグリーンバックを端と端において撮影をした”のだそうだ。
うむぅ・・そんな苦労があって、あの手に汗握るシーンが出来上がったのだな。
この映画に関わった全てのスタッフ・キャストに再敬礼!!
/// end of the “cinemaアラカルト333「映画『キングダム』を中国はどう見たか?」”///
(追伸)
岸波
たしかにそう言われてみると、この上の写真の背景(空)には、少し違和感があるかも。(雲に射す光)
それでも中国スタッフの現地撮影と日本での撮影で一年がかかりだと言うから、大変な苦労があったはず。
そうそう・・この中国撮影分の現地監督は、ジャッキー・チェン映画のアクション監督を勤めていた人物だったそう。
そして、李信役の山﨑賢人君の騎馬疾走シーンとか羌かい役の清野菜名ちゃんの巫舞(みぶ)剣技シーンはエキストラではなく、ほとんど自分で演じた。
みんな、頑張ったなぁ。これからも応援するよ!!
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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キングダム2 遥かなる大地へ
(C)原泰久/集英社 (C)2022 映画「キングダム」製作委員会
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