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「COOL!」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2016.5.3】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 強くなるーーー 青春ぜんぶかけて

 広瀬すず主演、上下二部作の『ちはやふる』をケイコと一緒にコンプリートいたしました。

 ということで、3月下旬公開だった「上の句」上映からはやや時間が経ってしまいましたが、当cinemaアラカルトでも二回連続で取り上げたいと思います。

 それにしても… うちのケイコさん…

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

フッ…どうこの髪型?

ええ~! 何それ~すずちゃん!?

 ある日、美容院から帰ってくると、いきなり『すずカット』。(最初は少し短かったけど…)

 この入れ込み様はハンパではございません。まあ、それくらい『ちはやふる』のすずちゃんが魅力的だったようで。

 『ちはやふる』は、末次由紀による講談社の『BE・LOVE』に連載中の少女漫画。2016年5月上旬現在、単行本の31巻までが発売され、累計発行部数1400万部を突破している超・人気作品。

 幼なじみの綾瀬千早、真島太一、綿谷新の3人が競技カルタを通して友情を育くみ、夢を実現させて行く青春グラフィティです。

 僕はこの作品に思い入れがありまして、博物館勤務で単身赴任していた頃、会津若松のTSUTAYAで企画コーナーに山積みされているバックナンバーに出合いました。

 この店では、入り口の新刊本コーナーのほかに店の一番奥で担当がオススメする企画コーナーがあり、その選考力には何度も舌を巻いていたのですが、ここの担当が推薦する図書なら間違いないと思い、早速の大人買い。

 結果…衝撃でした。10ページに一度は心を揺さぶられる表現があり、最初の一巻を読み終えた頃には、恥ずかしながら、感動で涙ぐちゃぐちゃに。

 2009年の「漫画大賞」受賞や2010年「このマンガがすごい!」オンナ編1位、2011年「講談社漫画賞」少女部門を受賞して行くのは、その後の話。

 さらに、その炯眼の女子担当者が娘のサオリの後輩であったことを後から知ることになります。

 ということで、ずっと応援を続けていた『ちはやふる』待望の映画化。さて、その内容や如何に!?

 

 冒頭、瑞沢高校に入学した綾瀬千早(広瀬すず)が新たに競技カルタ部を創設しようと奮闘しています。

 タイトルになっているように、得意札は「ちはやふる」で始まる一首。自分の名前「千早」と一緒なので、これだけは絶対に負けないという自負があります。

 また、千早は容姿端麗なのですが、喋ったり動いたりすると台無しになるため『無駄美人』の異名が。

 もちろん、入学したばかりの瑞沢高校では、そのことを誰も知らないため、容姿端麗な千早の勧誘に大勢の男子生徒が引き込まれて来ます。

 ところが……

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 いざ、競技カルタの実演をやってみせると、男子陣驚愕!

 容姿端麗な千早の表情が獲物を狙うケモノのように一変し、目にもとまらぬ速さで飛ばした札が、勢い余って壁に突き刺さる。…恐れをなして逃げて行きます。

 なかなか仲間が集まらず、ガックリしていた千早が一人の男子生徒を見つけました。それは小学校時代、一緒のカルタ会でチームを組んでいた真島太一(野村周平)。

 千早と太一は幼馴染みで、カルタ名人を祖父に持つ綿谷新(真剣佑)に誘われて小学校6年生の時にカルタを始め、その後、新が実家の事情で遠くの福井へ引っ越すと三人は離れ離れになっていたのです。

 3年ぶりの再会を喜び、太一をカルタ部に誘おうとしますが、やりたいことがほかにあると拒否。千早は、自分が地区のカルタ会で優勝できたら一緒にやって欲しいと。

 興味なさそうにしていた太一でしたが、隠れて千早のカルタ会を覗きに行きます。(実は太一は、現在、付き合っている彼女がいたが、昔から千早の事が好きだったのです。)

