こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
どちらが先に、未来を変える?
今週は劇場まで出歩くのを自粛していたので、Amazonプライムで鑑賞した2014年公開、アンソニー・ホプキンス主演のサイコスリラー『ブレイン・ゲーム』です。
アンソニー・ホプキンスと言えば、やはり記憶に残るのは、アカデミー賞主演男優賞を受賞した『羊たちの沈黙』(1991年)で演じたハンニバル・レクター博士でしょう。
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ブレイン・ゲーム
(C)2014 SUPERSENSORY, LLC
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その後も続編の『ハンニバル』(2001年)や『レッド・ドラゴン』(2002年)で我々の心胆を寒からせしめてくれた訳ですが、今回演じるのは探偵側、しかも超能力者。
超能力を持つ探偵なら無敵のように思えますが、アニはからんや、とんでもない犯罪者が登場して来ます。
と、ここで、カリスマ彰のように長いタイトルを付けるならば・・という試みをやってみます。
そう、コレだ!「たった一言の台詞が名優の演技を台無しにしてしまった『ブレイン・ゲーム』」(笑)
さて、どんな事件が起きるのか、さっそくその内容です。
奇怪な連続殺人事件の捜査にあたる医学博士。
優れた予知能力の持ち主である博士の脳裏に、
自身を超える能力をもつ容疑者が浮かび上がるーー
いや、まあ、このキャッチコピーで言い切っている感じもしますが、そこはひとまず置いておきます(笑)
映画の冒頭、人物の瞳らしきものが大写しになる。どんどんカメラが引いていくと、やはり人物・・男性だ。しかし、何かおかしい。
そう、目は見開いているのに全く動かない。さらにカメラが引くと、部屋の中を忙しく動き回っている刑事たち。そう、これは殺人事件の被害者なのだ。
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ブレイン・ゲーム
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「死因を調べろ」
指示されて首の後ろを確認する刑事・・延髄が切られている。
「また同じ手口だ・・」
これは連続殺人の何番目かの被害者。犯人は慰留物も指紋もDNAも全く残さない。手がかりがないまま、次々と犠牲者が。
現場を仕切る主任刑事がジョー・メリウェザー捜査官(ジェフリー・ディーン・モーガン)その女性の相棒がキャサリン・コウルズ捜査官(アビー・コーニッシュ)。
ジョー捜査官
捜査に行き詰ったジョー捜査官は、友人である超能力者のジョン・クランシー博士(アンソニー・ホプキンス)に協力を仰ぐことにする。
ジョン博士の超能力とは何か? 彼は人物や遺留物に触れると、その過去の出来事や未来の映像を観ることができるのだ。
サイコメトラーの能力。ただしサイコメトラーは「過去の残留思念」しか追う事ができないが、ジョン博士は「未来予測」も出来る設定。
だが、家族の問題でトラウマを抱え、引退を決め込んでいたジョン博士は協力を固辞。
ジョン博士(A・ホプキンス)
ハナから超能力の存在を信じていないキャサリン捜査官は「気が向いたら来て」と捜査資料を一方的に置いていく。
二人の捜査官が帰った後、テーブルに放り投げられた捜査資料に、ふと手が触れた時に超能力が発動。何と、キャサリン捜査官が血まみれで倒れているビジョンが見えたのだ。
ジョン博士は理由を言わず「捜査に協力する」とジョー捜査官に告げる。
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ブレイン・ゲーム
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ジョン博士が抱えていた「家族関係のトラウマ」については、ジョー捜査官から早々に語られる事になります。
博士には白血病の娘が居て、結局、酷く苦しみながらジョン博士の目の前で亡くなりました。それが原因で夫婦関係もうまくいかなくなり、妻とも離婚。
生きる意味を失ったジョン博士は復縁を望む妻を遠ざけ、”生ける屍”のような生活をしていたのです。
キャサリン捜査官とジョン博士
しかし、成長していれば同い年くらいのキャサリン捜査官の断末魔のビジョンを見たことで、居ても立ってもいられなくなり、捜査に関わることに。
このエピソードは、ラストシーンでもう一つ、別の大きな意味を持つことになるのですが・・。
その後も、捜査をあざ笑うかのように連続殺人は続く。そしてジョン博士は被害者の共通点に気付く・・彼らは皆、不治の病に犯されていたのだ。だが、それが犯行の動機に繋がるとは考えられない。
しかも「そうでない」被害者の少年が一人いた。ジョンは被害少年の「未知の病巣」を確認するため死体解剖を提案。
と、その時、解剖現場で博士宛てのファクスが入る。それを見て固まるジョン博士・・。
え!?
背後から医師の声・・「見つかりました。少年には脳腫瘍がありました!」と。
ジョン博士は、それを聞いて更に狼狽える。「これは罠だ!自分は捜査から降りる!」・・驚く捜査員達を残し、博士は部屋を立ち去ってしまう。
さて、彼が見たファクスにはいったい何が書かれていたのか? そして、連続殺人犯の動機は何なのか? はたまた、血まみれのビジョンが見えたキャサリン捜査官は殉職してしまうのか!?
