こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
半径(r)15メートル以内
全/員/即/死
何と魅力的なキャッチコピーでしょう。
Amazonプライムで2018年公開のカナダ映画、キャロライン・ラブレシュ監督・脚本の『(r)adius ラディウス』を観ました。
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(r)adius ラディウス
(C)2017 - EMAFILMS and PERIPATETIC PICTURES
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ジョジョの奇妙な冒険のように、”いったい何が起きているのか分からないシチュエーション”が大好物の僕にとって、これはまさにド・ストライクの作品。
ということで、さっそく書いてみましょう。
「メッセージ」のVFX制作会社が手掛ける
前代未聞、予測不可能なSFシチュエーション・スリラー
映画の冒頭、いずことも知れぬ深い森の中。昏い空から稲妻が光る。
突然、見開かれる人間の目。この人物は、どうやら気を失っていたようだ。
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(r)adius ラディウス
(C)2017 - EMAFILMS and PERIPATETIC PICTURES
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額から流れ乾いた血の跡。周囲を見回せば、トラックがひっくり返り、ハザードランプが意味もなく点滅している・・事故に遭ったようだ。
道路まで這い上がり、向かってくる一台の車に手を振る。気が付いてくれたようで、ウィンカーを出して彼の方へ。
しかあしっ!!
車はそのまま、彼の方に突っ込んでくる。思わず身をかわす男。路肩に落ちて止まった車の窓に歩み寄り、運転席を覗き込むとドライバーの女性は既に息絶えている・・心臓発作だろうか? 何でこのタイミング?
死んでいるドライバー
「これはマズイ」と携帯で警察に電話し助けを求めると「貴方の名前は?」。ところが、自分の名前が思い出せない。愕然として電話を切る男。
ポケットを探って免許証をみる。「リアム」・・それが自分の名前らしい。と、そこへ空から近付いてきたカラスが不意に死んで落ちて来る。不吉だ。
彼、リアム(ディエゴ・クラテンホフ)は、近くのダイナーに駆けこむ。しかしここも様子がおかしい。中へ入ると、たった今まで食事をしていた様子の客やウエイトレスが全員死んでいる。
死んでいるウエイトレス
もしや何らかのガス?それともウイルス?ハンカチで口や鼻を覆うリアム。そこへ道路から車が入って来る。
これでやっとこの異常事態を知らせられる・・と思ったのも束の間。今度はそのドライバーが急に突っ伏して動かなくなる。
財布の中身から自宅の場所を見つけ出して中へ。窓の外を見ると農場で作業をしている男が一人。「外は危険だ」・「家に入れ」と紙に書いて窓から示すリアム。
男が訝しがってこちらへ歩いてくる。すると、ある距離まで来て急に倒れ込み小川の中に突っ伏してしまう。
これはウイルスとかじゃない。原因は・・オレだ!!しかし、何故!?
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リアム(ディエゴ・クラテンホフ)
(C)2017 - EMAFILMS and PERIPATETIC PICTURES
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この導入部、ハラハラドキドキですね。”ジョジョ”で新たなスタンド使いが現れた時もこんな感じ。不条理感、満載。
ただ、キャッチコピーで『半径(r)15メートル以内 全/員/即/死』と言ってしまってるので、進行が予測できてしまう。これは悪いネタバレの例でしょうね。
導入を見た観客は、リアムに何故この能力が備わっているのか、そして彼の真の姿はどんな人物なのか・・という所に興味が集中する。
「自分に接近する生物を殺してしまう」という能力を悟ったリアムは、とりあえず家に引き籠って誰とも接触しないようにする。
そんなある夜、家の前に車が侵入して来る。慌てて跳び起きるリアム・・ココへ近づいてはいけない!!
ところが、その女性ジェーン(シャーロット・サリヴァン)はドアの外まで近づいても反応が起きない。話をしてみると彼女も記憶を失っているとのこと。しかも事故に遭ったトラックに彼女も同乗していたのだと言う。
ジェーン
いやいやいや、驚くのはまだ早い。ジェーンがリアムの15メートル以内に居れば、彼の能力が発動しないことに気付く。
ええええ~!?
活動するすべを手に入れた二人は、トラックの墜落現場に行って周囲を探索してみることに。
すると、現場近くの森の中に、地面が焼け焦げたミステリー・サークルを発見。
そう・・間違いなくココで、自分たちの身に何かが起こった!?
