こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
容疑者、500人
タイムリミットは
24時間
僕の前回レビュー(二週前)が『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』に差し変わったため、今回、改めて木村拓哉と長澤まさみのW主演『マスカレード・ナイト』の登場です。
ホテル・コルテシア東京を舞台に、捜査一課の若手刑事新田浩介(木村拓哉)とホテルクラークの山岸尚美(長澤まさみ)がタッグを組んで不可解な予告殺人の阻止に挑むこのシリーズ、映画化第一作『マスカレード・ホテル』に続いての登場となります。
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マスカレード・ナイト
(C)2021 東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
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今作の原作も東野圭吾が「小説すばる」に連載した同名小説の三作目ですが、何故二作目が飛ばされたかと言いますと、二作目の『マスカレード・イブ』は新田と尚美が出会う前の前日譚である連作短篇だったから。
う~ん、さすがに50歳近い木村拓哉が「若手刑事」までは演じられたとしても、それ以前の年代を演じるには無理がある・・という判断があったかもしれません(笑)
さて、今回も超豪華な俳優陣が登場するのですが、いずれもがひと癖もふた癖もある芸達者揃い。そして、その全てが怪しい。
前回もそうでしたが、今回の「真犯人」を当てることはまず難しいのではないでしょうか?
では、さっそく本編の内容です。
映画の冒頭、年末のダンス教室で、キムタク演じる新田刑事がアルゼンチン・タンゴの練習をしています。
お相手の先生は(映画では名前が呼ばれませんが小説によれば)奥田真由美(中村アン)。
二人は意気投合し、大晦日を二人で過ごそうと約束をします。
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マスカレード・ナイト
(C)2021 東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
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一方、尚美(長澤まさみ)はフロント・クラークからコンシェルジュに昇進しており、映画に登場すると即、トラブルが発生。
サンブラスをかけて俯きがちに歩く宿泊客秋山久美子(田中みな実)を部屋に案内すると、入室してすぐに悲鳴が!
(観客が)すわ殺人事件か、と身構えると、窓から見える向かい側のビル壁面に明石家さんまの大看板が。(ええ~!)
この宿泊客は身近に人の顔が見えると不安になるという性向で、わざわざ人物画など掛けていない部屋をリザーブしたのに、これでは台無し。
秋山久美子(田中みな実)
しかし、あいにく当日のホテルは満室で部屋の替えがきかない。スタッフが集まって協議するも、別なビルの大看板の撤去など出来るはずがない(笑)
「無理です」というスタッフの言葉に尚美(長澤まさみ)は「ホテルマンは決してお客様にNOを言ってはいけません」の決め言葉。うん、成長してるな。
で、彼女が考えた策が、秋山の客室とビルの大看板の間に無数の白風船を固定して窓から見えなくするという方法。これは凄い。成長してるな(笑)
さて、場面代わって警視庁捜査一課。ネットの「匿名通報ダイヤル」というサイトに「練馬区にあるビルの604号室に女性の死体があるかもしれない」という警察向けの匿名書き込みが。
「かもしれない」という通報を訝しく思いながらも、警察が現場に急行すると確かに死体が。
被害者の和泉春奈(青木美沙子)は28歳のトリマーで死因は感電死。睡眠薬で眠らされた後、タイマーで感電させられた模様。部屋には何故かゴスロリの衣装。彼女は妊娠していた。
和泉春奈(青木美沙子)Twitter
殺人事件として捜査会議が立ち上がると、そこに再び謎の通報者からのファックスが届く・・「604号室の犯人は12月31日の11時に、ホテル・コルテシア東京のカウントダウン・パーティー会場に現れる」と。(ええ~大晦日に張り込み決定かよ!)