 凄い勢いで勝ち上がる千早。そして決勝戦。見事、優勝するのですが、その勝利の刹那…千早はその場に昏倒。

 駆け寄る周囲のメンバー。白目を剥いた千早…

「たいへんだ、死んでる~!!!」

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 実は、千早は競技に集中するあまり、緊張が切れたとたんに白目を剥いて眠るクセがあったのです。

 イビキにホッとする一同。太一はもう一度、千早とカルタを始める決心をします。

 競技カルタのことは、テレビでも見たことがあったので、その凄まじさは知っていました。

 札を読みだすか出さないかの瞬間に一斉に札を飛ばす激闘。これはもう“格闘技”と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 選手たちの集中や疲労もハンパなものでなく、(『ちはやふる』で知った知識ですが)一日の競技会を終えた選手は体重が3キロほど減ってしまうそうです。

 体力やエネルギーの消耗も大変なもので、競技の合間(あるいは競技後)にチョコレートなど高カロリー食品で補給します。

 毎度まいど“白目を剥いて昏倒するシーン”が、この映画のウリ(笑)になっていますが、あながち根拠の無い事ではないのですね。

 すずちゃんの白目は「おいおい、こんな顔見せて女優業ダイジョブか!?」というレベルなのですが、それもまたチャーミング。『無駄美人』の本領発揮というところでしょうか。

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 部員集めに奔走し、何とか5人の部員を集めて競技カルタ部を立ち上げた二人。この創設メンバーが実に個性的。

 肉まんくんと呼ばれる西田(矢本悠馬)は、5歳の時からカルタをしている筋金入りで、かつて小学校の全国大会で新に次ぐ準優勝をしたこともある猛者。でも、中学時代はテニス部に所属し、身体はちょっと太め。

 かなちゃんと呼ばれる大江奏(上白石萌音)は呉服屋の娘。和服が着たいばかりに弓道部に所属していたが、「競技で和服を着る」条件でカルタ部に入部。文学としての百人一首に造詣が深く、札の本来の意味を教えて部員たちの理解を深めさせて行きます。(太一の千早に対する感情に、一人だけ気づいている。)

 最後のメンバーになった机くん:駒野勉(森永悠希)は薬局の息子。机にかじりついているガリ勉タイプで自分優先。しかし、千早や太一の情熱に心を動かされ、次第に本気になって行きます。実は、かなちゃんが好き…というのが本当の理由か(笑)

 とにかく個性豊かな仲間たち。彼らは少しづつ腕を磨き、全国大会を目指して、まずは地区予選に勝ち抜くことを誓うのでした。

 そんな中、練習試合で立ち合ったのは、東京地区予選で常に上位に残る強豪の北央学園。

 千早と対戦した主将の須藤(清水尋也)は自他ともに認める“ドSくん”。身体がぶつかって「失礼しました」と言う千早に「違うだろ、許してくださいだろ!」と。

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 結果、練習試合はボロ負け。さすがに強豪。千早たちは壁の厚さを思い知ることになります

 このドS君…ホントにいけ好かないヤツなのですが、『下の句』では心が折れそうになっている千早の背中を最後に押す切り札に。 ……なかなかどうして、この『ちはやふる』の構成は深いのです。(まあ、『上の句』では、そのドSぶりを堪能して下さいませ(笑))

 少しづつ実力を付けてくるものの、今一つ勝利に結びつかないのは、部長である太一の“運のなさ”。

 運命戦(敵・自陣とも最後の一枚が残った状態)になると必ず負けるのですが、太一は運に見放された状態を、かつての自分の行いが原因であると考えています。

 小学校の頃、親友でライバルであった新と対戦することになったのですが、千早にだけはかっこ悪いところを見せたくないと、対戦直前にド近眼である新の眼鏡を隠してしまうのです。結果、眼鏡なしの新に敗れてしまい、彼のみじめさは一層つのるのですが…。

 この悪事が、自分が運に見放されたきっかけと考え、「どうせ運がなくなった自分は勝つことができない」とあきらめているところがあるのです。

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 カルタに自信を無くした太一は、かつて新に一勝もできなかった自分を思い出し、恩師の原田(府中白波会会長・國村隼)に言います。

「どうせ自分なんて、青春全部かけたって新を越えることなんかできない」と。

 迷う太一に対し、原田が言った言葉は…

「そんなことは、青春全部かけてから言いなさい。」

(うぉぉぉおお~ 感動!!)

