こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
時は来た。
昨日の封切り日、007シリーズ最新第25作にして、ダニエル・クレイグ最後の007主演作品『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』を観てまいりました。
そのラストシーンに衝撃を受け、本来は『マスカレード・ナイト』を上げようと思っていたところ、急遽、本作に差し替えることといたしました。
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007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
(C)2019 DANJAQ, LLC AND MGM. ALL RIGHTS RESERVED.
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前作『スペクター』から6年、まさに満を持して「時は来た。」クレイグ最終作ですが、本作の公開に合せてamazonプライムで007バックナンバー24作品が無料公開。(※プライム会員のみ。)
ということで、先週あたりから毎晩これを観まくって頭の中は様々なジェームズ・ボンドがごっちゃごちゃ(笑)
38歳で『007 カジノ・ロワイヤル』に初主演したダニエル・クレイグも既に53歳・・連続して演じた年月としてはロジャー・ムーアを超えて最長となり、歴代最高配収の栄冠も第23作『スカイフォール』でゲット。
まさに007俳優として彼こそがナンバーワンのポジション・・15年の歳月というのはあっという間だった気がします。
では、その最終作、どんな内容であったのか?
映画の冒頭、御馴染みのイントロダクションから雪に覆われたポツンと一軒家に母と幼い娘が二人きり。
そこに突然現れた能面を被った男。母親を惨殺された娘は手にした拳銃で反撃。確かに胸倉を打ちぬいたと思ったのに、再び立ち上がって襲ってくる。(ゾンビか!?)
家の外に出て凍った沼の上を逃げるが、途中で氷が割れて水中へ落下。それでも泳いで逃げようとするが息が続かない。
苦し紛れに頭上の氷を割ろうとするが、そこに追いついてきた能面男が氷上から銃を連射する。まさに絶対絶命!!
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007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
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場面が切り替わり、うなされながらベッドから起き上がる女性・・おっと、これは前作『スペクター』でボンドと共に宿敵ブロフェルドを捕えたマドレーヌ・スワン医師(レア・セドゥ)だ。
どうやら、冒頭シーンは彼女の幼年時代の悪夢だったらしい・・ん? あの状況から生還できたのか? どうやって!?
後に、能面男自身が氷中から救い出したことが示唆される。
マドレーヌ・スワン
そう・・本来は前作『スペクター』の最後で悪の首魁ブロフェルドを捕縛し、ボンドはMI6を引退。
ボンドとマドレーヌは"良い仲"となって、二人で悠々自適の生活をしていたはず。もう、彼らを狙う「敵」など存在しないはずだったのだ。
もしかして、過去の亡霊であった能面の男が新たなる敵となるのか?(はい、そうです:笑)
能面の男(サフィン)
これからマドレーヌと二人きりの新生活を始めようとしているボンドは、過去にケリを付けるため、ブロフェルドに殺された最愛の恋人ヴェスパー・リンド(エヴァ・グリーン)の墓参りに。
ふと気づくと、墓の傍らに見慣れたスペクターのマークが!? 瞬間、跳びのくと同時に墓が大爆発。襲ってきた敵とくんずほぐれつの格闘の後、倒した男に「お前たちは誰だ?」と問うボンドに一言「マドレーヌの父はスペクターだ(笑)」と嘯いて息絶える。
いやいやいや、それは分かっている。が、まさか、マドレーヌはスペクター残党のスパイなのか!? 疑心暗鬼となるボンド目がけて周囲からワラワラと新たな敵が襲い掛かる。
心に引っ掛かりを感じながらもマドレーヌを車に載せて、街も壊れんばかりのカーチェイス。そして・・・
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007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
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ようやく逃げおうせた駅で、ボンドはマドレーヌ一人を電車に乗せ、自らは踏みとどまる。
「これで終わりなの?」
「そうだ。グッバイ・・」
えええ~ またかよ!(ヴェスパーの時と同じだ。)
ところが、更なる「えええ~」が。
何とここでスクリーンに「007 NO TIME TO DIE」のタイトルが現れて、いつものクレジットシーンに。(長いよイントロ! とびっきり!!)
