こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
待たせたな、調査再開だ。
第一作もこのcinemaアラカルトで採り上げましたこの映画。その続編となる「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」をケイコと観てまいりました。
原作は、北海道在住の作家・東直己による“ススキノ探偵シリーズ”の第5作「探偵はひとりぼっち」。
前回に引き続いて、北海道が生んだ偉大なる“ローカルタレント(本人談)”大泉洋とウチの娘サオリが大ファンである松田龍平のコンビが演じます。
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点 (C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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第1作「探偵はBARにいる」は全国251スクリーンで公開されまして、2011年9月10~11日の封切り二日間で興収が1億7,021万6,900円、12万8,800人の動員を記録し、観客動員ランキングで初登場第1位となりました。
(ま、当然ながら北海道エリアで大きく盛り上がったワケでございますが。)
さて、満を持した「2」の内容やいかに?
映画の開始早々、探偵の「オレ(大泉洋)」(※役名は付けられていない。)がいるところは札幌大蔵山のスキー・ジャンプ場。
しかも、今まさに頂上から滑降を始めようとしている。そして彼は叫ぶ・・・
「おい、やめろ!やめてくれ~!」
それもそのはず、無理やりスキーを履かせられた探偵は後ろ手に拘束され、ロープでジャンプ台に吊るされているのです。
ああ、なるほどね。
前回の映画も同じように、探偵の「オレ」が縛られたまま雪の中に埋め殺しにされようとしているシーンからスタートしました。
主人公の大ピンチから始まるのは、どうやらこのシリーズの“お約束”のようでございます。
(そして、そこに至ったワケが回想シーンで明かされる。)
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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さて、その事件ですが、「オレ」が常連となっているオカマ・ショーパブのマサコちゃん(ガレッジセールのゴリ)が何者かに殺害され、道警が直ちに乗り出すものの捜査は一向に進みません。
これを黙って見ていられず、友人として捜査に乗り出した「オレ」は何者かに尾行されるハメに。
実はこの尾行者は、マサコちゃんが生前、大ファンであった新進バイオリニストの河島弓子(尾野真千子)。
彼女は自分の大切なファンが奇禍に遭遇したことにショックを受け、勝手に捜査を始めた「オレ」のことを聞きつけて、「この人に着いて行けば真相に迫れるのではないか」と行動を起こしたのです。
でも、しょせんは素人の尾行。すぐに「オレ」に感付かれて逆に取り押さえられ、事件究明の依頼者になることで話がまとまります。
相棒の高田(松田龍平)を呼び寄せ、本格的な聞き込みを始めた「オレ」。
しかし、久々に訪れたショーパブでは、何故か誰も事件を語ろうとしません。
そんな中、顔馴染みの客引きが「オレ」に小声で忠告を。
「この事件は掘り起こさない方がいい。大物政治家が絡んでいる・・・。」
やがて忠告どおり、正体不明の敵たちが探偵コンビを付け狙い、暴力で襲いかかります。
果たして、「オレ」と高田は姿の見えない黒幕の襲撃をかわして、事件の真相に迫ることができるのでありましょうか?
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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このシリーズは現代を描いているのに、何故か懐かしい感じがするので大好きです。
最近のミステリーというのは、国家的なテロなど巨大事件を扱ったり、緻密な内部描写を売りにした警察小説であったり、「ガリレオ」のようなスーパーヒーローが出てきたりとか、現代的で派手なものが多いです。
でも、僕らの世代のミステリーと言えば、やはりフィリップ・マーロウのような場末の酔いどれ私立探偵が気のきいた台詞を吐くハード・ボイルドが原点なんですね。
(いやアガサ・クリスティだ、エラリー・クイーンだと言う人もいるでしょうが。)
そういう昔懐かしい探偵ストーリーの舞台を現代に移し、日本に移せば、きっとこういう作品になるに違いありません。そういう意味で“懐かしい”のです。
こういう探偵が活躍するためには、あまり便利になり過ぎてはいけません。
だから「オレ」は、主義として携帯を持たず、いつも黒電話が置かれたBARにいて酔いどれながら依頼の電話を待ち続けるのでしょう。
そして、相棒の高田の愛車は、とてつもないポンコツで、肝心な時に必ずエンストしなくてはならないのだと思います(笑)
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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今回、ヒロインであるバイオリニスト河島弓子を演じるのは、NHKの朝ドラ「カーネーション」で主演した尾野真千子。
この人って、関西(奈良県)出身だったのですね。
役柄の河島弓子は北海道室蘭の出身・東京育ちという設定ですが、何故か関西風のイントネーション。
これがまた、実に役柄に嵌まっているのです。
「オレ」がバイオリニスト河島弓子のことを知ったのは、殺されたオカマのマサコちゃんの部屋に、河島弓子の大量のCDがあったから。
ところが、謎の尾行者となって逆に取り押さえられてしまった彼女を見ても、まったくソレと気づきません。
相棒の高田を呼んで三人で行きつけの店に行き、食事をしながら尾行した理由を聞くことにしますが、大盛りのナポリタンを下品に食べている彼女は、どう見ても同一人物に見えないのです。
そこで「オレ」はハタと拳を打ちます。
「わかった! コイツは・・・化粧して2割増し、スポットライトを浴びて3割増し・・・ヴァイオリンを持たせると5割増しの女だ!」
・・・最高でしょ、この台詞!
