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「Glidin'」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2021.11.20】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 人生は終わりなき舞台。

 あれれれれ・・? デジャブですか、これはデジャブですか!?

 はい、cinemaアラカルトその267で僕が書いたレオス・カラックス監督によるフランス映画『ホーリー・モーターズ』のキャッチコピーですね。

 と、いうことは・・・

ホーリー・モーターズ

(C)Pierre Grise Productions

 今回のカリスマ彰編は"もろ被り"ということになります。

 これはもしや、彰がクリストファー・ノーラン監督を"能無し"と酷評した「237」・「238」に対し、僕が239『クリストファー・ノーランとは何者か?』で再評価したことの意趣返しか?(笑)

 いやいやいや、たまたま被ってしまったようでございます。

 ではカリスマ彰、よろしくお願いします。

岸波さま 次回のシネマ・アラカルト原稿です。 なんと、カブッテますな。 「ホーリー・モーターズ」! たまにはいいんじゃない笑。

◆「ホーリー・モーターズ」(2012年 レオス・カラックス監督 1時間55分)

 夢の中で彼は、
 見たこともない、
 もう一つの扉を見つけた---。

 TV録画してあった映画「ホーリー・モーターズ」を見た。

 カラックス監督作品は私にとっていずれ見なければいけない映画であったが、ここまで見ないできてしまった。

 名作の誉れ高い「ポンヌフの恋人」ではなく本作にTVで出会ったというわけだ。

「ポンヌフの恋人」

 奇妙な映画である。一体主人公(ドニ・ラヴァン)と彼が乗ってパリ中を走りまわるリムジンのドライバーの老嬢(エディット・スコブ)は何者なのか?

ドライバーの老嬢

 主人公はいろいろな人間を演じる。現実世界の人間ではないのだろう。死者の世界からやって来たのか?死者から見た現実世界なのか?

ホーリー・モーターズ

(C)Pierre Grise Productions

 音楽も破茶滅茶で、ゴジラのメインテーマ、ショスタコーヴィッチの最後の弦楽四重奏曲である第15番の葬送行進曲、シナトラの「マイウェイ」が流れたりする。

 また出演者でもあるカイリー・ミノーグは突然歌い出す。

カイリー・ミノーグ

 支離滅裂ではあるが、実に面白い。実は過去の映画について語っている映画(メタフィルム)だという解釈もある。

 主人公が演じるさまざまな役はかつての名画へのオマージュなのか。

「ホーリー・モーターズ」はリムジンのレンタル会社のことかと思わせるが、フランス語の「アクション!」(撮影スタート)を意味する「モトゥール」をホーリー(聖なる)で形容した映画讃歌なんだという。なるほどである。

ホーリー・モーターズ

(C)Pierre Grise Productions

 メタファーは分からなくとも、全編に漂うどうにもならない疲弊感と絶望感はなんとなく伝わってくる不思議な映画だ。

 フランス映画界では、1960年代のヌーヴェルバーグ時代に次ぐヌーヴェル・ヌーヴェルバーグの監督ということで、BBC(リュック・ベッソン、ジャン=ジャック・ベネックス、レオス・カラックス)が1980年代、1990年代に新感覚の傑作を生み出したが、その後はどうも冴えない。

 この「ホーリー・モーターズ」も久々の監督作品になっているが、どうにも不思議で甘美な腐臭が漂っている作品だ。

◆allcinema ONLINEの解説から引用

 「汚れた血」「ポンヌフの恋人」の鬼才レオス・カラックス監督が「ポーラX」以来13年ぶりに手がけた長編作品。白いリムジンに乗り、次々と別の人物に変身しながらパリの街をさまよう主人公の摩訶不思議な1日を、ユニークな語り口でミステリアスかつシュールに描き出していく。主演はカラックスの分身とも評されるドニ・ラヴァン。共演にエディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、ミシェル・ピッコリ。

 パリの夜明け。大富豪の銀行家オスカーは、女性運転手セリーヌが運転する白いリムジンに乗り込み、自宅の豪邸を後にする。やがて彼は、リムジンの中でおもむろに着替えはじめ、みすぼらしい物乞いの女に変装してリムジンを降りる。その後も、謎の怪人メルドや10代の娘を持つ父親、あるいは殺人者といった人物に次々に変身し、それぞれの役になりきり演じるかのような奇妙な行動を繰り返していくオスカーだったが…。

 

/// end of the “cinemaアラカルト278「カラックス監督「ホーリー・モーターズ」が描くなんとも言えない疲弊感と絶望感”///

 

(追伸)

岸波

 疲労感と絶望感・・まさにこの映画の雰囲気を的確に表現しています。

 絶望感の方は、映画で描かれた「8番目のアポ」で、かつての恋人(カイリー・ミノーグ)が自殺した後の底知れぬ慟哭でしょうね。

 僕に言わせれば、かつては光輝いたこともあったカラックス監督が晩年に"能無し"になってしまった自分自身を総括し、突き放したのがこの作品。

 そこに救いも無ければ感動もない。彼の映画人生の鎮魂歌に一方的に突き合わせられる映画でした。

 なので他人が評価する対象ですらなく、ひたすら彼自身の映画人生にオトシマエを付けるための作品であったと感じます。

 淋しさに負けた~ いえ、世間に負けた~♪

 例えてみれば「昭和枯れすすき」の歌詞のよう。

 僕は”男の泣き言”は嫌いなので、「だったらもう一度、魂を込めなおして自分自身を越えてみろ!」・・叱咤激励したいと思います。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ホーリー・モーターズ

(C)Pierre Grise Productions

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト279” coming soon!

 

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