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「Freezing Conflagration」(佑樹のMidi-Room)
by 岸波(葉羽)【配信2016.11.18】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 あの事件から10年‐-- これで、すべてを終わらせる。

 前回の記事で本年度の主な「積み残し作品」を総ざらえしたので、今回はデスノート最新作、『Light up the New world』です。

 コミック原作の映画化が成功するのはなかなか難しいものがありますが、そんな定石を打ち破った前作の『デスノート』(前・後編)。

 あれから10年、期待と不安が相半ばする完全新作の登場でございます。

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 キラ/夜神光(ライト)とL/竜崎が存在しない世界に、再びばらまかれた6冊のデスノート。それはどんな事態を引き起こすのか?

 では、早速まいりましょうか♪

 

 大場つぐみ&小畑健のコミック作品『デスノート』が、藤原竜也と松山ケンイチのダブル主演で映画化されたのが10年前。

 この作品で世界的名探偵Lを演じた松山ケンイチは、2006年の日本アカデミー賞優秀助演男優賞を受賞しました。(「出世作」とも言えましょうか。)

 今回はその2006年に前・後編で公開された『デスノート』及び『デスノート the Last name』の10年後の世界を舞台に、夜神月(ライト)やL/竜崎の後継者を自認する者たちにより6冊のデスノートを巡る争いが繰り広げられます。

「デスノート」(第一作)

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 コミックを原作として映画化された作品はどうしても原作との比較に焦点が当てられざるを得ず”残念な作品だった”という例があまたあるワケですが、10年前の映画化作品については「名作」という評価が大勢でした。

(※まあ…「るろうに剣心」や「ちはやふる」などは成功した部類に入ると言ってもいいでしょうが。)

 そうなりますと、当然に今回の新作『デスノート Light up the NEW world』は大成功だった10年前の前・後編作品と比べられるのは避けられません。

 結果、どうであったか? 賛否両論あるかもしれませんが、僕の見立てでは残念な評価です。

 前回(と原作)では二冊のデスノートが人間界にもたらされたのですが、今回は一挙6冊!? しかも主人公三つ巴!? 

 この時点で既に、大盤振る舞いと言いますか、デフレといいますか、"やっちまったな感”がありましたけれど…。

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 さて、そのストーリーですが、主役であるキラ(夜神光)とL/竜崎が共に命を落とすことで決着した「デスノート事件」の10年後、再び死神によって6冊のデスノートが人間界にばらまかれます。

 警視庁内部には、旧捜査本部の体制が継続して設置されており、事件に精通する三島創(東出昌大)が筆頭としてキラ事件の謎を追っていました。(前事件を担当した松田桃太も残留。)

 そんな中、渋谷で「死神の目」を持った新たなデスノート所持者による無差別殺人が発生し、三島らも出動。しかし、犯人捕縛に難儀しているところで突然現れたひょっとこ面の男が犯人を射殺します。(ちょっとあんまりな感じも…)

 男は"LのDNAを継ぐ者”と名乗る竜崎(池松壮亮)。世界で無差別に発生しているデスノート事件を追う者として三島らの捜査に協力することを申し出、参加することに。

 一方、世界中のコンピュータがハッキングされ、死んだはずのキラ(夜神光)が画面に登場して、再び犯罪者の殺戮が宣言されます。

 この事件を起こしたのは"キラの意思を継ぐ者”を自認するサイバーテロリストの紫苑優輝(菅田将暉)。

 「デスノート事件」の(犯人側の)生き残りである弥海砂(戸田恵梨香)に接近し、共に6冊のデスノートを集めれば、再びキラ(夜神光)に会えるとそそのかします。(いや、確かに死んだはず…)

 キラの再登場に熱狂する者、それを阻止しようとする者が入り乱れ、世界は混沌の渦へと巻き込まれて行きます。

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 映画を見終わって一番残念だったのは、主人公たちのキャラクターの設定とキャスティング。

 「前・後編」の時は、キラ/夜神月(ライト)の藤原竜也とL/竜崎 の松山ケンイチが原作のイメージ通り、いやむしろ凄みを増した演技を見せてくれ、両者の丁々発止の頭脳戦を堪能させてくれました。もはや「原作越え」と言ってもいいのではないでしょうか。

 ところが今回のLの後継者竜崎(池松壮亮)は"Lの遺伝子を受け継ぐ者”という設定にも関わらず、Lの冷製沈着さが無く、オチャラケてみたり激高したり、あげくは号泣するなど、真逆なキャラクターに設定されているのです。

 演じた池松壮亮君は、2014年の『ぼくたちの家族』や『紙の月』で、ブルーリボン賞など日本の主要映画賞で4つの助演男優賞を受賞した演技派なのですけれど、不思議なキャラクターに設定されてしまった竜崎役を忠実に演じる姿が痛々しくて見ていられません。

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 そして"キラの意思を受け継ぐ者”として登場するサイバーテロリストの紫苑優輝(菅田将暉)は、ネットを操ることに関してはずば抜けた才能を発揮しますけれど、出番自体が少なく、真のキラでないことは一目瞭然。主役の一人として扱われているのかさえ疑問。う~ん困ったもんだ。

 トドメは"真のキラの後継者”で"探偵役(警察官ですが)” の三島創の役を充てられた杏のリアル旦那さん、東出昌大君。どう見たって極悪人には見えませんよね?

