こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
お前のMADが目を覚ます
こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
明日の予告を教えてやる。
話題作『予告犯』をケイコとともに観てまいりました。
テレビやネットでも盛んに予告編を目にしていましたし、テレビの『ウロボロス』を観て以来、進境著しい生田斗真君の演技を見たくなったのです。
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予告犯
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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『予告犯』はもともと「ジャンプ改」で2011年から13年まで連載されていたコミック作品。
後に単行本三巻にまとめられ、更にコンビニ・コミックとして上・下二巻が発行されました。←(僕が読んだのはコレ)
作者の筒井哲也は2002年に「月刊少年ジャンプ」の増刊号でデビューしましたが、しばらくは鳴かず飛ばず。
ところが、ホームページで公開していた作品『多重夢』などが評判を呼び、雑誌掲載や書籍化がなされる一方、海外で人気に火が付き、『ダズハント』・『リセット』・『マンホール』などの作品はフランスでも刊行(2007年)されました。
そうして2011年、満を持して発表したのがこの『予告犯』。
今回の生田斗真主演による映画化ばかりでなく、東山紀之主演による後日談『予告犯 -THE PAIN-』がWOWOWで放映されています。
さて、期待の生田斗真君はどのような演技を見せてくれたのか?
そのストーリーですが、ある日、ネットの動画サイトに新聞紙をマスクのように被った男が登場し、某食品加工会社への放火予告を行います。
この会社は集団食中毒を出して多数の重症者を出していながら、マスコミの前では法律の不備を訴えて逆ギレ会見。
『こんなふざけた連中には制裁だ。食い物の扱いも知らないコイツラに、オレがきっちり火を通してやる。』・・・男はネットで言い放つ。
果たして、その製薬会社の社屋は炎上。現場中継の画面の片隅に新聞紙のマスクをかぶった男が目撃されます。
彼に付けられた名前が「新聞男」・・・ネット上では「シンブンシ」と呼ばれるように。
そして、彼を追う使命を与えられたのが、警視庁のネット犯罪の対策部署として新たに設立されたばかりのサイバー犯罪対策課。
その班長が若き女性警部補吉野絵里香。扮するは我らが戸田恵梨香、颯爽と登場であります。
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吉野絵里香(戸田恵梨香)
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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「シンブンシ」の犯罪予告は、その後も繰り返されます。ターゲットとなるのはSNSで炎上騒ぎを起こしているはぐれ者たち。
でも「シンブンシ」の予告は、ネット・カフェのアカウントを巧妙に乗っ取る方法で行われているため、その正体はヨウとして掴めない。
しかし、強姦された女性被害者を冒涜する発言をネットに書き込んだ男子学生が「シンブンシ」の制裁を受けた事件の証言から意外な事実が浮かび上がる。
「シンブンシは小太りの男」・・・製薬会社の放火事件でテレビ画面に捉えられた男と特徴が異なる。複数犯!?
やがて彼らの行動はネット民の支持を受ける様になり、カリスマ的な人気を集める様になります。
そんな中、「シンブンシ」がネットカフェを利用していた痕跡が発見され、利用者の人相風体は異なるものの、用いられた名前が「ネルソン・カトー・リカルテ」という同一のものだったことが判明。
何故彼らは「シンブンシ」と疑われるようなリスクをおかしたのか?
いったい彼らの真の目的とは・・・??
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予告犯
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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「シンブンシ」一味の実行犯は4名。そのリーダー格の“ゲイツ”と呼ばれるのが生田斗真君です。
彼は派遣のIT技術者だったのですが、派遣先でモーレツなパワハラを受けて職を失います。このパワハラのシーンが凄い。真に迫ってる。そして憎たらしい。
無理な仕事で残業を強いる。公衆の面前での罵倒。一人だけで社屋の掃除をすることを命じる・・・自分から辞めさせるためにありとあらゆる嫌がらせをするのです。もう「人」としてさえ扱ってもらえない。
僕はリアルの仕事で労使問題の調整・解決をやっていたものですから、様々なトラブルを耳にしましたがこれは酷い。映画としても酷過ぎる。
ま、パワハラ上司を演じた滝藤賢一が上手だったと言えるかもしれませんが。
(そう言えば、滝藤賢一氏はテレビの『ウロボロス』でも生田斗真君の敵対グループの一人として共演していました。縁がありますね。)
こういう『社会の理不尽』が描かれることで、観客は「シンブンシ」たちの行動にシンパシーを感じる仕掛けになっているのでしょう。
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予告犯:カンサイ(鈴木亮平)
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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物語の中盤でゲイツ(生田斗真)らが「シンブンシ」として犯罪に手を染めるようになる重要な出来事が描かれます。
職を失って日雇い力仕事に雇ってもらうため人買いの“寄場”で立ちんぼをしていたゲイツはほか4人の立ちんぼと共にダンプカーに乗せられます。
身分証明書も国籍も問わないというその仕事は、違法廃棄物を山間に埋めて遺棄するという脱法作業。
メンバーの一人であるフィリピン出身の日系人ヒョロは、炎天下の重労働で倒れてしまいますが、現場監督から「倒れたヤツに手を貸せば二人分の作業が消える!」と叱責されます。
夜、現場に急ごしらえされた粗末なタコ部屋に押し込められた5人は、自己紹介をすることに。数学やコンピュータの知識が豊富ということでゲイツというあだ名を付けられた生田斗真君は、外のメンバーに名前を付けます。
関西出身のカンサイ(鈴木亮平)、ドラえもんののび太に似ているノビタ(濱田岳)、太っちょのメタボ(荒川良々)、そしてフィリピン出身の痩せっぽちヒョロです。
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予告犯:メタボ(荒川良々)
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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ヒョロはフィリピンの中でも最も貧しいスラム街「スモーキー・マウンテン」の出身。母親が死ぬ間際に父親は日本人だと聞き、その父に一目会うため日本へ渡って来たのです。
過酷な人生を感じさせないほど明るい性格のヒョロ。しかし身体の弱い彼は、重労働の中で再び意識を失ってしまいます。
彼の症状から「腎不全」ではないかと疑うメンバー。ヒョロは言います。
「ゴメン、おれ・・黙ってた。おれ腎臓売った。」・・・極貧の彼が日本へ渡航するためにはそうするしかなかったのです。
結局ヒョロは帰らぬ人に。それを現場監督に告げると、監督は一本のスコップを遺体の上に放り出し・・
「これで埋めとけ。欠員は明日補充する。」・・・この言葉に、4人の理性は吹っ飛びます。
スコップで殴りかかろうとするメタボ。その手を遮るゲイツ。
「止めんな!」
「止めない」・・と言ってスコップを奪い取るや、ゲイツは自らスコップを振り下ろし監督を殺害してしまいます。おーまいごっど!!
