こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
風は未来へ。
男たちの結束が揺らぐとき、女たちの勇気が動きだす。
是が非でも見たかったこの完結編、やっと、みることができました。
と言うのも・・・
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レッドクリフ
part2
(C)2009, Three
Kingdoms, Limited. |
4月からの転勤で、ケイコと会津若松市に引っ越したワケですが、10年前にはそれなりの複合cinema館があったのに・・・
ええー!若松って映画館がないの?!
いや、一軒だけはあるよ。
・・・何やってるの?
んと、「ドラえもん」。
ええー!
~ということで、「レッドクリフ」はおろか、僕らのcinemaライフに重大な赤信号が灯ったのです。
しかも、今度の勤務は土日祝祭日が開館という交代休の客商売。
福島市の自宅に帰るのも一苦労であります。
でもまあ、4月18日(金)の歓迎会を終えた翌朝、7時に会津を出て福島に帰ってまいりました。
翌日土曜は、いろいろと用事がありましてケイコもお疲れ。
その夜、疲れを押しての「レッドクリフ」観賞となりました。
三国志演義の前半のクライマックスである“赤壁の戦い”を描いたこの映画。
part1は、昨年11月1日に日本で公開され、50.5億円を売り上げる大ヒットとなりました。
なお、中国では同年7月に公開され、公開一ヶ月で3億200万・人民元を売り上げ、「王妃の紋章」を抜いて中国国産映画の興収新記録を打ち立てています。
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劉備軍の将軍・関羽
(C)2009, Three
Kingdoms, Limited. |
「part1」では、天下統一を目指す曹操が、荊州にいた劉備軍を追撃。
敗走した劉備軍は、名軍師・諸葛孔明の働きによって呉の孫権と同盟を結びます。
軍を建て直しつつ、曹操を迎え撃つことにしますが、劉備・孫権同盟軍は水陸両軍で僅か4万。
これに対して、征服した荊州兵を飲み込んだ曹操軍は80万。
長江の要害、赤壁に陣取る劉・孫同盟軍に、数千隻の大船団を率いて襲いかかってくるのです。
さて、劉備や孫権の運命やいかに?!
~というところで、「続き」となりました。
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呉の大都督・周瑜
(C)2009, Three
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今回のpart2では、赤壁の対岸に威風堂々と陣を構えた曹操軍に、孫権の妹である孫尚香がスパイとして潜り込みます。
敵の陣形や情報を探っては、伝書鳩に密書を載せて孔明へと伝えます。
そんな中、蹴球の名人である曹操軍の朴訥な性格の若武者と意気投合。
幾度か危ない目に合いながらも、若武者の助けによって救われます。
このあたり、彼は男装した孫尚香に全く気づかないばかりか、行動を疑うこともしないのです。
「親が病気なので、軍を脱走して家に帰る」という孫尚香の言葉を信じて、身を挺して逃がそうとする若武者。
そんな彼に、いつしか深い友情を感じるようになる孫尚香でした。
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孫権の妹・孫尚香
(C)2009, Three
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一方、曹操軍では、大遠征の上に風土の合わない土地への駐屯で疫病が流行りだします。
死体置場は、病に倒れた兵士達の死体で溢れかえるほどに。
それを焼き捨てようとする部下を制止し、一計を案じた曹操は、死体に武具を着せたまま小船に乗せて長江へ放逐。
流れに乗って対岸の赤壁に漂着した死体から武具を奪い取ろうと、殺住民達が殺到します。
もちろん、死体に触れた住民達にも疫病が伝染し、その被害は劉・孫同盟軍の兵士達にも蔓延し、深刻な事態に陥ります。
疫病で多くの兵を失った劉備は、関羽や趙雲らの反対を押して、同盟から離脱。
僅か2万人余りとなった孫権軍の運命は、風前の灯火となるのです。
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疫病の蔓延
(C)2009, Three
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・・・しかし、まあ、自分の保身のために孫権軍を巻き込んでおいて、形成不利と見るやあっけなく前線からトンズラ。
それはないだろう、と誰もが憤慨するでしょう。
いや待てよ、そんな史実は無いはずだが・・・うん、きっとこれは「レッドクリフ」オリジナルの“ワケあり演出”ではなかろうか?
ま、実際、この行動は“敵を欺くのはまず味方から”という策略であったということが後に分かるのですが、ちょっと酷すぎる・・・と思う。
あるいは、スト-リーが浅すぎるとも。
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曹操
(C)2009, Three
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“義”を全うするために、一人、呉陣営に残った諸葛孔明にも、当然疑いの目が。
呉の大都督周瑜は、孔明に「戦いに用いる弓矢が不足している。信義を示すために、10日で10万本を調達してくれ」と。
「お安い御用。3日で用立てできなければ、この首を差し上げましょう。ただし・・・」と孔明。
「貴方は私に何を約束してくれるのですか」と。
周瑜は「曹軍の水軍の要、蔡瑁と張允の首を取りましょう。叶わぬ場合は、私を切りなさい。」と。
うむむむむ・・・大見得に大言壮語で返す丁々発止。
しかし孔明は、霧の夜に大量の藁を積んだ船団を漕ぎ出し、あえて敵の矢を浴びることによって、10万本の矢を獲得。
周瑜もまた、スパイとしてやってきた敵の軍師を逆に陥れて、蔡瑁と張允を斬首させることに成功するのです。
(このあたりのエピソードは、三国志演義のとおりですね。)
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矢を獲得して悠々と・・
(C)2009, Three
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みごと兵器を調達し、敵の水軍のカナメ2人を葬った呉軍に、孫尚香が敵陣の詳細な図面を携えて帰還。
聞けば、曹操水軍は、兵士の船酔い防止のために船と船を板で固定していると言う。
「火計をしかければ大きな痛手を与えられる」と、火薬船の決死隊を準備。
しかし、今の風向きでは、風下にある自分達の船団の方が危うい・・・どうすれば?