 ふっ切れた太一は、再び、カルタに立ち向かう決心をします。

 そして… 小学校の時、眼鏡を隠すという卑怯な振る舞いをしたことを新たに告白して詫びようと心に誓うのでした。

(漫画版では、小学校の対戦の後に告白している。)

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 もう一つ、書いておかなければならないのは、地味な脇役つくえ君のこと。

 5人いなければ成立しない最後の数合わせに加入したつくえ君でしたが、仲間たちと修練を積み、かなえちゃんから札の本当の意味を教えられながら、彼なりに一生懸命になっていきます。

 ところが…

 チームで強豪相手の作戦を練るうちに、敵の一番強い相手に最も弱いつくえ君をぶつけて当て馬にすればいいと、肉まんくんが提案。そのオーダーで臨んだ対戦中に、つくえ君の身体が固まって動作できなくなります。

 …頭では作戦を納得したものの、大きくプライドを傷つけられた仕打ちに身体が反応できなくなり、泣きながら会場を飛び出して行くのです。

 追いかける仲間たち… ここのシーン、号泣です。(そのほか何回、目頭をうるませたことか。)

 そして、天真爛漫な千早のキャラクター。

「カルタを続けていれば、いつか新にもう一度会える」…それだけを信じて頑張っている千早ですが、コレ、別に恋心じゃないんです。

 高校生くらいを主人公にすると、どうしても愛や恋というものが大きなテーマになって来がちですが、『ちはやふる』のテーマは一貫して友情。(少なくともこの段階では。)

 これがまたすがすがしい。

 友情・努力・勝利…そして思い遣り。実にさわやかな青春グラフィティの名作と言えましょう。(うんうん)

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

 苦しみながらも勝ち上がる瑞沢高校カルタ部。そして遂に、東京都予選(団体戦)の決勝の対戦相手は、あの因縁のドS君率いる北央高校!

 ここはクライマックスですので、まことに残念ですが触れないでおきましょう。(言いたいけど:笑)

 対戦後、太一は新に電話します。予選の結果報告と、どうしても謝っておかなければならない事があるからです。

「…だから新、もう一度一緒にカルタをやろう。」

「オレ……カルタはもうやらん。」

 えええええ~!!!

 う~ん、この意表をつく終わり方。何故!?どうして!何があった!!!

 …考えてみれば「三人の物語」なのに、新はほとんど回想シーンしか出て居ない。それに千早の宿敵、クイーンもまだ登場していない。

「これは絶対に後編も見なくては!」…心に誓う僕なのでした。

 

/// end of the “cinemaアラカルト175「ちはやふる -上の句-」”///

 

(追伸)

岸波

 最初のうち、真島太一役の野村周平にピンときませんでした。どこか優柔不断で思い切りが悪く、キャラが立ってない気がしたからです。

 ところが…

 終盤に向けて、どんどん存在感を増して行きました。

 考えてみれば、「小学校での眼鏡隠し事件で迷いを持った太一」というのが、映画では大きなファクターに位置付けられているので、当然の演技だったんですね。

(原作では第一巻でのエピソードで、対戦後すぐに告白してしまっている。)

 この辺り…末次由紀の原作も素晴らしいですが、映画版の構成・脚本、そして監督も大したものだと感じます。(前編の終わり方なども)

 さらに個性的なメンバーを演じる若手の俳優陣。日本の映画界の将来は捨てたもんじゃないという気持ちになりました。

 とりわけ、主演の広瀬すずちゃんの熱演は特筆もの。今、一番輝いている女優の全身全霊をぶつけた代表作、と言っても過言ではないでしょう。

 この熱演、「伝説」となるかもしれません。まさに必見の名作です。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

ちはやふる -上の句-

(C)2016 映画「ちはやふる」製作委員会 (C)末次由紀/講談社

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト175” coming soon!

 

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