<Back | Next>
「AUTUMN」(Music Material)
by 岸波(葉羽)【配信2021.12.11】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 な ぜ 挑 む の か

 いつものようにAmazonプライムの映画を物色していましたら、『Primeでの配信は12日以内に終了』というビックリマーク付の告知があり、その中の一つ『スター・トレック』(2009年版)に目に留まりました。

 ご承知のように『スター・トレック』シリーズは、TV版・劇場版を始めアニメ版・小説版など膨大な作品群があり、いったい自分がどこまで観たのか思い出せない始末。あらららら・・。

スター・トレック(2009)

(C)2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks
and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.

 ということで、まずはその『スター・トレック』(2009)を観てドハマりし、一夜のうちに続編『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013)から三部作の完結編『スター・トレック BEYOND』(2016)まで一気見してしまいました。

 上述の劇場版11作から13作に至る三部作は、『ケルヴィン・タイムライン』と称される平行世界もの。

 これに対し、それ以外の時系列が連続した作品群は『プライム・タイムライン』と呼ばれます。

 さて、『ケルヴィン・タイムライン』のスター・トレックシリーズはどこが面白いのか、早速、その内容です。

 第11作『スター・トレック』(2009)の冒頭、時は2233年の辺境宇宙。宇宙船USSケルヴィン号は雷を伴う巨大な宇宙嵐に遭遇し、その中心部から異形の巨大宇宙艦が出現する。

 これはロシュラン人のネロが操艦する宇宙艦ナラーダ号。プライム・タイムラインの2387年にブラックホールに呑み込まれ、2233年にタイム・リープして来たのだ。

スター・トレック(2009)

(C)2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks
and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.

 ネロは、母星のロシュラン星が超新星爆発に呑み込まれようとした時に、スポックのバルカン星に助けを求めたが間に合わず、母星もろとも妻子を失ったことで逆恨みし、バルカン人、ひいては彼らが所属する惑星連合全体を滅ぼして怨念を晴らそうとしていた。

 遥か未来の破壊力を持つナラーダ号の攻撃を受け、USSケルヴィン号はたちまちのうちズタボロに。船長は捕えられ、乗員800名の命運は副長ジョージ・カークに託される。

 カークは総員退艦の命令を発し、自分一人が囮となるため艦に残り、ナラーダ号への特攻を行う。退艦した身重の妻が脱出船で子供を産んだ報告を受けると、子供にジェームズと名付け、妻への愛を叫びながら特攻して果てる。

この子が本シリーズの主人公となるジェームズ・T・カーク。

 時は流れ、ジム(ジェームズ)は成長して宇宙艦隊候補生に。やがて、母星をネロによって破壊されたバルカン人のスポックと邂逅し、ネロの陰謀を阻止するために立ち上がる。

 さて、闘いの結末や如何に。そして、改変された宇宙の時間軸はどうなってしまうのか・・というストーリーです。

 結論から言えば、未来人ネロに改変された時間軸は2233年の時点から分岐し、新たな平行宇宙での歴史を歩むことになります。

 したがって、我らが知る『宇宙大作戦』以降のカーク船長の活躍とは別に、この時間軸の若きカークやスポックは新たな冒険に立ち向かうのです。

 ある意味では、過去の作品を無かったことにして新たに組み立てるリブートと同じ効果があるワケですが、ここでもプライム・タイムラインの流れと辻褄を合せようとする・・さすがは『スター・トレック・サーガ』です(笑)

 若きクルーの年代に合せてキャスティングも一新。映像技術も格段に進歩。これはたまりませんね。

スター・トレック(2009)

(C)2008 Paramount Pictures. Star Trek and Related Marks
and Logos are Trademarks of CBS Studio Inc. All Rights Reserved.

 最初の作品TV版の『宇宙大作戦』がオンエアされたのは1966年・・僕が中学一年生の時でした。

 当時は『宇宙家族ロビンソン』があったり、プロレス中継と交互に放映された『ディズニー・ランド』の「宇宙の国」が楽しみだったり、アメリカのアポロ計画が動き出したりと、宇宙への興味を掻き立てるモノが溢れていましたから、当然のように『宇宙大作戦』にも大ハマりしました。

「宇宙大作戦」

 カーク船長やスポック副長を始めエンタープライズ号のクルーたち・・マッコイ医療主任や陽気なスコット機関長、日系らしきカトー主任らそれぞれに思い入れがある。

カトーは日本での配給社が馴染みやすいよう改変した名前で、オリジナルではヒカル・スールーという名だった。(それでも日系人ぽいけど:笑)

 今回の『スター・トレック』は、若き日に僕らが夢中になった『宇宙大作戦』の物語を、まるでがタイム・スリップでもしたような感覚で、もう一度味わえるのです・・これはたまりませんね!

 特にスポック役のザカリー・クイントは、初代スポックのレナード・ニモイに実によく似ている・・素晴らしい!

