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「Glidin'」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2019.9.18】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 時代はついに追いついた
『ブレードランナー ファイナル・カット』
 日本初IMAX®シアター公開決定
 2019年、大スクリーンで“伝説”を体感せよ―

 さて、昨日に引き続きcinemaアラカルト総集編の後編。

 9月15日に長男拓郎に会うためにケイコと二人で埼玉へ向かいました。

 そしてそのついで、息子の職場の一つがある「モラージュ菖蒲」の三階、『109シネマズ菖蒲』で今年四月に導入されたIMAXレーザー・システムを体験して参りました。

 タイミング的には「ブレードランナー:ファイナル・カット」か「マトリックス」というところでしたが、帰郷時間を考え、より早いブレードランナーに決定。

ブレードランナー:ファイナル・カット

(C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 IMAX4Kレーザー投影システム&12chサウンドシステムを導入が導入され、座席には通常席とスペシャル席があったのですが、まずは通常の体験からと。

 座席はかなり傾斜のある段々席。というのもIMAXのスクリーンは通常より縦長になっていて、まるで映画の中に取り込まれたような臨場感が得られるとの事。

 ただ、僕らの取った席がちょっと前過ぎたので、字幕が目線の下の方に出て、字幕と画面中央を行ったり来たりがキツかったですが。

”字幕なし”の吹き替え版の方がよかったかもしれませんネ。

 重低音の12chサラウンド・システムは迫力満点。というかウルさい…というかコワイ。「ブレードランナー」はホラーの要素がありますからね、心臓によくない(笑)

 ともあれ、技術の進歩に驚愕した次第。これからのシアターはどんどんこんなふうになっていくのでしょうか。21世紀まで生き延びてきてよかった(笑)

 ということで、この「ファイナル・カット」と「記憶にございません!」の2本をお届けします。

 

◆『ブレードランナー:ファイナル・カット』
IMAXレーザー/109シネマズ菖蒲:9月15日(日)鑑賞

 酸性雨で荒廃した2019年のロサンゼルス。
 2019年、IMAX®で体感せよ!

 あはははは! ここのキャッチコピーもIMAXのを使っちゃいました。

 リドリー・スコット監督の出世作「ブレードランナー」は、主演にハリソン・フォードを据えて1982年に初公開。

 厚い雨雲で闇に閉ざされた街に絶え間なく降り注ぐ酸性雨、ビルボードに「強力ワカモト」をアピールする芸者姿のビジョン、薄汚れた街に異人種がひしめくスラムのような風景…。

 映画で描かれたディストピアの退廃的な近未来描写が大きな評価を得、1983年のヒューゴー賞の最優秀映像作品賞賞やロンドン映画批評家協会賞特別業績賞を受賞。

 以後、SF映画の伝説の一つとなって再編集が繰り返され、これまでに7つのバージョンが制作されています。

ただし当初上映は興行的には失敗しており、後から再評価されて人気作品となっていった。ま、時代の感性が映画に追いついたということでしょうか。

ブレードランナー:ファイナル・カット

(C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 この映画の重要ガジェットは「レプリカント」。

 21世紀初頭、タイレル社は遺伝子工学を活用し、ロボットに代わる人造人間レプリカントを制作。

 彼らは辺境星系の重労働に使役されていましたが、うち6名が反乱を起こして脱走。帰還船を乗っ取って地球に侵入した彼らを「狩る」のがブレードランナーたる主人公デッカード(ハリソン・フォード)の役目です。

 この6名の脱走レプリカントのうち1名は既に死亡。地球に侵入したのは5名・・・と、これまでの作品で扱われて来ましたが、実際に映画に登場するのは4名。

 この矛盾がいろいろな憶測を呼んで、「デッカードもレプリカントではないのか」などの議論があったのですが、今回の「ファイナル・カット」で、『2名死亡』と初めて訂正されていました。

 さらに、今回初めて挿入されたのがチャイナタウンでダンサーが躍る以下のシーン。

 う~ん、セクシー。

 そして、改めて見て「これはどうなんだ?」と感じたのが、デッカードが逃亡レプリカントの一人ゾーラ(ジョアンナ・キャシディ)を背中から銃撃するシーン。

ゾーラ(ジョアンナ・キャシディ)

 レプリカントは人間の何倍もの力やスピードがありますから、そりゃ強いんですよ。だから肉弾戦では、デッカードがケチョンケチョンにやられる。

 だけど、逃げ出したゾーラを背中から打ち殺す。…これはIMAXの大音響システムとも相まって、凄い衝撃。

 今回、調べてみましたら、デッカードは「映画史上初めて丸腰の女性の背中を撃ったキャラクター」だそうです。なるほどね。

 余談ですが、ジョアンナ・キャシディはこのゾーラ役で着たスケルトン・コートの衣装を今でも所持しており、今回の「ファイナル・カット」の追加撮影で実際にそれを着てショーウィンドウを突き破るシーンを再演したのです。

