こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
その瞬間、運命もさかさまに転覆し始める。
さて、今回の映画は6月3日封切りの「ポセイドン」。
この映画は、必ず見ようと心に決めていたのです。
何故ならば、この作品のオリジナルである「ポセイドン・アドベンチャー」は、何回目かの映画どっぶり人生に嵌るきっかけとなった思い出の名画だからです。
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ポセイドン
(C)2006 Warner
Bros. Entertainment Inc.
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「ポセイドン・アドベンチャー」は、大波に呑まれて転覆した豪華客船ポセイドン号から、生き残りの乗客たちが力を合わせて生還しようとする脱出劇で、“パニック映画”というジャンルを築いた記念碑的な作品でした。
その名シーンも数々・・・
水中に潜らなければ脱出できない場面で、か弱いおばあちゃんが躊躇せず飛び込み、「私は昔、水泳の選手だったの」と語るシーン・・。
脱出行の最後の最後で灼熱の障害物に道を阻まれ、リーダー役の神父(ジーン・ハックマン)が天に向かい「神よ、私たちを助けてくれとは言いません。でも、邪魔だけはしないでくれ!」と絶叫し、焼ける障害物を素手で持ち上げて仲間たちの犠牲になるシーン・・。
30年以上過ぎた今でも、脳裏に焼きついて離れません。
また、惨劇から一夜明けたシーンでは、アカデミー賞主題歌賞を受賞した名曲『The
Morning After』の美しい旋律が印象的でした。
さて、21世紀の「ポセイドン」は、我々にどのようなカタルシスを与えてくれるのでしょうか?
今回の「ポセイドン」の演出は、あのヴォルフガンク・ペーターゼン監督。
出世作「U・ボート」では潜水艦を、「パーフェクト・ストーム」では漁船をテーマにして壮絶な海難スペクタクルを描いてきた人物です。
最新CG技術を駆使して、スペクタクル・シーンをどのように再現するのか、期待はいやがうえにも高まります。
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船内パーティ
(in
ポセイドン)
(C)2006 Warner
Bros. Entertainment Inc. |
映画の開始早々、ポセイドン号がスクリーンに登場するシーンで驚きました。
超巨大客船の周囲をゆっくりと巡るようにカメラが移動するのですが、そのスケール感は圧倒的!
船というよりは、むしろ“海上都市”とでも呼びたいほどの雄姿です。
さてストーリーですが、場所は北大西洋上、時は大晦日。
船内では、ニューイヤーを迎えるための華やかなパーティが進行し、やがて脱出行をすることになる主人公たちが順ぐりに登場します。
あれ?
どしたの?
神父が出てこないんだよ。
・・・そうなのです。
前作でメインの主人公であった神父の役柄が登場しないばかりか、“水泳の選手だった”老婦人らしき人物も登場しないのです。
今回の「ポセイドン」は、前作「ポセイドン・アドベンチャー」のリメイクではなく、プロットだけを採用した別のストーリーの作品(オマージュというべきか?)だったのです。
(ということで、決死隊のメンバー構成も全く別です。ただし、前作に登場した少年は今回も登場していて、「ファイヤー・ウォール」でハリソン・フォードの息子に扮したジミー・ベネットが好演しています。)
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元消防士のラムジー(右)
(カート・ラッセル)
(C)2006
Warner Bros. Entertainment Inc. |
映画の開始から10分を過ぎた頃、思いつめた表情の老人がデッキから投身自殺を図ろうとします。
ところが、海の音に違和感を感じて遠方を見つめると、何かが向こうからやってくるのです。
おっと! 凄いスペクタクル・シーンです。
それこそ月まで呑み込もうかという巨大津波!
自殺志願の老人は、命からがら(?)船内に逃げ出すのでした。
この巨大津波に直撃されて、真っ逆さまに転覆するポセイドン号。
船内はまさに阿鼻叫喚の巷!
命を永らえたのは、ニューイヤー・パーティにいたごく一部の船員・乗客のみ。
船長は“隔壁を閉鎖して閉じこもれば救援隊が助けに来る”と主張しますが、ギャンブラーのディラン(ジョシュ・ルーカス)は船長の言葉が気休めであることを察知し、上下逆さになった船底部へ昇ってスクリューから脱出しようとします。
彼に賛同し行動を共にするのは、老若男女8名のみ。
しかし、彼らに次々と襲いかかる火の壁、濁流・・・一難去ってまた一難、最後まで生き残れるのは誰なのか?
手に汗握る、息つくヒマも無いストーリー進行とは、まさにこの事。
特に、水没した通路を泳いで潜り抜けるシーンなどは・・・
・・・・・・。
ケイコっ、苦しいのか? どした?
