こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
笑いと、たぶん一粒の涙の物語。
ケイコとお昼ご飯のついでに、今日封切りの「青天の霹靂」を観に行こうということになり、イオンシネマの上映時刻表をチェックすると、たった今始まったばかり。マイガッ!
ちょうどいい上映時間の映画を探すと、前から見たかった「超高速!参勤交代」の文字が。
“6回につき1回招待券”二枚を握りしめ、駐車場からチケット売り場に駆け込みますと、お姉さんの難しそうな顔が見つめ返す…。
「あのぉ・・本日は平等にお一人様二千円をいただくことになってます。」
ええ~聞いてねぇよ!
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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結局、この顛末、今日の上映は出演者が舞台挨拶をする『特別試写会』ということで、「招待券」対象外とのこと。
う~ん、そう言えば、入り口に『報道関係者の方』という看板が立って“芳名帳”みたいなのが置いてあったのはそういうことか・・。
仕方がない、今日はあきらめるか…。
せっかくだから、フォーラムの時間もチェックしてみれば?
どれどれ…「青天の霹靂」が5分後に開始!?
Here we go!!
そんなこんなで、二人してこけつまろびつ「フォーラム1」へ駆け込んだのでございます。←(最初によく調べろよ!)
さて、今回はどのような感動のストーリーが待ち受けているのでしょうか?
『青天の霹靂』(せいてんのへきれき)は、劇団ひとりが2018年8月に幻冬舎から出版した小説。
前作『陰日向に咲く』も映画化され、心の準備もないままに観てきたのですが、“不意打ち”の感動に涙が止まりませんでした。
そっか、劇団ひとりって、こういう才能があるんだ…。
この『陰日向に咲く』は、「お笑いタレントが本気で書いた小説として話題を集め、100万部を突破して直木賞の有力候補にも挙げられました。(惜しくもノミネートになりませんでしたが。)
今回の『青天の霹靂』は、劇団ひとり自身がメガホンをとり自らも主人公の父親役として出演するなど、原作・脚本・監督・出演の大活躍でございます。
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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主人公の轟晴夫(大泉洋)は、学歴もなく彼女も居ないシケた場末のマジシャン。
幼い頃に父親正太郎(劇団ひとり)の浮気がもとで母親が失踪し、売れないマジシャンであった父親と極貧の生活を送ることになったことで、自分を捨てた母親を恨んでいます。
その父親も10年以上前に彼を捨てて失踪し、行方知れずに。
晴夫はひょんなきっかけでテレビのマジックショーのオーディションに出ることになり、久々に晴れがましい気分でいる時に警察から一本の電話が。
聞けば、失踪しホームレスになっていた父親が死んだので遺灰を取りに来て欲しいとのこと。
絶句する晴夫…。
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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父親が住んでいたというダンボール・ハウスを訪れ中を訪れると、酒瓶が並んだ中にブリキの缶が大切そうに置いてある。
中にあったのは、編み物の道具と編みかけのベビーソックス…そして古ぼけた一枚の写真。
そこには、小さな自分を抱いて父親が嬉しそうに笑っているのが写っていました。
「何で、こんなモノを大切にしてんだよ!」
…だったら、どうして自分を捨てたんだよ。母親に捨てられた上に父親にまで…。
何をやってもうまくいかない、何に尽くしても報われない自分の人生がよみがえり…
「オレはもう…自分が何のために生きてるのかさえ分からなくなっちまったんだよ。」…写真を抱えて号泣する晴夫。
その時……ドッカーン!!
大音響とともに青天の霹靂が彼を打ち据えます。
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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気が付いた晴夫が辺りを見回すと、どことなく様子が変わっています。
傍らにあった新聞(子供たちが、倒れている晴夫が生きているのか、新聞を丸めたモノで突っついて確認に来た。)の日付に目をやると昭和48年…何と40年も前にタイムスリップしてしまったのです。
ワケが分からない…けれども腹がすく。
ということで、とりあえず昔の浅草らしいこの場所で自分の唯一の芸を活かし、浅草演芸場『雷門ホール』のマジックショーに出演することに。
支配人(風間杜夫)から助手として指名されたのが、つい先だって相方に逃げられた女芸人の花村悦子(柴咲コウ)。
ユリ・ゲラーばりのスプーン・マジックが観客を沸かせ、晴夫と悦子はいまだかつてない喝采を浴びることに。
その夜、デビュー祝賀会の焼き鳥屋で泥酔した晴夫は、悦子に興味を持ち、やがてそれは淡い恋心となっていきます。
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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ある日、悦子が体調を悪くして休むというので、果物を持って見舞いに行く晴夫。
ところが悦子は「警察に行かなきゃ」と言います。
訳を聞けば、逃げた元・相方のチン(劇団ひとり)が警察に捕まって呼び出しを受けているとのこと。
ふと、部屋の中を見廻せば、そこには男物の洗濯物やペアの歯ブラシが。
すべてを悟った晴夫は、体調がすぐれない悦子の代わりに警察へ出頭することとなります。
そこに待っていたのは…何と40年前の父親!!
