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「Freezing Conflagration」(佑樹のMusic-Room)
by 岸波(葉羽)【配信2017.9.23】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 絶望の、産声。

 怖いですね~このキャッチコピー。

 「エイリアン」第一作を演出したリドリー・スコットが監督に返り咲いて制作したシリーズ最新作『エイリアン:コヴェナント』をケイコと観てまいりました。

 直接には、2012年公開の前作「プロメテウス」の続編で、前作そして今後制作される続編と合わせて、第一作「エイリアン」の前日譚という位置づけになっています。

 ところがっ!!

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

ワタシは行かないよ。

ええー! …何で? 

また気色悪いのが出てくるんでしょ。何が楽しくてあんなモノ…。

だけど「プロメテウス」で未解決の問題がたくさんあるでしょ。お願いだから一緒に行こ?

仕方ないなぁ…じゃ、明日は二階の障子貼りやってね♪

分ったよ(とほほ…)

 ~というワケで、僕とケイコが待ちに待った(?)『エイリアン:コヴェナント』、果たしてその内容は?

 

 映画の冒頭、山々や湖を見渡せるガランとした真っ白な部屋で男がピアノを弾いています。その傍らにも一人の男。

 ここはいったいどこなのか、いつなのか、地球であるのかさえも不明なまま、二人の会話が進んでいきます。

 そして核心に迫る言葉…

黒服の男「お前は私が作ったんだ。」

白服の男「私は貴方が… では、貴方は誰が作ったんですか?」

頃服の男「‥‥‥‥‥‥。」

 問いに答えがないまま、部屋の中を見廻す白服の男。そして、部屋の片隅にミケランジェロの「ダヴィデ像」を見つけ、自分に名前を付けます。

白服の男「私の名前は…デヴィッド。」

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 はい、初見の人は何が何だか分からないと思います。これ、リドリー・スコットの特徴(笑)

 前作「プロメテウス」の冒頭シーンも、真っ白な巨人が何処とも知れぬ惑星で黒い液体をあおり、みるみる身体が分解して滝壺に身を投じ、水中で新たな生物の細胞が再構築されていく謎のシーンからスタートしています。

 後々のシーンとのシークエンスで、そこは古代の地球であり、白い巨人(「エンジニア」と呼ばれる。)のDNAをこの惑星にばら撒いた。そして、そこから地球人類が誕生するという事が分かるのですが。

「プロメテウス」冒頭シーン

 この前作「プロメテウス」を観ていれば分かるのですが、白い男は「プロメテウス」にも登場したアンドロイド「デヴィッド」と同じ型の初号機で、黒い男はプロメテウス号を派遣したウェイランド社の社長、ピーター・ウェイランドの若き日の姿なのです。

 ということは…

 冒頭のシーンは、プロメテウス計画が立ち上がる以前、ウェイランド社が初めてアンドロイドの制作に成功し、山奥の研究所(あるいは社長の別荘)で交わされた社長とアンドロイドの会話ということになります。

 つまり、リドリー・スコットの作品作りは、説明的になることを極力排し、観客自身に考えさせようとするのです。

 …ならば、前作のストーリーをおさらいしてみる必要があるでしょう。

プロメテウス

(C)2012 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 前作「プロメテウス」では、主人公であるエリザベス・ショウ(ノオミ・ラパス)ら考古学者が古代遺跡を発見し、そこの絵文字や星図などから人類の起源に繋がる未知の惑星の情報を解読。

エリザベス・ショウ

 巨大企業ウェイランド社は、人類の起源をたどるため調査チームを編成し、宇宙船プロメテウス号で、その惑星LV-223を目指して旅立ちます。

 果たしてその惑星の林立する巨大ドーム遺跡の中にあったのは「エンジニア」と呼ばれる異星人の膨大な死体。どうやら彼らは約2000年前に何者かに襲われ全滅したらしい。

 切り離された頭部の一つを船に持ち帰り調べてみると、そのDNAは地球人類と同一のものでした。(あらららら…)

 同行していたアンドロイドのデヴィッドは、遺跡内で謎の黒い液体を発見。それを密かに持ち帰ると、ショウの恋人である考古学者ホロウェイの飲み物に混ぜて飲ませ、その効果を観察します。←(こいつ、極悪アンドロイド。)

アンドロイド・デヴィッド

 一方、別行動をしていた調査隊のメンバーは、遺跡内の黒い水に触れた事で体内に異常が発生。やがて身体を内側から食い破って出現したエイリアンは調査隊に次々と襲いかかって来ます。

 それらの出来事を知らないショウは、船内で恋人のホロウェイとセックス。←(おいおい何やってんだよ、こんな時に!)