プハァーッ。
ちゃんと息くらいしろよ! (いくら息つく暇もないからって。)
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脱出行
(in
ポセイドン)
(C)2006 Warner
Bros. Entertainment Inc. |
ところで、この映画、全国での興行成績は今ひとつだったようです。
感想サイトをサーフィンしてみると、辛口批評をしている人の論点は三つあるようです。
その一つは「ポセイドン・アドベンチャー」の忠実なリメイクでなかったことに失望したというもの。
確かに、旧作の感動のストーリーを最新SFXで再現すれば、それはそれで素晴らしい作品になったかも知れませんが、それではただの二番煎じというものでしょう。
もう一つは「タイタニック」の方が泣けたという主張。
うむぅ・・沈没船内部の出来事という点では一緒かもしれませんが、アチラは男女愛がテーマですし、「ポセイドン」は息もつかせぬサバイバル・アクションがテーマなのですから、“泣き”を求められても困ってしまうでしょう。
そして三つ目が「人物の描き方が浅くて感情移入できない」といもの。
これはある意味、言えていると思います。
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THE POSEIDON ADVENTURE
←こちらがオリジナル。 |
脱出を図る一行全体が主人公として描かれているため、特定の個人への思い入れはあまり生まれないのです。
これに対しては、ペーターゼン監督自身が次のように答えています。
「“ポセイドン”では、何よりもスーパーリアズムを追求したかった」のだと。
なるほど・・。
つまり、フィクションとしての人間ドラマを描くより、観客が実際その場にいるような臨場感とサバイバル・ストーリーを描きたかったのでしょう。
そう言われれば、人物像の説明を最小限に抑えて話をスピーディに進行させ、全体を90分という短尺に収めた意図も理解できます。
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出口はどっちだ?
(in
ポセイドン)
(C)2006 Warner
Bros. Entertainment Inc. |
ケイコ、感想はどうだった?
面白いんじゃない。(アメリカの映画にしては)
ほぅ・・。 (いつも辛口なケイコが珍しい。)
これが日本の映画なら、誰かが犠牲になる度に泣けるように作るわね。
ああ、「海猿」みたいにね。
だけど、“どうやってピンチを切り抜けるか”という事に絞ってるからシンプルで判りやすいのよ。
自分がその場にいるみたいだものね。ん・・・ケイコぉ
どしたの?
もし、ああいう事になったら、必ずボクが守ってあげるね。
んー、パニックの時は近くに寄らないで。
←(足手まといかよっ!)
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賭博師ディラン
(ジョシュ・ルーカス)
(C)2006
Warner Bros. Entertainment Inc. |
この映画の撮影には、9万ガロンの水が使われたそうです。
もう、全編水びたし・・・息苦しいったらありゃしません。 (ハァハァ・・)
だけど、いったん見始まれば一気に引き込まれる事ウケアイです。
ただし注意点が一つ・・・まっさらな気持ちで見るのがいいです。
「ポセイドン・アドベンチャー」や「タイタニック」と比較しようとするのは間違いだと思います。
そもそも、「リメイク」でなく「オマージュ」、「人間ドラマ」でなく「パニック映画」なのですから。
/// end of the “cinemaアラカルト27「ポセイドン」” ///
(追伸)
岸波
そう言えば、ポセイドン辛口批評の類型にもう一つありました。
それは「伏線を張りまくっているが、結局活かされていない」というものです。
一行のリーダー役のラムジー(カート・ラッセル)は、かつて消防士の英雄でニューヨーク市長を務めていた人物とされています。
また、序盤で何か悩み事を抱えて投身自殺しようとしていた老人(リチャード・ドレイファス)はゲイの建築家という触れ込みです。
うむぅ・・・確かにそういう設定は、ストーリーに絡んでこないなぁ。
でも、“もしかして”と思うことがあるのです。
この「ポセイドン」は、上映終了後の早い時期に、ディレクターズ・エディションのDVDが出るらしいです。
ということは、そちらの版に「伏線」を活かすようなシーンが追加されるのではないか?
そうすれば、90分という短尺の映画では説明できなかったことも補足できるし、DVDを買わなければ完全版を見ることができないということで、そっちも売れる・・・ホラ、完璧な戦略でしょ?
←(ま、そんなことも無いと思うが。)daddy
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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元市長の娘ジェニファー
(エミー・ロッサム)
←ジェニファーの父ラムジーは、
元消防士で元NY市長という設定。 |
eメールはこちらへ または habane8@ybb.ne.jp まで!
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To
be continued⇒ “cinemaアラカルト28” coming
soon!
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