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「Dead Leaf Dance」(佑樹のMusic-Room)
by 岸波(葉羽)【配信2008.6.24
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 隠された黄金と狙われた姫を追って、
 壮大なアドベンチャーが幕を開ける--。

 「隠し砦の三悪人」は、1958年に三船敏郎主演で公開された黒澤明監督の名作です。

 それを「日本沈没」の樋口真嗣監督がリメイクしたのが、本作「隠し砦の三悪人 The Last Princess」。

 ところがっ!

隠し砦の三悪人

隠し砦の三悪人
The Last Princess

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 「隠し砦の三悪人」という映画は「七人の侍」ほどの知名度はないものの、黒澤作品の最高傑作との呼び声も高い秀作。

 その秀作のストーリーをガラリと変更し、主人公まで、三船敏郎演ずる槍の名人・真壁六郎太からジャニーズの松本潤演ずるオリジナル登場人物・武蔵へと変更してしまったのですからサア大変。

 賛否両論と言いますか、黒澤ファンのcinemaフリークからは、かなり厳しい評価がなされているのも事実。

 特に、武蔵が姫にタメ口をきいたり当世風のテイストになっている部分、三船敏郎の宿敵でありながら互いを認め合い、最後には義のために三船側に付く敵役・田所兵衛(The Last Princessでは鷹山刑部)が冷酷な悪役として描かれている辺りは、黒澤ファンにとっては看過できないところなのでしょう。(うん、分かる)

敵役・鷹山刑部

敵役・鷹山刑部

(椎名桔平)

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 ところでこの黒澤版「隠し砦の三悪人」は、最初の「スターウォーズ」(エピソードⅣ)を作るに当たって「下敷きにした」とジョージ・ルーカスが明言したことでも有名。

 姫を敵の元から救い出すストーリーや冒頭シーンやラストシーンの演出、そして、レイア姫の男勝りのキャラクター設定は雪姫を、C-3POとR2-D2は百姓の太平と又七をモデルにしていることは明らかです。

 ということなれば、姫を救い出すヒーロー真壁六郎太(三船敏郎)の役どころは、もちろんあのハン・ソロ船長です。

 ところが「The Last Princess」では、逆に、「スターウォーズ」のダースベイダーのコスチュームを敵役・鷹山刑部のいでたちに逆輸入するということをやってのけたのです。

 この辺の機微は、こうした裏話を知っているかどうかで、面白さがかなり変わって来ますね。

ダースベイダー

ダースベイダー

←あれっ??

 はてさて、この映画を語るとき、つい思い出してしまうのが昨年12月に公開された織田裕二版の「椿三十郎」です。

 こちらも1962年に公開された三船敏郎主演の黒澤映画「椿三十郎」をリメイクした作品なのですが、何と当時のシナリオや演出方法をそのまま用いて、現代の俳優に演じさせたという実験的映画でした。

 つまり、原作を大幅に変更した「三悪人」と、原作をこれ以上ないくらい忠実に再現した「三十郎」の2作品が、相次いで制作されたわけです。

 で、僕はどう感じたか?

椿三十郎

椿三十郎

(豊川悦司&織田裕二)

 「椿三十郎」はツライです。

 ストーリー進行もスリリングだし、至るところに散りばめられたユーモア、殺陣の迫力も申し分ない・・・でも単調。

 何故かといいますと、ストーリーが主人公である椿三十郎だけの視点に沿って展開されるからです。

 現代的な演出は・・・例えば「Always 三丁目の夕日」や「有頂天ホテル」のように、多彩な登場人物の視点で同時並行的に描かれ、それらが互いに絡み合うという作り方が多くなっています。

 複数のストーリーがどのように絡み合うのか・・・そこから予断を許さない緊張感や意外性が生まれるのです。

 しかし「椿三十郎」は、ほとんどのシーンが三十郎の周辺描写なので、展開に予測が付いてしまうのです。

 この辺り、豚骨・魚介のダブルスープまで経験した現在のラーメンファンが、トリガラだけの昔風ラーメンに物足りなさを感じるのと共通しています。

 (多分ですが。あはは!)

隠し砦の三悪人

隠し砦の三悪人

←黒澤明監督、三船敏郎主演。

 したがって、「安易に新解釈のリメイクをするな」という旧作尊重派の意見はさておき、「自分がリメイク監督に指名されたなら、どんな工夫ができるだろう」という見方で、「The Last Princess」を観ると色々な発見があるのではないかと思うのです。

 さて、僕の解説が長くなりましたが、我らがドミニク嬢は、この「三悪人」をどのように観たのでありましょうか?