ホテル・コルテシアと言えば、数年前にマスカレード・ホテル事件があった場所。捜査主任は告げる・・「あいつを呼べ!」(僕、爆笑)
オレかよ!(新田浩介)
結局、再びの対面となった新田と尚美。「またですか」と尚美が言う。いやコレは、連作小説の都合上・・なんて事が言える訳もない(笑)
新田は、ふとした事で尚美の腕時計が数分遅れていることに気づき指摘する。
すると、「このままでいいんです」と尚美。
実はその時計は亡くなった祖母の遺品で、遅れることは承知の上。「時間が正確すぎると人は余裕をもたないから」と尚美が言う。
うむぅ・・このやり取り、いかにも怪しい。もしかすると、ストーリー上の伏線になっているのでは。(ハイそうです!:笑)
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マスカレード・ナイト
(C)2021 東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
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今回の映画、非常に複雑な話になっています。
まず、探すべき対象が二人いる。一人は604号室事件を初めとする三人の女性を殺害した連続殺人犯。そしてもう一人が謎の密告者・・その意図が掴めない。
そして、それらの人物探しを困難にする「仮装舞踏会」という場の設定。多くの参加者は仮装したままホテルに入ってくるため見分けがつかない。
新田刑事を初めとする警察スタッフは、(例によって)ホテル・クラークに扮装して潜入捜査に当たる訳ですが、これまた例によってホテル側と諍いを起こす。
さらに・・尚美コンシェルジュ(長澤まさみ)は、個人的な重大ミッションが。
山岸尚美(長澤まさみ)
間もなくホテル・コルテシア・ロサンゼルスが開業する予定となっており、総支配人の藤木(石橋凌)から、彼女かフロント担当の氏原(石黒賢)のどちらかを推薦する考えを告げられているからです。
尚美が飛躍するためには、是非とも今回の事件を未然に防がなければならない・・って、また自分が狙われているのだったら大変なんですけれども(笑)
さて、密告者については何の手がかりも掴めないまま、マスカレード・ナイトに参加する(怪しい)宿泊客が次々と訪れる。
まず、その一人目が日下部(沢村一樹)。いかにもプレイボーイ風の彼は、思いを寄せているという狩野妙子(凰稀かなめ)にプロポーズするために、借り切ったプールに大量の薔薇を浮かべて欲しいと無理難題を。
困惑しながらも「NO」と言えない尚美は実現しようと策を練るが、当の相手の狩野妙子(凰稀かなめ)からは、プロポーズを断る演出を頼まれてしまう。(どうする、どうする!?)
日下部(沢村一樹)
もう一人の怪しい客、仲根緑(麻生久美子)は夫の伸一郎と同宿の筈なのに夫の姿が見えず、ディナーを二人分注文したり夫の誕生日ケーキを用意させたりと何やら偽装の雰囲気が漂っている。
また、大きなゴルフバッグを持ち込んだ浦辺幹夫(博多華丸)は誰にもそれを触らせず、本人が言う住所地とは別の場所から荷物が届いて新田刑事にマークされる。
浦辺幹夫(博多華丸)
しかも、 604号室事件の被害者和泉春奈が勤めているペットサロンの防犯カメラに浦辺の姿が写っていたという情報が新たにもたらされる!
さらにコルテシアの常連客である曽野昌明(勝村政信)は家族連れで訪れ、フロントに扮した新田刑事(木村拓哉)が「いつもご利用ありがとうございます」と言おうとすると、突然、尚美に遮られる。
遮られる・・。
実は曽野は、ホテル・コルテシアを不倫のために利用しており、家族連れで訪れるのは初めてだったというオチ。(さすが、客の仮面を守るホテルマン尚美!)
しかし、問題はそれにとどまらない。何と、不倫相手の貝塚由里(高岡早紀)がマスカレード・ナイトに参加するために来訪。しかも、貝塚と曽野の妻万智子(木村佳乃)は学生時代からの友人だという。(大波乱必至!?)
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大波乱必至!?
(C)2021 東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
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とまあ、こんな面々が、ただでさえマスカレード・ナイトで忙しいホテルをかき回すのですが、果たして新田と尚美は事件を未然に防ぐことができるのか?
そして、ホテル・コルテシア・ロサンゼルスの幹部スタッフとして雄飛できるのは尚美か氏原か?
はたまた、お互いを深く理解し始めた新田と尚美の関係の行方や如何に!?
恋人になりかけたダンス教師奥田真由美(中村アン)の件はさておくとして(笑)
今回のストーリーを盛り上げているのは、やはり、謎の密告者の存在ではないでしょうか?
何故、密告者は殺害現場の状況や犯人がマスカレード・ナイトに訪れる事を知っているのか・・それを匿名で警察にチクる真意も判然としません。
また、犯人がホテル・コルテシアを訪れる理由は、宿泊客かホテル・スタッフを狙ってのことでしょうが、これまでの連続殺人のケース・・被害者は全てゴスロリの衣装を所持している事実と符合するのか?