 ストーリーの探偵役でありながら、最後に「自分が真のキラだ」という意外性を表現したかったのかもしれませんけど全然ムリ。

 そもそもストーリーの進行上、ほかにそれらしき人物も登場せず、彼がキラであることは(早い段階で)見え見えなのですから。

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 東出君って本当に好青年。で、ちょっと舌が短くて甘えたようなセリフ読み。そのキャラが嵌まった場合はとてもいい演技を見せてくれるのですけれど、キラは「この世界の神」を自認し、デスノートで人間を殺すことに全く躊躇しない、極めて頭脳成績なキャラでなくてはならないのですから。

 もしそういうキャラであれば「キラである記憶を消してある」にせよ、キラ捜査であんな後手後手に廻ることはないはず。

 正体を現してからも全然そんな悪人ぽくない。そんな演技は無理。彼は芯から「いい人」過ぎるのです。

(水戸黄門でうっかり八兵衛が実は悪の黒幕…なんてアリエナイでしょ?)

 さあ、そんな三人による「鬼気迫る頭脳戦」…成立するワケがありません。

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 この新作が、名作『デスノート』を継ぐ作品として本当に必要だったのか。うむむむむ…。

 そう言えば10年前の「前・後編」の後にも、L(竜崎)を主人公としたスピンオフ映画『L change the WorLd』が制作されましたが、これも無残な作品でした。

 キラとLが共に退場して完全解決だった「前・後編」の後に、いかにも二匹目のドジョウを狙った安易でチープな脚本。

 松山ケンイチ君は小栗旬ちゃんと同様「出演作品を選ばない」ところがあるような気がして不安になります。

 (※旬ちゃん…「ルパン三世」・「テラフォーマーズ」etc.)

小栗旬 (「テラフォーマーズ」より)

(C)貴家悠・橘賢一/集英社 (C)2016 映画「テラフォーマーズ」製作委員会

 さて、事件の方ですが、紫苑によるデスノート収集は順調に進むものの最後の一冊の所有者だけが判明しません。

 それもそのはず、最後の一冊は竜崎自身が所有しているのです。(なにィ!?)

 紫苑にそそのかされ、キラ/夜神月(ライト)との再会に一縷の望みを持った弥海砂(戸田恵梨香)は、紫苑を追い詰めるL/竜崎の前に姿を現し、死神の目で竜崎の本名を見抜いて自身のデスノートに記載。

 哀れ竜崎は、あえなく心臓マヒで即死。(ええ~!)

 命運が尽きた海砂自身もそこで倒れることに。(ええええ~!!)

 紫苑は6冊のデスノートを揃えるべく、三島が捜査本部で保管するデスノートを持ってくれば、自分が揃えたノートも持って行くと宣言。(罠だよね、明らかな)

 "約束の場所”で対峙する紫苑と三島。その時、音もなく部屋の扉が開きます…。

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

 ストーリーにご都合主義の部分が感じられるものの、終盤に向けてサスペンスは一気に盛り上がります。

 また、新たに登場した悪魔たちの造形には、目を見張らせるものも。

 さらにっ!

 映画の終幕、エンドロールが流れた後に、あの人物が伝説の名台詞を!?

 と、至る所に凝らした工夫は認めざるを得ません。さて貴方は、この作品をどのように評価するのでしょうか?

 

/// end of the “cinemaアラカルト181 「デスノート Light up the New world」”///

 

(追伸)

岸波

 この映画で唯一「うるっ」としたのは、弥海砂(戸田恵梨香)の命運が尽きて死ぬシーン。

 死神の目を獲得した彼女は自分の寿命を削る「契約」だったことを自覚しています。そして、夜神月(ライト)が生きているはずのないことも…。

 第一作(前・後編)でも、彼女が夜神月(ライト)に寄せる思いは真実のもので、それは「純愛」と言ってもいいでしょう。

(そもそも夜神月(ライト)の力になるため自分の寿命を削ったのですから。)

 死の刹那、全てを理解した海砂は、自分の「想い」の中で夜神月(ライト)に再会し、その腕に抱かれるのです。

 戸田恵梨香ちゃん、渾身の「死に演技」。

 いい役者になったなぁ…彼女。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

デスノート Light up the NEW world

(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト182” coming soon!

 

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