こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
お前のMADが目を覚ます
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』をケイコとともに観てまいりました。
前作から27年を経て制作されたシリーズ第4弾。
今回から主演がトム・ハーディに変更となり、アカデミー賞主演女優賞受賞している南アフリカ共和国出身の長身美女シャーリーズ・セロンが、隻腕・坊主頭で熱演を見せてくれるのも興味の的でございます。
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マッドマックス 怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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『マッドマックス』の第一作は1979年公開のオーストラリア映画。
主演のメル・ギブソンを一躍スターダムに押し上げ、その独特な世界観は多くの作品に影響を与えました。(「北斗の拳」もこの舞台設定を参考に制作された。)
第二作『マッドマックス2』が1981年、第三作『マッドマックス/サンダーストーム』が1985年に公開され、2001年に第四作の撮影が開始されるタイミングでアメリカ同時多発テロが発生し、制作が中断。
2003年にジョージ・ミラーが再度制作を発表したところでイラク戦争が勃発。再び無期延期になっていたのです。
度重なる制作の延期により、主演のメル・ギブソンも作品に興味を失ってしまったとのこと。(おそらく年齢的なこともあったでしょう。)
そして第三作から27年が経過。
心機一転、若きマックス役トム・ハーディを迎えて制作された第四作『マッドマックス怒りのデス・ロード』はどのような映画だったのか?
そのストーリーですが、放射能汚染後の狂気に満ちた世界を愛車V8インターセプターを駆りながら放浪している元警官のマックス。
流浪の途中で謎の暴走集団から襲撃を受け、シタデルという砦に連行されて拷問を受けることに。
彼を待っていたのは、放射線の影響により輸血を続けないと生きられないシタデルの兵士たちの「輸血袋」という運命。
そこに居たのは「水の供給権」を一手に握るイモータン・ジョーを頂点とした狂信的な集団でした。
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イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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イモータン・ジョーは、生命維持装置のスカル(髑髏)を模したマスクと防弾アーマーを装着し、身体を白塗りにした短命なウォーボーイズという親衛隊に守られながら絶対権力者として君臨していました。
ところがある日、部隊を統率するフュリオサ大隊長(シャーリーズ・セロン)が、一隊を率いて3000ガロンのガソリン取引に出かけた途中、進路を変えて逃走。
いぶかるイモータン・ジョーが居住区を確認すると、監禁されていたジョーの5人の妻たちの姿が見えません。
フュリオサは5人の妻たちと共に、彼女が生まれた楽園のような故郷「緑の地」を目指して逃避行を実行したのです。
すぐさま追撃隊が組織され、マックスは「輸血袋」として戦闘車の前に括り付けられたまま発進。(血を抜かれながら。オーマイガッ!)
途中、砂嵐に遭遇し、マックスを括り付けたウォーボーイズのニュークス(ニコラス・ホルト)が、単独でフュリオサのタンクローリーに突進するも砂嵐に巻き上げられて気絶。
辛くも脱出したマックスはフュリオサらと合流し、イモータン・ジョーの追撃隊と壮絶な車上バトルを繰り広げることに。
果たして彼らは「緑の地」にたどり着くことができるのか!?
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マッドマックス 怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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マッドマックスの世界はまさに“異形の世界”。
放射能に汚染されて長くは生きられないウォーボーイズは、幼い時からイモータン・ジョーを崇拝するように教育され、彼のために死ぬことができれば、英雄だけが許される「ヴァルハラに導かれる」と信じています。
闘いの中で重傷を負い、もはや生きられないと悟ったウォーボーイは「今がその時」とばかりに自分の口に青銀色のスプレーを吹き付け、玉砕して行くのです。
また、若年の健康な娘たちはシタデルに集められ、ブリーダーズ(交配体)としてジョーの子供を産むためだけに囲い込まれます。
映画のストーリー中でも、負傷した「妻」の腹を裂き、生れ出るはずだった胎児を抱いて号泣するなど、「妻」たちは愛情や性欲の対象ではなく単なる子供を産む道具としかみなされていない事が分かります。
さらに、乳房を異常に大きくされた女性たちから搾乳機で強制的に母乳を集め、ジョーのミルクを供給することまで行われています。
これまでの『マッドマックス』シリーズで“核戦争後の世界”という設定は一度も表明されていないのですが、今回のイモータン・ジョーやその兄弟、ウォーボーイズの登場により、放射能汚染の中で生き残った者たちの物語ということが明らかでしょう。
現代の文明や叡智や常識が全て失われた世界で、生き残ったの者が“暴力による支配”を打ち立てようとすれば、このような悪夢のような世界が現出しても決して不思議ではない・・・と考えさせられます。
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フュリオサとマックス
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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犠牲を出しながらも、途中、泥濘の荒野で追撃を絶ち、「緑の地」を探し求めるフュリオサたちの行く手に、塔から吊り下げられた女が目に入ります。
「助けてくれ」
「これはきっと罠だ!」
周囲の丘から単車に乗った異形のライダーたちが駆け下りて来る。
フュリオサは自分は怪しいものではなく(人相風体は十分に怪しいが)、「緑の地」の出身で、故郷に帰るためにやってきたと説明します。
仮面を外すライダーたち・・・その素顔は何と皆、年老いた女性たちでした。
「緑の地はどこにあるの?」
「さっき、お前さんたちが通ってきた泥濘の荒野がそれだよ。」
驚嘆するフュリオサ。「緑の地」は放射能の影響で泥とぬかるみだけの不毛の地に変わっていたのです。思わず天を仰いで号泣・・分かる、その気持ち。フクシマだもの。
これからの事に思い悩んだ末、彼女が出した結論は「シタデルを解放する」こと。
フュリオサとマックス、生き残った4人の妻、寝返ったウォーボーイのニュークス(ニコラス・ホルト)、そして5人組の老婆のオートバイ集団「鉄馬の女たち」も仲間に加わり、進路を反転させます。
目指すはシタデル! そしてイモータン・ジョーへの鉄槌!
