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「街の詩」by Scribbling Midi
by 岸波(葉羽)【配信2012.1.27】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 どんなに時代が変わっても、夢があるから、前を向ける。

 満を持して遂に公開されました「ALWAYS三丁目の夕日’64」!

 すぐにも行かねばと、僕たちは早速初日、映画館に足を運んだのですが・・・

ええ~3D!?

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 ハード・アクションやSF大作なら分かるけれど、何故にハートウォーミング・コメディで3D?

 3D眼鏡を持参し忘れたので、やむなく新品を購入。

ケイコは携帯していました。

 で、映画が始まりますと昭和の東京の風景が。東京タワーのてっぺんから真下を俯瞰。

 をををを~タワーの“切っ先”が目の前1メートルくらいのところに見えるではありませんか!

思わず、触ろうと手を伸ばす。

 こりゃあ今回の第三作も冒頭から期待できそうな予感が!!!

 

 本編は、ビッグコミック連載中の西岸良平の漫画「三丁目の夕日」を原作として、2005年11月5日にスタートした映画「ALWAYS 三丁目の夕日」のシリーズ第三作。

 翌年11月3日には、第一作から4ヵ月経過した春の「三丁目」が描かれました。

 一作目では、これから高度成長を迎える日本のシンボルとして建設が始まった東京タワーが描かれ、第二作の冒頭では、昭和34年(1959年)に完成した東京タワーをゴジラが破壊するという衝(笑)撃的シーンからスタート。

 そして、第二作から約5年後の昭和39年(1964年)を描く「ALWAYS三丁目の夕日’64」のシンボルは「東京オリンピック」でございます。

 いや~あの頃と言えば、日本中が嬉々としていましたね~。

 太平洋戦争から20年を経過し、至るところで進むインフラ整備。

 若大将加山雄三が登場し、クレイジー・キャッツ植木等が主演する“無責任シリーズ”が一世を風靡しました。うんうん・・(遠い目)

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 メガホンをとる山崎貴監督以下、吉岡秀隆、堤真一、薬師丸ひろ子、小雪、堀北真希、三浦友和、須賀健太といった三丁目の主要な面々も勢ぞろい。

 今回は、キーマンとして森山未來や大森南朋などのニューフェイスも加わりました。

 1964年の日本、東京オリンピックの開催に向けて国中が活気付き、高層ビルや高速道路が建設ラッシュ。

 そんな中で、東京下町の夕日町三丁目(当時の港区愛宕町界隈が想定されているそうであります)、では三つの事件が同時並行しています。

 その一つは、近作で晴れて夫婦となった茶川龍之介(吉岡秀隆)とヒロミ(小雪)の妊娠。大きなオカナを抱えたヒロミが出産するまでのドタバタが展開します。

 もう一つが、美しく成長した鈴木モータースの住み込み修理工、ロクちゃん(堀北真希)の恋物語。

 そして最後が、謎の新人作家緑沼アキラの小説「ヴィールス」に人気を奪われつつある茶川の葛藤です。

 茶川はヒロミと結婚後、駄菓子屋茶川商店の一部を改装してヒロミの居酒屋「新やまふじ」を開店し、高校一年生になった養子の吉行淳之介(須賀健太)と三人で仲良く暮らしています。

 一時は(前作「ALWAYS続・三丁目の夕日」)で芥川賞の候補にまでなるも結局果たせず、「冒険少年ブック」に「銀河少年ミノル」に少年小説を連載している茶川。

 ところが、同じ冒険少年ブックで新人の緑沼ミノルが「ヴィールス」の連載を始めるや爆発的な人気を博し、“看板作家”としてのポジションを脅かされています。

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 一方、息子の淳之介は茶川のような小説家にあこがれ、茶川に隠れて小説を書き始めているのです。

 そんな中で届いた一通の電報・・・「チチキトク スグカエレ」

 しかし、茶川は故郷に帰ろうとはしません。

 何故なら茶川は、かつて小説家を目指すことに大反対を受け、当の父親から勘当された身の上だったのです。

 その危急の電報を発見する小雪・・・「アナタ、帰ってあげて。」

「あんなオヤジのことなんかどうでもいいんだよ!」

 ・・と言い放つも、ただならぬ小雪の気配にギョッとなる。

「わたしは親の死に目に間に合わなかったのよ。今行かないと一生後悔するわ。」

 ということで、小雪の言葉に背中を押され、結局、単身で里帰りすることになるのですが、実家では瀕死の父親(米倉斉加年)が分家の叔母(高畑淳子)に介抱されています。

 しかし父親は、茶川の顔を見るなり「お前は誰だ!ここはお前のようなヤツが来る場所じゃない。とっとと帰れ!」と恫喝するのです。

 捨て台詞を残して帰途に着く茶川・・・親子の断絶の壁は厚かったようです。

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 一方、鈴木モータースのロクちゃん(堀北真希)は火傷の診察を受けた医師菊池孝太郎(森山未來)に一目惚れ。

