こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
僕たちの《奇跡》は、ここから始まる---。
今年のお正月映画は「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」以外、あまりパワーを感じなかったのは僕だけでしょうか。
で、「ロボG」もまだ来ていないし、時間つぶしでもいいやと観に行ったのがこの「リアル・スティール」。
ところがっ!
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リアル・スティール
(C)DreamWorks II Distribution Co. LLC
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なんですか、この頬を伝うものは!?
胸の中からこみ上げる、この熱いものはなんですか!?
というくらいハマってしまいました。ほとんどノーマークだったんですけどね。
というのも、近未来、人間の代わりにロボットが格闘技を行う時代がやってきて、それに親子の賞金稼ぎが挑戦してアメリカン・ドリームを掴む・・・くらいにしか考えていなかったからです。
SFにしては中途半端。アクションは凄いかもしれいけれど、所詮CGだし。人情モノの側面もあるみたいだけれど、それにしては仕掛けが荒唐無稽だし・・・。
ならば、この「リアル・スティール」のどんなところにハマったのか、さあ、お立会い!
映画の原作は、リチャード・マシスンが1956年に発表した「四角い墓場」という短編小説。
かつて、アメリカのTVドラマ“トワイライト・ゾーン”で「Steel」というタイトルで放映されたこともあります。
今回の「リアル・スティール」は、同じ原作を元にダン・ギルロイが執筆した脚本をドリーム・ワークスが85万ドルで購入。
スティーブン・スピルバーグとロバート・ゼメキスが製作総指揮を手がけ、「ナイト・ミュージアム」で一世風靡したショーン・レヴィンがメガホンを取るという豪華な陣営で制作されました。
映画の舞台は2020年の近未来。
ロボット技術が進化したことと、格闘技により刺激を求める人々の欲求とがあいまって、人間に代わりロボットがリングで死闘を繰り広げる時代になっています。
主人公のロボット使い、チャーリー・ケントンを演じるのは、『X-メン』の主役ウルヴァリン役でブレイクしたヒュー・ジャックマン。ハマリ役です。
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リアル・スティール
(C)DreamWorks II Distribution Co. LLC
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さて、映画のあらすじですが、主人公のチャーリーはどうしようもない中年ダメ親父。
かつては将来を嘱望されたボクサーだったのですが、ロボット格闘技の登場によって人間のボクサーたちはお払い箱になっています。
しかたなくチャーリーは、ロボットのプロモーターとして生きる術を求めるのですが、何せ貧乏で資金が乏しく、ロクなロボットが手に入りません。
したがって連戦連敗、借金はかさむ一方。
ロボット格闘技の違法賭博でも負けが込み、それを踏み倒して追われる身になっています。
そんな時に、突然舞い込んだ一本の電話。
彼に愛想を尽かして別れた元妻が亡くなり、赤ん坊の頃に見たきりの彼の息子マックス(ダコタ・ゴヨ:現在11歳)の親権について、父親である彼と元妻の妹とで話を付けなければならないことに。
息子を厄介者と思っているチャーリーと、子供がいないため是非にも彼をと願う資産家の元妻・妹。
そこでチャーリーは一計を案じます。
元妻・妹にはナイショで、その資産家の夫に対し「ウン十万ドルで親権を譲ってもいいぞ」と。←(おいっ!)
いやはや、息子まで売ってしまう・・・とんでもないダメ親父なのであります。
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リアル・スティール
(C)DreamWorks II
Distribution Co. LLC |
マル秘交渉はめでたく成立。しかし、そこで付帯条件がつくのです。
「夫婦でしばらく海外旅行をするので、しばしの間だけ息子を預かって欲しい」と。
内心いやいやではあるけれど、そこは大人の対応。(というか嘘つき)
「息子には、少しの間だけでも親らしいことをしてやりたいと伝えてくれ」
あらぁ・・・カッコつけですねぇ!
そんなことで裁判所の調停もまとまり、チャーリーは半額の前金を使って、昔のロボット・チャンプ(今はくず鉄同様)の『超悪男子』(写真上↑実名は別にある)を購入します。
ロボットも手に入ったところで、晴れて息子と11年ぶりの親子対面でございます。息子のマックス、開口一番・・・
「僕をお金で売ったね」
うわっと!! バレてますけど!!
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リアル・スティール
(C)DreamWorks II Distribution Co. LLC
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親子関係は最悪。『超悪男子』は試合に負けて、あっという間にスクラップに逆戻り。
仕方なくチャーリーは、息子を連れて「廃品ロボット捨て場」に忍び込み、使える部品を調達することに。
この時代、持ち去るのは違法行為らしい。
つまり、チャーリーは息子を泥棒の片棒を担がせようとしたワケで・・・ホトホト困った親父でございます。
ところが、息子マックスは足場の悪い崖から真っ逆さまに落下!
あわやというところで何かに引っかかり、一命を取り留めます。
よく見るとソレは、ずいぶん前に廃棄されて泥に埋もれていた旧型のスパーリング専用ロボット“ATOM”。
(アトムですよアトム。名前がいいじゃありませんか・・・ま、「超悪男子」よりはネ!)
マックスはATOMが「命の恩人」だということで、いやがるチャーリーを説得し、持ち帰って補修を始めるのでした。
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くず鉄ロボット ATOM
(C)DreamWorks II Distribution Co. LLC
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このATOMは、スパーリング・ロボットだけあって打たれ強いのですが、小さくて戦闘能力はからっきし。
それでも、唯一、特殊なプログラムが組み込んでありました。それは「人の動きを真似すること」。
マックスがブレイク・ダンスを踊ると、寸分たがわずその通りマネをする。
「こいつは使える。試合の前にお前とATOMに踊らせれば人気者になるぞ。」
そっちかよ! って・・お前は金儲けしか考えてないのかい?