本編は、それから5年後。MI6の研究所が襲撃され、研究者のオブルチェフが開発中の生物兵器と共に誘拐される事件が勃発。
CIAの旧友、フェリックスが事件解決への協力を求めてくるがボンドは引退を理由に固辞。
しかし、ボンドの引退後「007」のコードナンバーを受け継いだノーミ(ラシャーナ・リンチ)が訪れ、生物兵器を開発する「ヘラクレス計画」を進めていたのはボスの「M」である事を告げられ、ボンドはフェリックスに協力して真相を暴くことに。
新007のノーミ
生物兵器のナノマシンは、人間のDNAを解析して不治の病を発祥させ死に至らせるもので、対象のDNAを覚えさせれば(犬が匂いを覚えるようなもの)確実にその体内に入り込み、特定の相手だけ殺傷するというもの。
Mはあくまでもダブルオー要員の安全確保のために開発させたつもりだったが、実は、民族のDNAの特徴を覚えさせれば、民族ごと抹殺可能となるキワモノ。
ボンドは研究者オブルチェフ奪還のため、スペクターの残党が集うパーティに潜入。しかし、その会場のスピーカーから収監中のはずのブロフェルドの声が。
ボンドの抹殺指令にナノマシンを発動させるオブルチェフ。何と!こいつは既に裏切っていたのか!?
ところがっ!!
バタバタ倒れて行ったのはスぺクターの面々。ボンドは無傷。何と!オブルチェフは裏切りを裏切っていたのか!(ん?)
と、思いきや、オブルチェフは遁走。どうやらMI6に再寝返りした訳でなく、第三の組織の使い魔となっていたようだ。
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マネーペニー&「M」&MI6の幕僚主任ビル(001)
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ボンドはMI6本部を訪れてMを詰問。しかしMはあくまでも女王陛下と英国のために始めた事だと抗弁して喧嘩別れに。
もはや真相に近づくためには収監中のブロフェルドと相対するしかない。だがブロフェルドはたった一人の医師にしか口を開くことは無いと言う。
その医師とは、何とあのマドレーヌ・スワン!!
確かにマドレーヌは、元スペクターの大幹部ミスター・ホワイトの娘だが、ブロフェルドによって命を狙われていたはず・・やはり裏切りがあったのか。ならば何故、MI6が彼女を使っているのか?
謎が深まる中、ボンドは5年ぶりに再会したマドレーヌと共にブロフェルドが収監されている監獄へ。
だが、ここで思わぬことが起こる。ボンドと接触するとブロフェルドはナノマシンが発動して死んでしまう。
収監中のブロフェルド
マドレーヌは能面男に脅迫され、ブロフェルドのDNAをターゲットにするナノマシンに感染。それがボンドを介してブロフェルドを死に至らしめたのだ。
行方をくらましたマドレーヌを追い、ボンドは彼女の生家へ。(子供の頃、能面男に襲撃された家)
果たして、そこに待って居たのはマドレーヌと、ボンドと同じ目の色をした少女!!?
能面男サフィンの一家は、もともとスペクターの毒薬作りをやっていたが、家族をブロフェルドに皆殺しにされ、スペクターに復讐するために幹部であるマドレーヌの父の家にやって来たこと。そして更なるナノマシンの可能性に気づいたサフィンは世界征服のため、秘密基地で大量生産を始めていること・・などをボンドは知ることに。
さてボンドは、マッド・サイエンティストとなったサフィンの野望を打ち砕き、人類を救うことが出来るのか?
はたまたボンドとマドレーヌ、そして5歳の一人娘マティルド(リサ=ドラ・ソネット)の運命や如何に!!?
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007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
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ダニエル・クレイグの007第一作『カジノ・ロワイヤル』はジェームズ・ボンドがまだ007になる前の話でした。
これを観た時には、なるほどソコから始めて後はイアン・フレミングの007短篇などからネタを拾って旧作の間の時代を埋めていくのかと考えていました。
第二作の『慰めの報酬』は第一作の直後から繋がっていたので、その時でもまた同じように予想していました。
『007 慰めの報酬』
しかし、第三作『スカイフォール』の最後に見つけた写真で、ボンドとボンドの養父と共に写っていた義理の兄が実はスペクターの首魁ブロフェルドであったことが次作『スペクター』で明らかにされ、このシリーズは旧作とは全く関係なしに、ボンド神話をリブートしていく独立した一連の作品であることに気づきました。
その中でも、シリーズに何度も登場するミスター・ホワイト(イェスパー・クリステンセン)が狂言回しの役割だったのでないかと思います。
ミスター・ホワイト
ホワイトが最初に登場するのは第一作『カジノ・ロワイヤル』で、てっきり悪の首領役と思っていた裏世界の銀行屋ル・シッフル(マッツ・ミケルセン)をラストで「役に立たない」と撃ち殺し、より大きな背後組織の存在を暗示します。
ル・シッフル
第二作『慰めの報酬』では、MI6に捉えられてMとボンドに尋問されている時、「我々の仲間はどこにでも居る」とうそぶくと、Mのボディガードが襲ってきてホワイトは逃亡。