 凄い。凄すぎる。あれから40年近く経っているのに全く違和感なかった。今いったい幾つなんだ…。考えるのはよそう(笑)

 そしてもう一か所。

 デッカードがレプリカントのレイチェル(ショー・ヤング)を愛してしまい、強引にキスを求めるシーン。

レイチェル(ショー・ヤング)

 これはもう凄い勢いの壁ドン! …元祖壁ドン!(?) IMAXの音響効果で、僕など椅子から跳び上がるくらいの暴力的壁ドン。←(またかよ)

 これはいくらなんでもシャレにならない。暴力そのものじゃないの、と感じたのですが、これも調べてみると、ショー・ヤングはハリソン・フォードの暴力的演技に激高していて、炎の怒りを燃やしながらキス・シーンを演じたとの事。

 そっか、あの怒りは本物の迫力だったんだ…。 

 最後にもう一つ。

 この映画の中で最も感動的なシーンは、脱走レプリカントのボス、バッティ(ルトガー・ハウアー)との最終対決で全く歯が立たず、デッカードはビルから落下寸前まで追いつめられる。

ブレードランナー:ファイナル・カット

(C)2007 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.

 デッカードが力尽きようとしたその刹那、何とバッティはデッカードを救い上げ、自分たちレプリカントの過酷な運命を語り始める…。

「お前たち人間には信じられないものを見てきた。オリオン座の新星…」

 反乱防止のために5年という短い寿命に制限され、劣悪な作業を強いられてきた彼らの望みはただ一つ「もっと生きたい」。これだけだったのです。

 脱走した理由も、自分たちを造り上げたタイレル社の社長に会い、寿命を延ばす操作を依頼するため。

 それが果たせなかったバッティは、今まさに尽きようとする己の命脈の最後に、命をもてあそぶ事への抗議、そして諦観。その想いだけでも誰かに伝えたかったのでしょう。


バッティ(ルトガー・ハウアー)

 思わず心揺さぶられる魂の慟哭… 実はこの台詞はルトガー・ハウアーの全くのアドリブだったそうです。(素晴らしい!)

 そして「ブレードランナー」は伝説となる…。

 デッカードはこのストーリーの単なる狂言回しに過ぎず、レプリカントこそがリドリー・スコットの狙った真の主役だったのかも知れません。

◆allcinema ONLINEの解説から引用

 リアルでダークな終末観を提示した近未来像でカルト的な人気を博したリドリー・スコット監督によるSF映画の金字塔「ブレードランナー」。これまでにもいくつかのバージョンが存在した同作だが、本作「ファイナル・カット」は、製作25周年となる2007年、これを記念してリドリー・スコット監督が自ら新たに再編集したバージョン。1992年の『ディレクターズカット/最終版』を基本に、再編集やデジタル修正を行い美しい映像でよみがえらせた。同年のヴェネチア国際映画祭でワールドプレミアが行われ、大きな話題を集めた。日本でもDVD発売に先立ち、劇場公開が実現。植民惑星から4体の人造人間=レプリカントが脱走した。彼らの捕獲を依頼された“ブレードランナー”デッカードは、地球に潜入したレプリカントたちを追うが…。

 

◆『記憶にございません!』
福島フォーラム:9月13日(金)鑑賞

 この男に任せて大丈夫か。

 三谷幸喜監督の最新作。主演は、暴漢の投石が額に当たって本当に記憶を亡くした現職総理大臣黒田(中井貴一)。

 これを何とか露見しないようにして自分たちの地位を守ろうとする秘書の井坂(ディーン・フジオカ)らの取り巻きたち。

 巨悪は五人の総理の首を挿げ替えながら、内閣の司令塔にとどまり続ける内閣官房長官の鶴丸(草刈正雄)。

 総理の黒田自身は対峙する最大第二党の党首で学生時代の同級生山西(吉田羊)と不倫関係にあり、国政も家庭も省みない”歴代最低の総理大臣”。

 しかし、記憶をなくしたことをきっかけに自分の本当の使命に目覚め、巨悪の鶴丸(草刈正雄)と対決することを決意する。 

記憶にございません!

(C)2019フジテレビ 東宝

 …と、なかなかの含蓄ある設定で、スリルも満点。

 しかし、いつもの事ながら三谷映画のキャスティングの何と豪華な事。まさに主役級がズラリ。

 鑑賞の前日、TVの特番で中井貴一の生い立ちと苦悩を見てきたので、映画の中の彼には格別な思い入れがありました。

 ストーリー的にも演技的にも中井貴一の独壇場といったところでしょうか。まあ、登場人物たちが第二秘書の番場のぞみ(小池栄子)を除いて悪人ばかりということもあるでしょうが。

番場のぞみ(小池栄子)

 中々に楽しめる映画でした。ただし…

 三谷幸喜の笑いのツボが時代とずれて来ている感じを受けました。

 今の若者たちはこの映画のネタで笑う事ができるのだろうか、という疑問が。

 これは「清須会議」辺りから感じている事で「ギャラクシー街道」でさらに強くなった思いなのですが…。

どうなんだろ、ネ、ケイコ?