 すると、先天性の不妊症であったはずのショウは妊娠し、胎内に何らかの生命を宿したことが明らかとなります。(おーコワ!)

 急速に成長する「それ」が異常な生命体である事を察知したショウは、自動手術装置でタコのような生物を摘出し、装置内に閉じ込める事に成功します。

 さらにプロメテウス号の秘密の一室には、既に死んでいるはずのピーター・ウエィランド社長が密かに同乗していました。彼の目的は、先進技術を持つエンジニアとコンタクトし、永遠の命を手に入れる事。←(コイツわぁ…)

エンジニア

 ウェイランド社長とアンドロイド・デヴィッドは、遺跡内にコールドスリープをしている、生きたエンジニアを発見して、その眠りを覚ますことに成功。

 しかし、目覚めたエンジニアは彼らに襲いかかり、デヴィッドの首を引きちぎるとウェイランド社長も殺害し、彼らの宇宙船を発進させようとします。

「エンジニアの目的は、地球に黒い水の病原体をばら撒いて人類を絶滅させることだ!」

 ~と、"首だけ”デヴィッドから報告を受けたショウら生き残りのメンバーは、プロメテウス号をエンジニアの宇宙船に激突させて阻止することを決意。

 激突前に辛くも脱出したショウは、酸素を補給するために、地上に残された自動手術機のあるモジュールへと帰還。ところが、まだ死んでいなかったエンジニアが、復讐するために襲ってくる。←(まだ、死んでないのか!?)

エンジニアとタコ(笑)

 しかしこのモジュールには、ショウの胎内から摘出したタコの化け物が残っており、巨大化したソイツとエンジニアが格闘する隙を見て脱出。エンジニアはタコの化け物に遂に敗北。

 単身逃れたショウは、まだ機能しているデヴィッドの頭部を回収して、別の(エンジニアの)宇宙船に乗り込むと、「今度はヤツラの母星をやっつけるわよ!」という事で、宇宙へ旅立っていきます。

 一方、地上に残されたエンジニアの身体を突き破って現れたエイリアンは、雄叫びを上げる…と、ココまでで終わり。

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 さて、続編「エイリアン:コヴェナント」の方ですが、ウェイランド社が開発した惑星間移民船コヴェナント号は、コールドスリープ状態の2000人の移民とさらに一千体以上の授精卵を載せて、新天地「オリガエ6」へ向けて航行中。

 宇宙船のハンドリングを担うのは、デヴィッド型のアンドロイド。ただし名前はウォルター(マイケル・ファスベンダー)で、前作のデヴィッドと同じ俳優が演じています。

 途中、ニュートリノの衝撃波を浴びてコヴェナント号に重大なトラブルが発生。乗務員は次々とコールドスリープが解除されて目覚めますが、船長のユニットから火災が発生し、憐れ船長は丸焼けに。

 悲嘆にくれるその妻…であり人住計画責任者でもあるジャネット・ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン:今作の主人公)でしたが、その時コヴェナント号は近傍の惑星から信号を受信。

ジャネット・ダニエルズ

 解析をしてみると、何とそれは、ジョン・デンバーの「カントリーロード」のメロディ!うむむむむ…。 ←(つかみはバッチリ!)

 その惑星の大気を解析してみると、目標のオリリガエ6よりもむしろ地球の大気に近い状態。どうして今までこんな星が探索に引っかからなかったのか?

 本来の目的地オリガエ6はまだ7年先。この惑星までなら数週間。さあどーするドースル? …という事で、立ち寄ってみることに決定します。

 先遣調査隊の船が降り立つと、そこは豊かな緑に覆われた地球のような惑星。しかし不思議なことに獣も鳥も虫さえも居ない植物の惑星。

 大気の組成は地球とほぼ同じ…という事で、気密服のヘルメットを外して深呼吸。あ~オゾンが旨い…って、やめろよオイ!!

 探査を進める途中、待機組となった調査員が美しい植物に顔を寄せる…やめろってば!

 さらにその実を踏み潰す、そこから立ち上った黒い胞子が舞い上がり調査員の耳へ侵入。←(だから言ったじゃないか!)

