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「Blue Island」(TAM Music Factory)
by 岸波(葉羽)【配信2009.11.6】
 

◆この記事は作品のストーリーについて触れています。作品を実際に楽しむ前にストーリーを知りたくない方は閲覧をお控えください。

 こんにちは。気付けば人生の傍らには必ず映画があった岸波です。

 目指すは箱根駅伝。
 限りなくゼロに近い可能性に挑んだ、寄せ集め10人のキセキ。

 11月1日の日曜日、帰福して「風が強く吹いている」を観てまいりました。

 で、なに、駅伝???

風が強く吹いている

風が強く吹いている

(C)2009「風が強く吹いている」製作委員会

 どちらかというと、地味なスポーツですよね。

 でも、小出恵介クンは最近のお気に入りだし、うーん・・・どうしよっか?

 と思っていたのですが、決め手になったのは、上のキャッチ・コピー(↑)。

 特に「寄せ集め10人のキセキ」ってところ。

 ホラ、小出君の春の「ROOKIES」を彷彿させるじゃありませんか。

 あの感動をもう一度・・・ってことで、スクリーンへGO!!

 

 「風が強く吹いている」は、2006年上半期に「まほろ駅前多田便利軒」で直木賞を受賞した新進女流作家、三浦しをんさんの原作です。

 このしをんさんはちょっと変わった方で、好きな行為は「妄想」、少女漫画やボーイズラブに造詣が深いとのこと。

 自身、“漫画ヲタク”を公言しておりまして、今年から手塚治虫文化賞の選考委員に。

 そんな彼女が書いた「風が強く吹いている」は、なんと、これまでのイメージを一新する“スポ根もの”でした。

 長距離などほとんど経験がない寄せ集めの若者たちが、無謀にも、天下の「箱根駅伝」にチャレンジしてしまうという爽やかストーリー。

 2006年9月に新潮社から小説が刊行されました。

風が強く吹いている

三浦しをん女史

 ところが、このイメチェンが大当たり。

 翌2007年には海野そら太が漫画化して「週刊ヤングジャンプ」で連載を開始、その後、ラジオ・ドラマ化、舞台劇化と続き、今回の映画化となったのです。

 やっぱり、いい原作は、どんなメディアでもヒットに繋がるんですね。

 主人公は、寛政大学4年生の清瀬灰二(小出恵介)。

 “ハイジ”の愛称で親しまれる彼は、大学の陸上部員が集うオンボロ・アパート「青竹荘」で、食事や掃除、その他雑用など一切合財を引き受けている陸上競技部リーダー。

 何故、彼がそんなことまでやっているかと言えば、高校時代の怪我で一度は断念した夢を取り戻すため、いつかは10人の部員を揃えて「箱根駅伝」に挑戦することを目論んでいるのです。

 ところが、この名ばかり陸上部は、部員であることにしておけば格安なアパート(陸上部鍛錬場:竹青荘)に入居できるために加入した者ばかりで、そもそもリーダーのハイジ以外、陸上競技の経験なし。

 しかも9人しかいないので、駅伝出場の基本要件さえ満たしません。

 そんなハイジが新入生の中に見つけた有望株こそ、もう一人の主人公カケル(林遣都 )でした。

カケル(林遣都)

カケル(林遣都)

(C)2009「風が強く吹いている」製作委員会

 カケルを演じた林遣都クンと言えば、「バッテリー」に主演して以来、引き手も切らぬ売れっ子役者。

 そんな売れっ子役者なのに、天才ランナー・カケルを演じる彼の走りは、どう見てもプロのそれ。

 いやー・・・彼、ホントにランナーだったんじゃないの?

 素晴らしい演技・・・というか走りです。

 だってこの映画、全編走りまくるシーンの連続。

 演技よりも何よりも、まずは走れなければ始まらないのですから。あはははは!

 そんなカケルは、実は、高校時代に天才ランナーと呼ばれながらも、指導教師への暴力事件を起こして陸上から遠ざかっていた過去があるのです。

 それでも、陸上への夢を捨てきれず、一人走り込みをしているところをハイジに発見されて、半ば騙すようにして竹青荘の住人にされてしまいます。

 いよいよ数が揃った~ということで、仲間達に本格練習の開始と“目指すは箱根駅伝”を告げるハイジ。

 驚く仲間達。

 だって、カケル以外は素人なのですから。(うむむむむ・・)

 さて、この素人集団は、本当に箱根駅伝への切符を手に入れることができるのか?

 はたまた、出場して、どんな闘いを繰り広げてくれるのか・・・?