新スポックとカーク

 そして、カークとスポックの確執。スポックはバルカン人で見た目は地球人と近いですが、思考回路が別モノ。感情を極力抑制し物事を理詰めで判断するので、カンピューターのカークと意見がことごとく食い違う。

 まあ『宇宙大作戦』では、ここまででは無かったと記憶していますが、今回の『スター・トレック』では、空気が読めないほど際立って対立する。そこが面白い。

 もう一つは、若きジェームズ・T・カークの性格付けが面白い。

 『宇宙大作戦』のカークは真面目で信頼できる船長でしたが、今度のカーク(クリス・パイン)は、自分の意見を通すためなら傍若無人に振舞ったり、時にはズルもする。

 例えて言うなら『ジョジョの奇妙な冒険』の二代目ジョジョ、ジョセフ・ジョースターのような性格。

さしずめ『宇宙大作戦』のカークは、英国紳士の初代ジョジョ、ジョナサン・ジョースターでしょうか。

ジョセフ・ジョースター

 予測不能な無茶をするという主人公が、たまならく面白いのです。その意味では、主演のクリス・パインは実にはまり役ですね。

スター・トレック イントゥ・ダークネス(2013)

(C)2013 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 第12作の『スター・トレック イントゥ・ダークネス』では、溶岩地帯に落下して取り残されたスポックを、カークはクルーの危険も省みずに救出に向かい、本来、姿を見せてはいけないその惑星の原始人類に宇宙船を目撃されるというミスを犯す。

 自分の命を救われて感謝されると思ったら、逆に「合理的な判断ではない」と責められる。あげくは、内緒にすべきミスをスポックが惑星連合に報告し、カークは窮地に。

 「お前を救うためだったろう!」とナジられるスポックは「バルカン人は嘘を付けませんから」と涼しい顔。これにはもう大笑い!!

 そんな意見が合わない二人だけれども、次第に互いを理解するようになり、今度は逆にスポックが命を賭してカークを救ったり。

 う~ん・・『スター・トレック』って”成長の物語”だったんだなと認識を新たにした次第。超クールな男がアツくなる・・これは少年ジャンプの黄金パターン! 見ているこちらも胸アツですよ。

 この『イントゥ・ダークネス』でのサプライズは、カークの死。(ええ~!)

 制御を失って墜落しつつあるエンタープライズ号を回復させるために、カークは死を覚悟して高放射線エリアに入り、手動でシステムを復旧させ、そのまま死んでしまうのです。

 まあ、プライム・タイムラインでもスポックが死んで生き返るストーリーがあったし、主人公を殺せば映画が続かないはずと、自分を落ち着かせようとしましたが、さすがにビックリ。

 もちろん最後にはウルトラC(死語?)の手段で生き返るのですけれど、タイムリミット・サスペンスの要素もあり、ハラハラドキドキでした。

 やはり『スター・ウォーズ』や『ミッションインポッシブル』を撮ったJ・J・エイブラハム監督の手腕は大したものです。

スター・トレック BEYOND(2016)

(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 映像的に凄かったのは、第13作『スター・トレック BEYOND』(2016)。

 5年間の宇宙フロンティア探索に出たエンタープライズ号は、辺境の宇宙基地ヨークタウンに立ち寄りますが、このヨークタウンは独立した人工惑星になっています。

 しかもそれは『スター・ウォーズ』のデススターのように、惑星表面に居住区があるのではなく、ウネウネとしたベルトの表面に都市が建設されている。

 このベルトに重力を発生させているので、天空のベルトを見るとテンデンバラバラな方向にビルが林立している。

 終盤ではこのベルト都市での戦闘も描かれるのですが、未来感ハンパない。

 もう一つは『BEYOND』の敵役となる謎の男クラールが操る戦闘艦群。これはもう蜂の大群ですね。何万、何十万の小型戦闘艦が群れで襲ってくる。エンタープラーズ号の重厚長大な砲は全く役に立たない。

 なるほどなぁ、こういう手があったか・・と唸らせる斬新な攻撃手段でした。

スター・トレック BEYOND(2016)

(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

 新しい『スター・トレック』を一気に鑑賞できて大変満足しています。そうそう・・大事なことを書き忘れていました。

 この新シリーズには、驚きのキャラクターがサプライズ登場しているのです。それは、初代スポックのレナード・ニモイ!

 ネロによって母星バルカン星が消滅させられる事を知り、時間軸の流れを元に戻すため、自らタイプ・リープしてこの時代に降り立っていたのです。

老スポック/レナード・ニモイ

 結局、ネロの暴挙を阻止することは叶いませんでしたが、その後もこの時間軸にとどまり、若きカークや若き自分自身を陰になり日向になり導いて行きます。

 そして最終話『BEYOND』では彼の死が語られ、エンディング・ロールの最後には「この作品をレナード・ニモイに捧ぐ」の献辞が。

 そうです・・彼は第12作『イントゥ・ダークネス』に出演した後、2015年2月に慢性閉塞性肺疾患でこの世を去っていたのです。

 彼の人生最期のツイートは“A life is like a garden. Perfect moments can be had, but not preserved, except in memory. LLAP”(人生は庭園のようなものだ。ときに完璧な瞬間があっても、それは束の間で、思い出に残るのみ。長寿と繁栄を)でした。

 僕らに青春の夢を与えてくれたレナード・ニモイの魂よ、永遠なれ。

 

/// end of the “cinemaアラカルト281「スター・トレック/カルヴィン・タイムライン三部作”///

 

(追伸)

岸波

 現在、CBS制作のTVシリーズ『スター・トレック:ディスカバリー』と『スター・トレック:ピカード』、さらに『Star Trek: Strange New Worlds』が平行して放映されています。

 TV放映・・と言いましたが、正確に言えば「映像配信」。ネット社会になり、"Paramount+"によるストリーミング配信になっています。

 でもね・・劇場版のような感動はないのですよ。どこか大人しくて。

 やはりSF超大作は劇場で観ないとダメですね・・って、今回の三本をネットで観た僕が言っても説得力ないか(笑)

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

スター・トレック BEYOND(2016)

(C)2016 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

eメールはこちらへ   または habane8@ybb.ne.jp まで!
Give the author your feedback, your comments + thoughts are always greatly appreciated.

 

To be continued⇒  “cinemaアラカルト282” coming soon!

 

<Back | Next>

 

PAGE TOP


bannerCopyright(C) Habane. All Rights Reserved.