こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
落ち目のキャスター 人生サイアクの日!
「踊る大捜査線」シリーズのメガホンを取った君塚良一監督の最新作コメディ「グッドモーニングショー」をケイコと観てまいりました。
「シン・ゴジラ」に驚愕し、「君の名は。」で号泣し、「超高速!参勤交代リターンズ」でがっかりし、ちょいと軽めの映画もいいかなと。
これが実際観てみれば、抱腹絶倒、ハラハラドキドキ、涙ホロリの大正解映画だったのです。
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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主演は中井貴一。かつては二枚目専門だったかと思いますが、中年になって以降、どこからともなく滲み出るコメディアスな雰囲気が最高。
どうせなら、初めっからこのセンで来てくれればよかったのにと思う昨今、皆様いかがお過ごしでしょうか?
事態がどんどん悪化していく面白さといえば、筒井康隆の初期作品を思い出すのでが、最後に自衛隊が出動してドンパチするわけにもいかず、いったいどう着地するんだよと心配になるギャグてんこ盛りの内容。
さすが、放送作家や脚本家として名高い君塚良一監督のいぶし銀の才能はダテではありません。
(そう言えば、前回見た「日本映画の興収ランキング」でも「踊る大捜査線(レインボーブリッジ)」は堂々の第四位でしたっけ…。)
さて、その内容は?
中井貴一扮する澄田信吾は、朝のワイドショー「グッドモーニングショー」のメインキャスター。でもこの人、大いにワケありの人物。
かつて現場の第一線で大活躍していたのですが、被災地のレポートでわざわざ現場の泥を顔に塗りたくり、臨場感を演出しようとしていたシーンがそのまま放映されて、大ヒンシュクを買ったのです。
以後、怖くて現場レポートができなくなって降板したのを同期のプロデューサー石山(時任三郎)に拾われてワイドショーキャスターに就任。
しかし、古傷が仇となって視聴率は盛り上がらず、いつ交代させられるかわからない状態なのです。
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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しかあしっ!!
彼を襲う不幸はそれにとどまらず、疲れて家に帰ると大学生の長男が「子供ができたので結婚する」宣言。あらららら・・。(どうすんだ、生活費…学費もか?)
さらに、番組のサブキャスターである小川アナ(長澤まさみ)からは、「今日の番組中に私たちの交際を発表します」と爆弾発言が。
ええええ~一回、ごはん食べただけなのにぃ!?
~という四面楚歌の状況に置かれているのです。
誰にも言えない緊張をはらんだまま、間もなく朝の番組がスタートしようとするその時、突然飛び込んできた大ニュース。
スタジオ近くのカフェに、銃を持った男が10人ほどの人質を取って立て籠もったとのこと。(なにぃ!)
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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大急ぎで番組ネタを組替え、急きょ中継車を派遣することに。その時、警察から電話が入ります。
「犯人の要求は澄田キャスターだ。急いで現場に来てほしい。」
な、な、なんとっ!!
もうワケがわからない怒涛の展開。四面楚歌で現場恐怖症のキャスターが銃を持つ犯人と直接対決することに。前代未聞の生放送、ここにスタートっ!!
いやぁ、のっけから手に汗握るこの興奮。こんなに面白い映画だとはユメにも思いませんでした。
中井貴一って、純然たる二枚目をずっとやってきましたが、こういう二枚目半の役柄が似合うようになりました。年の功でしょうか。二枚目の頃よりずっと好感が持てます。
澄田の友人で同期入社の石山を演じた時任三郎は久しぶり…僕がお目にかかるのは「ハッピーフライト」…いや「海猿」以来ですね。
元々歌手だったとは思えないくらいの存在感ある演技。日本アカデミー賞優秀主演男優賞二度の受賞もダテではありません。
そう言えばリゲインのCMソング「勇気のしるし」は彼の歌でしたね。
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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澄田(中井貴一)の奥さん役を務めたのが吉田羊さん。最近、あちこちの映画・番組で顔を見かける超・売れっ子女優さんになりました。
彼女の魅力ってなんでしょう。少なくとも超美人ではない。(失礼!)
だけど普通に身の回りにいそうな親近感と安心感。そしてちょっとキレイ。そういう“リアルな感じ”がいいのだと思います。
さて、警察から現場協力を求められた澄田(中井貴一)ですが、そもそも彼はかつてのスキャンダルから現場恐怖症。まともに取材できる自信などありません。
プロデューサーの石山(時任三郎)は「やっぱり無理か…」と考え込む中、生放送では小川アナ(長澤まさみ)の『交際宣言』が飛び出しそうな気配。
慌ててコレを遮った澄田は、カメラの前に立って(←後ろの小川アナが見えないように)、「私がこれから現場に向かいます!」と言ってのける。
(てか、そうせざるを得なかった。笑)
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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現場に到着した澄田は、警視庁特殊班でリーダーを務める黒岩(松重豊)に導かれて防爆スーツに身を包み、犯人が立て篭もる店内へと入ることに。
しかぁしっ!! …テレビ局のスタッフも海千山千。
澄田の防爆スーツにカメラとマイク、そして耳には通信機器を仕込ませて、店内の様子を生レポートするよう指示します。(いいの~そんな事やっちゃって!?)