風が強く吹いている

風が強く吹いている

(C)2009「風が強く吹いている」製作委員会

 この映画の凄いところは、10人の仲間達の実に豊かな個性でしょう。

 ニコチン漬けの万年留年先輩、、、

 司法試験に一発合格したガリ勉クン、、、

 ひたすら女の子にモテたいだけの双子、、、

 いつもウルトラクイズのピンポン帽子を被っているクイズ王、、、

 一見速そうな黒人留学生、、、

(ソフトバンク・モバイルのホワイト学割お兄さん)

 人口の少ない田舎では何をやっても一番だった神童クン、、、

(もちろん都会ではただの人)

 スポーツから一番縁遠そうな、引きこもり系漫画ヲタクの“王子”、、、

 加えて、現役と呼べるハイジとカケルの二人も、それぞれ絶望的な足の故障や暴力事件のトラウマを抱えていて、“無傷”の者など誰もいないのですから。

 こんなメンバーが“天下の険”を目指すなんて、いくら作り話でも荒唐無稽・・・

 ちょっと待ったぁ!

 そこがそうでないところが、この話のリアリティなのですよ。

 力及ばない彼らが、“このメンバーで走りたい”というハイジの夢に応えるために、血の出るような訓練を重ねていくのです。

 うーん・・・思い出すだけでも心が熱くなるなぁ。

風が強く吹いている

風が強く吹いている

(C)2009「風が強く吹いている」製作委員会

 この映画は、NHK大河ドラマ「風林火山」などの脚本家として活躍してきた大森寿美男の監督デビュー作になりました。

 まだ監督が決まっていない昨年1月、スタッフの箱根事前視察に同行した脚本担当の大森氏は、周囲から・・・

「この映画は誰がやっても大変。
 思いの強い人が中心にいることが一番大事。
 脚本を書いた人間が監督するのが一番いい」

~と推されて引き受けることになったのでした。

 しかし、彼は駅伝のコースでもある横浜市鶴見区の出身で、箱根駅伝をいつも沿道で見ていた少年だったのです。

「目の前を通過していく選手があまりにもきれいで、見るたびに、この美しさをどうにか映画にできないか?」

~と考え続けていた彼に千載一遇のチャンスが巡ってきて、見事、今回の感動大作をモノにしたのでした。

風が強く吹いている

風が強く吹いている

(C)2009「風が強く吹いている」製作委員会

 そして、何と言っても、「僕の彼女はサイボーグ」や「ROOKIES」などで主演の経験を積んで来た小出恵介君の演技が素晴らしい。

 これまでは、主演といっても女性主人公の相手役であったり、多人数主人公の一人であったりしたのですが、今回は堂々の主役を張っています。

 このハイジという主人公、どんな困難があっても夢をあきらめず、自分のことより仲間達のために苦労を買って出る人格者。

 自身の足の故障は、実は長距離ランナーとして致命的なものであるにもかかわらず、決して悲観しない。

 常に苦労を笑い飛ばして仲間達を率いていく、まことに男らしい男なのですよ。

 うーん・・・学生時代にこんな先輩に恵まれたら、彼らならずとも、心意気に感じてしまうだろうなー。

 とりあえず、現時点での小出恵介の代表作。

 うん、それに決まった。(なんか文句あっか)

風が強く吹いている

風が強く吹いている

(C)2009「風が強く吹いている」製作委員会

 様々な困難を乗り越えて、箱根駅伝まで漕ぎ付けた彼ら。

 しかし、そこでも思わぬトラブルが次々と襲います。

 まったく気の抜けない終盤の展開。

 そして、ラスト・ランナーのハイジにタスキが渡った後の展開たるや・・・

 だめっ! もう、涙でスクリーンが見えません。(うっうっ・・)

 この晩秋、貴方に贈る決定版の感動・爽やか・スポ根物語。

 さあ、一緒に、美しい感動の涙を流しませんか?

 

/// end of the “cinemaアラカルト102「風が強く吹いている」”///

 

(追伸)

岸波

 この「風が強く吹いている」の箱根駅伝シーンは、数万人にも及ぶ大変な数のエキストラの協力があったということです。

 最初、映画を観た時には、そのリアルさに「きっと遠景シーンや群集シーンは本物の撮影画像を編集したのだろう」と思っていたのですが、これが大間違い。

 しかも、交流量の多い本選ルートでは、多くのエキストラを入れて撮影できるのはほんの一部のため、日本各地から各区間に似たシチュエーションの場所を探して、ばらばらに撮影されたのです。

 協力したフィルムコミッションも、福岡、大分をはじめ全国に及びます。

 このへんの裏話も、さぞかしいろいろあったことでしょうね。

 

 では、また次回の“cinemaアラカルト”で・・・See you again !

完成記者会見にて

完成記者会見にて

(左:ハイジ、右:カケル)

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To be continued⇒  “cinemaアラカルト103” coming soon!

 

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