実際、マスカレード・ナイトの参加者にはゴスロリ扮装の客は存在せず、より謎が深まることに。
仮面舞踏会なので居そうですが、居ないんだなコレが・・。
ミステリーの常道としては、主要な登場人物の中に犯人や密告者が居なければなりませんが、さっぱり予想が付かない。
で、最初に容疑者から外れるのが、夫の姿が見えない仲根緑。彼の夫となるべき人は既に数年前に亡くなって居たことが判明。
彼女は、一年間の大晦日に結婚式を上げる予定だったこのホテルを訪れ、懐かしき日々を偲ぼうと自己演出していたのです。
仲根緑(麻生久美子)
真実を知った尚美は、仲根緑の部屋を訪れて窓のカーテンを開かせると、向かいのビルの壁に「Happy Birthday!」のプロジェクション・マッピングが!
うん、何て心憎い演出。感動で泣き出す仲根緑。よかった、よかった。
じゃあ、残っている中で誰なのか?
防犯カメラに写っていた浦辺幹夫(博多華丸)が最も怪しいが、そんな悪い役を博多華丸が演じるのか?
いや待て、それこそが制作側のミスディレクションなのか、う~むぅ・・。
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マスカレード・ナイト
(C)2021 東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
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結論として、真犯人も密告者もこの中に居たのですが、全く予想できませんでした。
犯人の名前は森沢光留という医者。
「え~そんな奴登場していない!」という貴方、そう、そこのアナタ、しばらくお待ちください(笑)
彼は二卵性で生まれた双子の妹がいましたが、数年前にレイプ事件に遭い、警察の心無い対応にセカンド・レイプを感じて自殺してしまったのです。
その妹が好んで着ていたファッション・スタイルがゴスロリ。森沢は恋人に最愛の妹と重ね合わせるためにゴスロリ扮装をさせていました。
彼の犯行の動機は、警察の威信を傷つけて復讐するため。つまり、被害者たちは殺す目的で近づいただけの"かりそめの恋人"だった訳です。
その犯行をたまたま望遠カメラで目撃してしまった少年がいました。少年は母親に「もしかするとあの部屋の女の人は死んでいるかもしれない」と告げる。
母親は部屋を訪れていた男の正体を探索し、それが森沢クリニックの院長であることを突き止めると恐ろしい計画を思い付く。
夫の不倫相手を殺して貰えれば、犯行の事は口外しないという交換条件を持ち出すのです。これが、今回の事件の裏にあった伏線でした。
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マスカレード・ナイト
(C)2021 東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会
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いろいろあって映画の終盤、事件の謎を解いた新田刑事は、開始された仮面舞踏会で、一人の女性に近づく。
「アルゼンチン・タンゴは男同士が踊ってもいいそうです。僕と踊っていただけませんか?」と。え、男!? ・・いや、女!!?
ラスト・ダンス
踊りながら事件の真相を説明する新田刑事に「もう遅い。あの女たちにはタイマーで電気を浴びせる仕掛けをしてきた。0時までもうすぐだ。果たしてお前に、それまでに探し出すことが出来るのかな?ふふふ」と。
何? "女たち"!? ・・そう言えば尚美はどこだ!? もしや・・!!!
そして新年のカウントダウンが始まり、時計が無情の0時を告げる。
さあ、尚美の運命や如何に!
という事で、やはり「全部」を書かないことにしました。あっはっは!
というか、今回はひたすらストーリーを追ってしまった感があるなぁ。反省。
/// end of the “cinemaアラカルト273「マスカレード・ナイト」”///
(追伸)
岸波
結局、最後の最後まで真犯人を予測することができませんでした。まあ、森沢が誰なのか、よーく読めば分かるくらいにはネタばれしておきましたが(笑)
ところがこの映画、原作をけっこう改変してあるのです。
驚いたのは、性同一性障害の森沢の肉体的性別が原作と映画では異なること。
やはり、あの役者さんでは、どうしても「男」に見えなかったからでしょうか。
ならば、被害者の妊娠はどう説明するのか・・そこについても辻褄が合うよう改変されています。
尚美(長澤まさみ)が死んではいなかったこと・・その理由も察しのよい読者なら読み解けるはず。
何と言っても、これだけのドル箱シリーズ、まだ続編がありそうですものネ!
ん?それが真の理由か?(笑)
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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