こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
闇の都市に渦まく<謎>の複合体
Amazonプライムで1998年日本公開のSFスリラー映画『ダークシティ』を鑑賞いたしました。
というのも、前回カリスマ彰編"絶対に観てはいけないシリーズ"で紹介されていた『13F(サーティーンフロア)』が気になって観てしまったら、コレが個人的ツボに大ハマり。
その関連作品ということでこの『ダークシティ』もあったので、ついつい有料ボタンをポチってしまったのです。
しかあしっ!!!
日本公開当時、ほとんど話題にならなかった(と思う)このSF映画ですが、改めて鑑賞すると中々の完成度。
20年以上前の映画ですからCGなどは古めかしい感じがするものの、そのストーリーや世界観が凄い。
ということで、さっそく映画の内容は?
映画の冒頭、天井から釣り下げられた照明が異様に揺れている。どうやらここは安ホテルの一室らしい。
バスタブで目覚めた男、何故、自分がここに居るのか思い出せない様子。起き上がって壁の鏡の曇りを拭って顔を写すと、見慣れない顔が・・どうやら記憶も無くしているようだ。
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クローゼットを開くと『シェル・ビーチ』と書かれた絵葉書が見つかる。その刹那、海岸で談笑しているシーンがフラッシュバックする。
突如、電話がかかってくる。「奴らがそこへ向かっている。すぐ逃げろ!」と。その理由を問いただす間もなく電話がこと切れる。
ともあれ、指示に従って部屋を出ようとすると女の死体が。身体には異様な文様が血で描かれている・・。
部屋に娼婦の死体が・・
~と、まあ、冒頭から謎が謎を呼ぶ展開。いったい何が起きているのか見当も付かない。それは主人公である男(ルーファス・シーウェル)にとっても同じ事。
予備知識無しで見るとサスペンス映画なのかと。しかし男がフロントを通り過ぎようとした時に声がかかる・・「マードックさん、財布をお忘れでしたよ」。
財布はプラスチックのケース棚の一つに入っているが鍵がかかっている。フロントを呼ぼうとするが、別客と話し込んでいる。すると・・
マードック(Rシーウェル)
マ―ドックと呼ばれた男が気を集中させると、手も振れていないケースの蓋が突如粉々に吹き飛び、それを懐に入れると「三週間連泊の支払いが滞っている」というフロントの声を聞きながら階段を下りていく。
入れ違いに、どう見ても只者ではない黒づくめの男たち(一人は子供)がエレベーターから出てくる。タッチの差でセーフか!?
たちまち引き込まれてしまうこの進行。
最初は殺人に絡むサスペンス映画かと思わせて、いきなり超能力(ケースを粉砕)が出てくる。
自分は殺人犯なのか? 自分を追ってくるチームは何者なのか? 「逃げろ」と指示を出したのは誰なのか? そもそも自分は誰なのか? ・・もう「謎」で頭がいっぱいに。
男(マードック)の住む街は1930年代くらいのアメリカを彷彿させるレトロなビル街。 ティム・バートン版『バットマン』のゴッサムシティに似ているという論評がありましたが、むべなるかな。
しかしこの街・・「ダークシティ」のタイトルが表すように”昼の無い世界”なのです。
真夜中の0時ちょうどになると人々が一斉に眠りに落ち、今走っていた電車や車も動きを止め「死の町」と化す。
何でそんなことが起きるのか・・?
その中で動けるのは、主人公マードックと全員スキンヘッドの異様な人相風体の者たち・・「異邦人(ストレンジャー)」、そして謎の医者シュレーバー(キーファー・サザーランド)だけ。
実はマードックが子供の頃から主治医であったシュレーバーこそ、「逃げろ!」と電話をかけてきた人物。
しかしそのシュレーバーは、寝静まった街に異邦人(ストレンジャー)とともに現れ、寝ている人間の額に謎の注射をしまくっている。本当は悪人なのか??
