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「Glidin'」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2021.8.14】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 僕は君を恨んでないよ。
 死ぬほどせつないだけだ。

 これは1989年公開、パトリス・ルコント監督の『仕立て屋の恋』の秀逸なキャッチコピー。

 さて、今回の執筆当番はカリスマ彰氏。パトリス・ルコント監督の名画二作を併せてご紹介です。

「仕立て屋の恋」

 今週の記事はいつものように複数投稿ではなく一本だったので、個別タイトルは付いていません。

 ではカリスマ彰、よろしくお願いします。

私の映画鑑賞ノートではなぜか空白のパトリス・ルコント監督の有名作2つをTV(WOWOWプラス)録画できたので、これを立て続けに今週見た。

1.「仕立て屋の恋」(1989年 パトリス・ルコント監督 80分)

 僕は君を恨んでないよ。
 死ぬほどせつないだけだ。

 まず「仕立て屋の恋」(1989年 80分)。ジョルジュ・シムノンの原作。

「仕立て屋の恋」

 この原作は何回か映画化されているが、この映画は、ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「パニック」(1946年)のリメイクらしい。

 ミシェル・ブラン演じる仕立て屋はユダヤ人なのだろう。ほぼこの街では村八分状態。ユダヤ人迫害はドイツだけではないのだ。

 そういいながら、仕立て屋はスイス・ローザンヌに家を持っていたりするのがユダヤ人ぽい。

 どうもユダヤ人問題がこの映画の底流にあるテーマのようだ。

 またブラームスのピアノ四重奏第1番ト短調第4楽章中間部の切ないメロディが実に見事に使われている。

 映画全体の音楽を担当するマイケル・ナイマンが自らピアノを弾いてブラネスク弦楽四重奏団と演奏している。

 そして、もうひとつはフランス映画の「お家芸」である男と女(サンドリーヌ・ボヌール)の三角関係というテーマである。

 これが大団円に複雑な展開を見せる。まあ、このあたりはいろいろ賛否両論があるところだろう。

◆allcinema ONLINEの解説から引用

 殺人事件の容疑者として、仕立屋のイールという男が浮かんだ。だが彼こそは、真犯人を知る唯一の人物だった。向かいのアパートに暮らす、アリスという女性をのぞき見しているときに、殺人事件を目撃してしまったのだ。アリスは彼が何処まで知っているかを確かめようと接近してきたが……。

「髪結いの亭主」が日本でもヒットしたP・ルコントの前作。


2.「髪結いの亭主」(1990年 パトリス・ルコント監督 82分)

 かほりたつ、官能。

 パトリス・ルコントのもうひとつの有名作「髪結いの亭主」(1990年 82分)は、もっとフランス的だ。

「髪結いの亭主」

 なにしろ主人公(ジャン・ロシュフォール)は、父親から「将来何になりたい?」と12歳の頃に聞かれて「髪結いの亭主」と答えてビンタされていた男だ。


(子供の頃に憧れた近所の女理髪師は豊満な肉体と強烈な体臭の独身中年女性)

 さらに主人公はその夢を現実のものにしてしまったのだから、唖然とする。

 主人公が結婚したこの過去を語りたがらない女理髪師(アンナ・ガリエナ)も、もしかしたらユダヤ系なのではないだろうか、という気がしてくる。

 もちろん、妻である美人の女理髪師に言い寄ってくる男どもに主人公が悩まされる展開ならただのコメディだが、それではあまりにも芸がない。

 不条理で恐るべき大団円が待っているのだ。これも賛否両論あるだろう。

 しかし、なるほどこの結末はフランス映画の、いやフランス的なるもののエッセンスかもしれない。

 昔、映画好きの私の母が子どもの私に教えてくれた。

「ヨーロッパの映画は、ほとんど悲しい結末なのよ。それに比べるとアメリカ映画っていうのはほとんどハッピーエンドなのよ。」

 その母もコロナ禍の昨年5月に亡くなった。今、そんなことを思い出した(涙)。

パトリス・ルコント監督

 いずれの映画も80分と82分にまとめられた無駄のない構成で溜息が出るようなザ・フランス映画である。

 機会がなかったとは言え、パトリス・ルコントの映画を30年も見ずにここまで来たということを大いに恥じ入る。

 この歳になってまだまだ知らないことだらけということか。

 いずれにしても今年のTV映画鑑賞のベスト5に入る2作だ。

◆allcinema ONLINEの解説から引用

 子供の頃から女の理容師と結婚したいという願望を抱き続けて来たアントワーヌは、中年にさしかかった頃、ようやくその夢を実現する。妻のマチルドは、優しくて綺麗で、アントワーヌは念願の妻を娶った事に満足し、十分に幸せな日々を送っていた。そして10年、この愛は何事もなく平穏に過ぎてゆくが……。

 主人公の妻を演じるアンナ・ガリエナのエロティシズム溢れる妖艶な魅力や、主人公演じるジャン・ロシュフォールの個性的な魅力が光る佳作。ストーリーも独特の味を持っていて、公開当時は日本でも大ヒットした作品である。

 

/// end of the “cinemaアラカルト264「パトリス・ルコントの映画を30年も見なかったことを大いに恥じ入る”///

 

(追伸)

岸波

 名高い名画だという事は知っていたけれど、一回も見たことは無い。

 しかしストーリーを確認すると、まるでヒッチコックのようなサスペンス要素もあって(ついでに「エロ」も)面白そうだ。

 いずれの主人公の女性も、いかにもフランス女性という感じで素敵だね。やはりカトリーヌ・ドヌーヴの国だ。(ドヌーヴ映画は昔、徹底的に観た。)

 いまAmazonプライムで確認したけど、さすがに無料提供はされていないんだね。それこそ名画たる所以だ。さて、どうするか・・?

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

「髪結いの亭主」

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト265” coming soon!

 

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