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(r)adius ラディウス
(C)2017 - EMAFILMS and PERIPATETIC PICTURES
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その後、彼らがたまたま喧嘩して距離を取った時に警察官が訪れてリアムの能力で死亡。二人は警察に追われる身に。
逃避行の中で断片的に記憶が蘇りはじめ、二人はとんでもない関係にあった事実が明らかになってくる。
さて、彼らの”能力”の謎はいかに? はたまた二人の運命は!??
この進行・場面設定から、低予算映画であった事が分かります。それにも関わらず、次々にぶち込んでくる”謎”にサスペンスが止まらない。
なかなかよく出来た映画だと思います。
しかしながら、この作品が総じて高評価である中で、核心を突いた指摘コメントが目に付く・・それは「SFではなかった事」。
冒頭の超理不尽な導入から、なぜリアムが(そしてジェーンが)特殊な能力を獲得したのか惹き込まれる訳ですが、結局、最後まで説明はなし。
落雷に打たれる二人
まあ、雷に打たれたという原因は明らかにされますが、それだけでどうやってあんな能力が得られるのか理由は放りっぱなし。
きっと後半では宇宙人が出て来ると予想したコメントライターも多々。
僕もそう思った。
そもそも”特殊能力”が無くても立派に一本として成立するシチュエーション・スリラーなのに、まるで”具”を入れすぎたラーメンのよう(笑)
記憶喪失になった二人の本当の関係の謎に焦点を当てれば、もっと重厚な作品に化けていたかもしれないなぁ。
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(r)adius ラディウス
(C)2017 - EMAFILMS and PERIPATETIC PICTURES
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二つ目の低評価ポイントは、記憶喪失になった主人公リアムのキャラと彼の本当の顔との関係。
本来のリアムは”快楽殺人者”で多くの女性を犠牲にし、その様子を詳しく記録するのが趣味というトンデモナイ男。
実は、ジェーンの双子の姉リリーも手に掛けており、彼が怪しいと接近してきたジェーン(本当はローズという名)も殺そうとした矢先の落雷だったのだ。
この流れでどこが指摘ポイントかというと、次第に殺人の記憶が戻って来たリアムが相変わらず善人キャラであること。
「記憶が戻れば元の悪人の性格に戻る筈でないか」・・ここがダメ出しポイント。スリラーに重点を置けば、恐らくそういう進行になっていたはず。
最後のどんでん返しを持って来るために、敢えて性格を変えたままにしているのだろうが、これも無理に人間ドラマを持ち込もうとして脈絡が破綻した悪い例。
だが、それもこれも後から振り返って「アレ?」と気付くくらいの話。
最初から不用意なキャッチコピーを無視して初心で観れば、SFからサスペンスへ、そしてスリラーから人間ドラマへの怒涛の展開は、それなりに楽しめるはず。
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(r)adius ラディウス
(C)2017 - EMAFILMS and PERIPATETIC PICTURES
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さて、物語の終盤では、姉リリーの殺害日記を読み全ての記憶が戻ったローズ(ローズ)がリアムに復讐を果たそうとする。
しかし、記憶が戻ったのに善人であるリアムを、どうしても撃つことができない・・。
そうこうするうち、そこへ殺人鬼リアムを締めてやろうとするチンピラグループが乱入。彼らを”能力”で撃退するもローズは流れ弾に当たって重傷を負う。
さて、善人リアムは、この落とし前をどう付けるのか?
ラストは見てのお楽しみ♪
/// end of the “cinemaアラカルト312「(r)adius ラディウス」”///
(追伸)
岸波
うん、何とも微妙な映画でしたね。
いろんな要素を詰め込み過ぎて、謎が回収されない。特にリアムの”能力”に関して「雷に打たれてそうなった」というのは、あまりに安易かな。
細かいことを気にせず展開を追うだけなら、結構、興奮できる映画なんですけどね。
オーラスは、まあ、こういう結末しかないか。
大量殺人を犯しているので、いずれハッピーエンドはあり得ないし。
ローズが生還できるであろうことは救いですが、このシャーロット・サリヴァンという女優さん、演技派とは思いますけれど、彼女が演じるローズにイマイチ感情移入ができません。
シャーロット・サリヴァン
もうちょっと儚げな女性の方がよかった気がするのですが、そこは好みの問題なのかな。
では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !
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(r)adius ラディウス
(C)2017 - EMAFILMS and PERIPATETIC PICTURES
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