こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
5000年封印された究極の“悪”が解き放たれる
先週の「ジョジョ」に引き続き、トム・クルーズ主演の「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」をケイコと観てまいりました。
「ザ・マミー」と言えば、知る人ぞ知るミイラ映画「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」と全く同じ原題。
同作は世界中で大ヒットし、シリーズ第三作まで制作されている…すると今回の「ザ・マミー」は「ハムナプトラ4」?
その真偽については後ほど解説をいたします。
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ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
(C)Universal Pictures
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5000年の眠りから目覚め、人類への復讐を開始した古代エジプトの王女アマネットと我らがトム・クルーズの闘い。
期待に胸を膨らませて福島フォーラムの三階まで階段を昇ると、開演5分前というのに意外なる静けさ。
むむっ…もしかして時間を間違えたか?と恐る恐るドアを開けると、会場の観客は十数名。パラパラと…ええ~!?
そんなに人気無いの?それともトム・クルーズの新作だってみんな知らないの?
頭の中がクエスチョンでいっぱいになりましたが、胸の動悸を抑えて「一番いい席」あたりに陣取ると、間もなく上映が開始され…
さて、本編の内容やいかに!!?
映画の冒頭…最近はいつも、そんな書き出しでファースト・シーンを書いているのですけれど、今回は「冒頭」のさらに「冒頭」、つまり、配給会社のクレジットが出る場面で「あれ?」と。
そこに表示されたのは、見慣れない「Dark Universe」の文字。(ん?)
Dark Universe
気になって調べてみると、もともとユニバーサル映画は“1920年代から「ユニバーサル・モンスターズ」というモンスター・ホラー映画シリーズをリリース。
そして今回、歴代の人気ナンバーをリブートすることが決定され、その第一作がこの「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」ということ。
ちなみに「ユニバーサル・モンスターズ」の第一作は、1923年の「ノートルダムのせむし男」。
「ダーク・ユニバース」プロジェクトを主導したのは、「ミッション・インポッシブル3」などを手掛けた脚本家のアレックス・カーツマンとクリス・モーガン。
アレックス・カーツマン
ジキル博士(ラッセル・クロウ)が率いるモンスター研究機関「プロディジウム」を中心に描いていくということで、今回の「ザ・マミー」でも重要な役割で登場します。
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ジキル博士:右(ラッセル・クロウ)
(C)Universal Pictures
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さて実際のファースト・シーン。暗闇の中から不気味な唸り声を上げ巨大なドリルが壁を突き抜いて来ます。
どうやらここはロンドンの地下鉄の工事現場。そして、ドリルが付き抜いた壁の向こうにあったのは謎の地下墓地。
この地下遺跡は十字軍の戦士を埋葬した墓地で、歴史の謎を解く大発見にイギリス中が湧きかえる。
発掘を進めるとヒエログリフが刻まれた謎の棺を発見。遺骸と共に納められていたのは深紅の宝玉…これはどう考えてもイワク因縁ありそうなシロモノ。
ハイド博士(ラッセル・クロウ)
そこで、専門的研究機関である「プロディジウム」が依頼を受け、ヘンリー・ハイド博士(ラッセル・クロウ)が赴くことに。
プロディジウムとハイド博士がさっそく登場。
彼の解読により、発見された宝玉は古代エジプトのアマネット王女(ソフィア・ブテラ)が所持していたダガーの一部であることが判明します。
場面は暗転し、今度はアマネット王女の悲劇の物語が。
