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「行楽日和」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2005.9.11
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 さあ、世界一オカシな工場見学へ!

 さて今回は「チャーリーとチョコレート工場」。でも、最初はあまり乗り気ではなかったのです。

 何故かと言えば・・・

「チャーリーとチョコレート工場」

daddy ケイコ、“室井慎次”を見に行くよ!

ケイコ んとね、今日はくたびれた。・・・でも

daddy 何だよ、“でも”って?

ケイコ “チョコレート工場”だったら見てもイイ。

daddy ええー!

 本日は、そんな夫婦の会話がありまして、僕は仕方なく“チョコレート工場”なる映画の情報を調べたのでありました。

 すると・・・主演があの“百の顔を持つ男”と呼ばれるジョニー・デップではありませんか!

ジョニー・デップ ジョニー・デップ

 彼は、アカデミー賞主演男優賞にノミネートされた「パイレーツ・オブ・カリビアン」をはじめ、「シザー・ハンズ」、「妹の恋人」、「プラトーン」など、登場するたびに全く違ったキャラクターを演じ分けるミステリアスな男優。

 トム・クルーズとも同年代で、同じ“イケメン”でありながら、決してトムのような純粋二枚目を演じることを拒否し続けていることでも有名。

 片や監督はバットマン・シリーズのヒット・メーカーであるティム・バートン。

 この二人が組んだ映画が面白くないはずがない・・・と言うわけで、またまたケイコと二人で見てくることにしました。

 

 世界中で大評判の“ウォンカ・チョコレート”。

 その工場を経営する怪しい風体のウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)がゴールド・チケット入りのチョコレートを手に入れた5人の少年・少女をチョコレート工場見学に招待すると発表し、世界中は大フィーバー。

チャーリーとチョコレート工場

チャーリーとチョコレート工場

←抱腹絶倒、涙あり!

 何故なら、そのチョコレート工場は、数年前に従業員が全て解雇されて人の出入りが全くないのに、ウォンカ・チョコレートだけはどんどん出荷されているという謎の工場だからです。

 このチケットを手に入れた子供たちはと言えば、食いしん坊の超肥満児、金に飽かせてウォンカ・チョコレートを買い占めた大金持ちのわがままな社長令嬢、他人を蹴落としてでも全てが一番にならないと気がすまないじゃじゃ馬娘、受け売りの知識だけでオトナを見下す鼻持ちならない少年など一風変わった者ばかり。

 一方、チョコレート工場の近くに住む貧しい家庭のチャーリーは、憧れの工場見学を夢見ながらも、貧しさゆえにたった一枚のチョコレートを買うお金も無いのです・・・。

主人公のチャーリー少年

主人公のチャーリー少年

←彼の思いやりのある行動には泣かされる!

 ひょんなことから、5枚目のゴールド・チケットを手に入れたチャーリーは、他の4人の子供たちと工場見学に行くことになるのですが、そこは、チョコレートの川をお菓子の舟で見学するという驚天動地の世界でした。

 さらに、ハイテクの生産ラインで働いているのは、不思議な小人たち・・・その工場見学の最中、子供たちは次々とトラブルに遭遇し、姿を消して行くのです。

 さて、チャーリー少年の運命や如何に?

 そして、1名だけに与えられる“特別なプレゼント”とはいったい・・・。

貧しいチャーリーの家

貧しいチャーリーの家

←30度も傾いている!

(背後はチョコレート工場)

 開始早々、早くも僕の感受性の強い僕の涙腺を刺激するシーンがありました。

 主人公のチャーリー少年は、五つ目のゴールド・チケット入りのチョコレートをゲットすることを夢にまで見ますが、それはどう考えても無理な話・・・。

 貧しい彼の家では、チョコレートを食べられるのは、年に一度の誕生日の時だけなのです。

 その日、リストラされて職の無い彼の父親は、なけなしのお金をはたいてチャーリーに誕生日プレゼントのウォンカ・チョコレートを買ってきます。

「もしかして、これが五枚目のチケットが入ったチョコレートでは・・」 

 と、パッケージを開くチャーリーの手元を、家族全員が息を呑んで見つめます。果たして・・・?

 やはり“ハズレ”・・・。

 落胆する家族の顔を見て「みんなで分けて食べよう」というチャーリー。

「いや、いけないよ。それは君のプレゼントなんだから君だけのものだよ。」

 というおじいちゃん。

 しかし、チャーリーは毅然として言うのです。

「そうさ、これは僕だけのプレゼントさ。だから僕の好きなようにする。さあ、みんなで分けよう!」

 いやー、今どきこんないい言葉を子供から聴ける機会など、本当に少なくなりました。

 どちらかと言えば、現代日本は“個の確立”を急ぐ余りに、“公徳心”を忘れ去った教育のおかげで、自己主張だけはするくせに“他人への思いやり”など考えもしないような子供ばかり・・・。

 家族たちは、チャーリーのけなげな思いやりに胸を熱くしながら、年に一回しか食べられない一カケのチョコレートを分け合って食べるのでした・・・。

ユアン・マクレガー(右)

チャーリーの家族

←30度も傾いて屋根が破れた家に7人居住!

