こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
WHAT IS REAL?
お盆休みのさなか、ケイコと「トータル・リコール」を見てまいりました。
ケイコ、映画見に行かない? いいけど何見るの?
そうだな・・海猿見ちゃったし、ダークナイトは駄作確定だし、プロメテウスはまだ来てないし・・お!トータル・リコール!?シュワちゃんのリバイバル上映か?これなら名作だからもう一回見てもいいかも。
あのね、それって新作なのよ
ええー!
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トータル・リコール
(C)2012 Columbia Pictures Industories, I.nc
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新作だったのですか…。
そうそう、僕は予見を持つのがイヤだし、世間の評判に引きずられるのもイヤなので、できるだけテレビやネットの事前情報を入れないようにしているのです。
だからなのです。けっして単なる無知とか、そういうのじゃないんです。本当なんです。信じてくださいっ!!
~というワケで、1990年のSF映画の金字塔「トータル・リコール」から20有余年、フィリップ・K・ディックのSF小説「追憶売ります」を原作とする二度目の映画化。さて、その出来栄えは?
映画の冒頭、主人公のダグラス・クエイド(コリン・ファレル)が目覚めたのは病院か研究施設設のような場所。
寝ぼけマナコの前に現れた美女メリーナ(ジェシカ・ビール)は、開口一番・・・
「気がついた?逃げるわよ、今すぐ!」
ええー! 何でしょうか、このいきなりの展開は?
しかも当のクエイドは、状況をよく理解できていない様子。
それでもメリーナに誘導されるまま、敵を蹴散らして逃げるにげる。おっと追い詰められた!
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トータル・リコール
(C)2012 Columbia Pictures Industories, I.nc
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そこは行き止まりの部屋。窓から外をうかがうと遥か下方に運河のような流れ。
行けるのか?いや行くしかない。君が先に行け。追っ手にドアが蹴破られ、絶体絶命!
「君だけでも生きろ!」 「いやよ、アナタも一緒に!」
繋いだ手と手。振り切ろうとするクエイド。離すまいとするメリーナ。
その時放たれた非情の弾丸。二人の重なった手のひらが撃ちぬかれる。オーマイガッ!
哀れメリーナは川へと落下。クエイドの背後には追っ手の影。撃ってきた。もうダメ。うわーっ!
「……なんだ、またあの夢か」 ←(おいおい)
なんだ、またあの夢か
そう…こんな最悪の「夢」から映画は始まるのです。
映画冒頭の目覚めに加えて二度目の目覚め…「WHAT IS REAL?」のキャッチコピーのとおり、いったいどこまでが現実なのか、手に汗にぎる展開でございます。
「トータル・リコール」は、アーノルド・シュワルツネッガーが主演した1990年の同名映画のリメイク作品。
前作も斬新な世界観とスピーディな展開で、強く記憶に残る作品でした。
例えば…
部屋の窓絡みえる景色が指先一つで別の場所に変化して驚かせたり(実は窓ではなく環境映像)、オッパイが三つあるコールガールが「手が二つじゃ足りないと思わせてあげるわ」という名台詞を言ったり、太った中年オバサンの顔が両側に割れて中からシュワちゃんが現れる“顔割れおばさん”のシーン…。
ファンには忘れられない映像や台詞のディテールが散りばめられていました。
こうしたことから、アカデミー賞では視覚効果賞および特別業績賞(視覚効果)を受賞しました。
この映画がシュワルツネッガーの代表作の一つという認識はアメリカっ子も同様だったようで、2003年にカリフォルニア州知事がリコールされたのを受けて選挙出馬を表明した時、現地のタブロイド誌の報じた大見出しは「Total Recall」。
前作の内容ですが、時は近未来。コンピュータと人間の脳を結ぶインターフェイスが開発され、人間は「記憶」を売り買いすることができるようになっています。
一方、人類は火星に植民地を築き、有用な資源を採掘して地球に輸送するシステムが。
有名な顔割れおばさんのシーン
地球のしがない建設労働者であるクエイド(シュワちゃん)は、愛妻ローリーと結婚8年目。
けっして裕福ではないけれど、ナニ不自由のない生活に満足しているシュワちゃんにも一つの夢が…それは「火星に移住すること」。
そんな費用が捻出できるわけもなく、「せめて火星旅行の記憶だけでも」ということで訪れたのが、“記憶”を買えるリコール社でした。
ところが装置が作動中に暴走。慌てたリコール社はシュワちゃんの記憶を消去して家へ送り返す。
この帰宅途中から、異常な事が起こり始めます。
正体不明の敵から襲われ、これを撃退して帰宅すると、今度は愛妻ローリーが彼を殺そうと迫って来る!