ところが、その策が効を奏し、たちまち格闘場のヒーローになるのです。
しかも、フロックで試合に勝ってしまったからさあ大変。とりあえずのファイトマネー(大金)も転がり込む。
その試合を見ていたのが、全米チャンプ「ゼウス」を擁する女性プロモーター。(すごく悪役然としています、この人。)
「ゼウスのスパークリング用にATOMを買い取りたい」という意外な申し出を。
大金を掴めると狂喜乱舞する親父。絶対ATOMは手離さないと怒る息子。あらららら・・・。
やおら息子マックスはリングに駆け上がり、突然の声明を!
「ゼウスは必ずこのATOMが倒す!挑戦を受けろ!」
ええええー!!!
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リアル・スティール
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どうしようもないダメ親父ですが、実はそんなチャーリーを暖かく見つめている女性が居ます。
それは、チャーリーがまだ現役格闘家だった頃のジム・オーナーの娘ベイリー(エヴァンジェリン・リリー)です。
彼女は、息子マックスに「アナタのお父さん、今はあんなだけど、昔は本当にカッコよかったのよ」と。
彼女こそがこの映画のキー・ウーマンですね。
人生の敗残者となってもなお、チャーリーに再起させようと、陰になり日向になり尽くすのです。(ATOMの修理を行ったのも彼女。)
この人の演技を見ていると、「本当に心の底からチャーリーを愛している」ということが、自然な形で伝わってくるのです。(何て素晴らしい女優さん♪)
オーナーの娘ベリー
そしてもう一つ。
前座でフロック勝ちしただけのATOMが、そのまま全米チャンプ、無敵のゼウスに勝てるわけがありません。
プログラムのチューンナップをする機械に強い息子マックス。
“人まね”の機能を利用して、ATOMに本当のボクサーとしての動きを教え始めるチャーリー。
心が離れていた親子が協力して、一生懸命、夢を目指し始めるのです。
(ああ・・この辺を思い出すと、また胸が熱くなってきた・・)
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リアル・スティール
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また映像面では、「ロッキー」のような激しい格闘シーンをモーション・キャプチャーを駆使したCG技術で如何なく再現。
その動き、まるでロボット・・・いやCGとは思えない見事な出来栄えとなっています。
ロボット同士の格闘といえば「トランスフォーマー」が思い浮かびますが、あのような機械的な動きではなくあくまでも「ロッキー」なのですよ。う~む、リアル!
怒涛の反撃
そしてアメリカン・ドリーム!くず鉄にも三分の魂!
無敵の帝王ゼウスに、打たれても打たれても、倒されても倒されても立ち向かっていくのです。
これはまさに「あしたのジョー」!
一方的に攻め続けるゼウスですが、いくら倒しても立ち上がってくるATOMに恐怖感を覚え始める・・。
しかし、ATOMに致命的な危機が訪れます。
行動の指示を受ける「音声認識プログラム」が破壊され、制御不能となるのです。どっ、どーするんだぁ!?
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リアル・スティール
(C)DreamWorks II Distribution Co. LLC
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ボコボコにされるATOM・・・そこでマックスが叫ぶ。
「音声認識の指示をオフにするよ。後はお父さんの動きを真似させて動かすんだ!」
「ええー、オレが戦うのか!?」
おっとっとー!!ATOMを通して、場外のチャーリーが帝王ゼウスと戦うという究極の秘策。
実は、ここでの注目演技は、ATOMでもチャーリーでもマックスでもありません。そう・・・ベイリーです。
僕を泣かせたのは、他でもない彼女でした。
さてベイリーはどんな行動を取るのか?はたまたダメ親父は名誉挽回ができるのか?まだまだサスペンスは満載でございます。
そんなハラハラドキドキの映画でありながら、見終わった後にはしみじみとした感動を与えてくれる秀作。
強くオススメでございます。(きっぱり)
/// end of the “cinemaアラカルト135 「リアル・スティール」”///
(追伸)
岸波
昔、「カルフォルニア・ドールズ」という女子プロレス映画がありまして、その時と同じ感動が蘇りました。
(ストーリー的にも近いものがあります。)
また、この映画の結末は、予定調和で「ATOMが勝つ」と思っている貴方・・・そう、そこのアナタ。
そんな単純なシナリオではないのですよ。ふっふっふ。
さすがにドリーム・ワークスが85万ドルを投じてシナリオを買収し、スピルバーグに総指揮を任せただけのストーリー・テリングになっています。
これ以上は言えませんが、少なくとも“それ以上のカタルシス”が得られる内容であることをお約束いたしましょう。
訓練中…
また、アメリカでの興行収入は、初日850万ドル、初週末3日間で2,730万ドルを売り上げて初登場1位となりましたが、Rotten Tomatoesのレビューでは58%の支持率で平均値は10点満点中5.8点と厳しい評価が出ています。
この結果は想像に難くありません。
「リアル・スティール」は、近未来に設定した「SF映画」なのですが、本来、そんな設定は無用の純然たる「人間・絆ストーリー」なのです。こればかりは、観てみなくては分かりません。
つまり、SFやロボット・アクションを期待して観に行ったであろう多くのファンにとっては、望む内容ではないのです。
逆に「人間ドラマ」好きな映画ファンは、この映画を選んで観に行くことは少ないでしょう。
マーケッティング的に難しい設定ではなかったでしょうか。
しかし、分かる人には分かる。
このラストシーンに僕は喝采を叫びたいですね。あはははは!
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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僕たちの奇跡はここから始まる
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