孔明は天文を読み、あと数日のうちに風向きが変わると予言。
一方の曹操軍では、追い風に乗る今のうちに呉軍に火計をしかけようと。
曹操軍の総攻撃が早いか、風向きが変わるのが早いか、まさに運命の分かれ道。
そんな、軍議を立ち聞きしていた周瑜の妻・小僑は、自分が時間稼ぎのために犠牲になろうと、単身、曹操の元へ。
そうなのです。
曹操が江南の地に攻め入ったのは、劉備や孫権を討伐するばかりでなく、天下の美女と称えられている小僑を奪って我が物にせんとの野望もあったのでした。
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小僑は単身、曹操の下へ・・
(C)2009, Three
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さて、夫と呉の民衆のためにわが身を捧げる小僑の策は通じるのか?
ここから先が、「レッドクリフ」の怒涛のスペクタクル、クライマックスへの突入であります。
・・・と、そんな進行なのですが、この後編だけで2時間40分。
前編と合わせれば5時間を超える長尺映画であります。うーん、長いなやっぱり。
お疲れのケイコなどは、半分以上寝ていましたもの。(とほほ)
と、思っていましたらこの映画、欧米では前・後編を一本にまとめた2時間25分のショートカット・バージョンで公開されるとのことです。
登場人物たちの心象風景を描き込もうとするあまり、冗長な進行になっているので、何度か中だるみ感がぬぐえません。
まあ、総製作費8000万ドルをかけた中国の歴史的超大作ですから、少しのエピソードも捨てたくない気持ちは分かりますが・・。
ただ、もう一つ問題点が。
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レッドクリフ
part2
(C)2009, Three
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ずばり「悪役」に魅力が無いということです。
いえいえ、曹操役の張豊毅(チャン・フォンイー)はさすがの名優、言うことはありません。
問題は取り巻きです。
劉備軍の孔明、関羽、張飛、趙雲、呉軍の孫権、孫尚香、周瑜、小僑など、連合軍側は個性豊かな登場人物が揃っているのに、曹操軍は曹操以外活躍する人物が見当たりません。
将軍は力押し一辺倒、軍師は誰も孔明・周瑜の策略が見抜けない凡軍師ばかり。
これでは、いくら百万の大軍をしつらえたところで、単なる烏合の衆。
負け戦も、むべなるかなというところ。
たしかに、曹操100万軍は、赤壁でわずか数万の連合軍に敗れたのですが、映画には映画なりの描き方があったのではないか?
「007 慰めの報酬」も悪役のドミニクがあまりにも小物だったので魅力半減しましたけれど、“魅力ある悪役”って、とても大事だと思います。
近年では、一世風靡した「デスノート」の名探偵Lと殺戮者キラの息も詰まる心理戦・・。
悪役をあのくらい魅力的にすれば、平板なストーリーにもっと深みと凄みが増したと思われ、実に残念です。
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劉備の将軍・趙雲
(C)2009, Three
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ともあれ、エンターテインメントとしては一級品。
格闘シーンなどでも、安易にワイヤー・アクションなどを用いない殺陣に好感がもてます。
そして、敵方の若武者に好意を持ちながら、再び戦場でまみえてしまう孫尚香の苦悩、わが身を犠牲にする小僑の献身が描かれたこともよかったと思います。
特に印象に残ったセリフは、最後に曹操を追い詰めた周瑜が、敢えてその命を奪おうとせず・・
「この国から出て行け。このいくさに勝者などいない。」
両軍兵士のおびただしい犠牲を前に、言い放つ重い言葉。
うーん、かっこいい・・。
三国志を知るがゆえに不満を感じたものの、この「レッドクリフ」・・・侮れない力作でありましょう。
/// end of the “cinemaアラカルト89「レッドクリフ part2~未来への最終決戦~」”///
(追伸)
岸波
「レッドクリフpart2」の初日3日間の観客動員数は68万人、興行収入は8億6,000万円と、2009年に入って公開された映画で堂々の第一位となりました。
配給元のエイベックス・エンタテインメントは、前作との合算興行収入100億円達成に「想定の範囲内」と強気。
さらに、「Part2だけで、60億円から70億円はいけるでしょう」と鼻息が荒く、この勢いをどこまで伸ばし続けるのか注目されます。
しかし、三国時代の中国最高の美女・小僑を演じたリン・チーリンさんって、本当に素晴らしい美女でした。
曹操にお茶をたてるシーンの手の動きなんか実に色っぽい。
・・・なんて話をケイコにしましたら、「あの手の動きは、監督のジョン・ウーさんが、自分の奥さんの動きから学んだって言ってるのよ」と。
ええー、ホント?
しかも、その奥さんって似てるのよ、顔が。
え?! 小僑に?
違うわよ。野村サチヨさんによ。
あ~れ~!
(真偽のほどは定かではありません。あしからず。)
では、また次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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小喬
林志玲(リン・チーリン)
(C)2009, Three
Kingdoms, Limited. |
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