こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。
生きて帰れたら、言いたいことがあるんだ。
無人暴走列車を扱った話題の「アンストッパブル」に今日、ケイコと行ってきました。
うーん…やられました。“ハリウッドの底力”というものを如何なく見せ付けてくれた迫力の映像に脱帽です。
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アンストッパブル
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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監督は「トップガン」や「エネミー・オブ・アメリカ」などのトニー・スコット。
暴走列車を命がけで止めようとする機関士と車掌のダブル主演は、名優デンゼル・ワシントンと新進気鋭のクリス・パイン。
クリス・パインは、「ER緊急救命室」でデビューし、2009年の新版「スター・トレック」で主演のジェームズ・T・カーク役に抜擢。
同年には"Star
of Tomorrow"(明日のスター賞)も受賞しました。
ウィル・コルソン(クリス・パイン)
一方、トニー・スコットとデンゼル・ワシントンは、この作品が通算5回目のコラボレーションとなる旧知の間柄でございます。
このところ、“これは”という作品にめぐり合わず、なかなかcinemaアラカルトの筆をとることも無かったのですが、この作品については僕が書かねばなりますまい。
何故ならば、まさに“男の映画”…そのものであるからです。
この映画は、《真実》から生まれた。
~というサブ・キャッチコピーにもあるとおり、2001年5月に米国オハイオ州で実際に発生した貨物列車暴走事件を題材に制作された作品です。
ペンシルバニア州にある操車場で、機関士のほんのちょっとしたミスのために、39両編成・全長800メートルにも及ぶ長大な貨物列車が無人のまま暴走を始めます。
貨車に積まれているのは大量の化学物質とディーゼル燃料。
仮に脱線・大破すれば一つの街を壊滅させるほどの大惨事が…それはまさに地上を暴走する巨大ミサイルも同様。
しかも…列車の行く先には、人口密集地域の高架下に巨大燃料タンクが林立する魔の急カーブ“大曲り”が。
果たして、この未曾有の大惨事を防ぐことができるのか?
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ウィル・コルソン(クリス・パイン)
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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映画の冒頭、採用されてまだ4ヶ月の新米車掌ウィル・コルソン(クリス・パイン)が、二人の仲間と共に居るベテラン機関士フランク・バーンズ(デンゼル・ワシントン)が初めて顔を合わせます。
しかし、新人を歓迎する雰囲気は全くありません。
何故ならば、鉄道会社は経費削減のために、コストのかかるベテラン機関士をリストラして若手に切り替える作戦を進行中。
ましてや、ウィルはその尖兵として送り込まれた企業幹部のコネ入社組であることが分かっていたからです。
初対面から「コネで入ってきたこのヒヨッ子が」と揶揄されたのに対し、ウィルも「ここは老人会かと思った」と応酬。
いきなりの険悪な雰囲気…うまい演出です。
冒頭から突きつけられるこの緊張感に、観客は引き込まれてしまいます。
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フランク・バーンズ(デンゼル・ワシントン)
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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置かれている立場の全く違う二人は、ぎこちない雰囲気のままコンビを組んで機関車1206号に乗り組むことに。
ところが、貨車の連結作業中に無線機の呼び出しに応じないウィル。
フランクが怪訝に思ってバックミラーを覗くと、あろうことかウィルは作業中に私用の携帯電話で会話中。
実はこの電話、ウィルの弁護士からの緊急連絡。
ウィルは裁判所から、別居中の妻ダーシーとの「接近禁止」を言い渡されており、その期間が更に延長されたとの悪い報せでした。
事情を知らず激怒するフランク、悪いと思いながらもふてくされるウィル。
そんな中での共同作業であったため、ウィルにミスが出ます。
連結予定の貨車の台数を間違え、4両を長く繋いでしまったのです。
発進後、そのことに気付いて叱るフランク。ムッとして言い逃れしようとするウィル。
しかし、このちょっとしたミスが二人の命を脅かす芽になることに、ウィルはまだ気付いていませんでした。
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アンストッパブル
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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一方、暴走を始めた無人貨物列車“777号”は、自動停止装置のセットを怠っていたことが判明。
さらに、ギアをニュートラルにしておく筈が「最高速」に入れたままであったことも機関士の証言で明らかに。
当初、平地に至れば自動的に停止する「惰行」走行とタカをくくっていたものが、実は最高速の「力行」であったため、操車場司令室はパニックになります。
事態の重大性を本社に伝えようとする女性操車場長のコニー、それでもまだどこか楽観視している本社部長。
こういう構図って、サスペンスを盛り上げるのに最適ですね。
名作「ジョーズ」の場合は危機を訴える現場の声を軽んじて能天気な指示を出す役場・・・「踊る大走査線」では、現場の事態をどんどん悪化させて会議に明け暮れる“本店(警視庁)”がその役回りでした。
近年では死者107人を出したJR福知山線の車両脱線事故が記憶に新しいですが、大事故というものは、現場の些細なミスの積み重ねと管理者の慢心の双方があって初めて現実のものとなるのでしょう。
最初の作戦は、車を併走させて機関士が暴走する機関車に飛び乗るという荒業です。
まさに今飛び移ろうとしたその時、線路にあった保安設備にドアごと衝突し、館内には悲鳴が。
さらに速度を上げ、踏み切りの車両を蹴散らして暴走を続ける777号。
その同じ線路上を衝突コースで向かっているのは、体験乗車の多くの子供たちを載せた観光車両でした。
777号を分岐線に引き込もうとする作戦は、車列の重さとスピードのためにあえなく失敗。
今度は観光列車の方を分岐線に入れてかわそうとしますが、接近速度が速すぎるためにギリチョンのタイミング。
すんでのところで身をかわし、すれ違う両車両。手を振って歓声を上げる子どもたち。
そう…子どもたちにはスリリングなイベントとしか写っていなかったのです。ヤレヤレ。
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アンストッパブル
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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次に本社のとった作戦は、もう一つの機関車を進行方向から連結して強制減速させ、同時にヘリから保安要員を吊り下げて乗車させるという無謀なもの。
この作戦も見事に失敗。
連結させようとした機関車は大破し、ヘリから降りかけていた保安要員はそのあおりを受けて後続車両に激突して、またも映画館内には悲鳴が上がりました。
ちょうどその頃、暴走列車の正面衝突コースを進んでいたもう一つの車両が、フランクとウィルの乗り組む機関車1206号。
二人にもその報せがもたらされますが、放置して逃げ出すわけにはいきません。
車両が正面衝突すれば、ミサイル並みの爆発力で沿線の街そのものが吹き飛んでしまうからです。
何が何でも退避線まで間に合わせて、避けなければなりません。
ところがっ!