ケイコ 三谷さんの感覚は、昔からチャップリンで止まっているのよ。

岸波ええ~! ヾ( ̄0 ̄; )ノ

◆allcinema ONLINEの解説から引用

 「ザ・マジックアワー」「ステキな金縛り」の三谷幸喜監督が主演の中井貴一をはじめ豪華キャストを起用して贈る政治コメディ。ある日突然記憶喪失になった総理大臣が、3人の秘書に守られながら事実を隠して公務をこなしていく悪戦苦闘の行方をコミカルに描く。共演はディーン・フジオカ、石田ゆり子、草刈正雄、佐藤浩市。内閣総理大臣の黒田啓介は、史上最悪のダメ総理と揶揄されるほど国民から徹底的に嫌われていた。ある日、演説中に聴衆から飛んできた石が頭に当たって昏倒し、そのまま病院送りに。ベッドの上で目覚めた黒田は一切の記憶を失っていた。彼の秘書官3人は、このままだと国政が大混乱になると、記憶喪失の事実を国民はもちろん、大臣や家族にも秘密にすることを決める。そんな記憶をなくした総理には、当然のように次から次へとトラブルが襲いかかる。その一方で、まるで憑き物が落ちたかのように、これまでの悪行がウソのような普通のおじさん然とした言動を繰り返し、周囲を困惑させる黒田だったが…。

 「ブレードランナー:ファイナル・カット」と「記憶にございません!」は、鑑賞した日付も近いので、どうしても最新鋭のIMAXレーザー・システムと従来型のものとの”劇場の違い”というものが強く感じられました。

 モラージュ菖蒲は大規模な集客施設ではあるものの所在する久喜市の人口は15万人程度。対する福島市は8月1日現在で28万7千人。

 数字だけ見れば興行的に成立しないワケでは無さそうに思いますが、果たしてどうなのか?

 入場料は109菖蒲が60歳以上シニアで1800円、イオンシネマ福島や福島フォーラムのシニアで1100円。1.5倍ほどの開きがあります。

 さて、福島市で1.5倍の入場料を受け入れる素地があるかどうか、日頃の入り込み客から考えると難しい気持ちも。

 ただ、いずれはIMAXのような最新鋭の設備に切り替わって行かないと、気軽に家庭で視聴できる環境と差別化ができなくなるかもしれませんね。

 なんせ「21世紀」なのですから(笑)

 

/// end of the “cinemaアラカルト227「ブレードランナー:ファイナル・カット+1”///

 

(追伸)

岸波

「ブレードランナー」には『6人目のレプリカント』という謎がずっと付きまとって来ました。

 元々は脚本で書かれていた5人目の「ホッジ」と6人目の「メアリー」に関して、配役の都合・予算の都合で折り合いがつかず、それにも関わらず映画中の台詞で「6人が脱出・うち1名は途中死亡」とやってしまった制作上のミスでした。

 当初版のこのミスが逆に憶測を呼び、死んだ「メアリー」以外の6人目はデッカード自身ではないかという風説が流布されたのです。

小説版では、この6人目を主人公とした続編「ブレードランナー2 レプリカントの墓標」が出版されている。

 しかしここで監督のリドリー・スコットが「デッカード=レプリカント説」に興味を示し、あたかもそれを暗示するようなシーンを追加撮影して本編に加えようとしたのです。

 これには、プロデューサーや当のハリソン・フォードも大反対。結局お蔵入りとなるのですが、それでもスコット監督はあきらめず、「デッカード=レプリカント説」を公言したり、遂には「ディレクターズ・カット」からそれを暗示するシーン(デッカードがユニコーンの夢を見る…ラストシーンの「ユニコーンの折り紙」で夢の中が知られている…それは植え付けられた記憶)が加えられました。

 今回の「ファイナル・カット」においても、せっかく矛盾を止揚するために「6人中2人死亡」と台詞を入れ替えたのに、逆にデッカードの「赤目シークエンス」(レプリカントは時々瞳が赤く輝く)を追加するなど、う~ん一体どうしたいのか分かりません(笑)

 観客に解釈を丸投げするリドル・ストーリーにしてしまうと、文学的な表現にはなるかもしれませんが、そういうやり方はどうなのか。

 僕はスキッとしませんね。やめた方が良かったと思う。

 ハリソン・フォードにしても、撮影が終わってから「実はデッカードもレプリカントだった」なんて言われれば、激怒して当たり前。だって、演じ方がまるで違ってきますもの。

 アナタはどう思いますか?

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

109シネマズ菖蒲

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Give the author your feedback, your comments + thoughts are always greatly appreciated.

 

To be continued⇒  “cinemaアラカルト228” coming soon!

 

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