こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
敵の敵は味方
5人の女性スーパー・エージェントが世界を救うために大活躍をするという新作映画『355』をケイコと観てまいりました。
ところがっ!!!
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355
(C)2020 UNIVERSAL STUDIOS. (C)355 Film Rights, LLC 2021 All rights reserved.
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なんか見終わった後の印象が散漫で、ストーリーの辻褄を一生懸命考えるのですが、合点がいかない。
もしかして・・カリスマ彰ばりの「絶対に観てはいけない映画」を観てしまったのか?そうなのか!?
ということで、さっそくレビューでございます。
各国の女性エージェントが集結!!
国際テロ組織から秘密兵器を奪還せよ!
危険なミッションに挑むスパイ・アクション
映画の冒頭、南米コロンビアのどこかの街中で国際テロ組織の幹部メンバーが地元の麻薬王と接触。
この麻薬王は自分の息子が作りあげたスーパー・デバイスを高値で売り込もうとしているらしい。
「それで何ができる?」と問われると「何でも」と答え、「試しに今、窓の外を飛んでいるジェット機を見てくれ」と言うと、息子が何やらデバイスを操作。
すると・・突然制御を失ったジェット機が、その場で墜落。(あらぁ~!)
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355
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「これはあと幾つある?」とテロ組織。
「世界に一つだけだ。次の一つを作れば前のデバイスは機能しなくなる」と息子。
「そうか分かった」と言うなり、ボスは麻薬王の親子を銃で殺害。ええええ~!?
かなり無茶苦茶な出だしです。大丈夫なんだろうか、この映画(笑)
しかし、ハチャメチャはこれで終わらない。
両者の接触を大口の麻薬取引と思い込んだコロンビアの特殊部隊が現場を急襲。
麻薬カルテル側は全滅、テロ組織が逃げ出す中で、特殊部隊に同行していたコロンビア諜報員ルイス(エドガー・ラミレス)が奇妙なデバイスを発見。
コレは金目になりそうだと考えたルイスは、ソレをポケットにしまい込むと、コロンビア政府を裏切って遁走(笑)
諜報員ルイス
麻薬王の息子が極秘開発したスーパー・デバイスが奪取されたという情報が、(誰も言わないのに)何故か世界中のスパイ組織にたちまちのうち拡散。
デバイスを回収するため、CIAやMI6、中国情報部などが、それぞれ(何故かみんな)女性エージェントを派遣する。
あとはもう、各国くんずほぐれつの大乱闘の銃撃戦。
さて、デバイスは誰の手に? はたまた、女性エージェント達の運命や如何に!!?
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355
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まあ、ここまで書いて自分で大笑い。何とも無茶苦茶な脚本に合点がいかない事だらけのストーリー。
話の核となるスーパー・デバイスですが、これ一つあれば世界を征服できるというシロモノなのに、見た目はフツーの大型スマホ(笑)
その機能は、世界中のどんなネットワークやコンピュータ・システムでも瞬時にハッキングできるという触れ込みだけれど荒唐無稽過ぎる。
世界征服もできるスグレモノの筈なのに、各組織の扱いが非常にぞんざい。闇のオークションに出品されたり、簡単に奪われたり奪い返されたりする。
だいたい最終兵器をポケットに入れて持ち歩くなよ、オマエラ!(笑)
ともあれ、映画の主人公である5人の女性エージェントたちは以下。
まずは米国CIAのメイス(ジェシカ・チャステイン)。
相棒のニック(セバスチャン・スタン)と夫婦者を偽装して、デバイス奪還に当たる。
でもニックが簡単に殺されて退場すると、作戦停止を命じるCIA上司の命令に逆らって単独でデバイスを追う。(あらぁ)
メイス
お次がドイツ諜報部BNDのマリー(ダイアン・クルーガー)。
序盤でCIAメイスらとド派手な攻防戦を繰り広げるが、殺し合ったこともアッサリ忘れて協力し合う関係に。
なお、同じBNDだった父親がKGBの二重スパイだった事が明かされるが、ストーリーとは全く関係なし。
マリー
そして、英国MI6のハディージャ(ルピタ・ニョンゴ)はサイバー専門家。
CIAのメイスとは腐れ縁の仲で、単独行動になった彼女から協力を求められると、MI6とは全く関係なしに個人的協力をするハメに。
個人的・・とは言え、相手は第三次世界大戦を目論む国際テロ組織なんですけど(笑)
ハディージャ
四人目はコロンビアDNIに所属する心理学者グラシエラ(ペネロペ・クルス)。
はい、所属こそスパイ組織ですが、彼女の役目は諜報員たちのセラピスト。もちろん戦闘経験など無い。
そんな彼女がなぜ同一行動を取り始めたかというと、ひょんなことで強奪犯人のスマホの起動に彼女の指紋認証が付加されてしまったため。う~んご都合主義(笑)
グラシエラ
最後は中国MINISTRYのリン(ファン・ビンビン)。
登場は、いきなりCIA本部でメイスの上司である上級諜報員クラークを射殺。どうやってフツーに入って来たのか、フツーに出て行ったのかは謎。
あげく、同一行動を取っていた上述四人の女性エージェント(独立愚連隊?)の前に現れると「私もアナタたちの仲間よ」と。おい、中国は関係なしかい!(大笑い)
リン
ね、凄いでしょう、この破綻ぶり。
国籍も人種も違う美女5人が(組織関係なしに)協力して、世界を第三次世界大戦から救いたいのだという事は何となく分かりますけど。
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355
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なんでこの映画を作ることになったかと言いますと、どうやら最も主人公格であるCIAのメイスを演じたジェシカ・チャステインが戦犯(失礼!)のよう。