 

ドミニクドミニク こんにちは~ドミニクです。

 隠し砦の三悪人のチケットが1枚当たったので、久々に夫も連れて、家族で観てきました。

 黒澤明監督の『隠し砦の三悪人』を日本沈没の樋口真嗣監督がリメイクした作品です。

 なので、1958年の時のキャストと役名が変わっています。

 もちろんまだ私は生まれていないので、今回の隠し砦の三悪人が初めての隠し砦鑑賞となりました。

 内容を分類すると、時代劇ものですね。

 でも、今回は、時代劇が好きな世代というより、キャストを見てもそうですが、若い世代をターゲットにしたのか?というほど。

 「どろろ」系だと思います。

 登場人物もわかりやすかったです。

 しかも、有名な俳優を起用していたので、一回みれば役が判別できました。

 下記ネタばれするので、これから観る予定の方は劇場に足を運んでから読んでください。

隠し砦の三悪人

隠し砦の三悪人
The Last Princess

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 面白かったか?と聞かれると、個人的には、期待ほどではなかったような気がしました。

 でも、宮川大輔は、場を盛り上げてくれましたね。

 もし、新八がつまらない役者なら、この映画も、せっかく良い俳優起用しているのに、つまらなかったと思います。

 あの黒いメガネをはずしたあとの、顔面黒くぬって、だれだか解らない顔もいいです(笑)

 爆発シーンで、なんでいけちゃうの?と疑問を抱く部分もありますが、日曜朝のヒーロータイムばりの、戦隊モノの爆発です(笑)

 しかも主要キャストは、無事という・・・なんで、瞬間移動出来るのか?

 ドラえもんのどこでもドアでもあったのか(笑)みたいな。

 あらすじは、おおまかにいうと、3つの国の勢力争いです。

 時代背景として、戦国時代、3つの国が隣接しています。

 貧しい国、「山名」は、大国「早川」陥落を狙い、まずはもう一つの隣国であるお金持ちの「秋月」に資金調達に攻め入ります。

 しかし、軍資金を調達できるかと思いきや、そこには金100貫は、ありません。

 そこで、軍資金と共に姿を消した「雪姫」を探します。

雪姫

雪姫

(長澤まさみ)

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 主人公の武蔵(松本潤)は、山名の下級の民で、金堀りをしています。

 秋月の軍資金が埋蔵されているかもしれないので、上級武士に土を掘らされていました。

 ペットの鳥が土からガスが出ていると気付き爆発する前に逃げます。

 逃亡途中、きこりの新八(宮川大輔)と出会い、一緒に逃亡します。

 山に入って、川で水を飲んでいると、滝にあった木から金が!!!

 金(きん)が出たぞ~と大喜びの2人・・・それを、男装した雪姫が弓で狙う。

 新八は、つぶて(石)を投げるのが上手で、雪姫の頭に当てます。

 気絶する雪姫、護衛の侍・真壁六郎太(阿部寛)が2人を捕らえ、その金(きん)はどうした???と。

 「山名」に攻め入られて、「早川」に逃げようとするのですが、武蔵と新八に作戦を問います。

 秋月の隣接する土地から早川へ直通でいける道は、山名に征服されて通れません。

 だからあえて、山名にいったん入ってから、早川に抜ける。

 下級な民だからこその名案!

金を発見!

金を発見!

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 最後の秋月の人間、城代家老・長倉(じい)と、その妹、雪姫、少ない兵・・・・・。

 みんなが助かる方法は見つからず、じいが護衛に六郎太をつけて雪姫を託し、翌朝、自分は砦に残る。

 金を早川にもっていけば分け前がもらえると、武蔵と新八はせっせと金の入った枝を運ぶことに。

 こうして、武蔵と新八と雪姫、六郎太の4人は旅立ちます。

 この段階で、雪姫はみんなに女だと秘密で、六郎太の弟ということになっています。

 口をきけば声で女だとわかるので、話せないことになっています。

 山名の兵が近づいてきて、じいはせめて、注目を自分たちに集め姫を逃がそうと、砦で煙を上げて敵を呼び寄せます。

 呼ばれた山名の兵が踏み込むと、そこには、じいと雪姫になりすました六郎太の妹(雪姫と同じ19歳)が自害しているではありませんか。

 ・・・・でも、姫から絶対離れない六郎太の姿がどこにもなくて、山名の侍大将鷹山刑部(椎名桔平)は、これは替え玉で、「まだ姫は生きている・・・」と確信します。

逃避行

逃避行

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 その頃、山名の入口に着いた一行。

 本庄(高嶋政宏)が山名軍の関所の役人で、ココを通るには、許可が必要。

 六郎太は機転を利かし、「金をやるから通らせて」と差し出します。

 しかし、本庄は男色で、女に興味がなく、六郎太の弟に変装する雪姫に興味を(笑)

 やむなく女であることを陰でこそっと本庄だけに。(なにしたんだ?と思いました)

 六郎太は自分の妻だから手を出されたく無くってとごまかします。

 六郎太は馬と馬車を交換してもらい、町を歩いていると金で買われた女が!