年にたった一枚のチョコレートを開けようとしている。

 チャーリーは、結局、道端で拾った一枚のお札(多分、日本で100円くらい)で買ったチョコレートでゴールド・チケットの幸運を手に入れるのですが、お店で幸運のチケットを目にした大人たちは、「100ドルで譲ってくれ」、「いや400ドル出そう」などとチャーリーを買収しようとするのでした。

 家に帰ったチャーリーは“かくかくしかじか”と訳を話し、家族は大喜びするのですが、そこでチャーリーは意外なことを言います。

「僕は、チョコレート工場に行かないよ。」

「え? どうしてなんだい。」

「だって、これを400ドルで買ってもいいという人がいたんだ。400ドルあったなら、みんなが助かるでしょう?」 

 ・・・このセリフも泣かせるなぁ。

 でも今度はおじいちゃんが言います。

「チャーリー。お金は確かに大切だけれども、そんなものは世の中をいくらでも泳いでいる。お前のその五枚目のチケットは、この世にたった一つのものなんだ。 そのチャンスを逃せば一生後悔することになる。夢を叶えに行きなさい。」

 極貧の生活にあっても、決して“誇り”を失わない気高い精神・・・それはまるで日本の武士道の精神「武士は食わねど高楊枝」そのものではありませんか。

 “あ、いかん、完全にこの映画に引き込まれている”・・そんな気持ちになった瞬間でした。

←(いかん、のかい?)ケイコ

 さて、この映画、わがままな4人の子供たちが次々とトラブルに遭って姿を消し、一人残ったチャーリーが特別賞を受け取ることになるのです。

 しかしチャーリーは、ある理由から特別賞さえ辞退して、そのことからストーリーは思わぬ方向に動き出します。

 うーむ、さすがにネタバレ満載の「cinemaアラカルト」でも、その先は書くことができません。

 ここは、自分の眼で映画そのものを見て感動してください・・・。

←(泣くこと確実!)daddy

ハイテク工場内部

ハイテク工場内部

←従業員の小人と話しているところ。

 映画の中で、工場に招かれた子供たちの前にウォンカ工場長が登場するシーンで、ディズニー・ランドの“It's a small world”のような歌って踊る人形たちが出てくるのですが、アップになった時に人形の顔が古ぼけて汚れていたのを見て“あれ?”と思いました。

 “パーフェクトなハイテク工場を作る技術があるのに何故にここだけ?”と感じたのです。

←(しかも、工場長は人形を燃やしてしまう!)daddy

 ところが、映画の後で、ケイコが意外なことを言います。

ケイコ あの監督は、ディズニーのスモール・ワールドが大嫌いなのよ。

 私も同じく感じるから判るけど、機械仕掛けの煤けた人形たちにいくら「愛」や「夢」を歌わせても子供の心には届かないわ。

 あのシーンには、ティム・バートン監督の痛烈なアイロニーが隠されてると思う。

daddy ・・・・・・! (なるほど。)

ウィリー・ウォンカ工場長

ウィリー・ウォンカ工場長

(ジョニー・デップ)

←とても不思議なキャラ!

 この映画を見終わって、今の子供たちには「夢と冒険と勇気」を与えるコンテンツがもっと必要だなと思いました。

 詰め込み教育、あるいはその逆の放任教育で、人格的にわがままな子供たちを育ててしまっている・・・。

 この映画に出てくる4人の奇妙な(そして、今や世界中に溢れている)子供たちをわがままに育ててしまった親たちは、そうした人間として描かれています。

 本当に子供たちのことを考えて、真正面から叱ることをしなかった親たちです。

 日本の少年コミックも、どちらかと言えば「闘い」や「妬み」や「劣情」など負の側面をテーマにしたものが増えてきたような気がします。(もちろん、そうでない作品も多々ありますが。)

 昔ならば、ディズニー映画などがそういった役割を果たして来たのですが、今こそ、子供たちに「夢と冒険と勇気」を与える『童話』が求められているのではないでしょうか。

 「チャーリーとチョコレート工場」、これは抱腹絶倒の笑いに包まれながらも、時折、鋭い真実を突きつけたり、ぐっと来る感動を与えてくれる素晴らしい作品に仕上がっています。

 その計算されつくしたストーリー・テリングは大人の鑑賞に十分堪えうるものです。

 アメリカのりんりんさん、そして小さなお子さんをお持ちの皆さん、是非この機会に、ご家族で映画館に足を運ばれることをオススメします!

 

/// end of the “cinemaアラカルト19「チャーリーとチョコレート工場」” ///

 

(追伸)

ケイコアノネ・・・。

daddyなーに、ケイコ?

ケイコこの映画は、結局、ティム監督のものでもジョニー・デップのものでもないわ。

daddyええー! じゃあ誰のもの?!

ケイコ映画の中で、何百人も登場する小人たちを一人で演じ分けていたあのオジサンのものよ。

daddyええー! (なるほど!)

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ウンパ・ルンパ

ウンパ・ルンパ

(チョコレート工場の小人たち)

←全てこの人が一人で演じ分けている!

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト20” coming soon!

 

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