こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
ようこそ。絶叫のZQN(ゾキュン)パニックへ。
2009年4月から『ビッグコミックスピリッツ』で連載されている大ヒットコミック『アイアムアヒーロー』の映画版が封切りになったのでケイコと一緒に観てまいりました。
主演の鈴木英雄役が大泉洋、ヒロインの早狩比呂美が有村架純、看護師の小田つぐみ役が長澤まさみという今を時めく銀幕のスターたち。監督はあの『GANTZ』を撮った佐藤信介。うむっ、これは必見。
ところがっ!!
この映画を観に行くに当たって、極めて大きな障害が横たわっていたのです…。
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アイアムアヒーロー
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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えっ何、ソンビ~? やーよ、ゼッタイ! だよね~
…という進行になるのは必定。(※脳内イメージ)
だってケイコさん、ホラーを観る気、まるで無し。『リング』とか『呪怨』の時も速攻却下でしたもの…。
で、封切り日にテレビを見ていましたら『アイアムアヒーロー』のニュースが。
海外のホラー映画祭で大好評を博し、第48回シッチェス・カタロニア国際映画祭で二冠(コンペティション部門・観客賞、コンペティション部門・最優秀特殊効果賞)、第36回ポルト国際映画祭でも二冠(コンペティション部門・観客賞、コンペティション部門・オリエンタルエキスプレス特別賞)を獲得したとのこと。
うむぅ…何とかしてケイコを説得できないものか・と熟慮しておりましたら…
ねぇ『アイムアヒーロー』始まったんじゃない?
ええ~! そうそう今日から。……行く??
トーゼンでしょ! (あらららら・・)
~ということで、急転直下、映画館へ行くことに。そっか、考えてみればウチのケイコさん、大泉洋のファンだったっけ。確かに、彼が出て居る映画なら、あまり怖くないような気がする。(多分だけど)
さて我が家の掟破り、ホラー映画の『アイアムアヒーロー』に足を運んだ二人ですが、その内容や如何に!?
物語の舞台は現代の東京。主人公の鈴木英雄(大泉洋)は漫画家のアシスタントをしながら、いつしか自分の作品で連載デビューすることを夢見ています。
同じく漫画家のアシスタントをしていた黒川徹子と長年付き合っているが、三十路になった徹子は、一向に芽が出ない夢を追い続けている英雄に複雑な思い。
そんな中、世間では原因不明の伝染病や「人が犬を噛む」といった事件が横行して不穏な雰囲気。
英雄は一年かけて仕上げた渾身のネームを雑誌社に持ち込むものの、「主人公が普通すぎる」という理由でアッサリ却下されます。
徹子は、それでも諦めようとしない英雄に遂にキレて「部屋から荷物をまとめて出て行け」と。
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アイアムアヒーロー
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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数日後、忸怩たる思いのまま漫画家の作業場でアシスタントの仕事していた英雄に、別れを告げたはずの徹子からメールが入ります…「タスケテ!」
アパートに駆け付ける英雄。しかし、徹子を呼んでも応えない。やむなくドアの郵便投げ入れ口から中を覗くと、ベッドで徹子が異様な動きをしている。
急いでドアを壊して入ろうとすると、徹子が四足で這うようにしながら猛烈な勢いでドアに近づいて来る…。その顔は……!?