 毎朝、一張羅にドレスアップして、通勤途中の菊池とすれ違うのを楽しみにしています。

純情なので声をかけたりできない。

 そうこうするうち、たまたま菊池の車が鈴木モータースの近所でエンスト。

 ソレと知らぬロクちゃんが作業服のままで現場に駆けつけると、おっと依頼主は憧れの人ではありませんか!

 そんなキッカケで始まった二人の交際。

 世話を焼きたがりのタバコ屋のおばさん(もたいまさこ)がこれを見つけ、菊池医師の病院に行ってアレコレ聞いてみると・・・・!?

 看護師が言うには、「菊池医師はプレーボーイで誰とでも仲良くしたがる。盛り場の飲み屋街にも隠れてしょっちゅう出かけている。暴力団との付合いがあるという噂も」と散々の評判。

 あらららら、ロクちゃんの純情はどうなっちゃうのでしょうか・・!

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 東京下町の風景をまるごと再現したCGやセットは圧巻です。

ケイコが「このCGで予算の半分くらい使ったんじゃない?」というコンピュータ・シミュレーション画像は、東京工科大学メディア学部の研究室が協力。

 三丁目の住宅、商店、街並みは館林市大西飛行場などに巨大なオープンセットを構築したそうです。

 そして、「いったいこんなモノどうやって集めたんだ!?」と驚く、当時の三輪自動車ミゼット、家電、店内の商品等の殆どは、全国から集められた本物なのだそうです!

 また、僕が第一作「ALWAYS 三丁目の夕日」について書いた2005年のcinemaアラカルトには、

「みな恐ろしいほど役柄がハマっています。」

「この映画に出演した俳優たちの誰もにとって、この作品は代表作になると思います。(きっぱり)」

「日本映画の新しい可能性を拓く金字塔になるのではないでしょうか」~と書きました。

 そして、その結果が以下です。

第29回日本アカデミー賞(2006年3月3日発表)
最優秀作品賞:「ALWAYS 三丁目の夕日」
最優秀監督賞:山崎貴
最優秀脚本賞:山崎貴・古沢良太
最優秀主演男優賞:吉岡秀隆
優秀主演女優賞:小雪
最優秀助演男優賞:堤真一
最優秀助演女優賞:薬師丸ひろ子
最優秀音楽賞:佐藤直紀
最優秀撮影賞:柴崎幸三
最優秀照明賞:水野研一
最優秀美術賞:上條安里
最優秀録音賞:鶴巻仁
最優秀編集賞:宮島竜治
新人俳(女)優賞:堀北真希

第79回キネマ旬報ベスト・テン(2006年2月11日)
読者選出日本映画ベスト・テン第1位
委員選出日本映画ベスト・テン第2位
日本映画助演男優賞:堤真一
日本映画助演女優賞:薬師丸ひろ子
読者選出日本映画監督賞:山崎貴

 日本アカデミー賞を全部門(13部門)で受賞(13部門のうち12部門で最優秀賞を獲得)、そのほか「報知映画賞」・「AMDアワード」・「毎日映画コンクール」・「デジタルコンテンツグランプリ」・「ブルーリボン賞」・「エランドール賞」など数々の映画賞を総ナメしたのです。

 公開後の2007年4月に日中首脳会談のために安倍晋三総理(当時)を訪れた中華人民共和国の温家宝首相は、会談の際、安倍総理に「ALWAYS 三丁目の夕日を見た」と述べました。

 うん、僕の目はフシアナではなかった・・。

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 もはや、このシリーズのキャストはいずれも名優と呼んで差し支えないでしょうが、中でも鈴木モータースの社長役の堤真一の怪演(?)は圧巻です。

