<Back | Next>
「Blue Island」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2022.4.16】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 アメリカが最も恐れた男”プーチン”

 今回のcinemaアラカルトは、完全に『番外編』となります。

 何故かと言えば、現在、各種動画配信サイトで放映開始が目白押しとなっていながらもネット上に殆ど解説や画像が存在しないネット配信映画だからです。

もちろん、劇場公開もされていない。

 このドキュメンタリー映画こそ『アメリカが最も恐れた男”プーチン”』・・って、そのまんまでしたね(笑)

アメリカが最も恐れた男”プーチン”

 そんなワケで画像はありませんから、いつもより短く感想を述べてみたいと思います。

 この二週間は劇場にもいかず、家での毎夜の映画鑑賞は『NCIS 〜ネイビー犯罪捜査班』を第1シリーズからずっと再視聴してたので、cinemaアラカルトは一回お休みにしようかと考えていました。

 そして本日、昼食の後のグダグダ時間にAmazonプライムの放映リストを眺めていましたら、この『アメリカが最も恐れた男”プーチン”』がラインナップしていたのです。

 おそらくロシアのウクライナ侵攻の影響もあるのでしょう、検索してみるとU-NEXT、Paravi、Hulu、ヒストリーチャンネルなど、あらゆる動画配信サイトで配信が開始されていました。

 いつも実際に書き出す前に、Wikipediaやallcinema、映画.comなどで全体像を再確認しているのですが、そのいずれにも取り上げられていない。なのに、Amazonの視聴者評価では★4つの好評価。

 そんな訳で、配信サイトの短い解説しか情報がなく詳しいことは不明ですが、当初公開は2019年、アメリカの”HISTORY”(かつての「ザ・ヒストリー・チャンネル」で、プーチンの子供時代から現在(2019年まで)を追ったドキュメンタリー作品(1時間25分)です。

製作は2018年、リンカーンスクエアプロダクション。

 映画では、1991年のソ連崩壊から2019年までの約30年間のロシア現代史とその中でのプーチンの遍歴が扱われていて、実に興味深く視聴しました。

プーチンを後継者に指名して大統領を辞任するエリツィン

 プーチンは子供時代、階段の手すりも壊れたままのボロアパートに住む貧しい暮らしをし、その上小柄であったため、長くいじめに遭っていた。

 長じて、そうした境遇から抜け出すために、当時のソ連の最強スパイ組織KGBを目指したが門前払いを受ける。

「入りたければまず大学へ行け。それも法科がいい。」・・KGBがそんなアドバイスをしたことも驚きだが、プーチンはその通りの進路を目指し、数年後、KGBに採用される。

ドイツで発見されたKGB身分証

 だが、最初の任務地はエリートが配属されるアメリカや西欧ではなく東ドイツのドレスデン・・彼は、KGBの中でも目立たぬ存在だったのだ。

 その東ドイツで1989年11月9日、ベルリンの壁が崩壊し、彼は命からがら脱出して国に戻るが、当時のソ連は既にガタガタの状態。遂には1991年のソ連崩壊でKGBの職も失う。

 食うに困ったプーチンは自家用車で闇タクシーの運転手をやって糊口をしのぐ。「元は運転手」と呼ばれるのは、この時の事があったからだ。

収録後に死去したマケイン氏

 こうした話が、プーチン研究者や元KGB将軍、共和党の大統領候補であったマケインなどへのインタビューで綴られる。(制作者側のコメントは一切入らない。)

 彼が大統領への階段を駆けあがる契機となった二つの事実が興味深い。

 その一つが、旧KGBのコネクションを活かして、新たに就任したレニングラード市長から副市長に抜擢された時の話。

 食糧難にあえぐ市民のため外国から食糧調達を任されたが、そこで架空契約を結んで当時の金で1億ドルを自分の懐に収めていた事実。

これが、その後の立身出世の裏付けになった事は想像に難くない。

100万人が餓死したレニングラード包囲戦(1941年)

 また、新生ロシアの民主化を目指したエリツィンは晩年汚職にまみれ、自分を守る後継者として ”忠犬”であったプーチンに白羽の矢を立て、首相に抜擢する。

 無名だったプーチン首相が一躍”時の人”となったのは、1999年のモスクワのアパート爆破のテロ事件。その犯人をロシアと敵対していたチェチェン独立派と決めつけたプーチンは(完全な越権行為だが)、軍にチェチェン侵攻を命じ、血の虐殺を持ってチェチェン独立運動を打倒したことで英雄となる。(第二次チェチェン戦争)

今度はウクライナに投入情報

 映画の中では、百数十人を爆殺したアパート・テロ事件の黒幕がプーチンもしくはその背後のFSB(ロシア連邦保安庁:KGBの後身。プーチンはその長官だった。)の関与を匂わせているが、まあ、そこは「研究者」の私見だろう。

 だが、今回のウクライナ侵攻で明らかになった偽旗作戦のフェイクを考えれば、あながち遠からずの真実かなと考えさせられる。

 印象に残ったのは、映画のラストで語られたいくつかの言葉。

「彼の没落の日は恐らく唐突に訪れる。他の独裁者たちと同様にだ。」

「最後に勝つのは我々だ。連中は力を握っているが、我々には真実が味方している。」・・・ロシアの反プーチン派

「だがプーチンにとって真実と呼び得る教えは一つしかない。”世界は力ある者の足元にひれ伏す”だ。」

毒殺を図られた野党指導者ナワリヌイ氏(右)

 映画公開直後に書き込まれたユーザーレビューでは、この映画が「アメリカによる悪質なプロパガンダだ」「プーチンがそのような事をするはずがない」という意見が多かったのだが、どちらが真実を見抜いていたのか、今となっては歴然かな。

 もちろん当のアメリカも他人の事を言える義理でなく、大量破壊兵器があるという偽情報で、イラクに同様なことをやったのはご承知の通り。

 プーチンにしてみれば、かつてチェチェンで、ジョージアで、そしてクリミア半島侵攻での成功体験を繰り返しているだけ。きっと「何で今回だけ!」と、国際社会の反発を訝っているに違いない。

 とまあ、いろいろな事を考えさせてくれた映画でした。

 ドキュメンタリーとは言え、この手の作品は必ず制作者側の意図でバイアスがかかるもの。多少、斜めから観るくらいの気持ちで見た方がいいと思います。

 少なからずプーチンの考え方や行動への、理解の一助にはなるはず。

 今なら、殆どの動画配信サイトで無料放映中です。

 

/// end of the “cinemaアラカルト300「アメリカが最も恐れた男”プーチン”」”///

 

(追伸)

岸波

 このcinemaアラカルトも遂に300篇到達。ということは、次回からパート2に突入して、新たな装いとなります。

目次の情報が多すぎると、サイト転送やページの読み込みに時間がかかるためです。

 順番から言うと、次回はカリスマ彰編なので、新コーナー一発目は彼に取られちゃいますが(笑)

 第一集の最後の作品だったのに、なんかヘンなのを入れちゃってすみません。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト2”で・・・See you again !

ジ―サンズ/初めての強盗

(本当はこちらを書くつもりだった・・。)

eメールはこちらへ   または habane8@ybb.ne.jp まで!
Give the author your feedback, your comments + thoughts are always greatly appreciated.

 

To be continued⇒  “cinemaアラカルト301” coming soon!

 

<Back | Next>

 

PAGE TOP


bannerCopyright(C) Habane. All Rights Reserved.