いやぁ怖かったですよ、そのシーン。いくらコミックを読んでいて筋立てが分かっているにしても。
結局、徹子がゾンビ化したこのシーンを境に、英雄の平凡な日常は終わりを告げ、ゾンビがゾンビを生む阿鼻叫喚の世界からのサバイバル・ゲームがスタートするのです。
←(物語ではゾンビと言わずZQN(ゾキュン)と呼んでいます。)
原作の『アイアムアヒーロー』は既に600万部を売り上げている超人気コミックで、現時点で単行本の20巻が発売されたところです。
映画化に当たっては、当然、全体を織り込むことは出来ませんから、どのあたりのエピソードをクライマックスに持ってくるかが肝でしょう。
これについて、「きっとあの話かな?」と予測した場所が大当たり。
ZQNからの逃避行の中で出会った女子高生比呂美(有村架純)とともに逃げ込んだ富士山麓のアウトレット・モールで、恐怖支配を行っている人間グループと対峙しながら、大量のZQNとも闘い抜くシーンでした。
実はこのコミック『アイアムアヒーロー』は、その後、別の主人公グループが登場したり、海外の状況を原語のままで描くエピソードが登場したりと、やや迷走気味(と感じる)進行になっているのですが、「アウトレット・モールの死闘」までは一直線。
おそらく誰が脚本を書いても、一本目のクライマックスはここを持ってくる可能性が高いでしょう。
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アイアムアヒーロー
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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この映画が、海外の映画祭りで評判となった時の観客の様子が報道されていましたが、この映画の魅力は何といっても「ホラー要素だけではない」ところ。
「こんなホラーは初めて観た」と語った海外の観客の感想もむべなるかな。
だってホラ、主人公役が大泉洋ですよ。ただのホラーでおわるワケが無い(笑)
しかし、彼の熱演ももちろんですが、花沢健吾が作り出した鈴木英雄というキャラクター……それ自体が「普通のヒーロー」ではない。いや、「ヒーロー」でさえないのです。
見た目も風采が上がらず、仕事は全く上手く行かない。周囲との人間関係もビミョーだし、彼女にはフラれる。夢を語る時だけは大言壮語を吐くけれども、現実とのギャップに落ち込む毎日。
唯一、「普通」と違うのは散弾銃の猟銃免許を所持していること。もちろん銃も弾も。それさえ、ZQNに囲まれて絶対絶命の中で「公衆の前で銃を出したら銃刀法違反だよな…」と躊躇する。
観客は、こういう部分に「新しいホラー」を感じて喝采を送ったに違いありません。
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アイアムアヒーロー
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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ヒロイン(の一人)早狩比呂美を演じた有村架純ちゃん。言わずと知れたNHK朝の連ドラ『あまちゃん』で小泉今日子が演じたあまちゃんの母親の子供時代を演じて大ブレイクした女優さん。
『ストロボ・エッジ』や『映画 ビリギャル』で主演しいずれも大好評でしたが、僕の中で記憶に残っているのは『思い出のマーニー』で、主人公マーニーの声優を務めたこと。
少女としてのピュアな感性、そして慟哭、哀しみを情感たっぷりに表現した声演は、まさに出色の出来栄えでした。
そんな架純ちゃんが今回演じた早狩比呂美は、ただの女子高生ではないのです。
逃げる途中で赤ん坊のZQNに噛まれ、いつ発症してもおかしくない状態であることを知っている。そして、そのことを英雄に告げます。
「私を置いて一人で逃げて」
銃は持っていても実際にそれを使えない意気地なしの英雄には、自分を撃ち殺すことなどできないと見通していたのです。
行きつ戻りつ逡巡した末、英雄の口から出たのは「じゃあ、元気でね~」という気のないセリフ。(というか、怯えながら無理して言った。)
銃を抱えて逃げるようにその場を去ると行く先に人の気配。ホッとして声をかけ、振り向くと、これがZQN!(ま、お約束ですけれど。)
ZQN化すると人間の何倍もの力を発揮するということで、全然歯が立たない。あわれ英雄もZQNの仲間入りと観念した刹那、突然、ZQNが吹っ飛ばされる。
助けたのはZQN化した比呂美…。
彼女は左目だけがZQNの目玉になっており、いわば半ZQNでとどまっている特別な人間だったのです。
人としての理性をかすかに残すものの、無表情でコミュニケーションがとれず、どうやら意識は別の世界をさまよっている模様。
英雄はそんな比呂美を守り通すことに決め、彼女を連れて富士山麓のアウトレット・モールを目指します。
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アイアムアヒーロー
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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ZQNたちが登って来れないモールの屋上には、命からがら逃げ込んだ人間たちが生存しており、何人かの力の強い男達が恐怖で全体を支配する無法社会でした。
屋上に運び上げた食糧も尽き果て、いよいよ誰かがZQNたちの蠢く階下に降りて、別棟の冷凍食料倉庫を目指そうという話になっています。
そこにやって来たのが、本物の銃を抱えた英雄と意識のない女子高生。
男達は、英雄の銃を奪い、比呂美は性の慰み者にしようと接近して来ます。
ここで登場するのが、もう一人のヒロインである元・看護師の小田つぐみ(長澤まさみ)。
つぐみは、男達の性処理係に落とされながらも、その腕っぷしを買われて戦闘集団の一員となっています。
しかし、英雄らの世話係として行動を共にするうち、病身でか弱い(本当は強い)比呂美に感情移入して、何とか英雄と共にここを抜けだしたいと考えるようになります。
結局、比呂美を人質に取られて銃は奪われることとなり、代わりに英雄はオモチャのトンカチを与えられて、食糧庫を目指す決死隊の先頭に立たされることとなります。
さて、英雄は無数のZQNたちをかいくぐり、無事に生還できるのか。はたまた、つぐみと比呂美の運命や如何に!?