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ブレイン・ゲーム
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このようにストーリーの謎が次々に深まり、ハラハラドキドキの展開。そして、名優アンソニー・ホプキンスの重厚な演技が映像のクオリティに反映し、観客のハートを鷲掴み。
そもそもこの脚本は、大ヒットを記録したサイコキラー映画『セブン』(1995年)の続編として執筆されました。しかし、制作上のトラブルから頓挫し、独立した作品として書き直されたもの。
『セブン』
アンソニー・ホプキンスが脚本に興味を示し参加を表明すると、売れっ子のコリン・ファレルやアビー・コーニッシュ、そしてジェフリー・ディーン・モーガンらが集結。
アンソニー・ホプキンスは、その後「製作総指揮」にも名を連ねた。
コリン・ファレルは『マイノリティ・リポート』(2002年)でトム・クルーズと共演、『ヒットマンズ・レクイエム』(2008年)でゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞、その後も『トータル・リコール』(リメイク版:2012年)、 『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(2016年)など、日本でも広く知られている。
『トータル・リコール』
アビー・コーニッシュは、僕も観ているアメリカのTVドラマ『トム・クランシー/ CIA分析官 ジャック・ライアン』で、主人公ライアンの恋人の医者役で有名。
そうそう・・『ロボコップ』で主人公アレクサンダー・A・マーフィーの妻クララを演じていたのも彼女でしたね。
『ロボコップ』
ジェフリー・ディーン・モーガンも同じくアメリカのTVドラマ『スーパーナチュラル』や『ウォーキング・デッド』でお馴染みの顔だ。
『ウォーキング・デッド』
さて、二つ目のキャッチコピーでバレバレな訳ですが、連続殺人犯のチャールズ(コリン・ファレル)もまたサイコメトラー。しかもジョン博士を遥かに上回る能力。
その罠にかかり、親友のジョー捜査官も犠牲となる。 (あらららら、主演級と思っていたのに・・)
ジョー捜査官、無念の死・・
同じ能力(強さは違うが)を持つ者同士の探偵と犯人の丁々発止の”ブレイン・ゲーム”・・ん、コレってどこかで見たことがあるぞ!
そうそう・・『ジョジョの奇妙な冒険』で一番人気の「空条承太郎編」で、”時間を止められる”能力者どうし、ディオと承太郎のラストバトルに似ているなぁ。
まさに一寸先は闇、予測不可能なストーリー。
ディオと承太郎のラストバトル(第28巻)
このストーリーの最大の謎は、”不治の病を持つ者を能力で見つけて殺していく”犯人の動機でしょう。
しかも犯人のチャールズ(コリン・ファレル)はジョン博士(アンソニー・ホプキンス)にそれとなくヒントを与えながら、彼が関わることを望んでいるかのよう・・いったい何故なのか?
それは、映画の後半、二人が直接対峙する場面で明らかに・・。
今回はそこまでネタバレしますので、嫌な人は、この後を読まないように!(笑)
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対峙するチャールズとジョン博士(同じ能力)
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実はチャールズ(コリン・ファレル)の目的は、この先、不治の病が原因で本人に耐えがたい苦痛が訪れたり家族が不幸に巻き込まれないための殺人・・『善意の殺人者』でした。
だから、それが発症する前に、苦しまず一瞬で息の根を止めるために延髄を破壊しているのです。
そのことをジョン博士に告げる彼の瞳に迷いはありません。苦しみを奪うと言う”信念”を持って行動している・・。
原題『SORACE』
ああ、なるほど!!
このシーンを見た時に、この映画の原題『SORACE』(動詞:慰める・苦痛を和らげる)に合点がいきました。そういうテーマだったんですね!
これは実に難しい問題・・。
もちろん「殺人」という犯罪は「悪」であり「違法」でしかない訳ですが、ある意味の「安楽死」ではないのか!?
この告白にはジョン博士も一瞬躊躇します。しかし、チャールズの目的はそれだけでありませんでした。
彼は、間もなく自分が不治の病で死ぬことを能力で悟っていたのです。
つまり彼の真の狙いは、自分の苦痛が訪れる前にジョン博士に殺してもらうこと、そしてその「殺人」をトリガーとして”善意の殺人者”をジョン博士に継承してもらう事の二つでした。
しかし・・・
「命は、その本人のものだ。他人が1分1秒たりとも干渉して奪う事は許されない」
ジョン博士は、そう言ってチャールズの考えを否定。
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しかしチャールズは、否定されることさえ能力で見通していました。
彼には更なる秘策があったのです。
それは、自分の正体と居場所に辿り着き、間もなくこの地下鉄にやってくるキャサリン捜査官を利用すること。
「オレは彼女を撃ち殺す。それが嫌ならオレを撃ち殺せ!」
そう・・今まで何度もジョン博士の脳裏に浮かんできたキャサリンの血まみれのビジョンは、まさにこれから起ころうとしている現実だったのです。
さて、進退窮まるジョン博士が取る行動は!!!?
はい、ここまでです(大笑い)
/// end of the “cinemaアラカルト324「ブレイン・ゲーム」”///
(追伸)
岸波
そうそう、書き忘れていたことが一つありました。それはジョン博士が娘の死を看取る場面の意味。
真犯人チャールズは、無垢であるジョン博士に自分を殺す「殺人」を犯させることで”善意の殺人”に覚醒させようとした訳ですね。
ところが、ジョン博士は既に「殺人」を行っていたのです。
つまり、娘の臨終のシーンで、彼は激痛に苦しむ娘の姿に耐えきれず「安楽死」させていました。
自分で決断した事とは言え「本当にそれで良かったのか」懊悩し、結局は自分を許せずに、妻とも別れて孤独な余生を選びます。
人間の死と言うものに対して真摯に向き合ってきた彼だからこそ、チャールズの考えを撥ね退けることが出来たのでしょう。
そして最後はバッド・エンディングではありません。そこには一つの”救い”が用意されています。
ただね・・この映画は、最後の最後に全く不用意な蛇足シーンが付け加えられているのです。たった一言の台詞が。
それが全てを台無しにし、低評価を被る原因になりました。
「百里を行く者は九十を半ばとす」という『戦国策』の名言がありますが、何で最後で気を抜いてしまったかなぁ。
え、何て言ったかって?
死んだ犯人チャールズのモノローグで「また会おうよ」です。
ああ無残!陳腐!
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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