シュレーバー(Kサザーランド)
キーファー・サザーランドはこの映画の後、あの代表作「24 -TWENTY FOUR-」(2001~)に主演して押しも押されもしない大スターになる訳ですが、シュレーバー博士とは全くの別キャラ。
最初、あのサザーランドだとは気づかなかった程です。つまりそれほどの演技派という事でしょう。
映画はこの後、マードックとその妻エマ(と称する女:ジェニファー・コネリー)、殺人犯としてマードックを追うバムステッド刑事(ウィリアム・ハート)、異邦人(ストレンジャー)たち、そして謎の医師シュレーバー博士と四つ巴のスリリングな追跡劇となります。
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中盤以降は、もうスリラーと言うよりノンストップのバトル・アクション。次々と明らかになっていく「ダークシティ」の謎。まさに息もつかせぬ展開。
街そのものが形を変えて主人公らに襲い掛かってくるシーンなどはもう絶叫モノ。異能力同士が激突するバトルシーンは「幻魔大戦」のようです。
こんな面白い映画を作ったのは、ギリシャ人の両親のもと、エジプトのアレクサンドリアに生まれオーストラリアに移住して育ったアレックス・プロヤス監督。
アレックス・プロヤス監督
彼自身の原案を基に、彼とレム・ドブス(「KAFKA 迷宮の悪夢」)、デイヴィッド・S・ゴイヤー(「ザ・クロウ」)の三人が共同執筆。
プロヤス監督は後に「アイ,ロボット」(2004)、「ノウイング」(2009)、「 キング・オブ・エジプト」(2016)などを手がけることになります。
また、主人公マードックを演じたルーファス・シーウェルは、「ハムレット」などシェイクスピア劇に数多く出演したイギリスの舞台俳優で、ブロードウェイの舞台にも立った演技派。
なお、シーウェルの父親はアニメーターとしてビートルズの『イエローサブマリン』を手がけた人物でした。
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映画の最大のサプライズは「ダークシティ」の全貌が明らかになった時でしょう。
マードックの記憶に繰り返し現れる「シェル・ビーチ」を探そうと刑事のバムステッドと共同戦線を組み、捉えたシーウェル博士に案内させた先は、何とビーチならぬ「壁」。
シーウェルの「やめろ!」という静止も聞かず、逆上した二人が壁を破壊すると、その先は何と「宇宙」! ・・これにはぶっ飛びました。
つまりこの街は全てがフェイクで、街全体が超巨大な宇宙船。異邦人(ストレンジャー)の正体は進化の袋小路に嵌って滅亡間近の宇宙人。
彼らはフェイクの街に地球人を移住させ、人類の「記憶」を混ぜこぜ(注射の正体)にし、自分たちの種族が失った『個性』というものを研究していたのです。
妻のエマ(ジェニファー・コネリー)
ここで思い出されるのが、板橋しゅうほうの漫画作品『アイ・シティ』(1983年~1984年)。
この作品の街もまた超巨大宇宙船の「フロア」に造られた人造都市。汚染されていない人類のDNAを保存すべく、各フロアにはクローン再生された人類が各年代の再現都市で生活しており、新天地の居住可能惑星を目指して恒星間航行を続けていたのです。
そして、進化に失敗したとコンピュータが判断したフロアは、空(天井)が降りてきて全てを押し潰し、またイチから出直すのです。(お~コワ!)
これは「ダークシティ」より15年ほど前の作品ですから、もしかするとこのアイディアをパクったか? ~と一瞬考えたのですが・・
「アイ・シティ」板橋しゅうほう
よくよく考えてみれば、こうした世代交代型・恒星間航行の巨大宇宙船を最初に考えたのはアーサー・C・クラークではなかったかと。
すなわち、1973年のSF小説『宇宙のランデブー』です。
太陽系外から飛来した巨大宇宙船(らしきモノ)に探査隊が乗り込むと、その内部には「世界」そのものが作られていました。
何とその内部には「海」も存在する・・これは”円筒海”と呼ばれ、宇宙船の回転による疑似重力で世界は”円筒内側”に張り付いていますから、海の果てもまた”水平線”が無く延々と上方にせり上がっていく・・目も眩むようなイメージです。
この「ダークシティ」が、そういう背景の世界観まで構築してあった緻密さに驚愕を覚えました。
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映画のラスト・・マードックは異邦人(ストレンジャー)のラスボスとの超絶な異能力戦闘で、さらに能力を覚醒させます。
そして敵を打ち倒すことに成功するのですが、そこからさらにあんな事を始めるとは・・!?
一番凄いのはこのラストシーンかも。
ということで、ラストシーンはナイショです。え!まさかの天地・・(笑)
今だとamazonプライムで300円の有料配信で見られるようですよ~!
/// end of the “cinemaアラカルト249「ダークシティ」”///
(追伸)
岸波
このコロナ禍で旅行どころか外出することさえ憚られますので、せめてもの瞑想旅行。そういう意味では、ぶっ飛びSFを観るに限りますね~
本当は「るろうに剣心」の最終章を観てきたのでそちらを書こうかと思っていたのですが、途中で寝落ちしちゃったんですね。(僕、疲れてる?)
ただ、あの最終章は剣心の心の闇を描く暗いストーリーなので、心が締め付けられるんです。
こういう時世には、やっぱりスカッとカタルシスを得られる話の方がいいような気がします。特に老人には(笑)
もし気が向いたら、「るろうに」のストーリー自体は殆どの方がご存じでしょうから、評価すべき点だけ短くレポするかもしれません。(観た範囲で:笑)
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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be continued⇒ “cinemaアラカルト250” coming
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