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比呂美とつぐみ
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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コミックの中で、ゾンビ化した人間をさす「ZQN」にはルビが振られていませんでした。
なので、僕は止むを得ず「ZQN」の読み方を深く考えず読み飛ばしていました。
ところが、同様の疑問を多くの人が感じていたようで、フジのTV番組で出演者が作者の花沢健吾に読みを質したのです。
すると……作者自身も読み方を決めていなかったと白状し(ホントかよ!)、その場で編集者と相談して「ズキュン」と読むことに決定。
でも実際に映画のプロモーションが開始されると「ゾキュン」とルビが振られており、いつの間にか作者の公式決定は簡単に覆された模様です(大笑)
映画『アイアムアヒーロー』を単なるホラー映画を超えたものにした功労者は、主演の大泉洋ばかりではありません。
一人は先輩アシスタント三谷を演じた塚地武雅。英雄がZQN化した徹子の元から作業場に戻ると、何故か三谷がバットを持って構えています。
でも声は普通に「ああお前か、まあ中に入れよ」と。しかし、その見ている先にはZQN化した漫画家が! …このミスマッチ、凄く怖かった…けれど凄く面白かった♪
また、英雄と比呂美がタクシーに乗って郊外へ逃走する時のタクシー運転手を演じた村松利史…この人、凄いわき役ですね。
高速道路で運転中にZQN化するのですが、アクセルをフルに踏み込んで大笑いしながら、のけ反りで後部座席の英雄らに噛みつこうとする!(あの演技はアドリブでしょうか)本当に怖かった!…けれど凄く面白かった。
日本の脇役俳優陣、芸達者が揃っていますね~
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アイアムアヒーロー
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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メガホンを取った佐藤信介監督は、映画の企画対談の中で「この作品で英雄に一瞬ヒーローを感じる部分は、映画の核になると思っていたんです」と述べました。
やはりね~! 名ばかりヒーローの英雄は、最も強力な対抗手段を持っていながら、それを躊躇して逃げ回ってばかり。その英雄がいつ銃を取るのか?
そこに焦点を当ててストーリーを組み立てたワケですね。
…これは映画を観てのお楽しみ。監督の言葉どおり、絶対にあなたの期待を裏切らないでしょう。
(※でも、本当のクライマックスは、その後、英雄が「うそだろ~!」と言ってからかな?)(ボソッ)
結末はナイショ。ふっふっふ…。
/// end of the “cinemaアラカルト173「アイ アム ア ヒーロー」”///
(追伸)
岸波
映画のエンドロールを眺めていましたら、キャストの終わりの方に韓国人の名前がズラーっと出て来て驚きました。
「あれ、どこで韓国人が出て来たんだろう?」
ケイ子に聞いてみると、高速道路でのZQN爆走シーンは韓国の工事中の高速道路で撮影したという話を聞いたとの情報が。
なるほど、日本の高速道路じゃ、どう頑張ってもあんな危ないシーンは撮れないものな…。
後日、調べてみると、富士山麓のアウトレット・モールも韓国で撮影したということが分かりました。
そっか、あの富士山は、はめ込み合成だったのか…。
ということは、もしかすると、あの大量のZQNも韓国人が演じていたのかもしれません。(一部は間違いなく日本人俳優。)
韓国と日本って、政治的に凄く仲が悪いと思うんですけど、映画の世界は別なんですね。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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アイアムアヒーロー
(C) 映画「アイアムアヒーロー」製作委員会 (C)花沢健吾/小学館
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