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 #191 裁判長かく語りき

by 葉羽
Photo :正義の女神テミス像
BGM"Please Don't Go" by Blue Piano Man
Site arranged by 葉羽

 

いま、この場で子供を抱きなさい
(釧路地方裁判所 帯広支部 渡邉和義裁判官)1996年発言〔当時35歳〕

⇒ストレスから逃れるため覚せい剤に手を出してしまった被告に対する裁判。裁判長は生後6カ月の長男を抱いた妻を法廷内に呼び寄せ、この場で息子を抱くように諭した。家族への責任を再認識した被告は、その場で涙ぐみ動けなくなった。

どうぞ選挙権を行使して、社会に参加してください。どうぞ胸を張って、いい人生を生きてください。
(東京地方裁判所 定塚誠裁判長)2013年3月14日発言〔当時55歳〕
⇒原告の女性はダウン症だったが政治に興味を持ち、選挙の投票活動を続けていた。しかし、成年後見人を付けられたことで選挙権が剥奪され、彼女はそれが憲法違反だとして訴えを起こした。裁判長が彼女に投票を行う能力があると認め、公職選挙法の違憲判決を出すと傍聴席の支援者たちから涙ながらの拍手が巻き起こった。この判決が契機となり公職選挙法が改正された。

◆お子さんの良いところを3つ言ってください
(横浜地方裁判所 香川礼子裁判官)2010年10月7日発言〔当時40歳〕
⇒11歳の長男を木刀で殴りつけ虐待していた被告に対する裁判。父親は息子の欠点ばかりを並べ立て自分を正当化する発言を繰り返した。その態度に、裁判長はこのように問いかけた。

◆もうやったらあかんで。がんばりや。
(大阪地方裁判所 杉田宗久裁判官)2003年10月29日発言〔当時47歳〕

⇒スーパーで万引きした主婦は育ち盛りの子を二人抱え、パートで生計を支えていたが、数年前に逃げ出した夫の借金の返済を迫られ追いつめられていた。この裁判を担当することになった”なにわの人情裁判官”杉田判事は執行猶予を与え、母親が退廷する時に身を乗り出して手を握り、こう言った。母親はその場に泣き崩れた。

◆君達は、さだまさしの『償い』という歌を聴いたことがあるだろうか?この歌の、せめて歌詞だけでも読めば、なぜ君らの反省の弁が、人の心を打たないかわかるだろう。(東京地方裁判所 山室裁判官)2002年発言
⇒被告の二人の少年は東急田園都市線の車内で川崎市の銀行員と「足が当たった」と口論になり、三軒茶屋駅のホームに降りてから二人がかりで殴り、銀行員は五日後にくも膜下出血で死亡した。 山室判事は求刑通り懲役3年以上5年以下の不定期刑とする実刑判決を言い渡したが、二人の少年には全く反省の色がなかった。退廷する二人を呼び止めると、山室判事はこのように語った。
※この事件は 岸波通信その87「償い」で詳報しています。

 

 

 

葉羽 「裁判長かく語りき」について

 長嶺超輝氏が書いた『裁判官の爆笑お言葉集 (幻冬舎新書)」が面白いと爆売れしています。ただ、長嶺氏は長年裁判を傍聴して「裁判長の言葉」を収集しているので、”爆笑”ばかりでなく”心に響く言葉”も書き留めていました。そんな中から、そして岸波通信にも取り上げた「三茶事件判決」も含めてご紹介しました。


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