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「Glidin'」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2021.9.25】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 1999年 冬、禁断の世界に堕ちてゆく。

 これは1991年公開、ヴィム・ヴェンダース監督の『夢の涯てまでも』のキャッチコピー。

 この映画はドイツ、アメリカ、日本、フランス、オーストラリア合作のSF映画・・そう「SF映画」なんですよ。

 旅をテーマにしてきたヴェンダース監督の集大成ともいうべき作品。NHKの全面協力によってハイビジョンを導入したことでも有名です。

夢の涯てまでも/ディレクターズ・カット版

 今回の担当はカリスマ彰氏。いつもの”絶対に観てはいけないシリーズ"ではないですが、この長さ何と4時間48分!

 つまり、観てはいけないと言うより、観るには相当根性が要る映画と言うべきでしょうか(笑)

 ではカリスマ彰、よろしくお願いします。

短い夏休みに見ようと思っていた映画のうち最大の課題が「夢の涯てまでも」(1991年 ヴィム・ヴェンダース監督 4時間48分)だった。

 ディレクターズカットでほぼ5時間。

夢の涯てまでも/ディレクターズ・カット版

「公開版(2時間59分)では叙事詩的要素がカットされていて面白くない」とヴェンダース監督が自ら再編集。

 確かにヴェンダースお得意の荒野の風景(オーストラリア)などは素晴らしい映像だ。製作費も25億円とヴェンダース映画では破格の金額だ。

 私は2日がかりで見たが、評価が難しい。ヴェンダースの悪い面がかなり出ている。近未来ロード・ムービーではあるがあまりに冗長であることは間違いない。

 インドの核衛星が地球に墜落するという1999年の危機をベースにしているが、これがあまりストーリーに活かされていない。


ウィリアム・ハートとソルヴェーグ・ドマルタン

 そもそも主要な登場人物が破滅的だから、地球がどうなろうとあまり関係ないのだ。

「あなた方、勝手に生きればいいでしょう」と鑑賞者が思ったら、映画はオシマイである。

 オーストラリアの洞窟にある秘密研究所で夢の映像保存化に成功した後、ヒロインが「夢中毒」になるという終結部。

 夢は過去への憧憬。人間は実は過去に囚われて生きている。分からないではないが、そんなに簡単ではないだろう。

 これに原住民アボリジニたちの生死感など絡んでくるから、なかなかストーリーは錯綜している。

夢の涯てまでも/ディレクターズ・カット版

 またこの映画はヴェニスを起点に、パリ、ベルリン、リスボン、モスクワ、東京、箱根、サンフランシスコ、オーストラリアと世界を巡るロードムービーで観光的要素も盛り込んでいるが、「あれ?」と思ったのは東京のシーンだ。

 東陽町と思しき、カプセルホテルとパチンコ屋を動くヒロインのクレア(ソルヴェーグ・ドマルタン)が着ているドレス!

クレア

 恐らく「イッセイ ミヤケ」だと思うがこれ今大流行「バオ バオ」柄じゃないですか!既に30年前の1991年の段階で登場していたんですな。

 このヴェンダース映画ではお馴染みのドマルタン(1961.5.16〜2007.1.11)は、1998年に女優としての 活動をやめているが、2007年心臓発作でパリにて45歳の生涯を閉じているのも今回初めて知った。

『ベルリン・天使の詩』のドマルタン

 生命力に溢れた(ように見える)女優だが、こんな風に急死していたのか。映画も哀しいが、それより人生は儚く悲しい!

 ジャンヌ・モロー、マックス・フォン・シドー、笠智衆、三宅邦子などの往年の名優が脇を固めている。

 音楽好きにはU2、デペッシュ・モード、トーキング・ヘッズ、ルー・リードなどが新曲を提供しこたえられないという。

ヴィム・ヴェンダース監督

 このディレクターズカット版は魅力的な失敗作というのが妥当な評価ではないかな。

 ふう、それにしても4時間48分は長かった!

◆映画.comの解説から引用

 米・日・独・仏・豪の五ヶ国合作による世界ロケの他、NHKの全面協力によるハイビジョンの導入など何かと話題の多かったヴィム・ヴェンダース監督による近未来SF。

 1999年、核衛星の墜落が予測され世界は恐怖におののいていた。ヴェニスからあてもなく車で旅に出たクレアは道中、何者かに追われているトレヴァーと出会い、彼の後を追うことにする。元恋人の作家ユージーン、私立探偵ウィンターと共に、リスボン、モスクワ、北京へとトレヴァーを追うクレア。実はトレヴァーは、盲目の母親の為に脳に映像を直接送り込む事のできる父の発明したカメラを持って、世界中を旅していたのだ……。世紀末最期のロード・ムービーとでも言うべき内容でヴェンダースらしいコンセプトではあるが、いつもの旅に感じられた淡い感慨はテクノロジーに埋没したきらいがある。

 

/// end of the “cinemaアラカルト270「とにかく長い!魅力的な失敗作 夢の涯てまでも/ディレクターズ・カット版”///

 

(追伸)

岸波

 いやコレ、前回僕が『デューン/砂の惑星』で、アレハンドロ・ホドロフスキーが10時間の大作を撮ろうとしたという話に対抗したワケではないと思いますが(笑)

 世界十数か国でロケーション撮影を行ったと言いますから、せっかくのハイビジョン画像をぶった切るには忍びなかったのかもしれません。

 長い映画と言えば、旧ソ連が1967年に製作した『戦争と平和』(424分)が思い浮かびますが、さすがにそれは観ていないので、思い出すのは、加山雄三の若大将シリーズ6本立て(多分)というのを見たことがあります。

 というか僕の小さな頃、映画は2本立てが当たり前で、3本立てもフツーに上映されて居ましたので、それほど驚きはしませんでした。

 なんせ「ある事情」(どっかに書いたっけかな?)で、映画館は"顔パス"でしたから(笑)

 しかし、今では考えられませんね・・あ!今週はamazonプライムでジョジョのTV映画のバックナンバーをぶっ続け36本観たんだっけ!!

 いやぁ・・不良だな、僕。(昔は、映画館に行く子供は不良と呼ばれていた。)

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

夢の涯てまでも/ディレクターズ・カット版

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト271” coming soon!

 

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