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「Blue Island」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2006.3.19
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 世の中のすべての男から望まれる
 姫にしてあげましょう。そのかわり…

 これは真田広之主演の「PROMISE 無極」の思わせぶりなキャッチコピー。

PROMISE 無極

(C)Beijing 21st Century Shengkai, China Film Group and Moonstone Productions, LLC

 でも今回は、嬉しいニュースがあったので、そちらの話から。

 日本アカデミー賞は、やはり僕が感じたとおり「ALWAYS 三丁目の夕日」がぶっちぎりで各賞を独占しました。(うれしいなぁ)

 何がうれしいって、僕の予想が当たったことではなく、多くの人があの名作を見て、同じように涙を流してくれたことがうれしいのです。

Always 三丁目の夕日

ALWAYS 三丁目の夕日

 人間は、やはり感動で大泣きするようないい作品との出会いが必要だと思います。人が感動を得られないのは、“想定内”のものにしか出会っていない場合だと思います。

 だけど、人間を大きくするのは、予想し得ない“新しい経験”があればこそ。

 それは時に困難な仕事上のテーマであったり、他人との諍いであったり、愛する人との永遠の別れであったりと様々ですが、人間はチャレンジをしなければ壁にも突き当たることができません。

 壁にぶつかるということは、すなわち自分のキャパシティの限界まで到達したということで、それを克服することによって、また一皮剥けることができるのだと思います。

 映画もまたしかり。

 本当にいい作品に出会えれば、人間の優しさを再認識したり、感動で精神のカタルシスを得たり、新しいモノの見方・考え方を学んだりして、また一つ、貴方の心の中の宝物が増えるのです。

 そんなことまで考えさせてくれる「三丁目の夕日」、あーよかったなぁ!

 (うっうっ・・)

Always 三丁目の夕日

ALWAYS 三丁目の夕日

 それに引きかえ、近年は米国の本家アカデミー賞には、最近興味が湧かなくなりました。

 もともとアメリカ物というと、SFやアクションやサスペンスしか見てこなかったので、あまり偉そうなことを言う資格がないのですが、本当に感情移入して泣いた作品は、やはりアジアや日本の映画の方に多かったように思います。

 もしかすると、これは民族の生活文化や感性に関係しているのかもしれません。

 そしてもう一つ、アジアの映画はそのストーリーと同じくらい映像の美しさを大切にしていますね。

 GYAOで、キム・キドク監督の韓国映画「魚と寝る女」を見ました。

 ヴェネチア映画祭に正式招待され、上映中のショッキングなシーンに失神者が出たというイワク付きの映画ですが、この映画のツボはそんなところにはありません。

魚と寝る女

魚と寝る女

(ソ・ジョン)

 山奥の湖でボートの水上コテージを営みながら暮らしている孤独な女主人公と、そこに訪れた逃亡者の男との破滅的な愛を耽美的な映像で綴っています。

 この映画の美しい風景シーンそのものが主人公たちの心象風景を痛いほど伝えて来るのです。

 言葉を話せない娼婦の女主人公が、かけがえのない愛を失いたくないばかりに恐ろしい方法で自傷し、言葉にならない叫びを上げるそのシーンさえも、現実の風景ではなく心の悲鳴のようです。

 心象風景と一体化した映像表現・・・こういう演出もアジア人ならではのもだと思います。

 

 大変、前置きが長くなりましたが、今回のテーマは真田広之とチャン・ドンゴンがダブル主演した「PROMISE 無極」です。

 かなりの賛否両論があるようですが、この映像世界は、これからの中華ファンタジーの新たな可能性を拓くかもしれません。

光明将軍:真田広之

(C)Beijing 21st Century Shengkai, China Film Group and Moonstone Productions, LLC

 この映画のシーンの数々は、まるで王欣太のミリオンセラー・コミック「蒼天航路」のような非リアリズム世界です。

 それは、一騎当千の呂布が馬ごと数十メートルをダイブして、たった一人で数百の軍勢をなぎ倒してしまうような超絶イマジネーションの世界。

 絵画的な誇張・・・。

 ハリウッド・アクションの場合だと、いかにも漫画チックですが、中華ファンタジーで用いると、それはまるで一幅の水墨画を見るような華麗なシーンとなります。

 チャン・イーモウ監督の「HERO」や「LOVERS」もそうでしたが、未だかつて見たことが無い壮大な絵をCGやワイヤーアクションを駆使して見事に映像化しています。

PROMISE 無極

(C)Beijing 21st Century Shengkai, China Film Group and Moonstone Productions, LLC

 さて、ストーリーは、戦乱により貧民として空腹に耐えかね死者から饅頭を奪う幼い少女傾城(セシリア・チャン)の前に、女神が現れる。

 女神は傾城に「お前は、多くの男性から寵愛を受けるが愛を得る事が出来ない運命を受け入れるか?」と問います。

 貧しい身の上で、豊かな生活や多くの男性に愛されることなど望むべくも無い境遇の傾城は、女神の提案を受け入れて、やがて美しい王妃となるのです。

 その頃、伝説の甲冑に身を包んだ無敵の大将軍・光明(真田広之)は、城に包囲された国王の救出に向かう途中で大怪我を負い、俊足の奴隷の昆崙(チャン・ドンゴン)に自分の華鎧を着せて城へ向わせます。

 実は、大将軍光明にも定められた運命があり、それは「何かに心が動いたとき涙が流れ、心が動いたときその命を落とす」というもの。

 さらに、駿足の奴隷崑崙は「初めて心から欲するものに出会う」という運命がありました。

 そうして出合った3人の男女。彼らを北の公爵無歓(ニコラス・ツェー)が張りめぐらせた執拗なまでの罠が襲います。

 この無歓もまた、策略をもって自らの野望を果たそうとする執念に囚われた宿命の人間なのです。

 彼らは果たして、彼ら自身の宿命(PROMISE)を超えることが出来るのか?

チャン・ドンゴン

PROMISE 無極

(崑崙:チャン・ドンゴン)

(C)Beijing 21st Century Shengkai, China Film Group
and Moonstone Productions, LLC

 ~ということなんですが、この映画、当然ながらストーリーにも映像にもリアリティはありません。

 何故ならば、時空を超えて運命を凌駕するラストシーンでも分かるとおり、これは神話(あるいは寓話)の世界の出来事なのです。

 そういう荒唐無稽を楽しむことが出来ない人にとっては、辛い映画かもしれませんね。

 特撮技術には粗さも見られますので、完成度は今ひとつといったところ。

 しかし、映画としてのスケールの大きさは特筆すべきで、さすが万里の長城を作った漢民族ならでは。

 これからの進歩が楽しみなアジア映画でした。

 

/// end of the “cinemaアラカルト25「PROMISE 無極」” ///

 

(追伸)

岸波

 大変、美しい女優のセシリア・チャンさん。

 この傾城の演技は、非常に難しい役どころだったと思います。

 奴隷の少女が女神との約束(PROMISE)によって、望むべくも無い王妃の地位を手に入れ、引き換えに真実の愛を失うのですから。

 だけど、ちょっと王妃の役がはまり過ぎ。

 つまり、悲惨な生い立ちとかを感じさせないくらい威厳と気品に満ちた(光明との凄いエッチ・シーンもありますが・・)王妃役で、奴隷少女の面影がないのですね。

 日本で言えば、往年の岩下志麻さんといったところ。

 彼女に限らず、この傾城役を演じられる女優さんって存在しないんじゃないかな?

 それもそうか・・・何せ、神話の世界の話なんだしね!

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

セシリア・チャン

セシリア・チャン

(PROMISE/無極)

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト26” coming soon!

 

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