第四作『スペクター』では"青白き王"というコードネームで呼ばれたスパイが実はミスター・ホワイトのことで、彼はボスに意見したため組織に命を狙われており、娘のマドレーヌ・スワンを守ってくれるならという交換条件でスペクターの全貌を話し自決します。
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007 ノー・タイム・トゥ・ダイ
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ブロフェルドは自分に異を唱える部下を許さず粛清してきたのですが、今回登場の能面男サフィンの父もまた粛清された人物で、実際に手を下したのがブロフェルドの右腕だったホワイトでした。
今回のクレイグ最終作『ノー・タイム・トゥ・ダイ』を含め、五本の作品は全体で一つのテーマを追ったリブートシリーズだったワケです。
兵器課長Q
改めてクレイグ・ボンドを取り巻くメンバーを見てみると、当初のボンドの上司Mこそ、ピアーズ・ブロスナンのシリーズに引き続いてジュディ・リンチが演じているものの、秘書のマネーペニ―も兵器課長のQも新配役。
Mの死去によって交代した後任のMを含めて最後まで同じ配役で通し、シリーズの一体感が醸成されているのです。
001&マネーペニ―&M
また、旧来の作品でのジェームズ・ボンドは、行きがかりのラブアフェアーを楽しむプレイボーイとして描かれて来ましたが、クレイグ・ボンドは前半ではヴェスパー・リンド、後半ではマドレーヌ・スワンを心から愛して傷つく真面目人間。
その人間臭い感情が、ストーリーに深みを与えて来たと思います。
ジョージ・レーゼンビー主演の第六作『女王陛下の007』だけは例外で、ボンドが正式に結婚する場面がある。
ジョージ・レーゼンビー
そして、今回、能面男サフィンの秘密基地がある場所は、何と北方領土!! ・・第二次世界大戦当時の軍事基地を改修していたのです。
映画の中では”日本とロシアの国境に位置する島”とされましたが、終盤、基地へミサイル攻撃せよとのボンドの依頼に、英軍が「日本やロシアと外交問題になる」と躊躇しましたので、やはりそうですね。
サフィンが能面を被っていたのも、北方領土に拠点を持っていたのなら頷づけますし、終盤、ボンドと対峙したサフィンの部屋には畳が敷かれています(笑)
畳の間のサフィン
あと、笑えたのが新007のノーミ(ラシャーナ・リンチ)がボンドを伴ってMI6本部を訪れる場面。
職場のあらゆる同僚が「あーら、007」とか「お久しぶり、007」と声をかけ、ノーミが返事をしようとするも、全員がボンドの方を見ていたのでバツを悪くしているのには爆笑でした。
彼女は最後の出撃で「007のナンバーはボンドにお返ししてください」と。
「いいのか?」とボンド。
「ただの番号ですよ(笑)」・・ここは、ホッコリしました。
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二人の007
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さて、映画の終盤には、冒頭で述べた"最大の衝撃"が起こります。
すなわち、ジェームズ・ボンドの死。
彼は、サフィンとの最後の闘いで、マドレーヌを標的としたナノマシンを打ち込まれ、「これでお前は二度とマドレーヌや娘に会う事はできない」と告げられて心が折れるのです。
何と言う卑怯な奴、サフィン!!
人類を救うため、基地に向けて迫って来る英艦のミサイル・・その防御壁を解除したところで彼は脱出を断念します。
ミサイルを見上げながら、最後の通信で「防御壁の解除に成功した・・マドレーヌに代わってくれ」。
彼は、マドレーヌに何を告げるのか? ・・号泣必至です。
/// end of the “cinemaアラカルト271「007 ノー・タイム・トゥ・ダイ」”///
(追伸)
岸波
今までの007で、ボンドが死ぬシーンは一切ありませんでした。
だってそうですよね、ボンドが死んだら、そこでこのお宝シリーズが終わっちゃいますものね。僕はラストの感動とも相俟って、頭が混乱しました。
次はあのノーミ(ラシャーナ・リンチ)が007を引き継いでシリーズを撮るってこと?いや、本当にこのシリーズが終わってしまうのか??・・とまで思いつめました。
しかし、世界を救うために命を捨てるというスパイの花道まで演じられたことは、俳優クレイグにとってかけがえのないレガシーとなったのではないでしょうか。
むしろこれからの007は、その「死」まで演じることが慣わしとなってくるかもしれません。その先鞭を彼が付けたのです。
映画が終わってラスト・クレジットになってからも席を立つ気になれず、眺めておりましたら、最後の一行が・・
「ジェームズ・ボンド ウィル リターン」。なるほど!!
やはり次の007もジェームズ・ボンド。この伝説の作品は、また新たなMI6の布陣で、再リブートされて行くのでしょう。
さらばクレイグ・ボンド。僕たちに"夢"をありがとう。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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