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 やがて一行は朽ちた異星人の宇宙船を発見。船内から「エリザベス・ショウ」と書かれたタグと彼女の写真を見つけます。どうやら、プロメテウス号の乗組員であった彼女は、異星人の宇宙船を操縦してこの惑星に降り立ったらしい。

 …結局、体内に侵入したエイリアンが身体を食い破って大暴れするお決まりのパターンとなるワケですが、この時に意外な助け舟が現れます。黒いローブを羽織ったアヤシイ人影。これはもう一人のウォルター…じゃないデヴィッド!?(マイケル・ファスベンダー:二役)。

ウォルター(デヴィッド二役)

 ここなら安心…という事で案内されたのは、宮殿のような異星人の建築物。その周囲には何故か夥しい数の異星人の死体が放置されている。

 どうやらココは、「プロメテウス」のラストでエリザベス・ショウとデヴィッドが目指した「エンジニア」の母星のようだ。

 さあ、果たしてこの死の星にとどまっていたデヴィッドの狙いは何なのか? はたまた今作の主人公ジャネット・ダニエルズ(キャサリン・ウォーターストン)らの運命や如何に!?

 1979年に公開された「エイリアン」は「ブレードランナー」で一躍名を上げたリドリー・スコットの名声を不動にしたSFホラーで、主演したシガニー・ウィーバーの出世作。

 アカデミー賞視覚効果賞を受賞し、星雲賞をはじめ数々の映画賞・映画部門賞を受賞した作品です。

 僕はコレを観た時に衝撃を受けました。エリアンは勿論、異星人の宇宙船の異形の造形が醸し出す怪しいエロチシズム、おぞましい殺戮シーン…それらは、それまでのSFには無かったもの。

 そして何と言っても、女性がみな逞しく男らしい(笑)それに引き換え、登場する男たちの何と女々しいことか。登場するロボット(アンドロイド)は、アシモフの「ロボット三原則」など意に介さず陰謀の限りを尽くす…こんなSF見たことない!

 その後、ジェームズ・キャメロンが監督を交代した1986年の「エイリアン2」では、海兵隊の戦闘プロ集団と大量のエイリアン、さらにはエイリアン・クイーンとの壮絶な闘い。これもまた手に汗握る作品でした。

エイリアン・クイーン

 ところが…

 さらに監督を変えた「エイリアン3」(1992年)や「エイリアン4」(1997年)ではパターンだけ踏襲したマンネリ化が進み、さらに「エイリアンエイリアンVSプレデター」(2004年)、「AVP2 エイリアンズVS.プレデター」(2007年)では、エイリアンの凶暴性だけを強調した怪物同士の集団戦というふうに、どんどんあらぬ方向へ行ってしまうのです。

 おそらく、この流れを観たリドリー・スコットは、忸怩たる思いを感じていたに違いありません。「ブレードランナー」で分る通り、彼は映画のシーンそのものよりも「背景」や「物語」を大切に考える人物なのですから。

 そこで自分の代表作「エイリアン」を、自らリブートすることに思いが至ったのでしょう。「続編」ではなく「前日譚」を描く形で。エイリアンを生み出したのは他ならぬ人類そのものであったという驚愕のアイディアを携えて。

正確には、"アンドロイド"という創作物を介してですが。

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 シリーズもので「前日譚」を描くというやり方…現在ではよく使われる方法論になっています。

 例えば「スターウォーズ」シリーズ、「猿の惑星」シリーズ、部分的には「ターミネーター」シリーズもそうでしょうか。

 僕が思いつく限り、この手法と最初に出会ったのは、ゲームの「ドラゴンクエストⅢ」です。

 「Ⅰ」で伝説の勇者ロトとされていた人物の活躍を時を遡って描いたのが「Ⅲ」の世界(「Ⅱ」は「Ⅰ」の勇者の子供たちの世代の物語。)で、なぜドラゴンクエスト「Ⅰ」の世界がそのように成り立っているのかという謎解きを含めた物語でした。

ドラゴンクエストⅢ

 リドリー・スコットは、何故「続編」ではなく「前日譚」という手法を選んだのか?

 その一つには、シリーズの看板女優シガニー・ウィーバーが実年齢を重ね過ぎた事、単に俳優を交代させても「劣化版」としか見做されない事、「4」では初代リプリーが既に死んでおり、クローン再生という手まで使ってシガニー・リプリーを登場させているため、これ以上リプリーにおぶさってもマンネリ化は免れない事があるでしょう。

 しかし、それよりも何よりも「エイリアンは誰が作ったのか」・「人類は誰が作ったのか」~その起源の物語こそ、エイリアン神話を完成させるのに必要なピースだと考えたのではないでしょうか。