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メネプトレ大王とアマネット王女(ソフィア・ブテラ)
(C)Universal Pictures
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アマネット王女(ソフィア・ブテラ)は、古代エジプトのメネプトレ大王の皇位継承者。ところが大王に男児が生まれたため、地位を脅かされることに。
思い詰めた王女は死神セトに魂を売り渡し、宝玉が嵌められた暗器のダガーを授けられます。
死神が憑り移り四つの瞳を持ったアマネットは死神のダガーで王子と生母、そしてメネプトレ大王をも殺害。
しまいに自分の許婚(いいなずけ)を殺害し罪を着せようとしたところで取り押さえられ、砂漠の遺跡に生き埋めにされるのです。ヤレヤレ、なんという烈婦。
再び場面変わって、イラクの砂漠地帯。二人の男が小高い丘の上から砂漠の集落を窺っています。
「いったい何があるんだ?」
「財宝だ。信じろ(笑)」
「・・・・・・。」
「アドベンチャー魂はどこいった?(笑)」
はい、笑っている方が主人公ニック・モートン(トム・クルーズ)。イヤイヤ付き従っている風情が相棒のクリス・ヴェイル(ジェイク・ジョンソン)。
ニック(トム・クルーズ)
二人は駐屯しているイギリス軍の傭兵をしているが実際はトレジャー・ハンター。反乱軍に征圧された集落の奪還作戦の斥候を命じられたのをいいことに、あわよくば「お宝」をせしめようと目論んでいるのです。
集落の屋根に侵入したもののあっという間に包囲され、絶体絶命。味方の空爆で九死に一生を得るハメに。
敵が逃げ出すのを見ているうち、自分たちの建物も崩壊。爆撃跡の地面も大きく崩れて呑み込まれそうになる。
…そこで謎の地下遺跡を発見、って出来過ぎな進行ですが。ウン。
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ニック(トム・クルーズ)とクリス(ジェイク・ジョンソン)
(C)Universal Pictures
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謎の地下墓地発見の報を受け、現場に派遣されてきたのが考古学者のジェニー・ハルジー博士(アナベル・ウォーリス)。
内部を慎重に検分しながら彼女は言う…。
「五千年の間隠されてきた… これは墓じゃない。牢獄よ!」(ええ~)
ハルジー博士(アナベル・ウォーリス)
はい、墓(牢獄)の壁には見覚えのある顔型レリーフが。そうです、コレはアマネット王女が生き埋めにされた場所。
でも、ココってイラクって言ってたよね? エジプトじゃないじゃん…。
するとハルジー博士(アナベル・ウォーリス)…
「エジプトから遠く離れたメソポタミアに王家の遺跡が。これは大発見よ!」
そうくるか!!? うむぅ…納得はいかないけど、反逆者だから遠くまで連れてきたと理解するしかないでしょう。
そうこうするうち、反乱軍が再び近づいているという情報。イギリス軍は即刻撤退を指令するが、ハルジー博士は「せめて棺だけでも持っていきたい」と。
ニック(トム・クルーズ)が支えの鎖を銃で撃ち抜くと錘が下がり、水中から棺が引き上げられて来ます。
棺だけでも…
ヘリで棺を引き上げようとすると、どこから出たのか大蜘蛛の群れが出現。相棒のクリス(ジェイク・ジョンソン)は首筋を刺されてしまいます。
棺は輸送機に乗せてイギリス本土まで空輸することになります。
同乗し、棺を見つめていたニックは、アマネット王女(ソフィア・ブテラ)の過去世界に引き込まれ、まるでそこに居るような不思議な体験をする。
一方、蜘蛛に刺された相棒のクリスはといえば、どうも様子がおかしい…遂にはゾンビのような姿となり、仲間を殺そうと襲ってくる。あらららら。
やむを得ずニックはクリスを射殺…というか、どう見ても既にゾンビ化しているのですが。
棺桶がアヤシイ…
輸送機がロンドン上空に差し掛かかると、今度はカラスの大群が飛来。コクピットを突き破ってパイロットたちが死亡。エンジンに飛び込んでエンジンも翼ごと爆発。ええ~ もう処置無し!
後は脱出するしかない。だけど、パラシュートまで吹き飛ばされ、残っているのは一つしかない。
ニックは、無理やりハルジー博士にパラシュートを背負わせると、その紐を引いて空中に脱出させます。
もう本当に打つ手なし。両方の翼を失って輸送機はキリモミしながら地上へ真っ逆さま。迫りくる地面。憐れニックの運命やいかに!!?
