突然空から天使が落ちて来て
 開いたばかりの目が閉じるまでの一週間
 24時間共に生活して
 いろんな出会いと別れを思い出した

 ラダックでは
 目が開いたばかりの子猫に懐かれ
 秋桜咲き乱れる中庭で
 ホテルで飼っている子牛と戯れあっているのを
 カメラ手にしながらただ見惚れていた

 

 あまりに美しく、可愛いく
 撮る事を忘れていた
 猫の名前はピンキー…

 ベナレスでは
 ガンガーの向こうに上がる朝陽を撮ろうと
 寒い中、熱いチャイを飲みながら待っていると
 目の前で子犬達が震えながら
 小さな身体を寄せ合っている
 母親は側で何するでもなく
 朝陽を浴びている

 

 NZでは
 人懐こいチャーリーが
 ヨダレ流しながら戯れてくる
 纏わりつかれると鬱陶しいが
 さすがに歳にはあがらえず
 ある年、静かになったネと聞いたら
 大往生だったヨ、と寂しい返事だった

 

 もう何年になるのか
 ある年、野良犬が迷い込んで来た
 大人しいものの痩せて汚い姿に皆が引いた
 でも何故か惹かれるものを感じて
 約2年間共に生きた
 運命の出会いではと思える様な犬で
 24時間ずっと私の姿を追っていた

 

 ある年、仕事で日本を離れた時
 ほとんど食べず、おまけに病を患い
 私が帰って来るのを待っていたかの様に
 私の顔を見ながら旅立った

 20年前にもムササビ君とは出会いがあった
 その時はまだ目も開かない赤ちゃんを
 犬が咥えてきた
 目が開いて数ヶ月は共に生きたが
 やはり今回と同じ様に
 目が開いてこれからというときに旅立った

 

 桜が咲いて散る様に
 アッという間の共生ではあったけど
 この胸に深く刻まれた
 この大地に生まれ
 共に生きている不思議

 今この瞬間も同じ空気を吸っている
 また出会いがあるのだろうか…

大和伸一【2025.4.24掲載】

 Photo by 大和伸一
 MP3 by 甘茶の音楽工房「ブナの森に舞う雪」
 Essay by 大和伸一
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