なぜかこの東京開催だけ平日火曜日の夜18時開催になっている。しかも東京だけSS席2500円、S席2000円というアマチュア・オーケストラとしてはトップクラスの価格設定。会場は90%の入りだ。やはり東京は集客力が違うのだろう。
私は2階の左サイドの3列目。これSSかな?と思ったが音響はまずまず。ちょっと音像のピントがくっきりフォーカスしない。このホールは残響が長過ぎるようだ。

第1曲目はニコライの「ウィンザーの陽気な女房たち」序曲。「フィガロの結婚」序曲だったら「いい加減にせんかい」となるところだが、この選曲は悪くない。冒頭の弦のピアニッシモはこのオケがアマチュア・オーケストラとしてはAクラスであるのを感じさせた。ただチューニング&準備体操という感じで、もう少し美しい旋律は歌わせて欲しいし、オペラの導入として後半部分はもっと盛り上げて欲しかった。
第2曲はベートーヴェン交響曲第1番。アマチュア・オーケストラは第5番、第6番、第7番、第9番以外なかなかベートーヴェンの交響曲を演奏しないのは何故なのだろうか?とにかくチャイコ、ブラームス、マーラーが三大好物なのだ。
続いてブルックナー、シベリウス第2番、シューマン、ラフマニノフ第2番、ショスタコーヴィチ第5番。ハイドン、モーツァルトは顔色なし。とにかくこの1番は、メインの「悲愴」より聞きたかった曲。予習にカラヤン指揮ベルリン・フィルのYouTubeを聞いて、その精妙さに唖然としたのを書いておく。さすがにカラヤン&ベルリン・フィルの精妙さには及びもつかないが、これはこれで立派な演奏。

何より弦(メイン曲チャイコフスキーの弦楽器構成14-14-10-10-7)の音程の確かさ、豊かな表現力がこの楽団の根幹にある。この楽団でなくともこれがオーケストラのベースなのだ。それに表情豊かな木管、安定感のある金管(例によってホルンがやや不調気味ではあるが)・打楽器が加わる。ベートーヴェンでは終楽章の追い上げも決まっていた。
20分後の休憩後にチャイコフスキー「悲愴」。実に今年3回目(1月25日ルネ小平:直井大輔指揮ミュズニック・オーケストラ、2月6日:なかのZERO:和田一樹指揮新日本フィル)だった。
今回の指揮者田代俊文
東大音楽部はこのサマーコンサートで演奏するのは3回目ということもあって、かなり手慣れた感じがした。冒頭のファゴットのソロが実に見事。新日本フィルの演奏より上に聞こえた。クラリネットがまた素晴らしい。これに劣らずオーボエ、フルート、ピッコロもプロ顔負け。
またこの曲では大活躍するヴィオラだが、こんなに表現力と主張のあるヴィオラは珍しい。第2楽章も5拍子のワルツの歌謡性がリズム感よく決まっていた。第3楽章のマーチはド迫力だった。アタッカではなくちょっと休みを取って終楽章へ。もうこれは完全な没入状態の演奏で素晴らしいの一言。さらに、コントラバスのピチカートでの終演後に拍手まで20秒ほど沈黙を守った聴衆も素晴らしかった。アンコールは無かったが当然だろう。
いやあ、チャイコの「悲愴」を堪能した。それもアマチュア・オーケストラの東大音楽部管弦楽団の演奏である。これだからアマオケ通いはやめられない。このオーケストラのメンバーは全員東大生だが、オーボエを除き、それぞれの曲でトップ奏者が代わっているのも驚きだ。
さらに、3人の団員によるプログラムの曲目解説が3曲それぞれが研究論文みたいに長文なのには笑ってしまった。いかにも東大生である。やはり楽曲の理解力は大学入試対応偏差値に比例するのかな(笑)。
アマチュア・オーケストラ界では新交響楽団という楽団がトップクラスに君臨しているが、今回はサマーコンサート巡回の同一プログラム3回目の演奏会ということもあるのだろうが、演奏が練られていて学生オーケストラとしては完全に頭一つ抜け出して、さらにアマ・オケNo. 1を証明したコンサートになったと思う。これからも聞き続けたいオーケストラである。