 直情型で情に厚く、喜怒哀楽を大きな演技で表現する。

 これがあの「容疑者Xの献身」の温厚な殺人者や「SP野望篇」のクールな捜査官と同一人物とはとても思えません。

 まさに“ザ・アクター”・・・神業の演技でございます。

 そして、ロクちゃん役の堀北真希・・・なんと美しい女性に成長したことか。

 1988年生まれですので、第一作時点では17歳くらいでしょうか。

 今どきの日本映画界、美女は掃いて捨てるほどおりますけれど、こんなにもピュアで一途な田舎娘を演じられる演技派はそうそういるものではありません。

 「もしや田舎育ち?」と思って調べましたら、東京都清瀬市出身とある。

 「え!じゃ、あの“方言の田舎娘”は地じゃなくて演技!?」・・・と驚嘆いたしました。

 こういうピュアな演技派・・・僕の青春時代に、かつて一人だけおりました。

 そう、それこそ鈴木モータースの母親(鈴木トモエ)役の薬師丸ひろ子。

もっと昔の世代なら吉永小百合でしょうか。

 あ~守ってあげたい。ずっとケピュアなままいてほしい。・・・そんな胸キュンとさせる演技でした。

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 次に、今回の“泣き所”を特別解説でございます。

 茶川の父親はほどなく亡くなってしまうのですが、茶川とヒロミはその葬儀のため再び実家へ。

「あんなオヤジの葬式なんて、さっさと焼いてさっさと済ましたい」とうそぶく茶川に、叔母の奈津子(高畑淳子)が告げる真実。

「あなたのお父さんは、ずっとあなたの大ファンだったのよ」

 驚愕する茶川。・・・ならば「何故」?

 小説家など生半可な覚悟でなれるはずがないと考えた父親は、息子の夢を叶うよう不退転の決意をさせるために勘当して退路を断ったのでした。

 亡父の書斎に入って目を疑う茶川。そこには彼が連載した冒険少年ブックの全ナンバーが揃えてある。

 そしてその一冊一冊に、筆字で励ましや応援の言葉、賞賛のメモが挟まれているのでした。

 父の真実を知って号泣する茶川。

 あ・・・書いていてシーンがよみがえり、落涙してしまいました。

 しかぁしっ!

 このエピソードは、ラスト・シーンへ向けた伏線に過ぎなかったのです。

これ以上は書けません…。

ALWAYS三丁目の夕日'64

(C)2012 「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」製作委員会

 公開初日は悪天候であったにもかかわらず、週末2日間で観客動員数42万1274人、興収5億5566万3750円を記録したそうです。

 公開日が祝日という好条件だった前作「ALWAYS 続・三丁目の夕日」(興収45.6億円)と対比しても100.9%と上回る数字。

 また、シリーズ初の3D上映に加えて前作よりも91スクリーン増の拡大公開であるため、興収50億円超えも想定できる絶好調のスタートを切りました。

 このシリーズが描く昭和30年代の古き良き日本・・・いいえ、これこそ日本の真心・日本の心意気の原点。

 けっして失ってはならない日本人の“絆”そのものでしょう。

 観れば必ず人にも勧めたくなる映画・・・是非、貴方自身の目で。(きっぱり)

 

/// end of the “cinemaアラカルト136 「ALWAYS三丁目の夕日’64」”///

 

(追伸)

岸波

 今回の演技で改めて大注目の堀北真希ちゃん。

 山崎貴監督の言によれば、『見た目はのんびりとした性格に見えるが、クランクインになる前からセリフや方言、役柄の性格を完璧に覚え、当日できなかった課題については家でしっかり練習して次の日にはクリアできるようにしてくるほどのストイックな性格です。だから追い詰めれば追い詰めるほど本人には無い性格が開花してくるので将来が楽しみだ』~だそうです。

 ただの天才じゃない。努力の人なんだな。

『努力できる才能を人は天才と呼ぶ』…まさに至言であります。

 また、天才女優と言えばもう一人、「SPACE BATTLESHIP ヤマト(2010年)」や「アンダルシア 女神の報復(2011年)」の黒木メイサちゃん。

 なんと二人は同じ事務所で、年齢も一緒の親友同士だそうです。

14歳のとき事務所へ入った際も寮の同じ部屋に同居。見た目は黒木メイサがお姉さんタイプの性格で堀北真希は妹タイプに見えるが、本当の性格は逆であるとメイサ本人が述べています。

 そう言えば二人は、「生徒諸君」などドラマでの共演も多く、写真集「missmatch―堀北真希×黒木メイサ×シノヤマキシン」など一緒に出しているのですね。

 また、「ALWAYS三丁目の夕日’64」の試写会舞台挨拶には、映画のワンシーンで“東洋の魔女”として東京オリンピックの女子バレーを席捲したチーム・メンバーの4人(内田祐子、佐々木節子、田村洋子、丸山サタ)が登場しました。

 小児科医・宅間史郎役の三浦友和は、同じ舞台挨拶で「なでしこよりも何倍もうれしい」と。

 いや~そりゃそうだろう! (今、何歳なんだ?)あはははは!

 

 では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again ! 

堀北真紀

堀北真紀

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト137” coming soon!

 

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