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ハルジー博士とニック
(C)Universal Pictures
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この進行、既にお気づきのように「ハムナプトラ」とは全く関連がありません。リック・オコーネルもエヴリン・カナハンも登場しません。
1994年に封切られた「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」はBMIフィルム・アワード〔音楽賞〕やサターン賞のメイクアップ賞を受賞し、興行的にも大成功を収めたことから、2001年の「ハムナプトラ2/黄金のピラミッド」、2008年の「ハムナプトラ3/呪われた皇帝の秘宝」とシリーズ化されました。
根強いファンから「ハムナプトラ4」を待望する声もあったし、てっきり僕は、今回の「ザ・マミー」は「ハムナプトラ4」のサイドネームだと思い込んでいました(泣)
「ハムナプトラ」※原題も同じTHE MUMMY。
「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」は1932年に公開された「ミイラ再生」のリブート映画ですが、実は「ハムナプトラ」も同じ「ミイラ再生」のリブート作品なのです。(つまり、兄弟映画?)
「ミイラ再生」のリブートは先例があり、1959年公開の「ミイラの幽霊」が最初のリブート作品。つまり「ハムナプトラ」は二度目、「ザ・マミー」は三度目のリブートとなる。
「ハムナプトラ」のリックやエヴリンのキャラをこよなく愛する僕としては、気づいた時点でガックリきたのですが、それよりも何よりも…「ただのホラー映画じゃん!」というのが正直な感想。
「ハムナプトラ」のいい所は、愛嬌ある登場人物たちのズッコケ・アクションにあったのですが、「ザ・マミー」は終始「恐怖感」を盛り上げるだけ。
しかも、死んだ兵士たちが次々に襲いかかってくるに至っては「ただのゾンビ映画じゃん!」とさらにトーンダウン…。
「ハムナプトラ」エヴリンとリック
トム・クルーズも(同じ多出演の)旬ちゃん同様、たまに大ハズレの映画に出てるよなぁ…と不安が脳裏をよぎります。
なお、原作の「ミイラ再生」(1932年)では、主人公の男性と蘇った砂漠の女王が恋に落ちる進行なのに対し、「ハムナプトラ」と「ザ・マミー」はいずれも主人公が別の女性と恋仲(あるいは夫婦)という設定なので、そこだけ「ハムナプトラ」寄りになっています。
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ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
(C)Universal Pictures
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ストーリーの方ですが、アマネット王女(ソフィア・ブテラ)のミイラは復活を遂げ、墜落事故現場を探索する係員たちを次々と手にかけてゾンビ化させていきます。
一方のニックは(主人公なので。いやトム・クルーズなので:笑)死ぬはずもなく、奇跡的に一命を取り留めています。
で、困ったことに、この呪われた王女さん、ニックをむかし殺し損ねた許婚者と勘違いし、執拗に命を狙って来るのです。(たまったもんではない)
蘇った王女とニック
ゾンビ化させた人間の死体を手ゴマにし、一緒にいるハルジー博士(アナベル・ウォーリス)ともども、どこまでも追いかけてくる。(ホラーの定番)
しかも、アマネット王女は人間の生き血を吸うたびにミイラからだんだんと元の姿に戻って来るという設定なので、その途中経過の容姿たるや…コワイよぉ!
上の画像は、生き血を十分吸ってかなりマトモになったもの↑担当メイキャッパーの言によると「5段階」のメイクを施したとか。
日本のホラー映画を観る時も思うのですが、いい若い女優さんがよくもそんな汚れ役を引き受けるものだと…。
で、今回の呪われた王女役ソフィア・ブテラを主演のトム・クルーズに推したのは監督で「ダーク・ユニバース」プロジェクトを主導したアレックス・カーツマン自身。
その時の口説き文句が以下のように伝えられています。
「ブテラの瞳を見てご覧なさい。そこで全てが演じられている。『キングスマン』を見て、私はそれに気付いたんだ。何も言わずとも、彼女の目は私に多くのものを伝えてくれた。彼女にどんなメイクを施そうと、どんなCG加工を施そうと、情感豊かな表現が出来るだろうと思った。」
うん、かなりご執心のようで。
そんなブテラが演じたアマネット王女の『瞳』とはこんなふう…。
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ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
(C)Universal Pictures
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わー怖い!(そうだ、瞳が四つあるんだった!)