彼女は『007』や『ミッション・インポッシブル』のようなシリーズ映画を女性スパイが主導する形で作りたいと発案。
その話を持ちかけたのが『X-MEN:ダーク・フェニックス』(2019年公開)を演出したサイモン・キンバーグ監督。
協議中のジェシカとサイモン
で、以後は二人が中心になって制作を進めるのですが、そもそもキンバーグ監督って上記が初監督作品で、『X-MEN』史上、最低の興行収入を記録してしまった人なんですよね。うむぅ・・。
チャスティンの気持ちは何となく分かる・・『チャーリーズ・エンジェル』とか『オーシャンズ8』とか『ハーレ・クイーン』とか、(自分を中心に)美女をズラッと並べれば、きっとヒットするのではないかと。
『オーシャンズ8』
でも、そういう映画って、ほぼ例外なく大コケしてるんです。
今回の『355』でも、あちらこちらで戦闘が起こるたびに出番が入れ替わり、「あれコレは誰の話だっけ?」とシークエンスが思い出せない。
メイクのせいでメイスとマリーの印象が似ていることもある。
ケイコと映画を見終わった後、「そもそもタイトルの"355"って何?」という話をしましたが、コレについては全く説明が入らない・・というか、一度も言葉が出てこない。
仕方なく後で調べてみましたが、18世紀のアメリカ独立戦争の時、後に初代大統領となるジョージ・ワシントンが設立した『カルパー・リング』というスパイ組織があり、"355"はそこに所属した一人の女性エージェントのコードネームだそう。
はい「一人」です、「チーム名」ではありません。
で、今回の映画の女性エージェントたちも「自分たちは"355"」などとは思っていません。つまり、映画とは全く関係ないタイトル。雰囲気だけのネーミング。
あらぁ、何から何までボロボロですね、こりゃ・・。
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355
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むしろ気になったのは、この『355』は劇場公開終了後、直ちにネット配信(定額制動画配信サービスPeacockにて独占配信)されるという情報。
僕が観ているAmazonでもそうですが、こういうパターンは最近多いです。
しかも、AmazonやNetflixもディズニーも、ネットだけで公開するオリジナル作品をどんどん世に出しています。
「映画は劇場で公開すべき」とするPie造さんなどは数年前から警鐘を鳴らしていました。いわく「劇場映画が死滅してしまう」と。
しかし、ここ最近のアカデミー賞のノミネート作品について調べてみましたら、かなりあるんですね・・劇場公開無しで動画配信だけされた作品のノミネートが。
『ドント・ルック・アップ』
例えば、今年のアカデミー賞で4部門にノミネートされているNetflixオリジナル作品『ドント・ルック・アップ』など。
制作者にとっては公開が劇場であろうとネットであろうと大きな収入を得られればいいのですから、ホームシアター・ルームなどを持った裕福な家庭が増えてくれば、この傾向にはますます拍車がかかるかもしれません。
すでに、ビデオやブルーレイ映画のレンタル業者はどんどん廃業している現実もあり、技術の進歩によって世界が変わって行くのは仕方のない事なのでしょうか。
映画館で育ったような僕としては何か淋しいです・・。
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再会したニックとメイス
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ストーリーの方は、とにかくあちらこちらで女性スパイたちの銃撃戦が繰り返されて、デバイスを奪ったり奪われたりするのですが、終盤でいきなり敵の正体が明らかになる。
デバイスの入手を企んだのは国際テロ組織そのものではなく、その組織で「金庫番」を務める男クラーク(ジェイソン・フレミング)、そして序盤で殺された筈のCIAの相棒ニック(←実は死んでいない)とメイスの上司でCIA上級諜報員のマークスの三人が共謀。(ぅわ、話、小っちぇ!)
なんで「いきなり」正体が分かるかと言えば、後から登場した中国のリンが「そーだったのよー」と暴露。(えええ~!)
何なんでしょうねコレ。脚本書いたの誰か知らないけど、中学生でしょうかね。
共同作戦が成功し、デバイスを破壊した2か月後の後日談が映画のラストシーン。
何故か犯人の一味だった元相棒のニックがCIAに復帰して、CIA長官に出世している。(これも全く説明なし。)
そこに現れた女性エージェント5人組が、驚くニックを取り囲んで大ミエを切るところで終劇。
いやコレ、ネット配信しても誰も観ないと思うんだけど(笑)
/// end of the “cinemaアラカルト292「355」”///
(追伸)
岸波
この映画、目指したのは「女性活躍社会」ならぬ「女性活躍映画」なのでしょうか。
でも思うのは、昔から「男女共同参画」などと言って設立された公的機関がやっていることは、女性の応援ばかりのように感じます。
「今が男性中心社会だから結果として女性を応援することになる」という理屈かもしれませんが、やってる事はその昔の「ウーマン・リブ」とどこか違うのでしょうかねぇ・・。
今回の5人の女性主人公たち、確かに国籍も人種も様々ですが、日本は出て来ません。
AmazonプライムのアメリカのTVシリーズなどでも、出てくる東洋系は中国人(韓国系も一部)。『スター・ウォーズ』もそうでしたね。
やっぱり、中国の巨大マーケットを見て映画作ってるんだ・・。
~と考えて、ハッとしました。
「日本人でこの映画に出演できる女優さんがいるだろうか?」
ちょっとセクシーで体術もこなし英語堪能な女優さん・・見つからない!
そのせいなのか!? 居ないのか!?(う~むぅ・・)
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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「355」のペネロペ・クルス(いちばんキレイ♪)
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