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予告犯:ノビタ(濱田岳)
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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「スモーキー・マウンテン」は本当に貧しい地域。
『地球のステージ』で戦場の医師桑山紀彦先生が、国際医療ボランティアを始めるきっかけとなったのが、この地での9歳の少女ロエナスとの出会いでした。
ここは(2007年当時)マニラの全ての生ごみが投棄されて山になっている場所。彼らは、そのゴミの中から食べられるものを漁り、命を繋いでいるのです。
※参照 岸波通信その146「戦場の医師」>>
それを知っているので、このシーンには胸が詰まりました。また、生田斗真君の演技が最も光っていたのもこのシーンです。
理不尽な社会に対する怒り。それに甘んじなければ生きていけない自分自身への怒り。そんな抑えていた感情が爆発するという鬼気迫る演技。実に素晴らしい。
ゲイツたちは現場監督の死体ごとタコ部屋に火を放ち、ヒョロの遺体を小高い丘に埋葬します。
「このまま街に戻れば間違いなく終身刑だ・・その前に力を合わせて何かやり返さないか?」
「仕事もねえ、金もねえ、将来もねえ、そんな俺らに何ができるんだよ」
「・・俺に考えがある」
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予告犯
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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映画はテンポもよく、“追う側”の戸田恵梨香演ずる班長の体当たりの迫力演技もあって飽きさせません。
でも・・・『真の動機』に関してはかなり違和感を感じました。
「ネルソン・カトー・リカルテ」・・それはヒョロの本名だったのです。
つまり、その名前を使って犯罪を重ねマスコミに大きく取り上げられることで、ヒョロの父親を探し出し、せめて彼の意思と遺骨だけでも父親に届けたい~というのが「シンブンシ事件」の目的。
それにしては手が込み過ぎている。そう思いませんか?
この『動機づけ』や『手段』とのアンバランスは、どうにも納得がいきません。
この「ネルソン・カトー・リカルテ」(ヒョロ)を演じたのは福山康平君。
エンディング・ロールを見てびっくりしました。てっきり外国人だと思っていたのです。
この俳優さんも、なかなかに良い演技をしてくれましたよ。
(すっかり騙されたワケだし。)
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予告犯
(C)2015映画「予告犯」製作委員会 (C)筒井哲也/集英社
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「シンブンシ」は、ネットに『最後の予告』を投稿します。
『明日の予告を教えてやる。今回のターゲットは「シンブンシ」と名乗ってテロ活動を続けているこの4人組だ。こんなふざけた連中には制裁だ。24時間以内に処刑してやる。』
ええ~!
さて、戸田恵梨香班長は4人の集団自殺を阻止することができるのか?
ネルソン・カトー・リカルテの願いは叶えられるのか?
そのエンディングを見て、貴方の評価は??
/// end of the “cinemaアラカルト165 「予告犯」”///
(追伸)
岸波
戸田恵梨香はいい女優さんになって来ましたね。「SPEC シリーズ」の当麻紗綾 役の怪演を見て、どうなっちゃうんだろと思ってましたが。
今年相次いで公開された「エイプリル・フールズ」、「駆け込み女と駆け出し男」、そしてこの「予告犯」と作品に恵まれ、様々なキャラクターを開花させ、今一番アブラが乗っているのではないでしょうか。
生田斗真君は貫録が出てまいりました。やはり「ウロボロス」に抜擢され、小栗旬君とガチンコの競演をしたのがいい経験になったと思います。今回のゲイツ役は風格さえ感じさせる見事な熱演でした。
なお、シンブンシの模倣犯を行う高校生たちを描いた『予告犯 -THE COPYCAT-』が週間ヤングジャンプで連載中です。(作家は小幡文生に代っていますが)
でもやっぱり、「予告犯」の動機と手段については、どうしても納得がいかないなぁ。うむむむむ・・。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
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