こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
両さんが日本の元気を守る。
ご存知、「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~」…って長すぎるよ、このタイトル。(以下「こち亀ザムービー」)
「トランスフォーマー」観たさに、『繋がってるから両方見ようよ』」とケイコを説得し、ついでに観て来たこの映画、期待に反していい映画だったのは「葉羽のコーヒーブレイク」に書いたとおり。
でも同時にこうも書きました。「しかしまた、それだけ映画として「佳作」でありながら、おそらく興行的には失敗するだろうということも予測されました。」と…。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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その『悪い予想』がドンピシャ当たり、「こち亀ザムービー」が大惨敗でございます。
東スポの記事によれば・・・『目を覆うような数字ですよ。初週の売り上げが1億円足らずだというんですから。宣伝や広告に掛けた費用を考えると、10億円以上の赤字でしょうね」とある映画関係者はため息交じりにその散々な実情を指摘する。
』 あらららら・・。
ジャニーズの映画はよくコケるというのは既に業界の定説になっているようでありまが、今回のコケ方はハンパではありません。
興行収入は毎週8ガケで落ちると言われるので、初週が1億円なら次週は8千万というように低減して行くでしょう。
さらに、今回はあまりの不人気。途中打ち切りによって上映館半減も懸念されるとのこと。
ならば、それほどに酷い映画であったのか。
いえいえ、とんでもありません。
ならば、何故こんなに不人気なのか、その辺りを含めて解説いたしましょう。
秋本治原作の「こちら葛飾区亀有公園前派出所」は、1976年から『週刊少年ジャンプ』に連載され、今年2011年で連載35周年目を迎えます。
この長期連載中に一度も休載せず、「少年誌の最長連載記録」のギネス記録の保持、更新を継続中。
コミックスは2011年8月現在で176巻(!)まで発行され、発行部数は累計1億4200万部という怪物コミックなのです。
2009年8月1日から香取慎吾の主演でTBS土曜8時枠の連続ドラマで実写テレビ・ストーリーが放送。
今回の映画は、ドラマと同じ主要キャスティングにより撮影されました。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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映画の冒頭、慎吾君扮する両津勘吉が自転車にのって川原の堤防をやってきます。
立ち止まり遠くの勝どき橋を望んだところで回想シーン。
小学校の勘吉(これが実にそっくりな少年!)が、車に乗って去っていく同級生の少女を走って追いかけながら、「本当なんだよ、うそじゃねー!勝どき橋はホントにパカッて割れるんだよー!」と。
「勘吉のうそつきー!」と少女を載せた車は去っていく…。
シーンが戻って現代。
お笑いコントがいくつかあった後、両津は一人ぼっちで淋しそうに下校する少女に出会います。
何となく心配になり、いろいろと世話を焼く両津。
その少女を送っていくと、その母親沢村桃子(深田恭子)とばったり。両津と母親は顔を見合わせて「ええー!」。
…ご明察のとおり、その母親桃子は、子供の頃に一週間だけ同級生だったあの少女でした。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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実は、彼女は旅芸人一座の座長の娘だったため、風の吹くまま気の向くままの全国巡業に合わせて転校を繰り返していたのです。
だから、どこへ行っても友達の輪に入れない孤独な存在。
そんな(子供の頃の)彼女にただ一人、勘吉だけは気さくに話しかけてあげたのです。
「アナタは“嘘つき勘吉”ってみんなに言われてるよ」と冗談で言う桃子。
「ええー誰だ!お前か、お前か?」と聞いて回り、自分で“嘘つき勘吉”の名を広げてしまう勘吉。
そんな勘吉が「勝どき橋は、船が通るとき真ん中からこうパカーッと割れるんだ」と言って一緒に見に行く二人。でも橋は割れない。
「勘吉の嘘つきー!」…と、そんなエピソードがあったのです。
現在は、旅芸人座長の両親が死んで桃子が自分で座長を勤め、その一人娘ユイが昔の桃子のような境遇にあったのです。
←ロケ地となった実際の交番
話を聞いてみると、どうやら父親は昔失踪したきりで、シングルマザーで子育てをしていると。
「ユイには父親が必要なんじゃないか。ナンならこのオレでも。」と勘吉。
じっと目を見つめ返されて、勝手にOKと早合点します。
家に帰って両親に早速報告・・・「オレもそろそろ身を固めるかもしれないぞ」。
両親は狂喜乱舞。
「いいのか、血の繋がってない娘も一緒なんだぞ。」
「娘まで一緒にできて、その子がお前の血を引いてないなんて、こんなにうれしいことがあるか。」
(ここ、僕的には一番ウケたセリフです。あはははは!)