 それは秋月の女中で、可哀想だからその娘を買い戻せ!と姫は六郎太に。

 そこへ山名の追っ手が!「4人組の馬を引いている連中を見なかったか?」と。

 女中は、姫様だと解って、山名の放った矢を自ら受けて、かわりに死にます。

 怒った姫は、山名の兵を追っかけていきますが、とどめがさせず、六郎太がとどめをさします。

真壁六郎太

真壁六郎太

(阿部寛)

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 とりあえず追っ手も抹殺したので、人に紛れるのが一番、今日は丁度年に一度の山名のお祭り。

 武蔵は、この日だけは侍も邪魔しない約束と、火の周りで踊り明かします。

 でも、その祭りに侍が来て、切り捨て御免と刃向かう人を斬ります。

 侍に見付かった六郎太は、せっかくの金を火に投げ込みます!

 その隙に逃げる予定が、武蔵が斬られ、六郎太と雪姫は顔に傷をもつ侍大将に捕まります。

 その山名の大将鷹山刑部の顔の傷は、かつて六郎太が付けたモノ。

 鷹山刑部の「なんであの時、おれを殺さなかったんだ?」という問いに対し、六郎太は、「殺すには惜しい男だったから」と。

 一方、じいのよこした短剣をとっさに服に六郎太が入れてくれたので、一命をとりとめた武蔵。

 新八は火祭りで、金を燃やした事を知っていたので、火が消えてからこっそり拾いにきていました。

 分け前をやるからと、山名の仲間達に協力をさせ、雪姫救出劇をするのに武蔵だけ立ち去ります。

 新八は金ごと捕らえられます。

 しかし・・・みんながせっせと運んだのは、金じゃない!!!!!なまり???

 刑部「おまえらの運んでいたあれは、なまりだった。金はどこに?」

 六郎太「………」

 刑部「姫には山名の子を産んでもらう」

 雪姫「(イヤ~!)」

 刑部「なら、金はどこだ?」

 六郎太「………」

 本物の金のありかは、六郎太も知らず、姫だけが知っていました。

 雪姫「名も知らない民が1本づつ早川に運んだ」

 本物の金100貫は、あらかじめ、名も知らない下級な民たち100を1貫づつ早川に運ぶように頼んでいたのでした。

雪姫

雪姫

(長澤まさみ)

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 二人が殺されそうになった時、土からガスが!

 爆発させている間、六郎太と刑部が1対1の対決。

 刑部は銃を持っているので、それで戦えば勝ったはずなのに、「おまえとは刃物で戦いたい」と。

 その間、武蔵と雪姫は、新八が見付けた早川と山名の直通の穴へ落っこちて離脱。

 そして、ドカ~ン!と大爆発。

 短時間なのになぜか、六郎太がとどめを刺し、新八と馬で脱出。

 馬があるなら、なぜ新八は、武蔵に馬を差し出さなかった?等疑問は沢山ありますが、とにかく助かりました。

 2馬しかないので、武蔵と雪姫が相乗り。

「もし、早川領に誰もいなかったら、どうしよう・・・」と、不安がる雪姫が武蔵の背後に。

「大丈夫だよ~」と、武蔵。

 早川に着くとそこには、秋月の民が、姫を待ちかまえていました。

「姫様~!」民がずらり。

 素人っぽいのに、何かやる気満々みたいな表情です。(笑)

 ずっと一緒と約束した二人でしたが、「…裏切り御免」と離れていきます。

 武蔵なりに、身分をわきまえたと見えました。

 去り際が男らしいですね。秋月の再建の為、姫は大事な命・・・自分のような身分が下のものでは負担になる。

 …海辺で、「姫様から褒美たっぷりもらえばよかったのによ~」と新八。

「いいんだ…」

武蔵と雪姫

武蔵と雪姫

(C)2008『隠し砦の三悪人』製作委員会

 主題歌を、布袋寅泰、KREVA、亀田誠治(東京事変)によるユニット「The THREE」が。

 布袋さんのギターにヒップホップにラップが。

 音楽として聞くにはテンポいいですが、本当に「裏切り御免」です。

 最終的に、音楽は、若者向けに仕上がったのかなぁ~?という感じです。

 

/// end of the “cinemaアラカルト63「隠し砦の三悪人 The Last Princess」”///

 

(追伸)

岸波

 隠し砦から、武蔵や六郎太、雪姫が脱出するシーンがすがすがしいです。

 ドミニクの言うとおり、「なんで生きてんだよー」というつっ込みはありそうですが、少なくとも雪姫一行が誰一人死ぬことなく、ハッピーエンドで終われたというすがすがしさです。

 うーん・・・ここでエンディングにすればよかったんじゃないかなぁ。

 どうしてもこの後のエピソードは蛇足のような気がするのです。

 黒澤「三悪人」では、最後のシーンの「裏切り御免!」というセリフの重みがありますので、それでいいのですが、「The Last Princess」の場合はこの「裏切り御免!」の名セリフを無理やり武蔵に言わせるために取って付けた感が・・。

 しかも、そのエンディングに続けて布袋寅泰らの歌う主題歌「裏切り御免」をかぶせるとは・・・。

 この名セリフを軽いノリの主題歌にしたことで、相当な敵を作ってしまったようですよ、樋口真嗣監督!

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

裏切り御免

裏切り御免

(The Three)

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト64” coming soon!

 

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