こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
何かあったら電話してくれ。
先月下旬、福島に帰った際に、ちょうど上映中だった「探偵はBARにいる」、ケイコとともに観てまいりました。
監督の橋本を始めとして、東映・テレビ朝日製作のテレビドラマシリーズ「相棒」の主要なスタッフが結集して制作したこの映画、果たしてどんな新しいテイストのミステリーを作りあげたのか?
と、思いましたら、「え?ハードボイルド!?」
…うん。逆にこれって新しいかも♪
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探偵はBARにいる
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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原作は日本推理作家協会賞受賞に輝く東直己の小説「ススキノ探偵シリーズ」の第二作「バーにかかってきた電話」。
このシリーズの第一作目は、このタイトル名と同じ「探偵はバーにいる」ですが、そちらはこの映画の原作ではありません。
あえてそのタイトルだけ持ってきた…はい、このタイトルの方がハードボイルドらしいですね。
主演は、北海道が生んだ偉大なる“ローカル・タレント(本人談)”とウチのサオリの大好きな松田龍平。
携帯電話を持たない主義の私立探偵とその相棒兼運転手(実は空手の師範代もやっている農学部の助手)は、どんな事件に巻き込まれたのでしょうか?
ということで、いざ!
「携帯電話に束縛されるのはイヤだ」という主義で、電話を持たない私立探偵の「オレ」(大泉洋)は、いつもBAR「ケラーオオハタ」の電話番号が入った名刺を持ち歩いています。
ということで、彼への連絡手段はもっぱらBARの固定電話。いつもその前に陣取って相棒兼運転手の高田(松田龍平)と水割りを飲んだりオセロに興じる毎日。
冒頭、そんな探偵が路上で数人のチンピラに絡まれているシーン。
ゲイ趣味のある友人から依頼を受け、男性とのベッドシーンを隠し撮りされた写真とネガを取り戻すために、札に見せかけた新聞紙の束でごまかそうとしたのがバレての刃傷沙汰。(セコイ)
フルボッコにされているところに、助手兼運転手の高田が助けに来る。
この農学部のグータラ助手は、空手の師範代も勤めているくらいで、やたらと強い。
二人で何とか危機を脱出し、ネガも取り戻して逃げ出します。
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私立探偵のオレ(大泉洋)
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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ちょうどその頃、近くのホテルでは霧島グループの総帥である霧島敏夫(西田敏行)のパーティが開かれていました。
ステージでゲストの女性歌手が往年の名曲「時計」を朗々と歌い上げると、霧島は「愛してるよ♪」と。
でも女性歌手は、「ありがと。でもアナタが本当に愛してるのはあの人でしょ?」。
“あの人”と呼ばれたのは、クラブを経営するママの沙織(小雪)。
余りにも歳が離れてるようにも思うが、実はこのパーティは二人の婚約披露も兼ねていたのです。
パーティが終わって帰路に着いた霧島は、目の前で若い女性が拉致される現場に遭遇します。
正義感の強い彼は単身で立ち向かいますが、鉄棒などを持った男たちに逆襲され、無残な死を迎えてしまうのでした。
その時、車の中で現場を悠然と見ている謎の女性・・・拉致された女性なのか別の女性なのかは判別できません。
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資産家の霧島(西田敏行)
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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その事件から一年後。
場面変わって、雪の中に埋められた男が、九死に一生の脱出を図るシーン。
おっとコレは探偵の「オレ」だ!? 何でこんなことに?
‥‥‥前の晩、いつものようにBAR「ケラーオオハタ」で呑んでいた探偵。
と、そこへ電話が鳴り、コンドウキョウコと名乗る女から謎の依頼を受けます。
「弁護士の南に、去年の2月5日、カトウはどこにいたかを聞いて欲しい」と。
本人の素性も分からなければ依頼の理由も、ましてや「カトウ」なる人物が誰なのかも告げない。
いつもなら危険を察知する動物的勘で即座に断るところ、依頼金は既に振込み済みだとのこと。
いや、それよりも何よりもミステリアスなコンドウキョウコに興味がわき、オッケーしてしまう。
(“一目ぼれ”とも言う。…“見て”ないけど。)↑
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探偵はBARにいる
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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翌日、唯一情報を与えられた南の弁護士事務所を訪れ、「2月5日のカトウの居場所」を尋ねると、多少動揺しながらも「そんな男は知らん」と。
これで捜査は完了。後は、BARにかかってくるはずのコンドウキョウコに顛末を報告するだけ。
と思ったのもつかの間、帰路で数人の男たちに拉致されて半殺しに。
手を縛られたままで雪に埋められてしまい、それからしばらくして冒頭のシーンへ戻るのでした。
…再びBARにかかってきた電話で、「命まで狙われた」とコンドウキョウコに強く抗議する探偵でしたが、逆に追加依頼を受けて渋々引き受ける羽目に。
ほとほとこの大泉探偵は人がいいのです。
依頼は依頼として、自分をこんな目に合わせた当の男たちに何とか復讐してやろうと独自の捜査も開始。
敵のアジトを突き止めた辺りから、どんどん事件の核心に近づき、その中で、一年前の霧島(西田)殺害事件の謎やその婚約者であった沙織(小雪)とも出会うことになります。
霧島周囲で起きた二つの殺人事件に突き当たり、その関連を追ううちに明らかとなる衝撃の事実。
コンドウキョウコとは、既にxxx(ナイショ)xxxだったのです。
彼女の狙いは何なのか? そして本当の敵はいったいどこに…?