~と、人情ドラマの進行でストーリーは進むのですが、突然、誘拐事件が発生。
しかも、誘拐されたのは警察庁長官の孫娘。
この辺からいきなりシリアスなクライム・ストーリーへと変化します。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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事がことだけに、警察はマル秘の大規模特捜本部を設置。
身代金を要求する犯人の携帯電波が発信された勝どき橋周辺は、厳重な警戒態勢が敷かれるのでした。
…出だしから誘拐事件発生までは、どちらかというと「寅さん」テイスト。そこから後は「踊る大走査線」テイストに。
監督が両者のテイストは相容れないと考えたようで、ここから映画の空気はガラリと変わります。
しかしこうなると、水色のストライプの制服を着ている中川(もこみち)とショッキング・ピンクの制服を着た麗子(香里奈)の存在が浮きまくりです。
麗子(香里奈)
そもそもこの映画、原作の空気はほとんど反映されていません。(一部のコントはあるものの)
端的に言うなら、「こち亀」の主要登場人物のキャラ設定を用いて、「寅さん」と「踊る大走査線」を合わせたオリジナル・ストーリーを作ったということです。
なので、コミック「こち亀」の世界観を大切にする人からは、色々な意見(異見)もありそうです。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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しかし! …しかしです。
原作の空気はあくまでもコミックであって成立するもの。
「こち亀」ファンならば、敢えてドラマや映画にする必要など誰も感じないでしょう。
長編のストーリー・コミックならともかく、「こち亀」のような(ほぼ)一話完結の短編コントは映画化になじまないのです。
(実写の「サザエさん」を考えてください。昔作られて実際失敗しました。)
したがって、日本の国民的コミックの一つであるにしても、1億4200万部を購入したコミックのファンはマーケットにならないのです。
だから、原作の設定を用い、別テイストの映画にしたこと自体は間違いでありません。
でも…欲張りすぎましたね。
「こち亀」と「寅さん」と「踊る」のうち二つだけなら、なんとかまとまったのじゃないでしょうか。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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“ごちゃまぜ”の具体的な例を挙げれば、誘拐されたのが実は警視庁長官の孫娘ではなく一緒にいた桃子の娘ユイであったことが判明し、捜査本部長は大捜査本部を解散し、通常の誘拐事件の規模(1/5)に縮小しようとします。
慌てたのは母親の桃子や勘吉。
それを見た大富豪警察官の中川(もこみち)が、会社に電話をかけて言います。
「あのね、日本のマスコミを全部買い占めたら幾らになるの?」
…全マスコミを使って、事件の経過を公けにするぞという脅しなのですが、これって反則でしょう。
ここまでのシリアスで息詰まるサスペンスが、その一言で台無しになるのです。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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しかし、「寅さんテイスト」の部分はとても泣かせるのです。
勘吉の桃子に対する気持ちは本物。自分の気持ちよりも桃子の本当の幸せが何であるかいつも考えている。
そのためには、敢えて自分がピエロになって桃子の気持ちを後押しする方を選んでしまう。
また、凶悪犯罪を題材にしながら、“本当に悪い人間”は(真犯人も含めて)一人も登場しない。
真犯人と対峙した勘吉が泣きながら説得します。
「やめろよ、似合わねーんだよぉ!」
…このシーンは慎吾君迫真の演技。客席からもすすり泣きが。
さらに芸達者たちを集めた重厚なキャスティング。
夏八木勲(城山警察庁長官)、平田満(横田泰三)、沢村一樹(黒木警視正)、 谷原章介(島崎光男)、ラサール石井(両津銀次)らが渾身の演技を。
もう「お笑い映画」の域を越えています。
だから「大筋」としては素晴らしい映画に仕上がっているのです。
なぜ、こんな結果になってしまったのか?
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(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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ずばり、インテグレーター(統括者)が不在だったのです。
この映画には、周囲に三つの立場の人たちがいたはずです。
一人は原作者の秋本治氏。彼は、原作の「こち亀」の世界をこよなく愛する人。
もう一つはジャニーズ事務所。彼らは慎吾君の「こち亀」をシリーズ化し、新しい「寅さん」にしようとしていました。
三番目はスポンサー陣。大作主義でなければ客を呼べないと考え、大掛かりな誘拐テロ事件を持って来ました。
こういう人たちが外野にいて、映画を一本、筋の通ったものにするためには強力なリーダーシップが必要です。
誰にもいい顔をするわけにはいきません。入れるべき要望を入れ、捨てるべきは断固断る~そういう権限を持った中心人物が不在だったに違いありません。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
(C)秋本治・アトリエびーだま/集英社 (C)2011「こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE」製作委員会
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ということで、興行的にはおそらく挽回不可能な「こち亀ザムービー」。
それにも関わらず、泣き所は満載でした。
そして、深きょんさんを見直しました。
これまで高ビーな役柄が多かった彼女ですが、今回の桃子役では内面に葛藤を持った女心を見事に演じています。
女優さんなんだなぁ・・と痛感しました。
だから、細かいことは抜きにして僕はお勧めです。
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こちら葛飾区亀有公園前派出所 THE MOVIE ~勝どき橋を封鎖せよ!~
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事件が全て解決した後、功労者の両津は警察庁から褒美を貰うことに。
しばし考えた両津は「賞与」を断り、「ある許可」を求めます。
一方、桃子とユイ親娘は、新たな巡業のために旅立ち、勝どき橋に差し掛かります。
すると‥‥‥!?
/// end of the “cinemaアラカルト130 「こち亀THE MOVIE」”///
(追伸)
岸波
まあ、そういうことで、慎吾ファンは「こち亀がいらない」(知らない)、こち亀ファンは「映画化いらない」で誰のための映画だか分からなくなりました。
またスポンサーはスポンサーで、客寄せのために大作化し、逆に一番の見所である人情話をスポイルしてしまうという残念な結果になりました。
でも、それだけではありますまい。
ジャニーズは、新聞、週刊誌やネットに所属タレントの写真を最小限しか掲出させません。
(※「右背景」→に用いたポスター写真のみ。)
そのせいで、どこのサイトも「こち亀」の積極的なPRを取り上げていないのです。
取り上げているのは、むしろ「悪評」に関する掲示板サイトのテキストくらいのものです。
タレントの写真を公開させないというのは、「写真」自体の価値で別に稼ごうとする戦略でしょうが、既に時代遅れであることが明白です。
(ネットに溢れるAKBの写真を見てください。)
おそらく、いつまでもテレビを過信している彼らは、そのことに気付いてさえいないように思います。
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !
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