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 そして、「エイリアン」シリーズのお約束について。

 リプリーがそうであったように、このシリーズに登場する女性はみな逞しく考え方が合理的で男らしい。

 それに引き換え、登場する男性はみな臆病者やエゴイスト、能無し、卑劣漢ばかり。(あらららら…)

 「エイリアン2」で、新米将校のゴーマン(男)が全弾を撃ち尽し迫りくるエイリアンに怯えまくるのを見て、既に動けなくなっている女狙撃手のバスクエスが「ほんとにしょうがない男ね」と言いながら、ゴーマンを抱きかかえて二人で爆死するシーンは忘れられません。(”男前”なバスクエスにホレボレ。女だけど。)

バスクエス(左)

 また、「命からがら逃げ出した脱出艇には、必ずエイリアンも乗り込んでいる」(笑)

 まあこれは、話が続く可能性を残すためにしょうがないのかとも思いますが、カンペキにお決まりのパターン。もう誰も騙されません(大笑い)

 ドラゴンクエストでも、ラスボスを倒した後、必ずより強力な”第二形態”で蘇りますけれども、あれと同じですね。

 しかもこのパターンにはさらに追加があり、エンディング・ロールの後で「不穏なシーンをもう一枚だけ入れる」という手法も取られました。

 これは「事態が解決したと見せかけてさらにもう一幕がある」という暗示のためで、以後、いろいろな映画シリーズで採用された定番の演出となりました。

 もう一つ、キーマンとして必ずアンドロイドが登場するということ。「Ⅰ」のアッシュであったり「Ⅱ」のビショップであったり、今回のデヴィッドであったり…。

 ただ、彼らの”善悪”ははっきりしており、アッシュやデヴィッドは完全悪。ビショップや「Ⅳ」の女性アンドロイド、アナリー・コール(ウィノナ・ライダー)は徹底して主人公の味方というように。

アナリー・コール

 「エイリアン」シリーズは、人間とエイリアン、そしてアンドロイド三者の物語と言ってもいいかもしれません。

 そして、今回の「エイリアン:コヴェナント」の真の主人公は、ヒロインのジャネット(キャサリン・ウォーターストン)ではなく、アンドロイドのデヴィッド(マイケル・ファスベンダー)と言っていいかもしれません。

「人間と同じようにクリエイト(創造)をしたい」・「天国のしもべとなるよりも地獄の王として君臨したい」と考える彼の暗い情熱が、全ての事件を生み出し、エイリアンを完全体として完成させるのですから…。

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 既に上(↑)で書いてしまいましたが、アンドロイドのデヴィッドは、「プロメテウス」の惑星LV-223から脱出する時に黒い水を持ち出しており、エリザベス・ショウに内緒でエイリアンを完全体に進化させる研究を進めていました。

 そして、それが完成すると、自分を救ったショウの身体を実験台にしてエイリアンを大量に生み出し、エンジニアの母星に到着した時に、それを上空からばら撒いてエンジニアを絶滅させたのでした。

 今回の先遣調査隊を救ったのも善意ではなく、完全体エイリアンのフェイスハガーを寄生させる母体として彼らの身体を使いたかったから…。

 デヴィッドはウォルターと対峙した時に、こうつぶやきます…「我が名はオジマンディアス」。

パーシー・ビッシュ・シェリー

 「オジオマンディアス」は英国詩人パーシー・ビッシュ・シェリーが作った詩で、古代エジプト王朝の絶頂期の王、ラムセス2世の別名のこと。詩には…

「我が名はオジマンディアス 王の中の王
全能の神よ我が業をみよ そして絶望せよ」
…とあります。

 つまりデヴィッドは、人間を超え神をも超える存在を目指し、究極の生物エイリアンを創造することによって、彼らに君臨することを夢見ていたのでしょう。

 この「エイリアン:コヴェナント」は、”エイリアン誕生の物語”にとどまるものではなく、”アンドロイドが神を超えようとする物語”だと言えるかもしれません。

 次々と陰謀の犠牲になる調査クルー。母船へ救援を依頼するジャネットら。アンドロイドのデヴィッドに対抗できるのは、同じアンドロイドのウォルターのみ。

 二人が壮絶な闘いを繰り広げる一方で、救援艇に乗り移って来た完全体エイリアンとジャネットの死闘が始まります…。

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 さて、今回の「エイリアン:コヴェナント」を観た感想はどうであったか?

 残念ながら「A」評価を与えることはできません。

 思想性・物語性、映像技術、演出は申し分ないと思うのですが、ストーリーのディテールが余りにも甘くないか?