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マッドマックス 怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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この映画はシャーリーズ・セロンの映画だと思います。
「緑の地」から略奪され、イモータン・ジョーのブリーダーズ(交配体)にされるのを逃れるため、自ら片腕を落とし、そして兵士となり大隊長まで上り詰めた女傑。
坊主頭の精悍な表情、行動に迷いが無く、誰からも信頼されるリーダーシップに溢れている・・そう、“男前の女性”なのです。
ストーリー自体もフュリオサの行動を追いかけることになり、マックスはそれに巻き込まれる形。
本来『マッドマックス』は寡黙な男という設定で、彼を世界的スターに押し上げた第二作『マッドマックス2』で、彼のセリフは17回しかなかった(!)というくらい。
そういうキャラ設定もあり、マックスに“存在感が無い”とまでは言いませんが、フュリオサの存在感があり過ぎるのです。
キャリア的に言っても、今回のマックス役トム・ハーディはアカデミー賞女優のシャーリーズ・セロンに及ぶべくもなく、1975年生まれのシャーリーズ・セロンより年下。
これはまあ、シャーリーズ・セロンの意地と言ってもいいでしょう。スクリーンの中でも圧倒的な貫録です。
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マッドマックス 怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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また、注目したいのはカメラワーク。
全編これでもかというノンストップ車上バトルシーンが展開されるのですが、戦闘にSFXを使っていないというのが信じられないほど、臨場感と緊張感に溢れたシーンが連続します。
特に、車に突き立てた槍によじ登り、走高跳のバーのようにしならせて空中から敵対車を攻撃する技は圧巻。
いつ、どこから、敵が手りゅう弾を投げ込んでくるか予想ができず、またそのカメラ・アングルが素晴らしく、ヒヤヒヤ感満載です。
さらに、このページのスチール写真をみてお解りいただけるように、映像がとても斬新でスタイリッシュ。
どのシーンを切り取っても、まるで一幅の絵を観ているようなアングル、そして不思議な質感なのです。
このカラーリングの彩度を落としたような画面、最近どこかで目にしたような気がするのですが思い出せません。
ある意味、残虐なストーリーなのですが、観客はこの現実感を喪失したような淡い映像の美しさによって救われているのかもしれません。
制作・監督のジョージ・ミラーが、このDVDを編集するに当たり「モノクロ版」も作る、ということからも、映像へのこだわりが窺い知れるところです。
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マッドマックス 怒りのデス・ロード
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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さて、『北斗の拳』が『マッドマックス』の影響を受けて作られたということを全く知らない世代もいるでしょう。
(何せ、1・2・3はかなり昔の映画ですから。)
特に世界観の下敷きになったのは第二作の『マッドマックス2』。
第一作は低予算映画で暴走族と警官のカーチェイスが描かれましたが、その成功により10倍の予算が投入された第二作は、(核戦争によって荒廃したらしい)荒野を舞台にモヒカン・ヘアーの暴走集団が暴れまわります。
北斗の拳を彷彿させる設定ですね。
しかしこれが“影響を受けた”レベルでなく、“パクリ”に近いと検証しているサイトがありました。
(※以下「北斗西拳」のサイトから一部を引用。)
いや、まだまだ対比画像があるのですが、これってホントにププッ・・。
でもまあ『北斗の拳』も一時代を築いた偉大な作品。北斗神拳の継承者をめぐる兄弟の骨肉の争いという大きなテーマを掲げていますから、“マッドマックス2へのオマージュ”くらいに位置付けるのがいいと思います。
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マックスと5人の妻たち
(C)2015 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED
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フュリオサとマックス達を待ち伏せるイモータン・ジョーの大軍。
まさに多勢に無勢。
次々に出る味方の犠牲者。
彼らは本当にシタデルを解放できるのか? その策は?!
この夏、貴方は新たなレジェンドの目撃者となる。
/// end of the “cinemaアラカルト166 「マッドマックス 怒りのデスロード」”///
(追伸)
岸波
映画に行く前、ケイコから「あのアカデミー賞の女優がね、、坊主頭の方が迫力あるって言われてすっぱり髪を落としちゃったの」と言われても、誰の事か見当がつきませんでした。
「ふむぅ・・どっかで見たことあるような顔なんだけど・・。」
それが、映画館でポスターをチラ見して、シャーリーズ・セロンだったことに驚き!?
シャーリーズ・セロンと言えば長身の金髪美女。あるいは『イーオン・フラックス』のクノイチのような黒髪ショートカット。
もしくは『プロメテウス』の謎の美女メレディス。(余談ですが、セロンがメレディスを演じるに当たって、ウエスト50センチのスーツを着るために超シェイプアップしたそうです。)
いくらなんでも、今回の“男前”のフュリオサとはキャラが違いすぎる・・・と思ったのに、どんな役でも見たあと「この人でなければ」と思わせるのだから凄い!
だってね・・・下の“普段のシャーリーズ・セロン”を見てくださいませ。
ホントに同一人物? ・・・あなたどう思いますか?
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
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