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婚約者の沙織(小雪)
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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主演の探偵役を演じる大泉洋~彼は北海道在住で、CREATIVE OFFICE CUEや演劇ユニットTEAM NACSなどに所属して活躍する北海道のスター。
1996年から北海道テレビの深夜番組『水曜どうでしょう』に出演して最高視聴率18.6%(深夜枠なのに!)を記録するなどブレイクし、自らを“ローカル・タレント”と称しています。
ただ、よく知らない俳優さんだったし余り好きなタイプでもなかったのですが、この映画を見てから本人を見直しました。
電話の向こうのコンドウキョウコに次第に惹かれていく心情をとてもよく表現していましたし、かなりの演技派です。
依頼者コンドウキョウコの身の安全を図るための文字通り捨て身の行動、“敵”と対峙しての激白は真に迫るものがありました。
ストーリーの進行上、またキャスティングからも小雪演じる沙織が真の依頼人コンドウキョウコと目されますが、この映画、そんな簡単な筋立てではありません。
探偵自身もそう考えて沙織を直撃すると、むしろ沙織は巨悪の側にいる可能性が明らかになってきます。
最後まで明かされない依頼人コンドウキョウコの謎。
彼女が破滅に向かっていることを知り、それを助けることができないと分かった探偵の慟哭シーンは圧巻です。
ここの演技でズキュンとやられましたね。
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探偵はBARにいる
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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また、ハードボイルドというスタイルが古めかしくも新鮮に感じました。
「ハード・ボイルド(固茹で)」という、感情を排した簡潔な文体の呼称はヘミング・ウェイ(「老人と海」など)から始まったそうですが、その後にアメリカ探偵ミステリーで使われる言葉となりました。
レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」や「さむけ」、ロス・マクドナルド、ダシール・ハメットあたりが代表格でしょうか。
そう・・・『強くなければ生きてはいけない。優しくなければ生きる資格がない』は、チャンドラーの「プレイバック」で、探偵フィリップ・マーロウが吐く名台詞です。
ハードボイルド小説の探偵たちは、たいていアル中で美女に目がなくだらしないけれど、ここ一番ではびしっと粋な台詞をキメてくれるのです。
そう…“探偵はBARにいる”そのまんまですね。
原作者の東直己は、古き良きハードボイルド小説のオマージュとして、こういう設定をしたのではないでしょうか。
これまでの日本映画では…そうですね、松田優作主演の『蘇える金狼』(原作:大藪春彦)あたりが代表的ハードボイルドかな?
おっと! 探偵の相棒役、松田龍平のお父さんじゃありませんか。
親子二代か。あはは!
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相棒兼運転手 高田(松田龍平)
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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この映画では脇役たちにも注目!
ゲイ趣味のある友人役をやっている田口トモロヲ~そう、NHK「プロジェクトX」のナレーションを勤めた声優さん。
今回の映画ではあの美声を封印して、バカだけど憎めない、実に味のあるゲイ役を演じてくれました。
(それにしてもこの映画、何故かゲイがたくさん登場しています。)
もう一人が、悪漢たちのリーダー「カトウ」を演じている高嶋政伸~高嶋兄弟のお兄さんですね。
最初、誰だか分かりませんでした…が、悪人として物凄い迫力があります。
ニヤニヤしながら平気で人を殺せる、そんな異常性格を秘めているよう。
目が正気ではないのです。コワイ。
こういう役を不気味に演じられる役者さんてすごいと思います。
だけど、最近そういう異常性格の悪人役ってのが多いような気がします。
ハマリ過ぎて“そればっかり”とならないよう、祈っています。(元々好きな俳優さんだったので)
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暴力組織のリーダー:カトウ(右)(高嶋政伸)
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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映画の最初の方、霧島(西田敏行)のパーティで歌姫を務めた女性の歌唱力が素晴らしかったのが印象に残りました。
結構お歳を召していて、どこかで見たような気もしたのですが、どうしても思い出せません。
そこで、「もしや、映画のラストに流れるキャストにもクレジットされていないか?」と、じっと見ていました。
すると‥‥‥カルメン・マキ! あっこれだぁ!!
そっか、40数年前(1969年)に「時には母のない子のように」を大ヒットさせたあの人だ!~と感激した次第。
歌ったのは岸洋子の名曲「時計」。 (いいなぁ、この歌も。)
大人のポピュラー曲をしっとりと、そして時には朗々と歌い上げる歌唱力。
ここのシーンだけでも一見の価値がありました。
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探偵はBARにいる
(東 直己)
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「探偵はBARにいる」は、全国251スクリーンで公開され、初日2日間で興収1億7,021万6,900円、動員12万8,800人を記録し、映画観客動員ランキング(興行通信社調べ)で初登場1位となりました。
特に、北海道エリアでの盛り上がりはかなりのものでした。
さすが“ロカール・タレント”! (地域に愛されるタレントという意味で)
今回のヒットを受けて、続編の製作が決定したとのことです。
うん、次も必ず見るぞ!!
/// end of the “cinemaアラカルト131 「探偵はBARにいる」”///
(追伸)
岸波
映画の完成披露試写会では、主演の大泉洋をはじめ松田龍平、小雪、橋本一監督が舞台挨拶に立ちました。
大泉に対する小雪評~「現場でもお人柄が出ていて、共演者たちにも、いちスタッフのような態度で…」というところで大泉は、「それは細やかな気遣いという意味ですよね? 僕、主演として現場にいたわけですが」とツッコみ、場内は爆笑。
二人で撮ってもらった写真については、「小雪さんのオーラがすごすぎて、一緒に写真を撮ってもらったのだが、大女優とみっともないファンのおっさんみたいだった」と。
さらに、「あまりにもひどいのでもう1枚お願いしたら、今度は大女優とテレビ局の編成部長みたいだった」との弁。
うーん、大泉洋ってステキな俳優さんだぁ!
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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探偵はBARにいる
(C)2011「探偵はBARにいる」製作委員会
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