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「Blue Island」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2013.2.17】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 その男、行き着く先に事件あり。
 その名は、ジャック・リーチャー。
 世界で最も危険な流れ者(アウトロー)。

 さて、今回のcinemaアラカルトはトム・クルーズの「アウトロー」。

アウトロー

(C)2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 「ミッション・インポッシブル」シリーズとはまた違った、トム・クルーズ演じるニューヒーローが登場。

 「世界で最も危険な流れ者(アウトロー)」とは…?

 

 この「アウトロー」の原作は、イギリスの作家リー・チャイルドによるクライム・ノベル「ジャック・リーチャー」シリーズの第9作目『One Shot』。

 「ジャック・リーチャー」シリーズは、1997年の『Killing Floor』を皮切りに(現時点で)17作というロング・ヒット・シリーズとなっています。

 主人公のジャック・リーチャーは、かつて米陸軍憲兵隊の秘密捜査官で、現在は退役し、街から街への流れ者となっています。

 実は、冒頭の『その男、行き着く先に事件あり…』キャッチコピーの後は、『携帯は持たない。交渉には応じない。そして、悪は決して許さない。』と続きます。

 彼は、運転免許証やクレジット・カードなど身分が明らかになるものは、一切身に着けない主義。

 何故そうしたライフスタイルを貫いているのかは、今回の作品の中だけでは明らかにされていません。

 うーむ、“謎の多い男”でございます。

ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)

(C)2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 映画の冒頭、ペンシルバニア州ピッツバーグの郊外で、「※6発の銃弾が放たれ5人が次々に射殺される」事件が発生します。

(「※」印に関しては後述。)

 狙ったのは川のほとりにある立体駐車場の上階。ターゲットたちは、たまたま川を挟んだ反対側にいた通行人たちで、無差別に犠牲となるのです。

 たちまち警察が出動。

 有料駐車場の料金ゲートに投入されたコインの指紋や、狙撃現場に残された銃弾の薬莢などから、わずか1時間後には元軍人のスナイパー、ジェームズ・バーが容疑者として逮捕されます。

 しかしバーは犯行を否認。かつて軍隊で自分の犯罪を追い詰めたことがあるジャック・リーチャーを呼んでくれと要求。

 困ったのは警察と担当検事。

 何せ、ジャック・リーチャーは既に軍を退役し、行方知れずの流れ者となっていたからです。

ジャック・リーチャー(トム・クルーズ)

(C)2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 ところが、ニュースで事件を知ったジャック・リーチャーが自ら警察へ出向いてきます。

(このへん、ちょっとご都合主義にも感じられますが…。)

 彼は、凄腕のスナイパーであったバーが的を外すはずがないと指摘。

(※6発の銃弾が放たれ5人が射殺された残りの一発の件。)

 その外れた一発は販売機のジュース溜まりに撃ち込まれ、この無傷の銃弾が有力な証拠となっていることにも疑問を持ちます。

 バーに面会を求めるジャック。

 しかしバーは、刑務所に向かう途中で他の囚人たちに襲われ、意識不明の重態となっていたのでした。

 何かがおかしいと感じたジャック・リーチャーは、担当の女性弁護士ヘレン(ロザムンド・バイク)と共闘し、事件の謎を追い始めるのでした。

ヘレン弁護士(ロザムンド・バイク)

(C)2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 こういう進行からも分るととおり、「アウトロー」は本格推理サスペンスの範疇に属すると思います。

 アクション・シーンなども、そこそこにはあるのですが、ワイヤー・アクションや特撮があるわけでもなく、極めて古風なつくり。

「古い映画、見てるみたいだね?」

「ホラ、昔の『サンセット77』みたいな感じ?」

「ええー!50年前のテレビドラマじゃん!?」

 と、まあ、第一感はそんな感想。

 「ミッション・インポッシブル」のような超・ド派手なアクションを期待して見に行きますと、落差が大きいかもしれません。

ヘレン弁護士(ロザムンド・バイク)

(C)2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 特定された犯行現場に行くと、いかにも不自然さが目に付きます。

 なぜ犯人は、狙撃後にすぐ車で逃げられる橋の上から狙わなかったのか?

 わざわざ有料駐車場に入って、かなり上階まで螺旋通路を登っている。逃走が大変ではないか。料金のコインに指紋を残すリスクも回避できたろうに?

 車に乗ったまま狙えば、薬莢が遺留品にならずに済んだのではないか…?