いったい何が起こっているのか? ローリーは告げます。
「私はアナタの妻じゃないわ。アナタの記憶は書き換えられたニセモノ。私はアナタが目覚めないように監視をしていたのよ。」
本当の自分は誰なのか?彼は真実を求めて火星へ旅立つことに。
手が二つじゃ足りないと思うでしょ♪
前作のラストシーンは、全てを解決したクエイド(シュワちゃん)がパートナーの美女メリーナとキスをし、ホワイト・アウトするシーンで幕を閉じます。
このラストの解釈をめぐって、実は映画全体が夢だったのではないかという議論が巻き起こりました。
ピアズ・アンソニイによるノベライズでは、キスの前に「リコール社が提供した夢である」ことを明示するセリフが加えられ、後に監督のポール・バーホーベンは、「夢」であったことを明確に宣言しました。
映画のどんでん返しを、最後にもう一回ひっくり返したワケです。
(ただし、映画の中ではそれを明確にせず、観客の解釈に任せられるようにしたのもスタッフの意図。)
今回のリメイクで主人公クエイド役を演じることになったコリン・ファレルは感想を求められ、「前作は完璧すぎる」とコメントしました。
シュワちゃんは正義のヒーローとしての記憶を取り戻して大活躍をするのですが、自分のクエイドは、最後まで何が現実か夢か、何が真実か嘘か、悩み続ける主人公にしたいと。
この点がどのように表現されているか、リメイク作品の大きな見どころの一つになっています。
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トータル・リコール
(C)2012 Columbia Pictures Industories, I.nc
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リメイクに当たって、いくつかの設定変更がありました。まず、火星は登場しません。
大量の化学兵器が用いられた世界大戦によって地球上のほとんどの地域が汚染され、居住可能な地域はヨーロッパを中心としたブリテン連邦(UFB)と、その裏側に当たるオーストラリアのコロニー地域のみとなっています。
多人種の労働者階級が住むオーストラリアのコロニー地域からUFBまで、“フォール”と呼ばれる巨大な地球貫通エレベーター・システムが実用化されており、労働者たちは、毎日、これに乗ってUFBへと「通勤」させられています。
こうした労働者への搾取・迫害に対して立ち上がったのが、マサイアスという正体不明のリーダーに率いられたレジスタンス軍。
人類社会の実質的な統治者であるUFB代表コーヘーゲンは、彼らの弾圧に乗り出そうとします。
主人公のクエイドはコロニーの住人で、レジスタンス弾圧のためのロボット警官を生産する工場労働者。
変り映えがしない日常に飽き飽きし、刺激を求めて記憶を売るリコール社を訪れることに。
ところが、記憶移転装置が暴走。何故かそこへロボット警官隊が突入して銃撃戦が勃発。
「自分はただの客だ」というアピールが通用しないと見たクエイドは、とっさの機転で銃を奪って反撃。あっという間に敵を殲滅してしまいます。
「なんだこのオレの能力は!? どうしてこんなことが出来る?」
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トータル・リコール
(C)2012 Columbia Pictures Industories, I.nc
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なんとか切り抜けて帰宅すると今度は愛妻ローリーが豹変。彼の命を狙ってくる。(旧作どおりの進行。)
しかし、このローリー(ケイト・ベッキンセイル)の強さはハンパではありません。
今回の映画では、最後までレジスタンスに立ちはだかる強大な壁として立ちはだかるのです。
ローリーとロボット警官隊に追われて、街中を逃げ回るクエイド。
その絶体絶命のピンチに、“夢の中の美女”メリーナ(ジェシカ・ビール)が現れて窮地を脱出。
今度は二人で逃げ回ることになります。
しかし、この二人の美女、いずれがアヤメかカキツバタ。魅力たっぷり。
この二人のド派手なアクションシーンを見られるだけでも、この映画、必見の価値あり。(うむっ)
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トータル・リコール
(C)2012 Columbia Pictures Industories, I.nc
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もう一つの見どころは、コロニーの風景に代表される陰鬱な未来観です。
クエイドがコロニーを彷徨うシーンで、「あっ!」と思いました。
これはブレードランナーだ!