(閑話休題)
窮地のニックとハルジー博士を救ったのは、ジキル博士(ラッセル・クロウ)が率いるプロディジウムの私設部隊。
復活したアマネット王女(ソフィア・ブテラ)も多数の銛を打ち込まれ、取り押さえられます。
捉えられたアマネット王女
実は、ニックに同行していたハルジー博士(アナベル・ウォーリス)は、プロディジウムが送り込んだスパイでした。(なので常に動向を把握)
このジキル博士の意図は、映画を見ていてもよく理解できなかったのですが、どうやら、アマネット王女が宝玉をセットした完全体の「死神のダガー」で(許婚者と勘違い、あるいは生まれ変わりと勝手に信じている)ニックを殺せば、死神セトがニックに憑依するはずで、その瞬間を狙いセトを滅する・ということらしい。
どうです、解りにくいでしょう?(根拠なしの勝手読み?)
もしかするとヒエログリフに書いてあったのか? 「こうすればセトを倒せますよ♪」って…そんな馬鹿な!
しかも、わざわざ「ジキル博士」という名前の伏線を張ってしまったワケですから、「ハイド氏」に変身する“伏線回収も必要だし。
果たしてこの映画に、ジキル博士を登場させる必要があったのか??
後日、映画批評集積サイトのRotten Tomatoesを覗いてみると、そう感じたのは僕だけでは無かったようで、「ダーク・ユニバースの導入のために組み込まれた要素が却って全体の流れを分かりにくくしている」と批判が集中。(批評家支持率15%)
興行収入面で見ると、全米の公開初週末三日間で3168万ドルとなっており、これは同じリブート作品の前作「ハムナプトラ/失われた砂漠の都」(1999年)の4336万ドルを下回っています。
日本のツイッターを見ても「トム・クルーズ出演作品の中で最低!」などと酷評を浴びておりまして、どうやら、僕とケイコが福島フォーラムに行った時、会場が閑散としていた事と符合するようです。(残念!)
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ザ・マミー/呪われた砂漠の王女
(C)Universal Pictures
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ともあれ、アマネット王女(ソフィア・ブテラ)は使い魔の蜘蛛を操って宝玉とダガーを入手。完全体となってプロディジウムを脱出。
ジキル博士が大口叩いたプロディジウムの私設部隊は、王女が十字軍の墓から一斉に蘇らせたゾンビ戦士によって壊滅。
魔の手がニックとハルジー博士に迫ります。
さあ、どうなる!どうなるっ!!?
/// end of the “cinemaアラカルト191「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」”///
(追伸)
岸波
まあ「トム・クルーズが死ぬわけない」という話が全てを言い切っている感もありますが、終盤のサスペンスはナカナカのもの。
CGに関しては「ハムナプトラ」の大掛かりさに比べると拍子抜けですが、これはスペクタクルではなくホラーを狙ったものなので、やむを得ないかなと。
だけど、ありとあらゆる超絶キャラクターが溢れる現代に、果たして「狼男」や「透明人間」の需要があるのでしょうか?(今回の「マミー」も含めて)
アメリカでは、キャラクター作品がマーベル・ヒーロー一色になっているので、こういうレトロなキャラがむしろ新鮮なんでしょうか。う~むぅ…。
僕としては、映画作りにいろいろなチャレンジがなされることは良い事だと考えているので、決して「ダーク・ユニバース」プロジェクトを否定的に捉えるワケではありません。
今回の「ザ・マミー」にしても、お隣の韓国では公開初日に660万ドルを稼ぎ、歴代のユニバーサル映画の中では最高の成績を上げたとのことで、配給するターゲットを選べば成功の道もあるかも知れません。
なお、「ダーク・ユニバース」の次回作「フランケンシュタインの花嫁」(仮題)は2019年2月14日(木)に全米公開予定だそうです。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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「ザ・マミー/呪われた砂漠の王女」の俳優陣
(C)Universal Pictures
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