聞けば、悦子の体調が悪いのは妊娠のツワリだったためで、父親は、妊娠をきかっけに相方から逃げようとしていたのです。
なんていい加減なヤツ…。
結局、父親は悦子になじられながらも元サヤに収まることになり、壁のカレンダーを見た晴夫は、その赤ん坊が数か月後に生まれる自分自身だと気づきます。
「自分だけは正しいような事を言ってるが、アンタだって立派にいい加減なヤツなんだよ」…悦子に言い放つ晴夫。
やがて自分を捨て去ることとなる母親に、せいいっぱい毒づくのでした。
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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ツワリで働けなくなった悦子の代わりに、晴夫は父親のチン(劇団ひとり)とコンビを組むことに。
舞台で自分が目立とうとするチンにブチ切れて、二人はマジックそこのけの大乱闘。
ところが「ケンカしながらマジックをやる」という雷ホール支配人(風間杜夫)のアイディアが功を奏し、二人のコンビはとんとん拍子に人気を博していきます。
やがて、テレビのマジック・ショーのオーディションに出ようと準備も進む中、悦子が倒れて病院へ担ぎ込まれます。
チン(劇団ひとり)は、医者から重大な宣告を受けることに。
「もし、無理して子供を産めば、母体に重大な結果を招く恐れがある。」
動揺するチン。
その動揺を悦子に見抜かれ、追い詰められたチンは真実を暴露してしまうのです。
泣きだしそうになる悦子。でもやがて、まなじりを決し…
「私は、どんなことがあってもこの子を産みます。」
…さて、悦子の運命やいかに!?
そして、晴夫はどうなってしまうのか!?
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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原作・監督の劇団ひとりは、最初から自分で父親のチン(正太郎)の役を演じることを決めていたそうです。
主人公の轟晴夫の役は、「電車男」や「悪人」を撮った東宝映画の川村元気から推薦を受けて、「探偵はBARにいる」の大泉洋を起用。
花村悦子役の柴咲コウも、“芸人の嫁はしっかり者が多い”という劇団ひとりのイメージから、同じく川村元気が推薦。
映画を観た感じで、この三人(劇団ひとりを含め)の配役はまさにピッタリと感じました。
大泉洋のマジックは、4か月くらい練習したらしいよ。
ええ~! ノースタント!?
コインの“指慣らし”やカードの扱い…さらには本番でのマジックまで“お見事”の一言。
やはり大泉洋は、ただ者ではありません。
(うちの事務局長みたいだ…ボソッ)
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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大泉洋がカメラの長廻しで独白するシーンが二回…この二か所こそ、この映画の白眉となっています。
“父親の浮気で子供を捨て去った非情な母親”という長年信じていた事実が、父親の虚構であったこと。
しかもその母親は、自分の命をかけて自分を産もうとしたこと…。
「お願いだから子供を堕してくれ!悦子さんはそんなことのために犠牲になっていい人じゃないんだ!お願いだから…」
…もう、涙ボロボロです。(しゃくりあげるほどに)
(閑話休題)
映画のクライマックスは、晴夫自身が悦子に…
「あなたは未来が見えるのでしょう?
この子の将来はどうなるの? そして私はどうなるの?」
と問いかけられ、答えるシーン。
ベッドの傍らには、あの日、父親のダンボール・ハウスで見つけたブリキの缶と、編みかけのベビーソックスが。
真実は明かすことができない。それでもいい加減な答えは言ってはいけない…
まさにこのシーンこそ、脚本家:劇団ひとりと俳優:大泉洋の歴史に残る名シーンとなるでしょう。
さあみんな、ハンカチいっぱい持ってね♪
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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映画のエンディングで、最近気になっている(←車通勤になったのでFMを聞いている)ミスチルの新曲『放たれる』が流れてきてビックリ。
調べてみると、もともと劇団ひとりはMr.Childrenの大ファンで、ダメ元で桜井君にオファーしたのだそう。
ところが原作を読んだ桜井君が内容に感動。是非主題歌を書かせてくれということで書き下ろしたのです。
う~ん、久々に心に響いてくる曲だなぁ。
東宝の川村元気さんといい、主演の大泉洋といい、主題歌のミスチルといい、様々なピースが奇跡のように組み合わさって、この名作ができたのだと感じました。
劇団ひとりの才能には、あらためてビックリ。
本日は初日なので予断は許しませんが、黒澤明監督の名作『生きる』にも匹敵するほどの人生賛歌だと思います。
作家や演出家としてのズバ抜けた才能があるので、引き続き、第三作、四作と頑張ってほしいと期待します。
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青天の霹靂
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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映画のラストシーンでは、一方で悦子が出産を迎える中、晴夫はテレビの最終オーディションに臨みます。
何と凛々しい姿。何と自信に満ちた手捌き。
すでにこのシーンは、40年前のオーディションなのか現代でのオーディションなのか判然としなくなっています。
最後のネタに持って来たのは、ティッシュペーパーで作った飾り気のないバラ。これは悦子(母親)が父親から貰ったのを大切にしていたのと同じもの。
「これはね…捨てられないの。大したことないものだけれど、それでも一生懸命、キレイに咲こうと頑張っているでしょう?」
そのバラが宙に舞う。そして…
結末は是非、劇場であなた自身の目で。
/// end of the “cinemaアラカルト156「青天の霹靂」”///
(追伸)
劇団ひとりって、膀胱が小さいのよ。
ええ~そーなの~!?
オシッコを我慢できるのは90分が限度なんだって。だからこの映画も90分に収めたのよ。
……。
劇団ひとりが制作にあたって描いていたイメージは『チャップリンのようなコメディアン出身の俳優による悲劇と喜劇が同居する90分程度の人情もの』だそうです。
うむぅ…“90分”という部分に、そんな重大な秘密が!?
あのさぁケイコ、もしかして「未来」とかも見えてるんじゃないの?(恐)
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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演技の火花が散るシーン
(C)2014 「青天の霹靂」製作委員会
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