何それ?映画だっけ?
あれだよ、アンドロイドは電気羊の夢を見る。
電気…ウナギ??
“羊”だっつーの!
そうか、ハリソン・フォードが主演した「ブレードランナー」の上映が1982年…ケイコに出会う前か。
「エイリアン」の監督リドリー・スコットが撮った「ブレードランナー」は日本上映当時には、あまり話題にならず(同時期の「ET」に喰われて不振・上映打ち切り。)、後にビデオ化された時に再評価され、SF映画の金字塔として揺ぎ無い地位を獲得しました。
近未来社会を描く時に、夢のテクノロジーに満ちた理想社会として描かれるのが常識だった時代に、敢えて、酸性雨の降りしきる陰鬱なディストピアとしての世界観を提示した同作品は極めて斬新でした。
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トータル・リコール
(C)2012 Columbia Pictures Industories, I.nc
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むしろそれは、東洋のスラム街の風景。
多人種や異形の者まで薄汚れた街に満ち、ネオンサインも英語・中国語・日本語などゴチャゴチャになっている。
ハリソン・フォードは、場末の屋台で寿司を注文する…。
(※この時登場した「強力わかもと」の看板が評判となり、ファイナルカット版の完成イベントが催された際、「強力わかもと」が来場者プレゼントに。)
「トータル・リコール」でクエイドが彷徨う街も、そのオマージュかと思われるほど、世界観が同一なのです。
クエイドが彷徨う街
待てよ……?
「ブレードランナー」の原作『アンドロイドは電気羊の夢を見る』の作者はフィリップ・K・ディック…おっと、「トータル・リコール」の原作『追憶売ります』と同じじゃないか!?
(なるほど、そういうことか。)
原作SF作家フィリップ・K・ディックの偉大な才能に乾杯!!
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トータル・リコール
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映画の終盤、敵味方が入り乱れ、レジスタンスに業を煮やしたコーヘーゲンは大量のロボット軍を“フォール”に乗せて投入。コロニー全体の軍事制圧が指令されます。
クエイドは世界を救う事ができるのか?
果たしてこれは現実なのか?
今回のラストは誰にも予想がつきません。
「トータル・リコール 1990」とは違うとだけ言っておきましょう。
さあ、劇場へ急げ!!
/// end of the “cinemaアラカルト141「トータル・リコール」”///
(追伸)
岸波
前作へのオマージュが至るところに散りばめられ、「トータル・リコール」ファンにはたまらない一篇となっています。
もちろん、“三つの○ッパイのコールガール”も同じ台詞で登場。(今度は東洋系美女)
あの“顔割れおばさん”の名シーンもバージョンアップして登場します。
あ、そうそう…前作で顔割れおばさんを演じた女優さんが、同じ検問所のシーンで一般人として再登場。
20年前と同じ台詞を言う場面も必見でございます。 あはははは!
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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トータル・リコール
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