今回の「2」は、笑えるシーンが2割増しになっているのです(笑)
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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そうそう、順序が逆になりましたが、彼女を謎の尾行者として取り押さえるシーンも白眉。
尾行に気づかれたとエレベーターに逃げ込む尾行者、それを強引にこじ開けて捕まえようとする「オレ」。そこで弓子は護身用のスタンガンを「オレ」の股間に突きつける!
悲鳴を上げてのたうち回る「オレ」、巻き込まれて叩かれ気を失う尾行者。「オレの大切なところはだいじょぶか~!?」とズボンを脱いで確認する「オレ」。ふと気づくと、倒れている尾行者は・・オンナ!?
あっけに取られて固まっていると、エレベーターが1階に着いてドアが開く。そこに居たのは呼ばれてきた高田君。何と目の前では「オレ」がズボンを下げ、気を失った女性に襲いかかろうとしている(!)
「いくらなんでもソレはダメだろ!」
「うわーちょっとマテー!これにはワケが!」
きつーいパンチが顔面に炸裂(笑)
ま、こんな具合に、爆笑シーンとアクションシーン、そしてシリアスシーンがぎゅうぎゅう詰になっているのです。
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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映画の山場で、単身、黒幕の政治家事務所に乗り込んだ対決シーンが圧巻です。
黒幕と目される政治家、“原発廃止運動のリーダー”と目される橡脇孝一郎を演じたのは渡部篤郎。
橡脇代議士は、若い時分にオカマのマサコちゃんと愛人関係にあったのです。
しかし、政治家としての地位が高まるにつれ、彼の将来を思うマサコちゃんは自ら身を隠したのでした。
そして十数年、ひょんなことでテレビ出演しているマサコちゃんを見つけ、橡脇は一言でも当時のお礼を言いたくて、花束を持ってマサコちゃんのもとを訪れたのです。
そして、花束を持ったまま、彼女は死体となって発見されました。
・・・と、当然に濃厚な容疑がかかるのですが、僕が考えるに、どう考えても“ミスキャスト”。
だってそうじゃありませんか、渡部篤郎って悪役が絶対に似合わないタレント。というか、僕は「外事警察」以来、渡部篤郎の大ファンなのですよ。
再会に見せかけて昔の恋人を抹殺する・・・そんな腹黒い役を振って欲しくはなかったのです。
(・・・と、この段階までは思っていた。)
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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直接対決で橡脇代議士を追及する「オレ」、一歩も引かず「政治家としての使命」を力説する橡脇。
ここが、この映画の演技の山場でしょう。まさに丁々発止。火花散るオーラとオーラのぶつかり合いでございます。
(待てよ、もしかすると本当に無実なのか・・?)
限りなく黒に近い状況証拠がありながら本人から否認された「オレ」は、これ以上の追求は難しいと判断し、調査事実だけをありのままに依頼人河島弓子へ伝えて調査の終了を宣言。
河島弓子は意外なほどあっさりと調査結果を認めます。
ところが・・・!
ここからが本当のストーリーの山場になるのです。
マサコちゃんと河島弓子の本当の関係、思いもよらぬ真犯人の露見、次々と新事実が暴かれます。
「河島弓子は真犯人と誤解したまま、自分で橡脇代議士を殺しに行ったのではないか?」
果たして、「オレ」と高田は橡脇代議士を、そして河島弓子を救うことができるのか!?
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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この真犯人についてですが、正直、心にストンと落ちる人物ではありませんでした。
ある意味、アンフェアではないか。こうした犯人設定が許されるなら、途中の推理は全く意味がなくなるのではないか・・・そんな想いがいたします。
まあ、それでも最後のクライマックスに繋げるためには、やむを得ないシナリオではなかったかと。
この「真犯人設定」だけはいただけませんが、その他はテンポのよいストーリーにぐいぐい引き込まれます。
笑いもアクションも(エッチなシーン)も満載。これぞエンターテインメント!・・という作品に仕上がりました。
でも・・・この映画で泣かされるとは思いもよりませんでした。
前回はショッキングで切ないラストシーンであっただけに、まさかこんな・・・。
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探偵はBARにいる2
ススキノ大交差点
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会 |
尾野真千子はやっぱり美しい。
ガレッジセールのゴリさん、決して好きなタイプのタレントではなかったのですが、ラストの回想シーンの演技一発で好きになりました。大逆転です。
この作品の全ての伏線が回収される感動のラストシーン・・・必見。名場面です。
/// end of the “cinemaアラカルト146 「探偵はBARにいる ススキノ大交差点」”///
(追伸)
岸波
5月11日に、初日舞台挨拶が丸の内TOEIで開催され、主演の大泉洋、松田龍平、尾野真千子、渡部篤郎、ゴリ、橋本一監督が登壇しました。
前回のヒロイン小雪が舞台挨拶時に妊娠していたということで、大泉が「尾野(真千子)さんはどうなんですか?」と突っ込むと、尾野は「まだいないです」と即答して会場は大爆笑。
してやったりの大泉は「これで、スポーツ新聞もらったよ。『尾野さんはまだいない』」と言い、また爆笑の渦となりました。
また、体毛を剃ってオカマの役柄に臨んだゴリは「脱毛クリームを塗ったけど、1本も溶けなかった」と苦笑いすると、大泉が「どんだけ剛毛なんだよ」と突っ込んで、これまた大爆笑。終始笑いの絶えない舞台挨拶となりました。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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探偵はBARにいる2
舞台挨拶
(C)2013「探偵はBARにいる2」製作委員会
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