 例えば、エンジニアの母星に到着したクルーたちが、大気の組成を確認しただけで安易にヘルメットを脱いで深呼吸したり、異星の植物に無警戒に顔を近づけるなど、「バカなの?」と言うしかありません。

 また、エイリアンに体内に侵入されたクルーが異常な動きをし始めたのを見て、女性チーフパイロットのファリスは怯えるあまり、仲間のカリンごと部屋に閉じ込めて自分だけ逃げだす。

 あげくに、部屋から出てきたエイリアンを撃退するため安易にショットガンを用い、飛行艇の可燃燃料タンクを撃ち抜いて飛行艇ごと大破。クルーは母船に帰還する手段を失う。もちろん本人は死亡…って、アンタ、クルーの司令官だろ!?

 これまでも卑劣な人間、たくらみを持った人間は出てきましたが、今作ではただの大マヌケが多すぎます。(しかもシリーズ掟破りの”女性”大マヌケ…)

 こんな間抜けクルーたちに2000人以上の惑星間移民船を任せるなんて、あり得ないとしか思えません。

 せっかく”高い思想性”を織り込もうとしているのに、危機を呼び込んでいるのがクルーの自爆ミスばかりとあっては、もう何をかいわんや…。

 次作があるとすれば、もう少しこのあたり考えて欲しいと思います。

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 また、「エイリアン」シリーズのファンとはすなわちシガニー・ウィーバーのファンでもあるワケで、彼女自身が出演しないとしても、それに代わる”男前の”女性主人公を期待しているはず。

 そういう意味で、前作のノオミ・ラパス、今作のキャサリン・ウォーターストンは共にイマイチではなかったか。

 今回の「コヴェナント」で見る限り、ジャネット(キャサリン・ウォーターストン)の見せ場は、終盤の機上の決闘シーンくらいのもので、非情に印象が薄いものになっています。

 まあこれは、むしろ真の主人公をアンドロイド・デヴィッドに置いた結果とすればやむを得ない事かもしれませんが、悪漢デヴィッドが最終勝利を収めるなど、非常に後味の悪い映画になっており、これまであった「痛快感」や「カタルシス」はほぼゼロ。

 予定調和を捨てる代わりにカタルシスも捨てる結果になっており、この手法が支持されるかどうかはかなり疑問です。

「高尚なバックグラウンドがあっても、映画の面白さ・できの良さとは全く関係ないのだ、ということを『プロメテウス』と『エイリアン:コヴェナント』が実証した。」と評したブロガーが居ますけれど、それに近い感想を持ちました。

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

 米国で先行して今年5月に公開された初日3日間の興行収入は3600万ドルと、前作「プロメテウス」(5110万ドル)に及ばぬながらも力強い発進をしましたが、その後第二週に入り、70%以上のスローダウンとなりました。

 日本では初週土日二日間では第一位に躍り出ましたが、休日を含めた三日間でみると「ダンケルク」の後塵を拝しています。

 リドリー・スコットは、かつて「コヴェナントの後にエイリアン映画をあと4本は作りたい」と発言していましたが、「もう2本作るかも」・「あと1本になるかもしれない」と次第にトーンダウン。

 7月21日のIGNの記事によれば、配給の20世紀FOXでは「あと2本の続編を計画していたが、現在の成績により見直しの対象となる」とアナウンスをしたとのこと。

 うむぅ…リドリー・スコット、好きな監督であるだけに、ここで負けてほしくないなぁ。あとは日本での興行成績次第か…。

 皆さん、劇場に足を運びましょう!

 

/// end of the “cinemaアラカルト192「エイリアン:コヴェナント”///

 

(追伸)

岸波

 エイリアン・シリーズで忘れられないシーンがあります。

 それは第一作「エイリアン」で、ウェイランド・ユタニ社が派遣した宇宙船ノストロモ号で、悪役アンドロイド・アッシュが主人公リプリーを窒息させるため、雑誌を口中に詰め込むシーンがありました。

 この時、手に取った雑誌、何と「平凡パンチ」でした!(調べてみると、表紙になっているのは木之内みどり氏だそうです。)

 これは、ウェイランド社を買収した湯谷社が日系であったこと(そのために社名が「ウェイランド・ユタニ社」と変更された。)と大いに関係があります。

 つまり、ノストロモ号は日系企業の所有であったからというワケです。

 まあ、さすがに想定年代である2122年に至る前、「平凡パンチ」が廃刊になるとまでは予想できなかったようですが(笑)

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

エイリアン コヴェナント

(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation. All Rights Reserved

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト193” coming soon!

 

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