ウィルが貨車を長く繋ぎ過ぎていたために、車列が分岐線をはみ出すことが分かったのです。
えー!オイ!どーすんのよ!?
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アンストッパブル
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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この映画には、二人の男の家族の絆が描かれます。
フランクは妻にガンで先立たれ、残された娘達との仲がうまくいっていないのです。
父親からの電話に出ようともしない冷めた家族関係。それでもフランクは娘達を愛し、なんとか絆を取り戻したいと考えています。
またウィルは、妻ダーシーとの別居・接近禁止となったそもそものきっかけが、勝手な誤解で妻の不貞を思い込んだ事件によるものでした。
何とか謝罪して元通りになりたいのですが、妻の不信の気持ちは高まっており、取り付くシマもありません。
互いの境遇を語り合ううち、次第に理解しあうフランクとウィル。
衝突の難を逃れたフランクは、驚くべき提案をします。
貨車を切り離した1206号で線路を逆送し、777号の最後尾に連結してブレーキをかければ止められると。
失敗すればもちろん命はありません。
躊躇するウィルにフランクは言います。
列車が脱線する“大曲り”の街には自分の娘が居るから俺はどうしても止めに行かなくてはならない。お前のカミサンもそこに居るんじゃないのかと・・。
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アンストッパブル
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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この映画の映像は、ここに掲げたスチール写真を見て分かるとおり、非常にクールでスタイリッシュです。
また、疾走する凶器と化した列車を追うカメラワークや重低音の唸りも効果満点。
行く先の読めない展開に、目は釘付けとなるでしょう。
そして、実際の現場と指令室に加え、全米報道のテレビ映像を組み合わせた演出が、実に重層的でお見事。
アナウンサーの報道から、手に汗握る危機感が伝わって来ます。
この数年間、ハリウッド映画の底の浅さが鼻について、いつも厳しい話をして来ましたが、この作品では、改めてハリウッドの底力を思い知らされました。
やればできるんじゃない。
CGなんかいらない。ワイヤー・アクションもいらない。3Dメガネなんて邪魔なだけ。
これぞまさしく“ザ・ハリウッド・ムービー”…絶賛を惜しみません。
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アンストッパブル
(C)2010 TWENTIETH CENTURY FOX
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米国の辛口映画評論家ロジャー・エバートは、「アンストッパブル」を4つ星満点で3星半に認定し、「完全な職人芸で、これはずば抜けた映画である」と評しました。
また、ニューヨーク・タイムズ紙のマノーラ・ダルギスも映画の“視覚スタイル”を称賛しています。
さて、被害を最小限に食い止めるために警察と鉄道会社が打った手は、全て灰燼に帰します。
最後の希望は、命をかけて777号を追走している二人の鉄道マンに託されました。
全米の目がテレビ報道に注がれ、その様子を見守る人々の中にはフランクの二人の娘とウィルの別居中の妻ダーシーの姿もありました。
そして、777号は運命の“大曲り”に差し掛かる…。
/// end of the “cinemaアラカルト120「アンストッパブル」”///
(追伸)
岸波 見終わっての第一声。
つかれた~!
いや~もうダメ~!
何せ、上映時間の1時間39分、ずっと緊張しっぱなしなのですから。
いやー、首が凝る、肩が凝る、掌、汗ビッショリ…。
すごかったね~
やればできるんじゃないか、ハリウッド!
久々に出ましたケイコのA評価。
この映画、愛と勇気と希望を与えてくれます。
観た後で、なんと言いますか、胸がこう…すかーっとするんですよね。
これがカタルシスでしょうか。
やはり映画はこうでなくてはイケません。
完全に、ギブ・・あんど・・アップでございます。あんど?
では、次回の“cinemaアラカルト”で・・・See
you again !
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アンストッパブル
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