 そもそも、たった「1時間後」に逮捕されるなど、捜査がスムーズ過ぎないか?

 真相に近づくジャック・リーチャーに、むしろ真犯人側が積極的な行動に出てきます。

 相棒のヘレンを拉致するのです。

「こいつの命が救いたければ、一人で●時に××へ来い。」

 おっと! この辺もちょっとご都合主義なストーリー進行か?

悪の黒幕(ベルナー・ヘルツォーク)

(C)2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 悪の黒幕を演じたベルナー・ヘルツォークは、現代ドイツを代表する映画監督。

 15歳で映画シナリオを書き始め、1968年の処女長編「生の証明」で、ベルリン国際映画祭の銀熊賞を獲得。1974年のカンヌ国際映画祭で「カスパー・ハウザーの謎」が審査員特別グランプリ受賞。1082年の「フィツカラルド」では同監督賞を受賞。ニュー・ジャーマンシネマの牽引者と目されています。

 そんなヘルツォークが不気味さ満点の悪役を演じたところも本作の見どころ。

 クライマックスは、単身(実は仲間がもう一人)敵地にのり込んだジャック・リーチャーと企業の乗っ取り集団との銃撃戦となります。

 だけど、ちょっと待てよ…。

 いかに「アウトロー」とは言えど、この結末はちょっとマズイんじゃないかな?

 本格推理ドラマのような緻密な捜査を進めるかと思えば、急転直下のバイオレンス炸裂。

 しかも、最後の銃撃戦で「そういうこと」になってしまうと、真犯人も犯罪の動機も「闇の中」になってしまうのではないのかな? う~むぅ…。

アウトロー

(C)2012 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

 トム・クルーズは、このジャック・リーチャーシリーズを、『ミッション・インポッシブル』に次ぐ、第二の主演シリーズにしたいのだそうな。

(まあ、原作が現時点でもあと「16本」も残っていますし。)

 たしかに『MIシリーズ』と同じテイストではダメなので、全く別のキャラクターを持ってきたのでしょう。

 しかし、そうは言っても…本格推理としても中途半端、アクションムービーとしても中途半端。

 そもそも「その男、行き着く先に事件あり。」というキャッチコピー自体が、このシリーズの“ご都合主義”を言い表しているように聞こえるのが皮肉です。

 17作ものロング・セラー・シリーズとなっている原作もそうなのか、映画化に当っての脚本でそうなってしまったのかは定かではありませんが…。

(『ユージュアル・サスペクツ』のクリストファー・マッカリーが監督・脚本で映画化。)

 いずれにしても、『ザ・エージェント』以来、僕の大好きなトム・クルーズの“新たな魅力発見”という感じではありませんでした。すこし残念な結果です。

 

/// end of the “cinemaアラカルト145 「アウトロー」”///

 

(追伸)

岸波

 2月2~3日の国内映画ランキング(全国週末興行成績・興行通信社提供)では、「テッド」が3度目の週末にもかかわらず週末2日間で2億9858万円の興収を上げて第一位。

 「アウトロー」は初登場二位に甘んじました。週末2日間の成績は、動員27万8830人、興収2億2774万4400円。

 金曜を含めた3日間では3億3054万円を記録しており、なかなかの数字ではあります。

 客層については「年配の男性に支持されている」とありますので、昔からのトム・クルーズファンが期待を込めて見に行ったのでしょう。(僕のように)

 ただ、僕たちが行った週末のワーナー・マイカルでは、客の入りはパラパラでした。

 そしてもう一つ。「アウトロー」という言葉をWikiで見ますと…

『アウトロー (outlaw) は語源的には犯罪等により法の保護を受けられなくなった人物をさす。しかし、現代ではもっぱら西部劇での無法者及びそのような生活スタイル(自ら好んで法の埒外に身を置く)を示す語として用いられることが多い。』

 うむぅ…西部劇か、なるほど。

 ジャック・リーチャーのキャラクターを「アウトロー」と呼ぶのは違和感を感じます。

 「流れ者(アウトロー)」とルビを振っていますが、やはり語感は「無法者」でしょう。

 よくあるパターンですが、無理やりな「邦題」やアオリ過ぎのキャッチコピーが、せっかくの正統派クライム・ムービーを台無しにしてしまったようで残念でなりません。

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

クリストファー・マッカリー監督

(C)2012 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト146” coming soon!

 

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