犯人はかなり興奮している様子。いったいどこのどいつが?…単独犯?
澄田が店内に入る様子をありとあらゆるマスコミが遠巻きにしてリアルタイム報道。日本中はテレビにくぎ付け。
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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ところが、グッドモーニングショーの画面だけには、店内に突入する澄田視点の動画が映し出され、他局はオーマイゴッド!!
どうやら犯人は単独犯。若い男。いったい何故、澄田が名指しされたのか?「顔泥偽装事件」の関係者なのか?
しかし、そこは笑われこそすれ、誰にも迷惑をかけなかった筈…。
男は銃のほかに爆弾を持ち込んだことが判明。そして男は自暴自棄となっており、人質を道連れにして爆死するよう爆弾のスイッチをオン!!
タイムリミットはグッドモーニングショーの放送終了時刻。
さて澄田は、犯人を説得し、無事人質と共に生還することができるのか?
いや、たとえ生還しても、小川アナの爆弾発言とか息子や(これから生まれる)孫の生活費はいったいどうすんだ?(クビ、目前なのに)
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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ストーリーの面白さもさることながら、目から鱗だったのが映画の中で活写された朝のワイドショー番組の緊張感。
その日の番組の進行やネタの取捨選択を時間がない中で打ち合わせる丁々発止の臨場感…これは想像以上のものがありました。
こうした現場は、想像はしてみても、その実態がどうというのは経験できるものでもないし、それ自体報道されることもありません。
映画でその現場を目の当たりにしますと、まさにファンタスティック。どんな議論もトラブルも時間が来ればぴたりとまとまる、その不思議。
(いや、まとめざるを得ないんだけども。笑)
事前打ち合わせの中で、スタッフが練ったネタの取捨選択やとり上げ順で喧々諤々の議論があり、しかもせっかく組み立てた進行がアクシデントの発生でズタズタになる大変さがよく分かりました。
普段、窺い知ることのできない世界の現実、なかなかに興味深い。
このシーンを冒頭に持ってくることで“ツカミはバッチリ”となっています。さすがによく考えられている…。
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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君塚良一監督の期待に応え、誰もが熱演のキャストたち。その中でも、主演の中井貴一に負けないくらいの大熱演をしてくれた俳優がいます。
それは……立て篭もり犯の西谷。
中々画面に出てこない立て篭もり犯。いよいよ登場ということで、誰かと思えばコレが濱田岳。(いやっほー!)
「釣りバカ日誌」や「世界から猫が消えたなら」、いやいや誰もが知ってる「三太郎」CMの浦島太郎の俳優さん。僕は大好きです。
彼は小さな目のまなざしがとてもピュアで、好感度抜群ですよね。そんな俳優さんですから、犯人もただのテロリストであるワケがない。
彼が犯行に及んだ「理由」。それがこの映画を解くキーワードになっているのですが…。
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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西谷(濱田岳)は、低賃金、超・長時間労働、一人オペなどで自分の人生に絶望しようとしていました。
こうしたブラック企業の問題をもっとテレビで取り上げて、自分のような不遇な労働者たちに光を当てて欲しいというのがかねてからの願い。
西谷(濱田)はかつてそのことをしたためて、自分が大好きだったキャスター(澄田)に直訴状を手渡そうとした事があったのです。
しかし澄田はスタッフに促されるまま先を急ぎ、西谷の決死の想いは叶いませんでした…。
その事に気づく澄田。西谷が「自分の事」だけでなく、そういう境遇の労働者全体を救って欲しいと訴えていることに共感を覚えます。
しかし……時すでに遅し。既に、爆弾のタイムスイッチは入れられてしまいました。
「僕は必ず君の願いを叶える。そして君の事も救う。思いとどまるんだ。」
毅然とした澄田の言葉に逡巡する西谷。その陰では、密かに侵入した警察の特殊部隊が突入指示を待っていました。
西谷を救えるタイムリミットが迫る中、澄田はトンデモナイ行動に出ます。
「ならば、今からテレビで……」(ナイショ)
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グッドモーニングショー
(C)2016 フジテレビジョン 東宝
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実に良く練られた脚本。キャストの大熱演。ちりばめられたサプライズ。そして笑いと感動。
映画職人のつくる映画はさすがに一味違います。
そのひと時、貴方の人生の一服の清涼剤となるに違いありません。
/// end of the “cinemaアラカルト179「グッドモーニングショー」”///
(追伸)
岸波
人間って時々、大笑いしたり大泣きしたりすることが大切だ・と思います。
そういうことがリフレッシュになって、また新たな人生を前向きに歩みだすことができるのですから。
で、映画の伏線になっている澄田の『顔泥偽装事件』。実はソレ、「偽装」じゃなかったのです。
その真実は、思いもかけない人物が、思いもかけないタイミングで明かすことになります。こういうところまでキチンと伏線をはっていたなんて…と、ひたすらに感心。
また、事件が収束した後の最終盤、さらに勃発するサプライズ。ここも凄い。えええ~まさかのラスボス登場!? …それは言う事ができません(大笑)
実にオトクな映画でした。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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グッドモーニングショー
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